その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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 混乱するからオリキャラとか増やしたくないんだけど、話の都合上増やさざるを得ないのがなんとも言い難い。

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少し修正いたしました。


七十五話

「何か思いついたようだね、傑君」

「ああ。蓮が言った事が出来れば一つ上のステージにいけそうだ」

「それは何より。参考になって良かったよ」

 

 柱にもたれ掛かり、まだ考えている夏油を横目に五条が「そう言えばさハル。一景(いっけい)って奴こっち(東京高)に居なかったけ?」と聞いてきた。

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「うん。初めは戦力的に京都高に入れようかなって思ったんだけど、向こう(京都高)には葵が居るでしょ? 一景まで向こうに入れたら戦力的に過剰かなって思ってさ、だからこっち(東京高)に入れたんだ」

「ふーん。ま、確かに去年ウチらが勝ったのは憂太が居たからってだけだからな」

「ソレ、一景も絡んでるよ」

「は? どゆこと?」

「あの子の術式だよ」

「そう言えば私、お子さんの欅一景(けやきいっけい)くんと二回程、任務に同行した事があるの。

 その時に私が思ったのは欅くんが何をしたのか(・・・・・・)分からなかったの。

 でも……それでも二級呪霊を祓ってた」

「まぁ、そうでしょうね。一景の術式は母親以上に特殊ですから」

 

 歌姫が言う、何をしたのか分からないのに呪霊が祓われていた事、そして去年の交流会の時に東京高を勝たせた一因でもある事を欅一景の術式だと晴蓮は言う。

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「一景の術式は高専に登録されているままの能力だよ」

「なんだっけ?」

 

 一つ息を吐き、「情報消失(データ・ロスト)だよ」と五条を含めたこの場に居る全員に教える。

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「本人が居ないのに僕が術式を開示したらアレだから詳しくは言わないけど、一景の術式には攻撃能力は基本的には無い。拡張次第では化けるかもね」

「それじゃあ私みたいなサポート系? でもそうは見えなかったのだけど」

「そうですね、どちらかと言うと葵に近い術式ですかね」

「確か……東堂君の術式は不義遊戯(ブギウギ)、能力は入れ替え、でよかったかな?」

「ええ、葵の術式はモノの入れ替え、なので術式そのものに攻撃能力はありません。

 そして一景も攻撃能力の無い術式を持っています。似ていると言っても似ているのは攻撃能力が無い点だけですね」

「それが情報消失(データ・ロスト)

 今高専のデータベースで確認したけど、加茂君、これは額面通りに受け取っていいんだね?」

「はい、そのままですね」

「ロスト……成る程これは厄介だね、敵に回したくないね、この子」

「おや? その口振りから察するにどんな術式か分かったみたいですね」

大凡(おおよそ)ではあるけどね」

 

 勘の良い冥冥は字面を見てどんな術式か見当をつけ、それを以て一景の術式を『厄介』と評した。

 察しのついた冥冥にたいして、或いはこの場に居る全員にたいして「後は本人に聞いてください、僕が言うのは本人に悪いですから。

 まああの子なら隠さず教えてくれると思いますよ、そう言う性格ですので」と話を終わらせた。

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「なぁハル」

「うん? 何?」

「一年にも入れた?」

「あぁ、中西暦(なかにしこよみ)だね。

 あの子は軽度の先天性知的障害と多重人格障害………正式には解離性同一性障害だね。これらを持った天与呪縛持ちの術師で、術式は朔望(・・)

 能力は……星君に似てるのかな? 後は本人に聞いてくださいね」

 

 言い終えた後付け加えるように「ああそれと性別は男ですよ彼、見た目は女の子ですが。

 主人格が男の子で交代人格(副人格)が女の子ですね。他にも何人か居ますが……僕が言う事じゃないのでこちらも本人に聞いてくださいね」と話す。

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「星? 秤についていった星綺羅羅(ほしきらら)君の事か?」

 

 星綺羅羅は停学になった秤金次についていった術師で、秤の術式とは違い天文学を基にしていると思われる歴史ある術式で、保守派呪術師・上層部に好まれている。が、秤を追い出した(停学)保守派呪術師・上層部を嫌い、今は高専を離れ秤と共に行動している。

 それはそれとして晴蓮とはそれなりに連絡を取り合っている。

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「うん。星君の術式に似てるんじゃないかな」

「となると……その中西暦君とやらは天文学を基にした術式なのか?」

「……まぁ、そうだね。概ねは」

「(言い淀んだ? 他に何か有ると? 全く、相も変わらず全部は話さないね、彼は)(さく)が新月、(ぼう)は満月。そして月には下弦と上弦も有る。その子の術式は月に由来する術式かな?」

「陰陽道において月は重要視されてますから、ザ・呪術な術式ですよね」

「月……ねぇ………陰陽道を基にするなら扱いが難しい術式だね」

「その辺りは現代的な解釈の仕方ですね。

 まあ高専に入れる前に色々と教えたので中々に仕上がってますよ」

 

 陰陽道(陰陽師)において月の満ち欠けは人々の生活、運気、身体の調子、そして吉凶を占うための非常に重要な基準(思想)であり、太陰太陽暦(旧暦)は明治頃まで(カレンダー)としても採用されていた。

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「引っ込み思案な子だけど……ま、なんとかなるんじゃないかな、恵君も悠仁君も良い子達だし仲良く出来ると思うよ」

「ああそうだった、ハルもう一人来るから」

「一年生?」

「そ、頭の古い奴ら(上層部)が好むザ・呪術な術式持ちの呪術師」

「そう言うのはもっと早く言ってくれないかな」

「最近ハル忙しかったじゃん」

 

 頭に手をやりながら「確かに最近忙しかったけど、別に電話じゃなくてメールとかでもいいんだからさ大事な事は早めに教えてね」と言い、夏油に知っていたか聞くと「私も聞いていない。今初めて知った」と返し、それを聞いてタメ息を吐き「次から気をつけてね」と締めくくった。

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「それで? どんな子が来るの?」

「あー、自分に素直な奴。で、呪術師の家系で東京来んのが夢だったらしいよ」

「実家は?」

「東北だってさ」

 

 新しい生徒の実家を聞きコメカミ辺りを指で軽く何度か叩き「東北……」と呟き「その子って推薦?」と五条に聞く。

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「祖母からの推薦だね」

「んー……もしかしてあの偏屈婆さんの所の子か? 確か小さい子が居たような記憶が……」

「どったのハル」

「東北の子なんだよね」

「うん」

「もしかしてさ、芻霊呪法(すうれいじゅほう)の呪術師?」

「なんで知ってんの」

 

 頭を抱え「あー、やっぱりあの時の偏屈婆さんかー、そういえば小さい女の子居たなーそっかー」とボヤきながら項垂れる。

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「ん? 何、何か知ってんの」

「僕ってさ、妖怪集めで日本各地を飛び回ってた事があったでしょ?」

「あー、してたなそんな事」

「んで、妖怪集め兼仕事(任務)で東北に結構行っててさ、その時に仕事(任務)で何回か現地のフリーの呪術師に協力要請を出したんだよ」

「ハルなら一人でやれんじゃん」

「土地勘が無いから案内を頼んだんだ」

「窓と補助監督は何してんだよ、そこら辺調べんのが仕事だろ」

 

 窓とは普段は一般の職業に就いていて日常生活に紛れている非呪術師だが、呪いや残穢を目視することができ、呪術界において何か異常があった際に直ちに呪術師や補助監督に連絡をする重要な役割を担っている者達である。

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「勿論ちゃんと仕事してるさ、それでも現場の範囲(帳の中)が広かったんだ。中は彼らじゃ無理だから現地の術師に来てもらったんだよ。

 で、その時に来て貰ったのが釘崎躑躅(くぎざきつつじ)さんって言うんだよ」

「その人の術式は?」

芻霊呪法(すうれいじゅほう)の術師。

 更に言うとその人にお孫さんが居てね、多分その子が来るんだろうね」

「ソイツだな。釘崎って名前だったし……多分」

「お孫さんが居るなら娘さんは?」

「その子を置いて蒸発したらしいよ。

 躑躅(つつじ)さんは直接的に言ってはいなかったけど、言葉の端々から察するに呪術師としての才能が無かったんだろうね。

 その代わりお孫さんには呪術師の才能が有った。だから躑躅(つつじ)さんはお孫さんを鍛えたんだと思うよ。僕も基礎的な呪術を教えたし」

 

 話し終えた後、顔に手を当て天井を仰ぎ「あの偏屈婆さんがよく高専に行かせたな、絶対揉めたでしょ」と独り言ちる(ひとりごちる)

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「蓮、そのお婆さんに何か問題があったりするのか? 渋い顔してるけど」

「あー、んー……躑躅(つつじ)さんね、スッゴく偏屈で頑固なんだよ。

 僕が協力要請出した時に最初は、『高専の人間に協力する気はない』って頑として首を縦に降らなくてさ、何度か交渉してやっと案内だけを条件に協力に漕ぎ付けられたんだ。

 いやもうマジで大変だった」

「そんな人物がよくお孫さんを高専に入れる事を許したね」

「ホントにねー、あの人が心変わりするとは到底思えないし……あの子はどうやって説得したんだろうね、家出宜しく出てきたのかな」

 

 自分の記憶にある高専嫌いの人物が孫を高専に行かせた事に驚き、あれこれ考えるも出た答えは「全く分からん」だけだった。

 しかし、とある考えが脳裏をよぎる。

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…………もしかして:俺のせい。

 いやいやいや、んな訳……んな訳…………有りそうだな。目、キラキラさせてたし、………躑躅(つつじ)さんから電話きそう。出たく無い、絶対面倒くさい。嫌だなー。

 

「生徒達の話しは終わったかな?」

「冥さんまだなんかあんの?」

「勿論あるとも。

 加茂君。君がしてきた事はこれで全部かい」

「そうですね。僕がしてきた事は一通り全部話しました。

 あぁ、後何人居るかは話しませんよ? 僕の手札……最大のジョーカーなので余程(・・)の事がない限りは、ですが」

「余程、か。それじゃあ君に何か有るように聞こえるけど、それは話してくれるのかい」

「あー……詳しくは話せない……と言うより僕も把握しきれていないので話せないんですよね。

 どこかの探偵みたいに言うなら『確証がない限りは推理(未来)を語れない』と、言ったところかな」

未来視(世界視)出来るハルがなんで分かんねーの?」

「あー、それね。なんて言えばいいのかな、今からずっと先まで未来視(世界視)してるんだけど、ある時期……ごく僅かな期間だけ未来が暗転……未来が視えづらくなる(揺らぐ)んだよね。

 だから『まだなんとも言えない』なんだ。なんでなのかなー」

「成る程、さっき私が『不都合が生じれば簡単にヤりそうだ』と言った時、君は『まだなんとも言えない』と答えた。それは語らなかった訳じゃない、君自身まだ未来(事実)が確定していないからそう言ったんだね」

「そうなりますね」

「は? マジで言ってんのソレ、ハルっていつも先回りして大抵の事終わらしてんじゃん」

「こんな事初めてだから僕も驚いてるよ」

「そうなる理由は何か分からないの?」

「呪いの王、それと羂索。恐らくこの二つが大きな要因かと思ってます」

 

 あまりにも大物二人の名前が出てきた事に全員(興味の無い甚爾以外)が息を呑んだ。

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「呪いの……王」

「羂索、去年呪術テロを引き起こした正体不明の呪詛師の名前だね」

「呪いの王……今は(・・)悠仁君ですね、彼を視ようとしても真っ黒で何も視えません。

 そして羂索、モザイク画宜しく人物像が砕けて視える。こんな事は初めてですよ、ああ羂索は昔からそうでしたね。

 式神(妖怪)を通した目で見える姿と、未来視(世界視)で視える姿がちぐはぐ過ぎて吐きそうでした。

 僕の未来視(世界視)は天与呪縛の還り(恩恵)

 縦軸の未来(世界)、横軸の未来(世界)。僕の未来視(世界視)はソレら全てを視通します。

 なので視た人物が真っ黒で視えないとか、モザイクがかかってるように視えるとかあり得ない。

 例え僅かな期間であっても天与呪縛の還り(恩恵)である未来視(世界視)で、未来が視えないなんて事は起こり得ない、起きる訳が無い。なのにそれが起きてる」

 

 晴蓮が戦闘時に常に使い、信頼を置く天与呪縛の還り(恩恵)の一つ、未来視(世界視)

 その未来視(世界視)が視えづらくなると言う発言、何故視えないのか、どうして視えなくなるのか………。

 その『何故』は晴蓮自身も分からず『何故』を多角的(様々な術師の未来の)視点から何度視ても今まで以上の靄……ノイズがかかり、モザイクしか視えなかった。

 だからこその『これから先、どこかの未来は視えづらい(定まらない)』の発言。

 それは天与呪縛の開示をし、未来視(世界視)の性能の底上げのためだった。

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「ある時期? それは分かるのか?」

「んー、大体半年後くらいかな。

 でもねぇ、この期間を越えるとちゃんと視えるんだよね、だから余計に分からないんだよ。

 でも……うん。今開示したお陰で僕の視えづらかった未来が少し視えた。…………なんだ? これは……」

「(加茂晴蓮が未来が視える事は呪術師に限らず呪詛師達にも知られている。

 だが、今彼は天与呪縛を開示する事で視えないモノを視えるようにしたのか、使える手はなんでも使う。なんとも彼らしい)」

「んだよ、珍しい顔するじゃねぇか晴。何が視えた」

 

 自身の未来を視るため普段閉じている目が見開き、眼球が忙しなく動いており甚爾の声は聞こえていなかった。

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「ここは……高専? どっちの高専だ? それと、見たことない……これは呪霊………なのか? 何故視えない、この視え方は悠仁君と……考えるのは後だ。

 それよりなんで高専に呪霊が? いつ来る……これ、は……成る程、そのタイミングで……だが何をしに……ん? アレは……横はどうだ………変わらず……か。

 ならここは(この未来)もういい。もっと、もっと先……台風が動く時(視えなくなる未来)

 これは……線路? に、人混み? ……それにアレは高専に居た黒塗りの…………アレ、は……なんだ? 

 ………ダメですね、これ以上視えない」

 アレが俺の未来、か。一先ず得た情報を整理しようか。

 一つ目、高専で視た呪霊達。何故呪霊達は高専に来たのか? これの目的は忌庫(きこ)

 二つ目、何故危険を冒してまで忌庫(きこ)に来たのか? 理由は当然中に納められている何か(・・)を盗みに来た。残念だがその『何か』は分からない、分からないが呪物の類いなのは確実だろう、可能な限り横の世界も視たがその『何か』は盗まれていた。

 盗まれるのは避けられない、例え俺が待ち構えて居ようが居まいが盗まれる。だが、ある程度の抵抗は出来る筈だ。

 三つ目、呪霊達はいつ来るのか。これは視えた、京都姉妹校交流会だ。確か……今年は東京高だったな。なら東京高の忌庫(きこ)か。

 ……東京高の忌庫(きこ)? 確か東京高の忌庫(きこ)には………ッ! 奴らの狙いは宿儺の指か! やっぱり羂索絡みの上、宿儺の指か……道理で視えない訳だ。

 宿儺の指を盗む理由………宿儺の完全顕現。しかない、か。そんな事をする理由はなんだ? ……こっちは天元にでも聞いて、指の方は後で悟君に聞くか。

 四つ目、忌庫(きこ)で視えた呪霊は二体、悠仁君を視た時と同様に黒塗りで視えない呪霊と、どこか雪女である(ささめ)に似た呪霊。黒塗りの方は現段階ではどんな呪霊なのか不明、よって後回し。

 (ささめ)に似ているのなら雪やソレらに関連する呪霊の可能性が高い。もしそうなら要注意対象だな。

 五つ目、高専より先の未来。地下鉄らしき場所、そして大量の人々。恐らく彼らは非呪術師だろう。だが、何故あんなにも居る? 閉じ込められた? どうやって? 羂索……可能性は高いな。そして、高専でも視た継ぎ接ぎの呪霊と推定雪関連の呪霊。

 それだけじゃない、ソイツら以外にも二体の呪霊が居た……どんな呪霊で、なんのためにそこに居る? こちらも羂索が絡んでいるんだろうが………理由が分からない。

 …………天元にでも聞くか? 答えるのかアイツ? アイツ(うつつ)に関与しないとかほざいてるからな、『それが世の趨勢ならば』とか言うだろ絶対。

 今の内に式神にでもしてやるか? 今のアイツなら式神に出来るし、妖怪とは勝手が違うから手間取るかもしれんが、火産霊(ほむすび)が出来たんだ、出来なくもないだろ。

 …………イヤもうマジでしようかな。なんかした方が良いと俺のゴーストが囁いてるし……しようかな、した上であそこに置いときゃ誰も疑わんだろうて。…………暇見つけて行くか、後はーー

 

 目を閉じ合掌した手を顔の前に置き、視た情報(未来)を整理していると、頭に鈍い衝撃が伝わり「あいた!?」と間抜けな声を出し、頭に手を置き式神(妖怪)と視界共有して上を見ると甚爾の拳があり、上から「おう、起きたか?」と言葉が降ってくる。

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 いつになったら特級虫くんに辿り着くんですかね。
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