「…………どんな奴か知らねぇけど、その虎杖って奴に冥福でも祈っとくか。騒ぎにならねぇといいんだけど……無理か」
頭をポリポリと掻き、真希の後を追うように校舎へと入っていった。
━
「こぉんのクソ馬鹿がぁあ」
ある部屋から出てきた虎杖を見つけた真希が握り拳を後ろに引き絞り、一目散に駆け寄り拳を顔目掛け拳を振り抜くと「ぬぉおあ!! 誰? なんで?」の叫び声が響き、寸前のところで真希の拳を躱したが「避けんじゃねえよクソ馬鹿が!」の叫び声と共に二撃目のジャブを繰り出すと虎杖が混乱した様子で「え? え? あれ? 真希姉さん!? どうしてここに!?」の声を無視して下から拳を顎目掛け、「うらぁあ」の言葉と共に三擊目のフリッカージャブを打ち上げる。
その攻撃をスウェーバックで躱し、条件反射でシン・巌流の開発に取り入れた武術『躰道』の
━
「よし。今はこれで許してやるよ」
「おぉお………」
喰らった攻撃で呻き声を上げのたうつ。
━
「真希、やり過ぎ」
「コイツの硬さはよく知ってるっての。これくらいで死なねぇよ」
「(今、呪力が腹に集まった。
多分無意識でやったんだろうな。まあハルが子供ん頃から鍛えてんだ、その時に呪力操作に必要な技術を教えてても可笑しくない。
一般人でも呪力を持ってる、それは悠仁も例外じゃないし悠仁は一般人にしては多かった。それもあって宿儺の指を喰った時呪力が跳ね上がった、これは鍛え方で化けるかもね)それでもだ。真希、今のお前は擬似的とはいえあのゴリラに近いフィジギフだ。そのお前が殴れば大抵の奴は死ぬっての」
「問題ねぇよ。ちゃんと手加減した」
「(加茂一族っつーか、ハルが鍛えた奴らの手加減は手加減じゃないからなー…………悠仁大丈夫か? 後で硝子に見せ……ても外傷じゃないから無理か)」
腹部を押さえ地面で転がり呻き声がを上げていたが、徐々に収まり腹部を押さえながらよろめきながら立ち上がる。
━
「お……おぉお……痛ってぇ」
「おう、起きたか馬鹿やろう」
「な……なんで真希姉さんがここに居んの?」
「私も呪術師だからな」
「マジで!?」
「ま、呪術師つっても呪力はねぇけどな」
「え? そんな事あんの? 五条さ……五条先生がさっき呪力が無い人は居ないって」
「私は特殊なんだよ。まあ一応呪力は持ってはいる。一般人並みだけどな。
だから本来はこんなに強くねぇけど蓮兄が呪具師に造らせた呪具のお陰で強く成った、これは真依もだな」
「真依姉さんも居るのか……」
「私が居んだから真依も居るに決まってるだろ」
「まぁ、確かに」
「…………悠仁」
「? なんすか?」
「腹、痛くないの?」
「あー、今は収まりました。さっきはメチャクチャ痛かったすけど」
「(全力じゃないとはいえ、フィジギフの真希の攻撃喰らってこの程度ですむとかバケモン過ぎるでしょ。ハルなら何か知ってんのかなコレ)」
虎杖の頑丈さに驚き出生に何か有るのか疑問に思うも、答えは出てこなかった。
━
「ま、取り敢えず悠仁は夜蛾学長の試験に合格したから今から高専生だよ。先輩として手本になってね」
「その前に聞きたいんだけど、特級呪物………両面宿儺の指喰ったってのはマジか」
「あのクッソ不味ぃヤツか。学校で喰って、爺ちゃんの火葬中に五条さ……うんん五条先生から一本貰って喰ったから、今二本? かな」
「うん。でも凄いよね悠仁って」
「? 何がすか?」
「あんなキモいヤツを平気で喰えるんだもん。普通の人間はやんないよ」
「後先考えずに馬鹿な真似はやめろって蓮兄に何度も言われてたろ、お前」
「あー、……うんそう、ですね。ハイ」
「土下座」
「スンマセンした!」
「よろしい。後で真依にも殴られとけ、私より痛くねぇから良いだろ」
「うっ………ハイ」
「………やけに素直だね、悠仁」
「ガキん頃からの力関係だな。(つっても、日に日に目に見えて強くなる上硬ッてぇからこっちもこっちで大変たったけどな)」
真希の言うことに逆らわず素直に頷き、後にある真依からの叱責を想像し身を震わせる。
━
━━
━━━━
仁王立ちする真依を前に土下座した虎杖が「あの、その、スンマセンでした」と頭を下げる。それを見てタメ息をし、「次からは私達が居ないとこではしない事。良・い・わ・ね!」と釘を刺し、頭を下げたまま「ハイ、分かりました」と返事をする。
━
「貴方がここまで馬鹿とは思わなかったわ」
「ホントスンマセンでした、反省してます」
「またこんな馬鹿な事をしないように見張る必要があるわね、不必要な任務に行かせないようにしたいわ」
「真依、それだと僕達が困るんだよ」
「理由は?」
「悠仁は宿儺の指を探す
「なら私か真希を同行させれば良いじゃない」
「君達は一級だ、そんな呪術師を格下の呪霊祓除に行かせるのは出来ない。が、それも一つの案として考えてはいる。
君達先輩は
「なら確実に私達のどちらかを同行させて、案として考えてるなら別にいいでしょ?」
「んー、そうなんだけど……今年の一年は四人居る。
その内一人は恵だ、恵+三人いれば大抵の
「………なら一年生をツーマンセルにして私と真希を両チームに一人ずつ入れれば問題ないと思うのだけれど」
「やるとしたら暫く後かな、恵以外の三人がどれだけ戦えるのか見たい」
「暦なら問題ないわ。あの子、強いわよ」
「暦の事知ってんの?」
「あの子は兄さんが見つけてきた術師よ? 家に数年居候してたのよ、知ってるに決まってるじゃない。
それで? 暦の何が知りたいのかしら、具体的で、端的に言って」
「
何回かついてったけどマジで分からねぇ。分かったのは一級なのは確かって事だけだな、術式の事も聞いたけどよく分からねぇ。
だから術式の詳細、念のため等級は妥当なのかが知りたい」
「まぁ、そうよね。あの子の術式って分かりにくいわよね、それにあの子天才肌の感覚型だし。
先ず暦の等級から。素の状態なら一級の中の上から上の下。だから正当な評価ね」
「成る程。素の状態なら一級中の上以上、か。(
ハルが言うには天文学を基にした
「難しく考える必要はないわ、術式=
「恵と? なら式神使いなのか? 素の状態ってのは式神関連か?」
「概ね間違ってないわ。でも、式神使いなのか……と聞かれたらYESでもありNOね」
真依の言っている意味が理解できず間抜けな顔で「は?」と溢れた。
━
「ええまあ理解しがたいわよね、私も初めて見た時は理解出来なかったもの」
「イヤマジで意味不明なんだけど」
「暦の術式は月そのもの、月の満ち欠けが術式に作用する。そして月に関連するモノであれば暦の式神になるのよ、でも兄さん曰く『『式神』と言う表現をしているが、厳密に言えば式神とは少し違う』らしいわね」
「月に、関連するモノ……式神だが式神じゃない………」
「兄さんが言うには
「少なくとも………か。じゃあ二体以上居るとみていいか」
「兄さんも教えてくれないからこれ以上は知らないわよ。ああでも」
「でも? 何かあんの」
「新月の日を含めた前後二日間、計五日間ね……その中でも特に新月の
「新月の
「………あまり……他人の術式を話すものじゃないのだろうけど、ここまで話してるし今更ね。それに、暦の場合知っておいた方がいいから伝えておくわ。
新月の
「
今まで連綿と続く呪術界の常識を考えればの話であり、今の世代はその常識を壊した
━
「呪術界の常識なんてゴリラで崩れてるじゃない」
「それ言われるとぐうの音も出ないだけど」
「話を戻すわよ? 暦の術式は月の満ち欠けと密接に関係していて新月の
「術式そのものが奪い取る?」
「ええそうよ、術式が術式を使えるようにするために奪う。まるで意志があるみたいにいかなる
負の呪力も正の呪力も触れた相手から
例えば、呪霊に触れた場合は消滅する。流石に特級呪霊は消えなかったけど、準一級レベルまで弱体化したわね。
そして、奪った呪力に応じて身体能力が強化される。強化率は呪霊の等級に応じて変わるから特級呪霊の呪力を奪えば、呪力量だけで言えば特級でも遜色ないわね」
「呪霊の消滅に弱体化? しかも奪った呪力で自己強化して特級相当? ……あり得ねぇだろ……そんな事」
「それがあり得るのよ、兄さんも驚いてたわ」
「特級でソレなら一級以下はどうなんだよ」
「昔、兄さんから聞いた話だから今がどうか分からないけど、一級呪霊は弱体化したらしいわ。
一級呪霊の場合、大体準二級から三級くらいまで弱くなるんじゃないかしら? ああ勿論、暦より下の等級の呪霊なら問答無用で消滅するわね」
「それがあり得るのよ、兄さんも驚いてたわ」
「特級でソレなら一級以下はどうなんだよ」
「昔、兄さんから聞いた話だから今がどうか分からないけど、一級呪霊は弱体化したらしいわ。一級呪霊の場合、大体準二級から三級くらいまで弱くなるんじゃないかしら? ああ勿論、暦より下の等級の呪霊なら問答無用で消滅するわね」
「(呪霊の………消滅、それに弱体化? そんな術式が本当に在る……のか?)
「
「はぁ!? 呪力だけでもやべぇのに術式奪うとかあり得ねぇだろ」
「うっるさいわね。
それに、奪うためには触れる必要が有るし、奪えられるのは一時的だから問題無いわよ。(まあ今どれだけの時間奪えるのか分からないし、兄さんが拡張させたからどうなっているか分からないけど)だから誰彼構わず……て、訳じゃないから安心していいわよ。
「なんで」
「兄さんに鍛えられたのよ? 範囲を広げられるようにするに決まってるじゃない」
「ああ確かに、ハルならそうするか。それは
「ええ。だから暦と戦うなら遠距離での戦闘を強いられるわ。私ならともかく、他はねぇ」
「……聞きたくねぇけど、なんかあんの」
「貴方と同じような感じ、かしら」
「俺と? …………無限の壁か?」
「シン・巌流の簡易結界は知っているでしょ?」
「そりゃあ知ってるっての。……まさか」
「えぇ、暦もソレを習得してるから被弾時に展開して周囲の
「それ反則だろ誰も攻撃できねぇじゃん」
「貴方がそれを言うの?
はぁ、条件付きだから安心なさい。さっき言った通り
「それでも充分反則だろ。まあでも条件が有るだけマシか」
「ああそれと、触れられる………つまり殴られたりしたら
弱点……と言う程じゃないけれど、呪霊の場合だと弱体化には下限が有る。一定値まで弱体化したらそれ以上は弱体化しない。
だから誰かが居た方がいいのかもしれないけれど、まああの子
「……反則過ぎんだろ、その術式。
新月のに近い
ん? 呪霊の場合って事は……」
「術師は触れられる度に無くなるまで呪力を奪われるわね。術式剥奪は暦が決められるから、いつ奪われるのか分からないから気を抜けない。
でもあくまで新月の日含めた五日間限定よ。だから他の日はそこまで……そこまで脅威じゃないわ」
「言い淀んでんじゃん。何か有りますって言ってるようなもんでしょソレ」
「……あの子の術式は『術式=月相』。
新月の日が0でそんな能力に成るのなら、上弦の月は? 下弦の月は? もし、満月の日ならどうなるのかしらね」
「月の……満ち欠け。新月の日は0に近い……呪力が増えていくのか」
「ええそうよ。兄さん曰く『満月の日であれば呪力量・呪力出力は乙骨憂太に比肩する』らしいわよ」
「ウッソだろおい」
晴蓮が語った『満月の日は乙骨憂太に比肩する』と言う発言。五条悟と付き合いの長い晴蓮がそう言ったのだ。
何故なら乙骨憂太の呪力量は『最強』の名を冠する五条悟以上である事は高専生の間では周知の事実。満月の日は『現代の異能・乙骨憂太』に比肩する
彼が術式を扱いこなせれば『呪術界の最上位に与する術師である』と言っているのと同じなのた。
━
「暦の術式は呪力量・出力の増減、それに伴う式神擬きの性能上昇。
でも、兄さんは式神擬きを使うより呪力を大砲よろしく撃った方が強いって言ってたわね。
まああの子の性格だとそんな戦い方はしないでしょうね。『
あの子ってなんだかんだ兄さんに感化されてあの性格なのに近接戦を好むから戦闘ってなったらシン・巌流での近接戦をするわね」
「呪力量・出力の増減…………シンプル・イズ・ベスト、か。式神擬きは+α程度だな。拡張術式は?」
「兄さん拡張するの大好きだものね。させてはいるみたいだけどどうなのかしらね。私は知らないわ。
勿論、私が知らないだけで何か拡張術式があるかもしれないわね」
「ハルなら造らせてそうだよな、術式の拡張は得意分野だし」
「そうね。実際、一景もさせてるし」
「え、マジで?」
「させるに決まってるじゃない、兄さんよ? 一応私にも拡張術式あるし……あれが拡張術式なのか分からないけれど」
「あ、やっぱ出来んだ」
「当たり前よ、小さい頃から兄さんに呪術の手解き受けているんだもの、出来るわよ」
「構築術式の拡張術式とか想像も出来ねぇんだけと」
「そうねぇ………正直私もあれが拡張術式なのか微妙なところなのよね」
「どんな感じよ構築術式の拡張術式って」
「先ずは『構築』とはなんなのか……拡張術式を造るためにはここからスタートする。
で、『構築』とは『多くの要素や部品を計画的に組み立てて、しっかりと形を作り上げる』事。
私が基本的にしている事は銃弾の構築や折れた刀身の再構築。
この時、兄さんが着目したのは『再構築』が出来る事。『再構築が出来るのなら、呪具の要素や部品、材料を想定して基本一点物の呪具も構築出来るのではないか』……って」
「……つまり、呪具を複製出来るってのか?」
「そうね。でも出来ても一級呪具までしか無理ね、私の技術だと一級が限界なのよ。
多分兄さんが構築術式だったなら特級呪具でも複製出来るんでしょうね」
「マジかよ……」
「ぶっちゃけ反則よね、私でも思うわ」
「あのー……」
「ああそう言えば居たわね貴方」
「構築術式とか拡張術式? とかThis is何?」
自分の存在を忘れられ内容が分から無い話をされ置いてけぼり状態で、尚且つ専門用語が飛び交う二人の会話に漸く待ったをかける。
━
「…………そこからなの?」
「イヤイヤ、一応説明はしたよ?」
「……どうやって?」
「
「それは説明になってないと思うのだけど。
はぁ……じゃあ構築術式の事から話すわね」
「ウス、お願いします」
「構築術式、これは私の生得術式よ。
じゃあ生得術式とは何か。これはこの人………五条先生が才能と言った意味は術式が、『術師が生まれつき身体に刻まれている先天的な超自然能力』だからよ。呪力がどれだけ多くても身体に術式が刻まれていなければ術式は使えない。
電気と家電の話をしたのはそう言う事でいいのかしらね。
次に拡張術式。こっちは生得術式を自分の解釈で出来る幅を後天的に増やす事よ。
どちらにせよ、生得術式が無いと拡張術式も造れないわ。
それで? 悠仁に生得術式は?」
「無いね」
「………ま、まあ一般人だったものね」
「ソレあの爺さんに言える?」
「だから貴方はノンデリって言われるのよ」
「まあいいわ。ねぇ、悠仁」
「はい」
「悠仁には呪術が刻まれていない、つまり悠仁は術式は使えない。それに、見たところ呪力操作も覚束なさそうね」
「そりゃ最近になって呪力を知ったからね、操作云々はこれからだよ」
「どうするつもりなの?」
「学長の人形使う」
「ああ成る程、アレを使うのね。昔世話になったわ」
「まあでも、その前に実践かな」
「逆じゃない? ソレ」
「どれぐらい強いか見てみたいし」
「………兄さんに怒られるわよ」
「あー……まぁ、なんとかなるでしょ」
「(後で兄さんに伝えておいた方がいいわね)そう、私はこの後任務があるから行くわ。
悠仁、馬鹿な真似はしない事。いいわね」
「ウス」
言いたい事を言いきったからか、返事を見届け踵を返し校庭に消えていった。
━
構築術式の拡張術式は某赤い弓兵の投影(偽)になる模様。
━━
基本的に真希、真依コンビの五条への対応は塩対応です。子供の頃からの付き合いですので。
━━
シン・巌流には、簡易領域と簡易結界の二種類あります。シン・巌流:簡易領域はシン・陰流と同じ、自身を中心に術式を持たない結界術です。
シン・巌流:簡易結界は自身を中心に術式を持たせた結界術です。
つまり直哉くんが目指す場所ですね。
━━
呪霊云々は勝手に考えました。