不定期の更新とはなりますが楽しみにしてくれる方がいらっしゃれば嬉しいです。
それでは本編どうぞ。
「あ、あの砂藤君…」
「ご、ごめん緑谷。」
「ぐっ…」
さっきからずっとこの調子だ。騎馬戦のチーム決め交渉、1000万Pを持たされた僕は皆に避けられ続けていた。
そりゃそうだよな、ずっと守りに入り続けるより最後に奪う方が戦法として理にかなってる。組んだ時点で全員から狙われるのが確定してる僕と組みたがる人はそうそういないだろう。
それに今日の第1種目まで個性の制御すらできなかったやつなんて不安要素が大きすぎて信用に欠ける。どうしよう…
「デク君!」
「う、麗日さん?」
「組も!」
「う、麗日さん〜!」
何たるラッキー!この状況で組んでくれるなんて麗日さんが女神に見えてきた。
「あの、でも僕1000万故にめちゃくちゃ狙われると思うけどいいの?」
「ガン逃げしたらデク君勝つじゃん!」
「それは過信しすぎじゃないかな…」
「するさ!何より仲良い人とやった方がいい!」
「くぅっ…」
「どうしたの、急にブサイクだよ?」
「あまりに麗らかで直視できなくて…」
ともかくこれで1人目、しかも作戦的にも組みたいと思ってた麗日さんと組めた。あとは──
「飯田君!」
「ん?」
僕の考えた策は飯田君と麗日さんの個性を掛け合わせた機動戦。麗日さんの
あとは騎手にフィジカルの強い人が来てくれると嬉しいけど、まずは飯田君の確保が先決だ。
「こういう策を考えてる。だから僕たちと組んでくれない?」
勝算が無いわけじゃない、最低限の交渉材料にはなってるはずだ。
「さすがだな緑谷君…だが断るよ。」
「えっ…」
「確かに勝算のある策だと思う。だが君には入試の時から先を行かれてばかり。素晴らしい友人だとは思っているが、そんな君について行くだけでは僕は未熟者のままだ。」
「飯田君…」
「君をライバルとして見てるのは轟君たちだけじゃない…俺はこの騎馬戦で、君に挑戦する。」
そう言うと飯田君は轟君、上鳴君、八百万さんのいる所へと歩いていった。
…チームを組めなかったのは残念だけど、彼のようなすごい人が僕をライバルとして見てくれてるのがなんだかむず痒くて、少し誇らしく思えた。
「そんなつもりなかったけど…そうだよな、友だちごっこじゃいられない。」
「デク君…」
一時的にとはいえ僕は今トップ、相手が誰であろうと迎え撃つ立場なんだ。怖気付いてなんていられない!
「その顔見るに、ビビっちゃいないみたいだな出久。」
「猿渡君?」
「出久、俺と組もう。」
「ええっ!!いいの!?」
「『友だちなら組んでくれる』みたいな甘い考えしてそうならほっとこうかと思ったが…飯田に断られても折れてないみたいだし、これは組むべきだと思ってな。」
「…仮初でもトップに立ってるんだ。逃げ切るにしろなんにしろ、本気で勝つ気でいるよ。」
「そう来なくちゃな。」
これで2人目、図らずも強力な仲間を得ることができた。
「騎手の問題は猿渡君で解決したとして、あと1人はどうしようか…」
「もうほとんどチーム決まってるみたいやしね。」
「それなんだけどよ、実は1人捕まえてるやつがいるんだ。しかもこの面子とのチームバランスもかなり良い。」
「それっていったい誰が…?」
「ふっ…おーい、残りの2人捕まえたぞ!」
そうして猿渡君が呼んだのは──
*
「ここにいるほとんどの人間がA組に注目してる…いったいなんでだ?」
理解できない、たった一度のイレギュラーに巻き込まれただけでこうも注目されるのが。
「鉄哲の言う通り、A君連中も調子づいてる…おかしいよね?」
度し難い、たまたま、奇跡的に、偶然が重なって乗り越えただけのくせに。
「彼らと僕らの差は敵と戦ったかどうかだけだぜ?僕らB組がなぜ予選で中下位に甘んじたか…」
だからこそこの場で証明する。僕らの方が優れてるってことを。
「調子づいたA組に知らしめてやろう、みんな。」
*
『ここで時間切れだ!ウェイクアップミイラマン!』
『ん…』
『15分の交渉時間を終えて、12組の騎馬が揃い踏みだぜぇ!』
『…なかなか面白ぇ組が揃ったな。』
『さぁあげてけ鬨の声!血で血を洗う雄英の戦が今狼煙を上げる!』
「麗日さん、猿渡君、常闇君。」
「うん!」
「おう!」
「ああ!」
「よろしく!」
チーム緑谷
騎手:猿渡 騎馬:緑谷、麗日、常闇
『さぁ騎馬は組み終わったな。準備はいいかなんて聞かねぇぞ!さぁ行くぜ、バトルロイヤルカウントダウン!』
3…
「狙いは…」
チーム爆豪
騎手:爆豪 騎馬:切島、芦戸、瀬呂
2…
「1つ…」
チーム轟
騎手:轟 騎馬:飯田、上鳴、八百万
1…
「来いや!」
「スタート!」
うおおおおぉ!!!
「実質1000万の争奪戦だ!」
「猿渡君覚悟!」
「いきなりの襲撃、これが追われし者の運命か。」
「運命。」
「想定内だろ。んで、どうするよリーダー?」
「もちろん…逃げの一手!」
「合点!」
「させるか、やれ骨抜!」
「ああ!」
鉄哲の指示により骨抜が個性を発動、地面が柔化され、沼のように騎馬の足が沈んだ。
「あの人の個性か!」
「抜けられるか?」
「任せて!インパクト10%!」
緑谷は瞬間的に両足を10%の出力で強化し跳躍、麗日の個性により自分以外が無重力と化した騎馬を沼から脱出させた。
「跳びやがった、追え!」
「耳郎ちゃん!」
「分かってる!」
「後ろ来るぞ常闇!」
「ああ、
『アイヨ!』
空中にいるところを耳郎のイヤホンジャックが急襲するも、常闇の黒影が迎撃。自立行動が可能な黒影の存在によって、緑谷たちは実質騎馬4人体制で勝負することができていた。
「やっぱりすげぇな、常闇の黒影は!」
「これしきのこと、深淵に生きる者にとって当然!」
『マカセトケ!』
「常闇君のおかげで全方位の防御が格段に厚くなったのは助かるよ!麗日さんも個性の使用上限は大丈夫?」
「平気!この重量で15分なら余裕で耐えれるよ!」
「みんな追いかけるよ!」
「分かった!」
「ん…おい葉隠!ハチマキなくなってんぞ!?」
「ハッ!しまったいつの間に!?」
「漁夫の利いただき。」
『さぁ開始2分と経ってねぇが、早くも大混戦だなおい!決勝トーナメント進出のために1000万を狙わず、あえて2〜4位狙いも作戦としちゃ悪くねぇぞ!』
「はっはっは!奪い合い?違うなこれは一方的な略奪よォ!」
「峰田くんの声…って障子君が1人で突っ込んでくる?」
「…いや違う、あいつ1人じゃねぇ!一旦離れろ!」
「うんわかっ…うわっ!?」
「足が引っ付いて動かへん!?」
「これは峰田のもぎもぎ!いったいどこから!」
「ここからだよォ常闇!」
その声は障子が側面を守るために広げた複製腕の隙間から聞こえてきた。峰田は自身の小さい体格を活かし障子1人に騎馬を任せることができていたのだ。
「うわっ、それあり!?」
「ありよ!ルール上なんの問題もないわ!」
「しかも峰田だけじゃねぇ、なっと!」
障子の複製腕の隙間から伸びた舌を弾き返す。彼女もまた、峰田の策に乗りこの勝負に挑んでいた。
「おいおい峰田と組むなんて珍しいな梅雨ちゃん。」
「ケロ、峰田ちゃんにしては珍しく合理的な作戦だったから仕方なくよ。」
「だがこのまま身動きが取れなければいずれ詰むぞ。どうする緑谷!」
「…仕方ない。猿渡君お願い!」
「ようやく出番か!立て直し任せたぞ!」
猿渡が月歩で空中へと離脱。緑谷が考えたの基本戦術は、当初の飯田の役を自身のフルカウルによって代用、麗日で緑谷以外を浮かし機動力を確保、常闇で防御を固めつつ、緊急時には猿渡が月歩を用いて空中戦を展開するというものだった。
「調子に乗んなやクソが!」
「やっぱお前は来るよなぁ!」
空中戦に爆豪が参戦、爆破による攻撃を武装色で固めた腕で防ぐ。そのまま二撃、三撃と攻防を繰り返し、瀬呂が爆豪を回収したことで一時離脱となった。
『おいおいアイツら空中戦おっ始めやがったぞ!いいのかあれ!』
「テクニカルなのでOKよ!騎手の足が地面に着いたらダメだけどね!」
「猿渡!」
『ムカエニキタゾ!』
「サンキュー黒影!」
無重力状態で浮かんだままの猿渡を黒影が回収し、騎馬へと戻った。
「すまない、遅くなった。」
「無問題!てかどうやって抜け出したんだ?」
「もぎもぎで引っ付いてた部分の地面を砕いたんだ。足には付いたままだから麗日さんは片足状態で引っ張ってる。」
「無重力ならそんなに関係ないしね!」
「なるほどな、さて今のところの順位は…あれ?」
『あら、こりゃいったいどういうことだ?
A組の順位緑谷以外パッとしねぇ…ってか爆豪チーム0P!?』
派手な試合展開とは裏腹の順位。水面下に潜んでいた者たちが牙を剥き始めていた。
*
「単純なんだよA組。」
「んだテメェ!返せ殺すぞ!」
「ミッドナイトが第1種目って言った時点で、予選から極端に生徒の数を減らすとは考えにくいと思わない?」
「あ"?」
「第1種目の通過をおよそ40位以内と仮定して、それ以下の順位にならないように走ってさ、後ろからライバルになる者の個性や性格を観察したんだ…その場限りの優位に固執したって仕方ないだろ?」
「…クラスぐるみってわけか。」
「全員の総意じゃないけど良い案だろ?ニンジンぶら下げた馬みたいに仮初の頂点狙うよりさ。」
「〜〜っ!!!」
「あっ、あとついでに君有名人だろ?ヘドロ事件の被害者。今度聞かせてよ、年に1度敵に襲われる気分ってのをさ。」
「……切島、予定変更だ。」
「え…ってうわっ!?」
「あわわ…」
「お、おい爆豪?」
「ん?」
「デクたちの前に、こいつら全員殺そう!」
後に切島は語った。
気づいたら爆豪の形をした悪魔がそこにいたと。
*
「B組は予選の高順位を捨てた長期スパンの策ってことか。」
「であれば、俺たちを狙うことにはさほど固執していないだろうな。」
「それなら逃げ切りやすくなるかも!」
「…いや、どうやらそう甘くはないみたいだぞ。」
目の前に現れたチームに気づき、騎馬が停止する。ここまで緑谷チームを除き、A組で唯一ポイントを失っていないのは目の前の男だけだった。
「よう轟、やっと来やがったか。」
「そろそろ取るぞ、1000万。」
『さぁ残り時間半分を過ぎて騎馬戦は後半戦に突入!1000万Pは誰に頭を垂れるのか!』
*
「爆豪落ち着け!冷静になんねぇとポイント奪い返せねぇぞ!」
B組物間からの煽りを受けて爆豪勝己の怒りは頂点に達していた。
「おい物間、お前もあんま煽んなよ。同じ土俵だぞ。」
「そうだね、ヒーローらしくないし…何よりよく聞くもんね、敵の恨みを買ったヒーローが襲われるって話。」
「…っし、切島進め。今の俺はすこぶる冷静だ!」
「ホントなんだな!?頼むぞマジで!」
爆豪の指示により騎馬が物間チームへと接近する。
「死ね!」
「おっと。」
右手の大ぶりから爆破攻撃するも物間が冷静に見切り爆豪の腕を受け流す。
「お返しだよ。」
BOOOM!!
「がはっ!?」
「へぇ…すごい良い個性だね。」
物間がすかさず右手を爆豪に向けると、
「お前とあいつも個性だだ被りなのか!?」
「ちっ…クソが!」
「おっと!」
2度目の爆破は確実に物間を捉えた…しかし爆煙が晴れた時、
「本当に良い個性だね、僕の方が良いけどさ。」
「……『コピー』か。」
「正解。」
物間寧人 個性 コピー
触れた相手の個性を5分間使用できる。ただし同時に複数の個性を操ることはできない。
「まぁ今のを見れば馬鹿でもわかるだろうけどね。」
「くっ…クソっ!」
「今だ、やれ凡戸!」
「うお、なんだ!?」
別チームからの奇襲、大量のボンドが爆豪チームに降り注ぎ、騎馬の動きを止められてしまった。
「仕掛けてきたな凡戸。」
「逃げるぞ物間、このポイントなら確実に4位に入れる!」
「くそっ動けねぇ!」
「ちょい待ち、あたしの酸で溶かすから!」
「早く!0Pだぞ早く!」
「ああ、怒らないでね。煽ったのは君だろ?そういえば、宣誓でなんて言ってたっけ、あの恥ずかしいやつ…まぁいいや、お疲れー。」
「っっっ〜〜!!!」
散々に煽られ、自分の誓い、信念すらもコケにされた。
だがこの男が何より許せないのは、
(1位だ…俺が取るのは完膚無きまでの1位だ!!)
「待て待て、待てって!勝手すな爆豪!」
「しつこいなぁ…その粘着質はヒーロー以前に人として──っ!?
爆破による空中機動でたった1人物間チームに襲いかかる爆豪。しかし物間チームの騎馬、円場硬成の個性『空気凝固』によって生み出された壁に阻まれ防がれてしまう…初撃のみ、ではあるが。
「ははっ、見えねぇ壁だざまぁみろ!」
「ウッラアアアア!!」
「なにっ!?」
数度叩きつけられた拳は円場の生み出した壁を砕き、ハチマキを2本物間から奪い取った。
「くそっ!」
「大丈夫まだ4位だ!」
「ああ、この1本を死守すればもう確実に…」
爆豪は瀬呂により回収され順位は3位へと躍り出た。時間も残り1分を切り、これ以上仕掛ける理由は無い…あくまで合理的に判断すればだが。
「跳ぶ時は言えって!」
「けどナイス!これで通過は確実──」
「まだだ!」
「はあっ!?」
「完膚無きまでの1位なんだよ取るのは!」
(物間、確かにB組の策は合理的で良い…ただ惜しむらくは──)
「さっきの俺単騎じゃ踏ん張りが効かねえ、行け!俺らのポイントも取り返して1000万に行く!」
「…はっ!」
「…うん!」
「…ったく!」
爆豪に感化され騎馬の3人にも火がついた。傍若無人、しかし爆豪にはその実力を持って他を牽引する才能が確かにあったのだ。
「しょうゆ顔、テープ!」
「瀬呂な!」
テープを進行方向、物間チームの脇を通り抜けるように射出。
「黒目、進行方向に弱め溶解液!」
「芦戸三奈!」
芦戸、前方及び靴底の穴より溶解液を分泌。
「爆速ターボ!!」
セロハンテープの巻き取りにより進行方向を定め、爆破による急加速で溶解液により溶かされた地面を滑りながら物間チームに接近する。
「はぁあああ!!!」
「うっ!?」
円場が再度壁を生み出すも、加速によって勢いが上乗せされた爆破によって呆気なく破られ、物間から最後のハチマキを奪い取った。
『爆豪チーム容赦なし!やるとなったら徹底的に!あれだな、彼は完璧主義だな!』
『B組の策は合理的で良いものだった。だが惜しむらくは、常にトップを狙い続ける者とそうでない者…その執念の差を考慮に入れなかったことだな。』
「次ぃ!デクと轟んとこだ!」
時間は残りわずか、完膚無きまでの勝利を得るために爆豪は次なる標的に向かった。
*
「黒影!」
『アイヨ!』
「させませんわ!」
黒影の牽制攻撃を八百万が生み出した装甲が防ぐ。爆豪チームの攻防から数分前、氷結と電撃によって他チームを蹴散らした轟チームと緑谷チームの熾烈な攻防が繰り広げられていた。
「八百万の『創造』、やっぱり厄介だな。」
「飯田君のおかげで機動力も抜群、油断したら一気に詰められる…」
「…いや、それより厄介なのは上鳴だ。」
「その心は?」
「八百万の装甲、いつもの黒影であれば破れていた。」
常闇の個性『
逆に日光の元では制御こそできるものの、攻撃力は中の下止まり。それ以上の光源があればさらに力が弱まる性質を持っている。
「そうか、上鳴君の電光のせいで。」
「やつの攻撃が続く限り、攻めでは相性最悪だ…黒影が及び腰になっている。」
『ウゥ…ボウリョクハンタイ…』
ここまで何とか黒影のおかげで均衡を保ってきたが、周囲を氷壁に囲まれる中でとうとうフィールド端まで追いやられてしまった。
『おおっと!緑谷チームもう後がない!』
「…常闇君、黒影の攻撃力の低下は向こうには知られてる?」
「恐らくそれは無い。この話はお前たちとUSJで口田に話したのみ。やつは無口だから広まってる可能性は限りなく低いだろう。」
「…知られてないなら牽制にはなる。何としても1000万は持ち続けるよ。」
「何か思いついたか出久。」
「うん。常闇君、ここからの牽制は今から伝える通りにして欲しい。」
「分かった、どうすればいい?」
「────」
*
『轟チーム、フィールドを氷壁で囲んでタイマンで1000万をあっちゅう間に奪取…ってなると思ってたよ最初は!なんと緑谷チーム、あれから5分間逃げ続けてやがるぜ!』
「……」
「キープ!」
(こいつ、的確に左側に陣取ってやがる。)
『轟は
この距離では上鳴の放電も黒影によって届かず、氷結を狙おうにも騎馬の飯田を巻き込む位置にいるため、轟たちは攻め手を失っていた。
(残り1分…このままじゃ…)
「…聞いてくれ、残り1分俺は今からの行動で使い物にならなくなる。」
「飯田さん?」
「何か手があるのか?」
「ああ、だからあとは任せるぞみんな。」
「…っ!全員構えろ、来るぞ!」
「取れよ、轟君!」
飯田の気配が変わったのを察知した拳一は騎馬のメンバーに警戒を促す。
「トルクオーバー/レシプロバースト!!!」
その警戒心すら置き去りにするスピードで騎馬が駆け抜け、1000万のハチマキは轟の手へと渡った。
「───は?」
『……なっ、何が起きた!?速すぎんだろ、今のなんだ!?』
足から生えるマフラーから大量の黒煙を吐き出す飯田、体の負担が大きいのか肩で息をしながら呼吸を整えていた。
「何だ今の加速!?」
「飯田さん一体何をしたんですの?」
「トルクと回転数を瞬間的に無理やり上げて爆発力を生んだんだ。反動でしばらくエンストするがね…まだ誰にも教えてない切り札さ。──それよりも。」
「ああ…やっぱタダで1000万は取らせてくれねぇか。」
轟チームが現在保有しているハチマキは
「くっそ…すまん、相打ちが精一杯だった!」
「むしろなんでハチマキ取れたん!?」
「ありがとう猿渡君!おかげで0Pっていう最悪の状況は無くなった!」
飯田が切り札を使う直前、本能的に1000万を守れないと判断した拳一は轟の動きに見聞色を一点集中し、すれ違いざまに轟チームが元々持っていたハチマキを全て掠めとっていた。
「1000万は奪われたが、時間的にもポイント的にも勝ち上がりはほぼ確定…どうする緑谷?」
「……」
現在順位は3位、残り時間は数十秒、このまま下手に動かず時間の経過を待つのが最も合理的な選択ではあるだろう。
「…正直、このまま守りに徹してるのが1番賢い選択だと思う。」
「……」
「ああそうだな。」
「デク君…」
下手に動けば逆転を狙うチームにポイントを奪われるかもしれない、そうなれば敗退は確実となるだろう。
しかしその考えに至った上で緑谷は───
「みんなごめん…それでも取り返しに行きたい!」
「デク君!」
「ふっ…」
「そう来なくちゃな!」
残り時間30秒
「詰めてる時間はねぇ!俺と黒影で先行する!」
「ああ!黒影!」
「アイヨ!」
拳一の月歩と同時に黒影が攻撃を仕掛ける。
残り時間20秒
BOOOM!!
「半分野郎!!」
氷壁をぶち破って爆豪が参戦。轟チームの騎馬に向けて突撃する。
残り10秒
「くそっ、まだ脚が…」
「上鳴、黒影を抑えろ。八百万頼む。」
「うぇい!」
「わかりましたわ!」
上鳴が電光によって黒影を迎撃、八百万が創り出した鉄パイプに氷を纏わせ拳一と爆豪の攻撃に備える。
3人の騎手が激突しようとした瞬間───
『タイムアップ!ここで試合終了だ!!』
プレゼント・マイクによる試合終了の宣言。あと一歩のところまで迫った拳一と爆豪は攻撃を仕掛けることなく着地を選択した。
「だあああ!クソが!」
「やられたな…」
「猿渡君!」
「すまん、結局いいとこ無しだ。」
「ううん!惜しかったね!」
「お前がいなければただ1000万を奪われて終わった可能性もある。助けられたのは俺たちだ。」
「惜しかったな爆豪!」
「負けに惜しいもクソもねぇだろクソ髪!」
「この短い会話でクソが2回も出る。」
「ほんと短気だよねー。」
続々と各チームが集まり労いの言葉を掛け合う。
「……」
「轟さん?どうかしましたか?」
「思うところはあるかもしれないが最終的には1位だ。少しくらい喜んでもバチは当たらないと思うぞ。」
「俺たち最強!ウェーイ!」
「…ああ、そうだな。」
だが轟の胸中には並々ならぬ感情が渦巻いていた。
次回、トーナメント開始!