その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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2つ同時では無いけど色々と大変ね。身から出た錆なのだけど。


七十三話

「私も……昔のように非呪術師を守るべきだとは言わない。でも、そんな……そんな事の……新しい術式を試すために呪術とは関係の無い一般人に術式を使ったのか蓮」

 

 今にも掴みかからんとしそうな程にわなわなと体が震え血が出る程拳を握りしめ、怒気を孕んでいながらも静かな声で喋り、晴蓮を見据える。

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「あぁ、そっちか。

 呪術と関係無いと言えば無いけど、有りもするんだよね」

「無いけど有るとは……またおかしな事を言うね加茂君」

「あっはっは、矛盾してますよね。

 僕があの術式を使った3人は確かに呪術界とは関係は有りません。直接的(・・・)にはですが」

「あー、なーるほど。被害者か」

「大正解、その通りだよ。

 その3人は呪い(呪霊)の被害者。逃げ切れず帳の中に居た被害者だ。

 そして極限の状況に陥った結果、呪い(呪霊)が見れるようになってもいた」

 

 非呪術師……一般人でも呪い(呪霊)を視認出来てしまう瞬間が有る。

 それは呪い(呪霊)に襲われ、命の危機に直面した時になる事が多い、虎杖悠仁が最たる例だ。そしてそれ以降も呪い(呪霊)が見えてしまうが故にこれまで通りの生活は出来なくなり、呪い(呪霊)に襲われ死ぬ事も多かった。

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「…………だから使ったと?」

呪い(呪霊)が見える以上呪い(呪霊)からの被害は避けられないからね。やろうと思えば加茂家で保護出来るっちゃ出来るけど、何度も出来る訳じゃないし、そもそもそっちに人を割けない。

 だからその3人に術式を使った、ああ勿論許可はとったとも。そこまで非道じゃないさ」

「…………もっと他にやり方があった筈だ。蓮なら記憶を消す(封じる)事も出来るだろう? なのに何故しなかった」

 

 加茂晴蓮はこれまで様々な呪術を拡張してきた。その中には結界術を拡張して完成させた、封印術なる呪術を使える。

 封印術の対象は多岐にわたる。人物、物品。そして実態を持たない(・・・・・・・)モノ……例え記憶であろうと加茂晴蓮には可能だ、故に夏油傑が言う事も出来たであろう。しかし、晴蓮はソレを選らばなかった、選ばせなかった。

 理由は一つ、術式を完成させるためだった。

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「まあそうだねぇ、出来るっちゃ出来るけどさ、『呪い(呪霊)の被害にあった』と言う記憶を封印したとしても、呪い(呪霊)が見えなくなる訳じゃない。

 そうなると彼らは訳が分からないまま呪い(呪霊)に襲われ続ける、そして呪い(呪霊)に殺される。

 結末は変えられないんだよ傑君」

 

 例え記憶を封印しても呪い(呪霊)は見えてしまう、そして呪い(呪霊)達は見える者から襲う傾向がある。

 その相手が術師であろうがなかろうが関係無く襲う。それが呪い(呪霊)と言う存在なのだ。

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「結末は変えられない、変えるためには力がいる。

 だから僕は彼らに記憶を封印出来る事を伝えた上で、記憶が無くなったとしても呪い(呪霊)に襲われる事も話し、提案した。

 これから先も呪い(呪霊)に襲われるくらいなら、一か八かの賭けではあるものの術師……化け物に対抗出来うる力が得られる事も話した」

「……その人達が出した結論がその術式を受け入れる、だったと」

「そうだね」

 

 晴蓮から話を聞き強く握りこんだ拳をゆっくりと広げ、その手を見上げた目の上に乗せ一つ息を吐く。

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「分かってる。私が言っているのが理想論なのは分かってる。

 でも、助けられたんじゃないかと……つい、思ってしまうんだ。あの子達を助けられたから余計にね」

「確かに彼女達も被害者だったけど、置かれていた立場・状況が違いすぎる。あの子達は元から術師なんだから」

「あぁ……そうだ、分かってるよ、ちゃんと。

 でも……どうしても、蓮なら出来るんじゃないかって思っている自分がいるんだ」

「僕はそこまで万能じゃないしなんでもは出来ないよ、僕とて人間だからね。僕は出来る事を出来る範囲でやってるだけさ。

 ただ、出来る範囲が他の人に比べて広いってだけさ」

「その出来る範囲(・・・・・)ってのが広すぎんだよハルは」

「あっはっは。今まで色々と頑張ってきたからね、それくらい出来ないと困るよ」

 

 術式を使った理由。そして、そうするしか無かった事を話したことで少しではあるものの夏油は受け入れた。

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「その結果が天与呪縛を術式へと拡張させて、その術式が別次元の同一人物と存在構造を融合させる……イヤ、変造だったかな? 

 どちらにせよなんともブッ飛んだ術式を創ったものだ、君の発想力には脱帽だよ」

「術式なんて想像力と発想力に拡大解釈次第で幾らでも創れますよ。

 今の術師は固定観念に囚われすぎなんです、『コレはこうやって、こうすればこんな感じに成るのでは?』が欠けているんです」

「ソレが出来たら苦労しないんだよ、加茂君。

 でも得心がいったよ、私がお爺さんと初めて会った時にお爺さんに抱いた気配や感覚は老成した術師だった、なのに立ち居振舞いは一般人のソレだった」

「まあそうでしょうね。実際成ったばかりですし」

 

 術式の拡張は冥冥の言った通り誰もが思っている事で、簡単では無いのかもしれないがポンポンと拡張術式を創る晴蓮そのものが術師、或いは呪術界においても特異点過ぎる人物だった。

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「頭固いですよねー皆さん」

「蓮、話の続きを頼めるかい」

 

 先程よりは落ち着いたのか声に怒気が無くなり、晴蓮に続きを促す。

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「おっと、話が逸れたね。

 生転術式(せいてんじゅつしき)は幾つかありますが、倭助さんに使った生転術式(せいてんじゅつしき)は天与呪縛の還り(恩恵)の1つ、『四次元世界(五次元世界)を認識し知覚・理解』を拡大解釈し、術式へと転用・開発した術式……多次元同存融(たじげんどうぞんゆう)と言う術式です。

 先程言ったように別次元の同じ存在と融合……でしたが、変造になったので、……そうですね……別同変(べつどうへん)……イヤ、異同変(いどうへん)……んーなんか違う。

 ……別同同変(べっとうどうへん)……うん、なかなか良いな、コレにしよう。……となるとアッチは別同同壊(べっとうどうかい)か、フム……悪くないな

「晴蓮くん?」

「あぁ、すみません。こちらの話なのでお気にさらず。

 と、まあこの術式を使い倭助さんを呪術師にしました。正確には脳の構造を呪術師の脳に造り変えたんですが、まあこの際些事ですよ些事。

 他のヤツに関しては未だ研究・開発途中ですね。イヤー難しい難しい」

 

 晴蓮が何故、この様な発想に至ったのか…………その理由は単純な疑問からだった。天与呪縛は天与呪縛者の術式に大きな影響・恩恵を与えている。

 晴蓮の例で言えば『スポーツ心臓』。

 これのお陰で1回の拍動で送り出せる血液量が増え、生得術式の回転率が跳ね上がり効率が良くなっている。

 天与呪縛によるこの現象は当然の事だが、晴蓮は疑問に思ってしまった。

 

天与呪縛が術式に影響を与えるのなら、その逆も有り得るのではないか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……と。

 

 晴蓮の性格上、疑問に思ってしまったら実践しなければ気がおさまらないため、研究・実験、そして解明(拡張)。ここまでして漸く落ち着くのが彼という人物だった。

 そして奇しくも生来の縛りである天与呪縛を誰もが考えもしなかった・思いもしなかった、術式に拡張すると言う偉業をなした。

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「加茂君。君は呪術界の歴史を覆した。

 天与呪縛を術式にするなんて誰も考えない、何故なら天与呪縛とはそう言うモノだ(・・・・・・・・・・・・・)、と言う先入観……イイヤ、固定観念があるからね」

「しかも実際に術式にしてっからな、『最優』どころの話じゃねーよ。そこのフィジゴリよりバグだろ」

「コイツと一緒にすんじゃねぇよ。コイツよりかはマシだろ」

「せやな、甚爾クンよりバグやな」

「酷いね皆」

 

 庵がフォローしようと言葉を探すが何も思い浮かばず、「……その……ごめんね晴蓮くん。フォローしようと思ったけど無理だわ」と、謝罪なのかトドメを刺した。

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「はぁ……全く。なんのために羂索のカスに協力したと思ってるのさ皆は、思考誘導してまでさ。

 それにだよ? 頑張って吐き気がするのを我慢してたんだよ、あの時」

 

 その言葉にここに居る全員の表情が強張る。しかし、それ以上に引っ掛かる言葉もあった。

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「思考誘導? 何故そんな事を」

「アイツは刹那主義……とまではいかないけどその場のノリだったり、面白そうな事を優先して行動するような奴だった。そのために念入りに下準備をする程にね。

 でもね、それだと僕は困るんだよ。僕があの時したかったのは呪術界の刷新だ、僕は本気で呪術界……腐った総監部の時代錯誤な思想を変えたかった。

 総監部は僕や悟君のような相伝術式やザ・呪術の類いを好み、秤君のような現代的な呪術を蔑み、彼の術式を頑なに認めようとしない。

 全く、時代錯誤も甚だしい。世の中と言うモノは時間が経つにつれ変化するのが当然だ、それは呪術界も例外じゃない。

 だから奴らを入れ替えたかった。僕は加茂の人間だ、奴らの醜態は誰よりも知っている。そのためには何が必要か、どうすれば実現出来るのか……高専に入る前から常々考えててね、そんな時に丁度いいモノを見つけた、それがアイツだった。

 理由は分からないけどアイツは昔から僕に執着していた。だからアイツはあの日、あの時、あの場所に居たんだろう。でも、僕にとっては奇跡だと思ったね。お陰で奴に接触する事が出来たからね」

 

 肩をすくめながら「アイツの異様に執着を逆に利用させてもらったよ」と笑いながら話す。

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「その結果が今の総監部か」

「そ、羂索に総監部の人間が数人消えれば動きやすくなるって言ったんだよ、そしたら本当に殺っちゃたから驚いたよね」

「あの日と言うのはいつの事を?」

「一年生の時の京都姉妹校交流会ですね。

 あの時、上空に居たんですよ、羂索が」

 

 晴蓮の言葉に全員が驚きの声をあげた。

 ━

「まあ僕しか気づいていなかったからそうなるよね」

「どうやって気づいたの?」

「僕は周囲の空間を半ば強制的に認識させられ、把握してしまうんです。天与呪縛のせいですね」

「どんな天与呪縛か聞いても?」

「『嗅覚による周囲の肉体及び呪力の状態・状況の知覚』ですね。

 鼻呼吸するだけで分かっちゃうんです。なので情報処理が大変で大変で、悟君の六眼よりはマシだと思ってますけど」

「イヤ俺より上だろ。俺の六眼はグラサンなり眼帯なりで隠せばセーブ出来るし」

「成る程確かに。僕は出来ないからね」

 

 顎に手をやり「鼻に栓でもしてみるか? イヤでもどうやって」とぶつぶつ独り言を言っていると冥冥が話しかけてくる。

 ━

「それで? どんな術式をかけたのか教えてくれるかい」

「一つは催眠術式、もう一つは洗脳術式ですね」

「なんとも物騒な術式だね」

「んーまあ使い方によってはそうですね、例えばーー『こんな事とか』」

 

 そう言うと、今まで座り喋っていた筈の晴蓮の声が甚爾の隣から聞こえ、今まで晴蓮が座っていた場所には晴蓮の式神、隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)松山(しょうざん)が居た。

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「え!?」

「!? 何が……」

「へぇ、これは面白いね」

「なんか違和感が有ると思ってたけど、そー言う事か」

「おや? 精度が上がったね。昔は見抜けなかったのに」

「俺だってせーちょーしてんの」

「あっはっは、それは良かった」

 

 甚爾はどこか呆れた様子で「性格悪ぃなお前」と晴蓮の頭をグリグリしながら呟く。

 ━

「痛い。痛いですって甚爾さん」

「その口振りから察するに甚爾君にはそう見えて無かったのかな」

「甚爾さんはあの時居ませんでしたから、二つの術式に掛かっているのはあの時の会場に居た人達だけですね。

 まあそれでも計画に差し障りは無かったので、まあいいかなって。因みに今のが催眠術式になります」

 

 甚爾にヘッドロックされながら話、更に「それに甚爾さんに効くか分かりませんし、この人の知覚能力は人智の外ですから」と話すとヘッドロックが強くなった。

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「甚爾さんこれ以上は死にますって」

「ハッ、お前がこの程度で死ぬタマかよ」

「催眠のレベルは五条君の六眼に違和感を抱かせられる程の術式……控えめに言っても規格外だね」

「頑張って創り(拡張し)ましたからね」

「頑張ったからって……」

 

 皆が皆、晴蓮の術式或いはその発想力とソレを実現させた驚愕し、言葉を失う。

 ━

「いいかい加茂君。頑張ったからと言っても誰も彼もが術式を容易く拡張なんて普通は出来ないんだよ」

「それは頭が固いからですよ。もっと柔軟に考えれば良いんですって、もっと緩く柔らかく術式を一つ一つのパーツに分けて考えれば自然と拡張の仕方が思い付きますよ」

「一つ一つのパーツに分ける……ねぇ。加茂君、何度も言うけどそれが出来ていたら苦労しないんだよ」

「何故出来ないのかが分からない」

 

 心底分からないと不思議な表情をし、例題を上げる。

 ━

「じゃあ直哉の術式を例にしようか」

「俺の術式をどないに拡張すんの?」

「君の術式は『自らの視界を画角として「1秒間の動きを24の瞬間に分割したイメージ」を予め頭の中で作り、その後それを実際に自身の体でトレースし、動きを作る事に成功すればトレースは自動で行われ、その結果高速で動けるようになる。

 しかし、動きを作るのに失敗するか、成功してもそれが過度に物理法則や軌道を無視した動き……例えば加速度が大きすぎる動きとかだね。そうなると術師であろうとフリーズして1秒間全く動けなくなってしまうデメリットが存在する』と言うモノだね」

「まあ簡単に言えばせやな。ソレをどないに拡張すんのや蓮クン」

 

 顎に手をやり、数秒考え口を開く。

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「そうだね、自らの視界を画角とするなら『その対象は必ずしも(・・・・)人間、或いは呪い(呪霊)に限定する必要は無いのではないか……』とかかな」

「それやったら何を対象にすんの?」

「良い例がすぐ近くに居るじゃん」

「…………まさか蓮クンの事言っとるん?」

 

 それはまさかの例であり、あり得ない例でもあった。

 ━




 冥冥さんの口調が安定しないでござる。

━━
 戦闘描写も苦手だけど、こういった説明会の方がダメかもしれん。全体的に難しい。

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 何がなんでも完結させてやる。
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