覇気使いのヒーローアカデミア   作:はたやま

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ようやく…書けた…_| ̄|○(ガクッ)

最近忙しすぎて投稿が遅れてしまい申し訳ないです。そんな中でもお気に入り登録2600突破など、たくさんに人に呼んでいただいたことが何よりの励みでしたm(_ _)m

それと一つだけ宣言というか知っておいて欲しいことがあります。
この作品所々で細かい時系列がズレていることがあります(気づいてる人もいるかもですが)がその場合はオリ主が居る影響で多少ズレてんだなぐらいでお考えいただきたいと思います。
個人的に多少その辺の融通をきかせた方が色々書きやすくなったりもするので…

それでは本編どうぞ!


第1種目 障害物競走

雄英体育祭まで残り1週間、ヒーロー科の生徒たちは本番で結果を残すべく各々訓練を重ねていた。

 

じいちゃんに捕まった俺たちも例外ではなく、俺ん家に出久が泊まり込んで朝から晩まで訓練をこなしているわけなのだが──

 

「………」

 

「………」

 

2人とも既に燃え尽きそうになっていた。

 

出久はじいちゃんの訓練が初体験の分余計にしんどいだろう。

 

「…大丈夫か出久?」

 

「…なんとか。猿渡君凄いね、中学3年間ずっとこんな訓練をこなしてたなんて。」

 

「安心しろ、俺もかなりキツい。あのジジイの訓練は常に限界の一歩先を越えられるように作ってあるからな、慣れなんて概念は捨てた方がいい。」

 

登校までの朝の時間で体力トレーニング。学校が終わって夜は個性を使ったじいちゃん相手の実戦訓練。この訓練をやるためにじいちゃんは近くの山を買って私有地にしてやがった…また変な噂が立たなきゃいいけど。

 

「そういや出久、()()は完成しそうなのか?」

 

「実戦で試せてるおかげでだいぶ感覚は掴めてきたよ。この調子なら本番までには何とかなりそう。猿渡君はどう?」

 

「俺も似たようなもんだな。形にはなってるからあとはどこで使うかだと思う。」

 

お互い本番のための秘策も用意した。だがそれと同様にヒーロー科全員が体育祭のために己を鍛え上げている。油断なんて微塵もできないだろう。

 

「とはいえ今日の授業も何とか乗り越えた。いつまでもへばってても仕方ねぇし、さっさと俺ん家戻って夜までに少しでも休んどこうぜ。」

 

「そうだね…というか、なんか騒がしくない?」

 

「言われてみれば確かに。」

 

疲れに気を取られてて気づいてなかったが廊下に人だかりができているらしい。

 

「何事だ、君たちA組に何か用か?」

 

「んだよ、これじゃ出れねぇじゃんかよ!」

 

「敵情視察だろ雑魚。敵の襲撃を耐え抜いた連中を本番前に見ときてぇんだろ。」

 

爆豪のあんまりな物言いに峰田が絶句する。『かっちゃんはあれがニュートラルなので』と出久がフォローを入れるもその程度では中和できないクソっぷりだ。

 

「そんなことしても意味ねぇから、どけモブ共。」

 

「知らない人のことをとりあえずモブって言うのをやめないか!」

 

「…噂のA組、どんなもんかと見に来たが随分偉そうだな。」

 

人混みの中から1人の男子があゆみ出てくる。顔に見覚えがないあたりおそらくは普通科の生徒なんだろう。

 

「ヒーロー科に在籍するやつはみんなこんななのかい?」

 

「いや本当にすまん。こいつ気性の荒さと性格の悪さが限界突破してるんだ。全員がこうなわけじゃない。」

 

「でもこういうのもいるってなると少し幻滅しちゃうな。…普通科とか他の科って、ヒーロー科に落ちたから入ったってやつ結構いるんだ、知ってた?」

 

「…話には聞いてるよ。」

 

そう、雄英高校ヒーロー科の入試は国内最難関。どれだけ努力を重ねても、1万人を超える中からたった40人の枠を勝ち取れずに別の道へ進むことを余儀なくされる者がほとんどなのだ。

 

「そんな俺らにも学校はチャンスを残してくれてる。体育祭の結果(リザルト)によっちゃ、ヒーロー科への編入を検討してくれるってさ。その逆もまた然りらしいよ。」

 

クラスメイトに僅かに緊張が走る。確かに相澤先生でなくとも、絶好のアピールの場でなんの準備もせず結果も残せなかった者に貴重なヒーロー科の席次を与えるほど雄英は甘くないだろう。

 

「敵情視察?少なくとも俺は、いくらヒーロー科だからって油断してると足元ごっそり掬っちゃうぞつう宣戦布告しに来たつもり。」

 

大胆不敵。目の前の男は入試実技1位を前にして全く恐れることなくそう言ってのけた。

 

「おうおうおう、隣のB組の者だけどよ、敵と戦ったっつうから話聞こうと来てみれば…随分と調子づいちゃってんなおい!」

 

大胆不敵その2。今度はB組の生徒を名乗るイカつい顔した鉄色の髪の男子が殴り込んできた。

 

「あんまりでけぇ口叩くと本番で恥ずかしい思いすんぞ!」

 

「……」

 

「おいコラ無視かテメェ!」

 

「待てコラ爆豪!どうしてくれんだ、お前のせいでヘイト集まりまくってんじゃねぇか!」

 

「…関係ねぇよ。」

 

「は?」

 

「上に上がりゃ関係ねぇ。」

 

そう言い残し爆豪はその場を去っていった。

 

…まぁ、言葉選びは下の下の下だが、言ってることは何も間違っちゃいないよな。

 

「お前、名前は?」

 

「…C組の心操人使。」

 

「そっか、覚えとく。まずはこの場の全員にうちの問題児が不快な思いをさせたことを謝らせてくれ。…でも、言い方はあれだがあいつの言ってることは間違いじゃないと思ってる。」

 

「……」

 

「お前らからすれば調子に乗ってると思われても仕方ないかもしれん。でも俺たちにだってあの入試を潜り抜けて、奇跡的にとはいえ敵の襲撃を乗り越えたっていう自負はあるんだよ。」

 

「…それで?」

 

「その宣戦布告受けて立つ。悪いがトップに立つために俺たちも全力だ、全員首洗って待っとけ。」

 

目を見て、気配を感じて分かった。心操(こいつ)は本気で俺たちを食ってヒーロー科への道を切り開こうとしてる。

 

そんな相手に『お互いベストを尽くそう!』なんて綺麗なだけのセリフを吐きたくはなかった。

 

「…まぁ、頑張らせてもらうよ。」

 

そう言って心操は去っていき、野次馬たちも徐々に散っていった。

 

「悪いみんな、余計に火に油を注いじゃったわ。」

 

「真正面から啖呵を切る、お前も爆豪も漢らしいじゃねぇか!」

 

「猿渡って冷静そうに見えてかなり好戦的なとこあるよな。」

 

「上に上がれば関係ない…確かに一理あるな。」

 

「いやいや騙されんな!無駄に敵増やしただけだぜ!?」

 

「そうだそうだ!おいらたちが不利になるだけじゃんか!」

 

「おいおい、種目によるが本番になりゃ他クラスどころかクラスメイトでもライバルだぜ?今更そこびびってどうすんだよ峰田。」

 

そう、他クラスだけじゃない。本番ではここまで研鑽しあってきたこいつらとも競うことになる。

 

一部泣き言を言ってる奴もいるが、土壇場になればどいつもこいつも油断ならんやつばっかりだ。特に──

 

「…ん?どうしたの猿渡君。」

 

「いやなに、改めて体育祭に向けて頑張ろうぜ、出久。」

 

「…うん!」

 

手強いやつは沢山いる。だけど、一緒に訓練しているからこそ分かる。出久の成長速度ははっきり言って異常だ。

 

爆豪みたいな天才型ではないが、一日の訓練で得たものを確実に次に活かして昨日の自分を超えてくる。気づいた時には1週間前とは比べ物にならんほどの力をつけていた。

 

俺は…そんなお前とも本気で戦いたいと思ってるよ。

 

そうして時間はあっという間に流れ、俺たちはついに体育祭当日を迎えた。

 

*

1年A組 控え室

 

「あーあ、やっぱりコスチューム着たかったな。」

 

「こればっかりは公平を期すためだからしゃーねぇわな。」

 

全員が体操服に着替え、控え室で開始のときを待っていた。大なり小なりみんな緊張してるみたいだが、各々準備は万全といった雰囲気だ。

 

「緑谷。」

 

「え、轟君?」

 

普段あまり他人と話さない轟が出久に話しかける。その珍しい光景に、クラスメイトの注目が集まった。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う。」

 

「う、うん。」

 

「けどお前、オールマイトに目かけられてるよな。」

 

「…!」

 

「そこ詮索するつもりはねぇが…お前には勝つぞ。」

 

「おお、A組トップクラスの実力者がまさかの緑谷に宣戦布告か!」

 

「それと猿渡、お前もだ。」

 

「お?」

 

「戦闘訓練の時の借りはここで返すぞ。」

 

「へぇ…」

 

出久に続いて俺にも宣戦布告…これは楽しみになってきた。

 

…けどなんでだろうな、ただの対抗心だけじゃない、戦闘訓練の時に感じた憎しみみたいな感情も混じってるのは。

 

「おいおいどうした、こんな直前に喧嘩腰になって。」

 

「別に仲良しこよししに来てんじゃねぇんだからなんでもいいだろ。」

 

「…轟君が何を思って僕に勝つって言ってんのかはわかんないけど。」

 

「緑谷?」

 

「そりゃ客観的に見ても君の方が圧倒的に強い…それどころか直接戦えばクラスの大半の人には勝てないと思う。」

 

「緑谷もどうしたんだよ、そんなネガティブなこと──」

 

「でもみんな、他の科の人だって本気でトップを取りに来てる。僕だけ遅れをとるわけにはいかない。…だから、僕も本気で取りに行く。」

 

「…おう。」

 

緊張しながらも轟の目を見据え、はっきりと宣言した。ここまでの訓練は、確実に出久の中で自信に変わりつつあるらしい。

 

…それに、競技が始まりゃ全員がこいつの成長に度肝を抜かれるだろうさ。

 

「よし、そろそろ入場の時間だ。皆行くぞ!」

 

『おう!』

 

*

 

『ヘイっ!刮目しろオーディエンス!群がれマスメディア!今年もお前らの大好きな高校生たちの青春暴れ馬、雄英体育祭が始まエビバディ!』

 

会場から地鳴りのように響く歓声、例年であれば積み上げてきた経験と才能の集大成となる3年生ステージが最注目となるのだが、今年は違っていた。

 

『ヒーローの卵たちが我こそはと鎬を削る、年に一度の大バトル!注目してんのはどうせあれだろ、こいつらだろ?敵の襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!』

 

『ヒーロー科1年A組だろぉ!!』

 

通路を抜けて会場に足を踏み入れる。マイク先生の煽りにより、ただでさえ高かった観客の期待値が期待値がさらに跳ね上がったような気がする。

 

「ひ、人がすんごい…!」

 

「大人数に見られた中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…これもまた、ヒーローとしての素養を身につける一環なんだな。」

 

「めちゃくちゃ持ち上げられてんな。なんか緊張するな爆豪?」

 

「しねぇよ、ただただアガるわ…!」

 

「珍しく同意だ、ワクワクしてきた…!」

 

『さぁ続いての登場は、話題性じゃ遅れを取るがこちらも実力者揃い。1年B組だァ!』

 

そう、警戒すべきはA組だけじゃない。イレギュラーに阻まれることなく、正規のカリキュラムによって着実に力をつけてきたB組も油断ならない相手だ。

 

ヒーロー科以外にもついこの前の心操みたいなやつもいるかもしれん。

 

満員御礼の大観衆、各クラスの強者たち…実力を示すのに申し分無し、文字通りの最高の舞台ってわけだ。

 

その後普通科、経営科、サポート科の入場を終え、1年生全クラスの入場が完了した。

 

「選手宣誓!」

 

「1年生ステージの主審はミッドナイト先生か。」

 

「相変わらずなんちゅうコスチュームしてんだ…」

 

「さすが18禁ヒーロー…」

 

「18禁なのに高校にいてもいいものか?」

 

「いい!」

 

「ほらそこ、静かになさい!…選手代表爆豪勝己君、前に!」

 

告げられた名前にざわめきが起こる。先日の宣戦布告で知れ渡ったのもあるが、どう考えても人選ミスではないかと誰もが思ったからだ。

 

「ええ!?かっちゃんなの…?」

 

「あいつ一応入試1位だし、選ばれる理由はあるからな…」

 

「それ言ったら猿渡だって同じだろ、なんでお前じゃないんだよ!」

 

「最初は頼まれたけど断った…こっちの方が俺らのためになると思ってな。」

 

「どこがだよ!またなんかやらかすぞあいつ!」

 

上鳴の言う通り、もう既に他クラスからの敵意が半端ないことにはなってるが、これでいい。

 

…みんなには話さないが、あの爆豪が悪態つきながらも()()()()()()()()()ぐらいだからな。この宣誓はあいつにとって重要なものなんだろう。

 

周囲から段々とざわめきが消え、壇上の爆豪に注目が集まる。そして──

 

「宣誓、俺が1位になる。」

 

ある意味期待通りの発言にクラスメイトは言葉を失っていた。そして巻き起こるブーイング。これで他クラスが全てA組を目の敵にすることが決まっただろう。

 

「せいぜい跳ねのいい踏み台になってくれ。」

 

「なぜわざわざ品位を落とすようなことを言うんだ!?サムズダウンをやめたまえ!」

 

「どんだけ自信過剰だよ!この俺が潰したるわ!!」

 

確かに傍から見ればただの挑発だし、実際煽ってるのは違いないんだろう。

 

でもあの宣誓の本当の意味は、()()()()()()()()()なんだろうな。

 

……まぁ普通同じことをしたとしてももっといい言葉選びをするんだろうが。周りの飛び火もお構い無しなのが実にあの男らしい。

 

「さーて、それじゃ早速始めましょ!毎年多くのものが涙を飲む予選第1種目、今年はこれよ!」

 

『障害物競走』

 

ミッドナイト先生の背後にある巨大モニターに映されたルーレットが回転し、競技名が映し出される。

 

「全11クラス参加のレース。コースはこの1年生ステージの外周4km…そして我が校は自由な校風が売り文句、コースさえ守れば()()()()()()()()()()わ!さぁ位置に着きまくりなさい!」

 

ミッドナイト先生の指示の元、全員がスタート位置となるゲート前に集まる。

 

いよいよだ。入学してからたった数ヶ月、それでもその中で得たものを発揮する…どうせどっかで見てんだろじいちゃん、だったらよく見てろ。

 

カウントダウンが進んでゲート上のランプが消えていき──

 

「スタート!!!」

 

先生の合図と共に闘いの幕が開けた。

 

*

 

『さぁ実況していくぜ!解説アーユーレディミイラマン?』

 

『無理やり呼んだんだろうが…』

 

『つれねぇこと言うなよ!早速だが序盤の見どころはどうだ?』

 

『…今だよ。』

 

ゲート内の通路はかなり広い作りになっているが、1クラス丸々同じとこから出ようとすればそこは押合い圧し合いの大渋滞となっていた。

 

「いてぇ!?」

 

「おい押すなよ!」

 

「この状況、スタート地点がもう既に…」

 

「最初のふるいってわけか…来るぞ!」

 

この状況、あの男なら確実に手を打ってくる。その予測は的中し、集団の中から冷気が迸った。

 

「悪いな、先いくぞ。」

 

冷気を放った張本人、轟が悠々と先頭に躍り出る。地面が足ごと氷によって固められ、8割の生徒が足を止められていた。

 

「はぁっ!」

 

「ふっ!」

 

「どりゃああっ!」

 

しかしこの程度で行動不能になるほどヒーロー科は甘くない。全体の約2割、中でもA組のほとんどの人間が轟の奇襲を回避していた。

 

「甘いわ轟さん!」

 

「そう上手く行かせねぇぞ半分野郎!」

 

各々の個性を活かし轟に追随するクラスメイトたち。──その中でも異彩を放つものが2人いた。

 

「待てやコラ!」

 

「行かせないよ、轟君!」

 

*

 

2週間前

 

じいちゃんが新たに私有地にした山の中で拳一と出久の特訓が始まろうとしていた。

 

「さて、今日から特訓を始めるわけじゃが、まずは現状確認といこうかの。出久よ、お前今OFAをどこまで扱える?」

 

「えと、つい最近体を壊さない範囲での調節は身につけました…体感で5%くらいの出力ですけど。」

 

「話に聞いていたよりは進歩しているな。なら、それを踏まえてこれからどうするべきだと思う?」

 

「現状だと殴る時に腕を強化するだけなので、これを移動の時に足を強化、殴る瞬間に腕を強化…っていう風に強化する箇所の切り替えができるようになれればと思っています。」

 

「ダメじゃな、それでは遅すぎる。」

 

「なっ…」

 

「切り替え、という発想そのものは間違っておらん。じゃが使いどころがまちがっておるな。拳一、手本を見せてやれ。」

 

「うす!」

 

いつものように覇気で身体能力を強化、前方に加速し、攻撃の瞬間に武装色により硬化した拳で岩を打ち砕いた。

 

「自分の発想と何が違うか分かるか?」

 

「……あっ、そうか!猿渡君は強化の箇所を切り替えてる訳じゃない、初めから全身を強化して、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のか!」

 

(思った以上に飲み込みが早いな。)

 

「そうか、そうだよな、よくよく考えればオールマイトだって同じだ。常に全身を強化しつつ瞬間的に出力を上げる…オールマイトが常に100%で動いていたら周囲は暴風で大災害になるはずだし…猿渡君にしたって、こんな近くで見てたのになんで気づかなかったんだ。」

 

「言うは易しじゃ、まずは全身を常に5%の力で強化することを身につけろ。それができればこれまでのお前とは一線を画すことになる。」

 

「はい!」

 

「さて、次は拳一じゃな。」

 

「つっても定期連絡で結構細かく報告してるし、今更確認することあるか?」

 

「1つだけな、これは今回の特訓とは関係ないことじゃが…お前また3()()()が出たらしいの?」

 

「3つ目…ああ、『覇王色の覇気』のことか。」

 

「覇王色?」

 

「なんじゃ、いつの間に名前を付けとったのか。」

 

「クラスのやつが考えてくれてさ、気に入ったからそう呼ぶことにした。」

 

(このセンス…多分常闇君かな?)

 

「まぁそれならええわい…してその覇王色とやら、今は出せるか?」

 

「……」

 

目を閉じて意識を集中させる。思い起こすのはあの時の場面、心の底から溢れた許せないという強い怒り、それを放出するイメージ──

 

ゴオッ!!!

 

「っ…!?」

 

「……」

 

「──うん、かなり集中しなきゃだからタメは長いけど、出すことはできる。ただ今のままじゃコントロールもできないし、そもそも発動したところでできるのは精神力の弱い相手を気絶させるってことしかわかってないしな。」

 

「USJでも見たけど、凄い威圧感だ…」

 

「なるほどのう…覇王色についてはわからんことほうが多い。とりあえず扱えることだけわかっておるなら今はええじゃろ。それに、今回お前に教えることはもう決めておるしな。」

 

そういうとじいちゃんは少し離れた木に向かって構えを取り、右手に覇気を集中させる。そして──

 

「はぁっ!」

 

拳が振り抜かれ放出された覇気が目の前の木に命中し、半ばからへし折られた。

 

「さて、目の前で実践したわけじゃが…今ので教える内容はわかったか?」

 

「…覇気の放出を覚えろってことか。」

 

「そうじゃ。これができるようなればあらゆる行動に応用が利く。ワシの拳骨衝突(ギャラクシーインパクト)もこの技術の延長にある技じゃ。」

 

なるほどな。確かに今思いつくだけでも色々できそうな技術だ、これは意地でも身につけなきゃならんだろう。

 

「さぁ時間が惜しい、早速今から実戦といくぞ!」

 

「いきなりですか!?もう少し練習とかしてからのほうが…」

 

「悪いな出久、猿渡ズブートキャンプは基礎トレと実戦しかメニューがない。戦いながら慣れてくれ。それに喜べ、今なら殺す気で殴りかかっても倍にして返ってくるサンドバッグ付きだ。」

 

「それは喜んでいい事なのかな!?」

 

「ごちゃごちゃ言うとらんとかかって来い!来ないならワシから行くぞ!」

 

「上等だクソジジイ!行くぞ出久!」

 

「う、うん!」

 

*

 

『おいおいどうなってんだ!?猿渡が空中を飛んでるし、緑谷のあんな動きも見たことねぇぞ!!』

 

『…ああ、担任の俺も初めて見る。』

 

(あれから実践の中で定着させた、OFAの全身常時5%の強化──OFA(ワンフォーオール)フルカウル!いける、いけるぞ!)

 

(足から覇気を放出することで実現させた空中歩法、名づけて月歩(げっぽう)弾丸みたく飛ばすことまではできなかったが、これだけでも充分強い!)

 

「やっぱ一筋縄じゃ行かねぇか。」

 

方や氷を踏み砕きながら今までにない加速を、方や今までにない空中機動を発揮したことで彼らをよく知るクラスメイトはレース中にも関わらず驚愕していた。

 

「デク君も猿渡君もなんそれ!?」

 

「ここに来て骨折克服かよ緑谷…!」

 

「猿渡に関しては空中機動かよ、ずりぃな!」

 

最初のふるいは超えた。だがレースは始まったばかり、この程度は障害ですらないことを思い知らされることとなる。

 

「轟の裏をかいてやったぜ!イケメン許すまじ!必殺グレープ──」

 

『ニンゲン、ジャマ。』

 

「ぐっはァァァァ!?!?」

 

「みっ、峰田ぁ!?」

 

『おおっとここで最初の障害物!さぁ手始めの第1関門「ロボインフェルノ」だ!』

 

峰田を吹き飛ばしながら現れたのは入試の時に戦った仮想敵、そして何よりの障害物となっているのは。

 

「入試の時の0Pギミック!?しかも何体もいやがるぞ!」

 

「マジか、ヒーロー科あんなのと戦ったのかよ!?」

 

「一般入試用の仮想敵ってやつか。」

 

0Pギミックだけでなくその他のロボまで大量に配置され行く手を阻む。

 

「せっかくならもっとすげぇの用意して貰いたいもんだな。」

 

巨大な腕が轟に向かって振り下ろされ、そのほかのロボも攻撃を開始した。

 

「クソ親父が見てるんだから。」

 

──一瞬の静寂、ビルを丸々覆い尽くす程の氷結は瞬く間に巨大ロボを物言わぬ氷像へと変えた。

 

「まじかよ、ヒーロー科やっべぇ…」

 

「あいつが止めた今のうちだ、足の間から抜けるぞ!」

 

「やめとけ、不安定な体勢の時に凍らせた。倒れるぞ。」

 

宣告通り氷漬けのロボは体勢を崩し、後方の生徒へと倒れ込んだ。これで轟は、集団からの一抜けと妨害を同時に達成する…はずだった。

 

「行かせるかって言ってんだろ!」

 

地面蹴る瞬間に覇気を放出、これまで以上の鋭い加速により倒れるロボに接近。

 

猛牛星衝突(アルデバランインパクト)!」

 

トップスピードから放たれた飛び蹴りは、そのまま巨大ロボを粉砕し、ロボたちに囲まれていた状況に風穴を開けたのだった。

 

『巨大ロボ氷結からの一撃粉砕!!お前の生徒ヤベェなイレイザー!』

 

『轟の判断は合理的だったが、相手が悪かったな。ああいう妨害を真正面から突破するだけの力が猿渡にはある。』

 

包囲に巨大な穴は空いた。しかしそれを埋めるように、小型のロボが殺到する。

 

しかし先に突破した2人に感化されてか、ヒーロー科の生徒たちが次々に関門攻略に動き出した。

 

「下がダメなら上からだろ!」

 

「爆豪お前こういうの正面から行きそうなのに避けるのね!」

 

「便乗させてもらうぞ!」

 

爆豪、瀬呂、常闇が巨大ロボの頭上を飛び越え突破。

 

「はぁっ!」

 

「くらえ!」

 

「解除!」

 

飯田、上鳴、麗日が小型ロボを撃破し方位を突破。

 

そして

 

「僕だって、入試の時とは違う!」

 

フルカウルにより全身を強化、目の前に立ち塞がった3Pロボに向かって緑谷が突撃した。

 

(攻撃の一瞬だけ出力を切りかえ、5%から10%に!)

 

「インパクト10% デトロイトスマッシュ!」

 

ロボの攻撃を持ち前の予測によって回避、カウンターの拳叩き込んで破壊した。

 

「よし!」

 

怪我を負うことなく関門を突破。ガープ相手の実戦訓練により、瞬時の出力切り替えまでマスターした緑谷にとって仮想敵はもはや障害とはなりえなかった。

 

(いやいや…いくらなんでも成長しすぎだぜ少年!)

 

教員用の観客席から見ていたオールマイトは弟子の予想以上の成長に人知れず震えていた。

 

(ガープ先生が修行をつけると言った時はどうなるかと思ったが…全身の強化に加えて、瞬間的な出力の切り替えまで身につけるとは…ああもう、師として嬉しいやら不甲斐ないやら!)

 

『さぁさぁレースはまだまだこっからだぜ!先頭集団は早くも第2関門を攻略中!誰がトップでゴールするんだ!』

 

大多数が第2関門に到達する中、1位争いが佳境に入ろうとしていた。

 

*

 

「待てコラ半分野郎!」

 

「逃がさねぇぞ轟!」

 

「猿渡に加えて爆豪まで上がって来たか。」

 

轟の背後から迫る拳一と爆豪。だが空中機動の練度の差から拳一は徐々に爆豪から引き離されつつあった。

 

(空中じゃまだこいつにスピード負けする。第2関門は突破したからこっからは走りで…)

 

『おおっと、ここで先頭集団が最終関門に到達!広がってんのは地雷原だ!地雷の場所はよく見りゃわかるようになってるぞ、目と脚酷使してけ!』

 

「ここに来て地上ガン不利とかふざけんな!?」

 

『ちなみに地雷は競技用だから威力は控えめだが、音と衝撃は派手だから失禁必至だぜぇ!』

 

ここまで氷結を利用して進んでいた轟も、後続への道を作るリスクを考え慎重に地雷原を進まざるを得ない。

 

「俺には関係ねぇ!」

 

しかしそんな隙を爆豪(この男)が逃すはずがない。

 

「おいコラ半分野郎!てめぇ宣戦布告の相手を間違えてんじゃねぇよ!」

 

『ここでトップが入れ替わった!お前ら好みの展開だぜオーディエンス!』

 

爆豪が轟を捉えもつれ合う。このまま2人によるトップ争いが──

 

「待、て、や、てめぇらァ!」

 

爆発音を響かせながら拳一が追いつく。空中機動のスピードでは爆豪には敵わない。ならばと地上を走る際、身体強化に合わせて地面を蹴る瞬間に覇気の放出を行うことで瞬発力を底上げし、()()()()()()()()()()()()()()()()という荒業で2人に食らいついた。

 

『ここで猿渡も参戦だァ!こっから3人によるデッドヒートが──』

 

BOOOM!!!

 

「はぁっ!?」

 

「あぁ!!」

 

「くっ!」

 

『偶然か故意か、ここでまさかの緑谷が爆風を利用して猛追!?』

 

視線を向けた先にはこれまでとは比べ物にならない大きさの爆煙が立ち込め、その中から仮想敵の装甲らしきものにしがみついた緑谷が吹き飛び、3人の頭上を超えて行った。

 

(ここまではいい、後は着地の瞬間!)

 

一気に先頭に躍り出る緑谷、しかしトップ争いをしていた3人が互いの牽制を止め猛追してくる。

 

「俺の前を行くんじゃねぇ、デク!!」

 

(後続に道作っちまうが、気にしてる場合じゃねぇ!)

 

「たとえお前でも譲る気はねぇぞ出久!!」

 

3人が妨害を止めて猛追を開始、爆風の勢いが落ち、着地する緑谷の横を一気に駆け抜け──

 

「ここだ!!」

 

4人が並んだ瞬間に緑谷が空中で前転、勢いを利用し装甲を地面に叩きつける。

 

BOOOM!!!

 

『なんと緑谷、間髪入れずに後続を妨害した!お前のクラスすげぇなイレイザー、どんな教育してんだ!』

 

『俺は何もしてねぇよ。あいつらが勝手に火つけ合ってるだけだ。』

 

『雄英体育祭1年ステージ、この展開を誰が予想できたか!今1番にスタジアムに帰ってきたその男──緑谷出久の存在を!!!』

 

*

 

「はぁっ…はぁっ…あーくそっ、やられたな。」

 

結果は4位、最後の爆発からの立て直しに手間取って轟と爆豪に追いつけなかった。

 

「…ほんとにすげぇな。」

 

決して侮ってたつもりはなかったんだけど、まだまだ俺は出久のことを見誤ってたらしい。まさかあんな追い抜かれ方するとは思ってもみなかった。まぁ、それはそれとして──

 

「おいおい、まだ予選だぜ。こんなところで泣くやつがあるかよ。」

 

「猿渡君…」

 

「1位おめでとう、でも次は勝つからな。」

 

「…うん!」

 

そう、まだ予選。これで優勝が無くなったわけじゃない。ここから先が本当の──

 

よくやったぞ出久!それに比べて何やっとんじゃ拳一!

 

突然観客席から聞き覚えしかない声が耳をつんざいた。視線を向けると想像通りの人間がそこにはいた。

 

「最後の立て直しに時間かかりすぎおって!あれがなきゃ逆転もあったじゃろ!」

 

「だが緑谷君の機転も見事だったではないか。見応えのあるレースだったぞ拳一!」

 

「観客席で叫ぶんじゃないよ全く。惜しかったね、次も頑張んな。」

 

「じいちゃん!それにセンゴクのおっちゃんとつるさんも!」

 

じいちゃんはどこかで見てるだろうと思ってたけど、まさか3人揃って見に来てくれるとまでは思ってなかったな。

 

「なんだあのじいさんたち?」

 

「馬鹿口を慎め!お前あの3人が誰だか知らないのか!?」

 

「いや、まったく…」

 

「それでもプロかよ!彼らはガープ、センゴク、おつる、オールマイトが台頭する前の時代にHBC(ヒーロービルボードチャート)の1位から3位までを独占し続けた伝説のヒーローチーム『三大将』だよ!」

 

「えぇ!?」

 

「今はほとんど活動してなくてほぼ隠居状態って聞いてたが…あの猿渡って生徒ガープの孫だったのか…」

 

「2位の生徒もあのエンデヴァーの息子らしいじゃないか。プロヒーローを親に持つ子は雄英じゃ珍しくないが、あの2人の血筋はその中でも別格だな。」

 

じいちゃんが悪目立ちしたせいで観客席がざわつき始めた。注目が集まることは悪いことじゃないけど、どうせなら好成績残して目立ちたかったもんだ。

 

『さぁ観客席からの熱いエールが届く中、ここで第1種目終了だぜ!』

 

巨大モニターに順位が映し出される。42位までしか表示されてないってことはそこまでが予選通過ってことなんだろうな。

 

「第2種目からはいよいよ本戦、ここからは取材陣も白熱してくるよ、気張りなさい!」

 

ミッドナイト先生が檄を飛ばす中モニターでルーレットが回り第2種目の競技が発表される。

 

「第2種目は『騎馬戦』よ!」

 

「騎馬戦…てことはチーム戦になるってことか?」

 

「ケロ、どうやって分けるのかしら?」

 

「説明するわね!参加者は2~4人の騎馬を自由に組んでもらうわ。基本的なルールは普通の騎馬戦と同じ、ハチマキを奪い合うことだけど、1つ違うのが予選の順位に従って各自にポイントが振り分けられることよ。」

 

「入試の時見てぇなポイント稼ぎ方式ってことか。」

 

「騎馬の組み合わせによってポイントが変わるから、それで狙われやすさとかも変わりそうだね。」

 

「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!…ええそうよ、与えられるポイントは42位が5P、41位が10Pと言った具合よ。」

 

てことは1位は210Pか、高得点になればなるほど狙われやすくはなるだろうが、その分注目もされるが───

 

「そして1位に与えられるポイントは…1000万よ!」

 

……1000万!?

 

途端にインフレしすぎだろ!こんなもん実質狙われる騎馬一つだけじゃねぇか!

 

「競技中はポイントが書かれたハチマキを首から上に巻いて奪い合ってもらうわ。そして、時間内であればポイントを全て失っても、、また騎馬が崩れても退場にはならないってこと。個性の使用はもちろんありだけど、悪質な崩し目的の攻撃は一発退場とします!」

 

「時間内ならいくらでも逆転のチャンスがあるってことか。」

 

「上位のやつほど狙われる下克上のサバイバル!チーム決め交渉の時間は15分よ!」

 

決勝トーナメント進出をかけた第2種目、運命のチーム交渉が始まった。

 

*

 

オマケ 覇王色命名の瞬間

 

「猿渡、少しいいか。」

 

「どうした常闇?」

 

「ひとつ聞きたいことがあってな…USJでお前が放ったあの威圧感についてだ。」

 

「あー、あれな。つっても俺自身まだ分からないことの方が多い力だからな。覇気の1つだろってことは分かってるけど」

 

「ならばまだ名前すらも決めてないということか。」

 

「たしかに、今までは3つ目の覇気とか適当に呼んでたが。」

 

「ならば覇王色の覇気というのはどうだ?」

 

「覇王色?」

 

「意思弱き者には眼前に立つことすら許さないあの圧倒的な存在感。味方には希望を、敵であれば絶望を与える…正に覇王の名を冠するに相応しいと俺は思うのだが。」

 

「……」

 

「どう、だろうか?」

 

「常闇…」

 

「…ああ。」

 

ガシッ

 

「最高だ!覇王色、これ以上ない命名だよ!」

 

「ふっ、お前も俺を理解できる男だったか。」

 

あははは!

 

「…何なんあれ、透ちゃん?」

 

「さぁ、あたしにもにもよく分かんないや…」

 




うーん、あの2人強くしすぎたかも(´・ω・`)

でも実際ガープっていうスパルタ師匠+自分の見本になりまくりな拳一が横にいたら体育祭の時点でも緑谷はここら辺までたどり着きそうな気がするんですよね。

拳一も月歩習得でだいぶ色んなやつと戦わせやすくなりますね。実はサンジのスカイウォークにちなんでムーンウォークって技名も思いついたんですが、絶対にマイケルなジャクソンが頭に浮かんでくるのでやめにしました笑。

あと発目さんとの邂逅はオリ主の影響で先送りに…発目ファンの人はすまぬよ。お茶子さんは原作よりも心穏やかに過ごせるはず。

次回の更新がいつになるかはちょっと未定ですが頑張って書きますのでお楽しみに。
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