「それは流石に無理があるで蓮クン。俺は蓮クンらみたいな
やや沈んだ声色で、そして悔しそうに呟く。
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「あっち側の意味は分からないけど……直哉、何事も無理だと思うから出来ないんだ。突飛な考えでも良い。その考えが、発想が重要なんだ」
いかに術式を拡張出来るのかを諭すような声色で、「僕達呪術師はね、デタラメな存在だ。であれば使うモノもデタラメであって然るべきモノだ」と話し、付け加えるように「なんでも良い、どんな事でも良い、思いつく限り、考え得る限り考え尽くす。難しく、複雑に考えなくても良い、答えは以外とシンプルなのかもしれないんだよ」と語った。
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「デタラメ……なんでも、どんな事でも……シンプルに考える……」
「そうだね……例えば、例えばだけど僕なら『自らの視界を画角として』を拡張するとか、かな」
晴蓮の言った事が飲み込めず、
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「直哉の……正確には投射呪法は自らの視界を画角として『1秒間の動きを24の
でもそれだけじゃ目で見えない、或いは届かない場所・箇所を術式対象に出来ない。だとすると拡張するとしたら『自らの視界を画角として』の部分を拡大解釈するしかない。
ならどうすればいいのか……そうだね、僕であれば自分の間合い……シン・陰流の簡易領域の様な空間、ようは結界術だね。
自身が反応出来る空間を創り、その空間内を『画角である』と解釈するかな」
「空間を画角にする………そんなん」
晴蓮の語った解釈の仕方に「そんな事無理だ、出来る訳が無い」と、口をついて出そうになった時、先に語った晴蓮の言葉。『無理だと思うから出来ない』『呪術師はデタラメな存在である』この二つの言葉を思い返し、『こんな事を考えているから自分はアッチ側に立てない』のだと思い、どれ程常識はずれの解釈であろうと試してみる価値はあると考えた。
何故なら自身の在り方、考え方を劇的に変えた……そして、アッチ側に居る
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「せやな……蓮クンの言う通り俺ら呪術師はデタラメな存在や、そんな存在が使うんモンもデタラメに決まっとる。
なら、なんでもアリに決まっとるんや、出来ひんモンはあらへん」
また一人の呪術師が、無意識に抱いていた
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「君の新たな
「待っとてや蓮クン。絶対に蓮クンの隣に立てる術師に成ったる」
「直毘人さんが特級に成った。
なら、同じ術式の直哉も特級に成れる。勿論辿る道、到達する頂きは違うかもしれない、それでも投射呪法は特級に成れる事が証明された。待っているよ直哉」
「すぐに追い付いたるで蓮クン」
「ハルの隣に居るの俺達だけでジューブンだけだっての」
「ハッ、お前らは蓮クンにおんぶにだっこされとるだけやんけ。
俺は違う、蓮クンの隣に並び立つ術師に成るんや」
「ダセーってだけで
「んなモン等級に関係ねぇだろ」
まあ関係ないっちゃ無いな、うん。それでも扇さんは呪具も併用して特級並みに強くなったし、どうなんだろうね。
禪院家には躯倶留隊と呼ばれる禪院家にて術式を持たず生まれた男子の所属が義務付けられている部隊があり、彼らは術式を持たないため武器を用い戦う。
そのため禪院家では武器は弱者が使うモノであり、術師が使うのはある種の
実際に禪院扇はその考えを改め、自身の術式と相性の良い呪具を身繕い鍛えた結果、特級相当の実力者になり、特級呪術師の条件を満たした禪院扇は晴蓮から特級呪術師に推挙されている。
最も、晴蓮は総監部をはじめ呪術界の様々な部署を掌握しているため、禪院扇が特級呪術師に成るのは既に決まっている。
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「うんまあでも自身の術式と相性の良い
現に扇さんは相性の良い呪具を手に入れてから特級でも可笑しく無い程に強く成ってるし、古い考えなんて捨ててさ」
「……あのパッとせぇへん奴が特級とか有り得へんで」
「その辺りが古くさい思想から解き放たれた証だよ」
あの時から二人とは定期的に俺と甚爾さんで組み手してたけど、まさかあんな風に成るとは……
でも、未来の事を考えると特級呪術師が多いに越したことはない、必ず……どの世界線でも必ずアレは覚醒する。
その時にあの男も便乗……イヤ、あの男がアレの覚醒を手助けをしているのかもしれない。それに、それだけに止まらず何かをしてくるだろう。ソレらに対処出来る人材はもっと欲しいのが本音だけど……この辺りは焦らずゆっくりしていくしかないかな。
とは言え時間は限られている……念のために彼らにも動いてもらおうかな。
……それとは別で俺の方でも色々と調べるか、
思考を巡らせていると、「おい」と甚爾の声が聞こえてくる。
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「あー……それで、えーと……なんの話ししてましたっけ?」
「お爺さんの話だよ」
「あぁ、そうでしたね。
でも一通りの説明はしたので、アレ以上はしてないですね。後は鍛えた程度です」
「なら、他に使った人達は居るのかい? 加茂君」
当然の疑問。虎杖倭助に使い術式が完成したのなら、加茂晴蓮と言う男は使うのではないか……と、付き合いの長い彼らは考えた。
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「あー……んー……まあ……それなりには」
煮え切らない物言いに全員が「あぁ、使ったんだな」と、タメ息を吐いた。
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「あっはっは。いやーまあうん、ね? 失敗してないから、それに……うん。結果的には人が助かって更に呪術師が増えたからヨシって事で、ね?」
「やっぱり君は生粋の呪術師だよ、加茂君」
一つ、咳払いをして「呪術師的かどうかはこの際置いといて、宜しくないやり方……まあ下道な、非人道的な方法なのは分かってます。
ですが、これでも上層部の一人なので人材確保も仕事の一つです。国内外問わず呪術師が一人でも増えるのならどれ程下道な方法だとしてもやります」と、自身の考えを滔々と語った。
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「……非人道的なのは認めるのね晴蓮くん」
「ええまぁ、そうですね。脳を弄る訳ですからそれなりには罪悪感はありますよ、ちゃんと」
この場の者達の反応は様々だった。呪術界御三家の当主・次期当主の五条悟と禪院直哉は「方法はどうあれ術師が増えるなら、まあいいか」程度の反応で、一応は御三家に連なる元禪院の加茂甚爾は晴蓮の行為に興味がないのか耳を掻き、晴蓮の性格を良く知る同期で呪術師家系の家入硝子は「まぁ、セイならやるかな」と思い、家入硝子と同じ様に晴蓮の性格を良く知る同期だが、一般社会からスカウトされ呪術師になった夏油傑は苦虫を噛み潰したよう顔をし、七海建人と灰原雄はあの優しい晴蓮がそんな事をしていた事を知って言葉を失い、庵歌姫は俯き着物に皺がつく程握りしめる。
そんな中冥冥は何やら考え、何かを思いついたのか口を開く。
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「加茂君」
「なんでしょうか」
「君は複数人にその術式を使った」
「そうですね」
「つまり、お爺さんの様に君の都合で動かせるフリーの術師が複数人居る。と、思っていいのかな」
「………目に耳、手足は多いと助かりますよね」
「なんとも君らしい答えだ」
「確かにフリーにさせている術師も居ますが、登録させている術師も居ますのでその辺りはご安心を。最近だと去年に登録させた欅親子ですかね」
「欅? 親子共々半年で一級呪術師に成ったあの
「おや? 二人をご存知で?」
「私が知っているのは母親、欅京子の方だね。彼女とは何度か任務をした事がある」
「どうでした、彼女は」
「正直に言えば嫉妬したよ。
彼女は一級呪術師だが……それは単に特級の条件に満たしていないから特級じゃないだけだ」
欅親子は晴蓮のスカウトで呪術界に登録された術師で、登録当初は術式と実力を鑑み総合して三級呪術師として登録された術師。しかし、登録されてからの快進撃が凄かった。
登録されてから数十回の任務をこなし、その結果僅か半年と言う短期間で親子共々一級呪術師に成った人物。そして、まことしやかに『欅親子は特級相当の術師である』とさえ言われている人物でもあった。
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「冥冥さんにしては結構評価高いですね」
「一回でも一緒に任務こなせば誰でもそう思うさ」
「成る程。
まあ確かに彼女の術式は
「……君から見て欅京子の術式をどう評価するか聞いてもいいかな、加茂君」
「んー、そう、です……ね。拡張のしがいが有りますよね」
「確かに彼女の術式は少々変わっているが、それでも単純火力が高い。なのに拡張させるのかい、君は」
「その方が手札が増えて戦闘の幅が増えるじゃないですか。手札が多いのは良いですよ、それだけでアドバンテージが取れるんですから。
あー……でも葵みたいなシンプルが故の強さも有りますから一概に拡張性が高い方が良いとは言いきれませんね、葵と
東堂葵は京都府立呪術高等専門学校に所属する三年生で、去年起きた呪詛師・弥永宗二による呪術テロの際、京都にて一級呪霊8体、特級呪霊2体祓った一級呪術師。
師である九十九由基と九十九経由で会った晴蓮にシン・巌流の手解きを受け、呪術を使わないシンプルな殴り合いなら、
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「東堂くんの事で思い出したけど、晴蓮くん。
もしかして京都高に晴蓮くんが呪術師にした子達を入学させた?」
「えぇ、しました」
「誰か聞いてもいい?」
「
「松信吾……確か、二年生の子で準二級呪術師よね?」
「そうですね、彼を術式だけで見れば弱いですから」
「術式だけでって……それはどう言う意味?」
「彼の強みは呪力特性です」
「呪力……特性……どこかで聞いた事があるわ、どこだったかしら」
「変わった呪力なら秤だな」
「秤……
「あっはっは。話に挙げにくいですよね、秤君の事って。
何せ彼は、僕が
「そのせいで停学にされたもんな秤の奴。
でもさ、ハルがなんとかしてなかった?」
「あぁ、停学は取り下げさせたよ。
でもねぇ、彼が頑なに拒んで戻って来ないんだよね。
彼が帰った来たら色々と助かるんだけどさ、秤君と星君の二人にまだ戻る気はないかって聞いたんだ。そうしたら秤君がね『いくら加茂さんが戻って来いと言っても『熱』が一ミリも感じられねぇ
だから戻るつもりは更々無い』って言われたよ。困ったものさ。
……保守派呪術師達は昔より減ってはいます。減ってはいますけどまだ居るので嫌みたいですね。
だから僕も色々とやっているんだけど如何せん彼らの頭が固すぎて固すぎて、もう本当にイヤなってきてブチっとしたくなりますよね」
語尾に星マークが付きそうな声色と良い笑顔で物騒な事を言った晴蓮に歌姫が「ダメよ、馬鹿な事しちゃ」と、真面目に返す。
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「確かに、君なら不都合が生じれば簡単にヤりそうだ」
「ハルならやるな」
「蓮ならやりそうだ」
「セイならもう何かヤってんじゃね?」
「酷いね皆」
「付き合いなげーからな、ハルの性格知ってりゃ何かヤってても可笑しくねーって思うだろそりゃ」
「流石にしないよ、今のところはだけど」
「今のところ……ねぇ。まるで近い未来にそうする時が来そうな言い方だね」
「んー……まぁ、まだなんとも言えませんね」
「無くはない。と、受け取っても?」
「お好きなように」
含みを持たせた笑顔で断言せず、これから起こる、或いは起きるであろう未来を語ろうとはせず話題を反らすように話を元に戻した。
━
「それで、なんでしたっけ。…………あぁ、そうそう高専に入れた術師、松の事でしたね。
松は悟君が言ったように変わった呪力をしています、皆さんはファットウッドを知っていますか?」
「確か……
「流石傑君、良く知ってるね。
ファットウッド……
「そのファットウッドが松くんとどう関係しているの?」
「それが松の呪力特性……呪力の性質なんです。
分かりやすく言うと、彼の呪力はとても
この性質と彼の術式が合わされば……って感じですね。ああ因みにですが、呪力を伴わない火花でも燃えます。そういう呪力なので」
「燃えやすい呪力……」
「秤君の呪力はざらついてて呪力自体がヤスリのような性質を有していて、松の呪力は燃えやすい。
ああ後は加茂家の蔵から見つかった文献に載っていた400年前の術師は
……性質で言えばある意味僕の呪力も当てはまるかもしれませんね。まあ僕の場合は天与呪縛関連なので別だと思いますが。
それにしても、こういった呪力が特殊な術師が居るのは面白いですよね」
「晴蓮くんの呪力? 何かあるの?」
「ハルの呪力は濃いんだよ」
「呪力が濃い?」
「俺が
ごく稀に、呪力そのものが特殊な術師が現れる。何故現れるのか、何故呪力そのものに術式と関連する性質が宿るのか、或いは関連しない特性も宿るのか……。
九十九は呪力特性も調べているらしいが、未だに解明出来ていない。
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「五条君が吐くのは良いとして、呪力が濃いと何か弊害が有ったりするのかい五条君」
「ねぇな。
どっちかつーと濃さのお陰でハルの呪力効率……あー、一般的な術師が10の呪力が要る呪術をハルは1で使える感じだな。俺とは違うベクトルで効率が良い」
「実感は無いんですけどね、なんか凄いみたいです」
「例えばどんな事が出来るんだい」
「んー、術式の連射とかですかね。
「ああ成る程、それがタネか」
「何それズルじゃん」
「んーまあ確かに硝子が言うようにそうなのかもしれないけどさ。
傑君も似たようなモノじゃない? 複数の呪霊出せるんだし」
「確かに複数の呪霊は出せるけど、全ての呪霊が術式を持っている訳じゃない。持っているのは準一級以上だ」
「手数と言う意味では変わらなくない?」
「それは……まぁ、そうかもしれないが……」
少し考えた後、「いや、やっぱり違うよ蓮」と言い返す。
━
「私が使役している呪霊の術式は当然一つだけ、蓮の様に複数の、多種多様な術式が使える訳じゃない。
局面毎に簡単には切り替えられない」
「あー、まあそうかもしれないけど……でもさ、傑君も似たような事出来そうだよね。
術式順転と術式反転を同時に使えれば、呼び出した呪霊の術式と、体内で固定化した呪霊の術式を使えればさ、少なくとも同時に二つの術式が使えるんじゃない?」
「……成る、程…………」
晴蓮の言葉に顎に手をやり思案し、少し間を空けてボソリと「ソレは……アリ、か……やってみる価値はある。何故今まで思いつかなかったんだ」と呟いた。
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どこまでが術式開示になるのか分からない。
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どうやったら投射呪法が特級に成れるんですかね、私にはまだ分かりません。
アニメで雑魚さ加減が増した扇さんがどうやって特級相当になったのかって?流刃若火でも見つけたんじゃないですかね。
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関西人じゃない私には関西弁は分からない、更に言えば京都弁だから余計に分からない。