それとすいません今回めっちゃ長いです。戦闘訓練一気に書ききったら10000字超えました…
追記
皆様いつも誤字報告ありがとうございます!大変助けられております!
アンケートを追加しましたので回答いただけると今後の参考になります!
雄英高校ヒーロー科のカリキュラムは午前が英語や数学などの必修科目、午後がヒーロー基礎学となっており、必修科目含め全てがプロヒーローによる授業となっている。ちなみに、プロヒーローの免許には教師としての資格も付与されていたりする。
「はい、じゃあこの英文の中で間違っているものは?」
(普通だ。)
そして今やってる英語はマイク先生が担当なのだが…普通だ、たぶん全員同じことを思ってる。普段のテンションは見る影もない、普通のわかりやすい授業だ。まぁあのテンションで授業進めるのも大変なんだろうな。
午前の授業が終わればほとんどの生徒は食堂で昼食をとる。調理を担当するクックヒーローのランチラッシュの料理を食べることができるのだが、これがとにかく美味い。値段も学生の財布に優しいので大食らいの自分はとても助かっている。
「白米に落ち着くよね、最終的に!」とは彼の言だ。
……一応学生にあるまじき大金を持たされてはいるのだが、あれにはなるべく頼りたくない。仕送りはなんとか普通の額に抑えてもらったのでそれでやりくりするようにしている。
そしていよいよ午後になれば──
「私が…普通にドアから来た!」
お待ちかねのヒーロー基礎学、オールマイトの初授業だ。
*
「私の担当はヒーロー基礎学、ヒーローとしての素地を作るための訓練をする科目で単位数も最も多いぞ。早速だが今日行うのは『戦闘訓練』だ!」
「戦闘…!!」
「訓練…!」
戦闘訓練って聞いた瞬間爆豪からものすごい殺気が溢れてきた…あくまで訓練だぞ?大丈夫だよな?
「そして、それに伴って入学前に送ってもらった個性届と要望書を元に作った
オールマイトがリモコンを操作すると壁の一部がせり出し保管ロッカーが現れた。俺含めて全員が初の戦闘服の着用に目を輝かせている。
「着替えたら全員グラウンドβに集合してくれ!」
『はーい!』
*
更衣室で自分の戦闘服に袖を通す。見た目自体はある程度シンプルだが、注文通りにできてるみたいでよかった。
「おお、猿渡君のコスチュームはスーツのような仕立てなのだな。」
「ああ、憧れのヒーローの戦闘服を参考にしたんだ。」
黒色のツーピーススーツに黒いコートを羽織り、特殊素材で作った耐久性抜群の黒いグローブ。じいちゃんの白スーツ戦闘服を参考に作ったものである
「その事で聞きたかったんだけど、猿渡君の憧れのヒーローってもしかして拳骨ヒーローガープだったりする?」
「正解だ出久。というか結構昔のヒーローなのによく知ってるな。」
青みがかった緑のジャンプスーツに身を包んだ出久に言い当てられた。というかマスクの感じといい完全にオールマイトモチーフのコスチュームだなこいつ。
「ガープ?俺知らねぇや。」
「祖父から聞いたことがある。まだオールマイトが台頭する以前にNO.1ヒーローに輝いたこともあるヒーローだったはずだ。」
「ボール投げの時に見よう見まねって言ってガープと同じ技を使ってたからもしかしてと思って。でも彼が戦ってる映像はほとんど残ってなかったと思うんだけど、どうやってあの技を覚えたの?」
「そりゃだって、ガープは俺のじいちゃんだからな。」
『………はぁ!?!?』
「そこまで驚くような話か?あ、俺着替え終わったから先いくわ。」
『ちょっと待てぇ!?!?』
クラスメイトの動揺を置いてきぼりに俺はグラウンドに向かうのであった。
*
「おお、みんな似合ってるじゃないか!…少年たちはどうしたんだい、なんだか少し戸惑ってるようにも見えるが?」
「オールマイト先生!ガープって名前のヒーロー知ってますか?その人が猿渡のじいちゃんだって聞かされてみんなして驚いてて…」
「拳骨ヒーローのかい?もちろんさ!何せあの人には若い頃に訓練を見てもらったこともあるからね。私にとっては恩師の1人だよ。」
『えぇ!?』
「ってなんで猿渡まで驚いてんだよ!?」
「いや、知り合いだったってのはこの前聞かされてたけど…まさかそんな関係だったとは。」
「ちなみにどんな訓練だったんですか?」
「………HAHAHA!そうだね!言うなれば地獄の特訓吐瀉物風味と言ったところかな!」
「オールマイトが震えてる!?よっぽどトラウマなのか!?」
「お前のじいちゃんどんなバケモンなんだよ…」
「あー……気持ちがよく分かるなぁ……」
「遠い目をしてる!?」
うん、初めてNo.1ヒーローと共感できた気がする。俺も何度か吐いたことあったなぁ…
「おっと失敬!それでは全員揃ったことだし始めていこうか!」
「先生!ここは入試の時の演習場ですが、また市街地戦をやるのでしょうか?」
「いいや、もう2歩先に踏み込む!敵退治は主に屋外で見られるが、統計的に見れば凶悪敵の発生率は屋内の方が高いんだ。」
屋内の方が率が高いのは意外だな。でも確かに屋外での戦闘は人の目に触れやすいのもあって印象に残りやすいってのはあるか。
「監禁、軟禁、裏商売、このヒーロー飽和社会において真に賢しい敵は
「ケロ、基礎訓練も無しに?」
「その基礎を知るための実践さ!ただし今回はぶっ壊せばOKのロボが相手じゃないのがミソだけどね。」
「勝敗のシステムはどうなりますか?」
「ぶっ飛ばしてもいいんすか?」
「また相澤先生みたいに除籍とかあるんですか?」
「組み分けの仕方はどのような方法になりますか?」
「このマントヤバくない?☆」
最後全く関係ないこと聞いたやつ誰だ!?というかみんな口々に質問攻めをするからさすがのオールマイトも頭抱えそうになってるぞ。…しかたねぇな。
「全員落ち着け、質問は説明最後まで聞いてからでもいいだろ。」
(さ、猿渡少年!)
「てめぇが仕切んなや殺すぞ!」
「嫌なら黙って説明聞け、俺だって仕切り屋みたいな真似したくねぇからよ。オールマイト先生続きどーぞ。」
「あ、ありがとう猿渡少年。…今回の状況設定だが、敵はアジトのどこかに核兵器を隠していてヒーローはこれを処理しようとしている。ヒーロー側は時間内に敵を捕まえるか、核兵器を確保すれば勝利。敵側は時間いっぱいまで核兵器を守りきるか、ヒーローを確保することで勝利だ。確保の条件はこの確保テープをまきつけることとする。」
と、えらくアメリカンな状況設定をカンペを見ながら説明してくれた。そりゃそうだよな、いくらNo.1ヒーローつっても教師としては新米なんだから。
「コンビ及び対戦相手はくじ引きで決めるぞ!」
「くじ引き…適当なのですか?」
「プロは現地で合流したヒーローと急造チームアップすることも多いからじゃないかな?」
なるほど、それなら確かにくじ引きのコンビ決めも意味があるな。俺のコンビは誰になるやら、楽しみだな。
「さぁ猿渡少年、くじを引きたまえ!」
「えーっと…I引いた人って誰?」
「あっ!私わたし!」
まさかの葉隠だった。見聞色で葉隠の位置は分かるからステルス戦術を生かしやすそうだな。
他のコンビは…出久と麗日がチームか、何かと縁があるねあの2人。あっ、飯田と爆豪がコンビ組んでる、これは飯田の負担がデカそうだな…他にも結構相性良さげなコンビができてるし、油断できねぇな。
「そして最初の対戦相手は…このコンビだ!」
対戦カードは─ヒーロー側
「対戦する者は配置に着いてくれ。あとの者はモニタールームにて試合観戦を行う!」
昨日の今日で出久が力の調節を身につけてるとは考えにくいし、爆豪のセンスを考えるとかなり不利だな…よし。
「出久、ちょっといいか?」
「猿渡君?」
思いついたこともあるし、ちょっとぐらいアドバイスしてもいいだろ。
*
1戦目は爆豪の単独奇襲によって幕を開けた。そういう戦術…と言うよりは出久に対する私怨による暴走だというのが俺たちの目からも明らかだった。
しかし出久はこれを完全に読み切っていた。麗日に核と飯田を任せ、爆豪とのタイマンに移ってからも攻撃を読み切って大ぶりの右拳を放ったところに一本背負いのカウンターを決めてみせた。
途中爆豪がコスチュームの篭手を解放し、ビルが半壊する爆破を放ったことで一時騒然となったが出久は何とかコスチュームの破損のみの被害に収まっていた。
その後何度か2人が何かを叫びあってるような場面もあったが、たぶんあれはあの2人にとって大事なぶつかり合いなんだと思う。
そして決着は──
『
建物の中央、核兵器の直下から出久が
思った通り、ボール投げで指先だけで個性を発動できたと聞いていた時に思いついたので直前に伝えてみたのだが、まさかデコピンだけで3階分の床全部ぶち抜くとは。
あれならテストの時みたく即座に行動不能にはならないだろうし、遠距離技の択も増えるだろう。……とはいえ俺の思いつきを即座に形にして実行できるあたりあいつの思考力と対応力は本物だな。
とにかく、両者課題を多く残しつつも初戦はAコンビの勝利で幕を閉じたのであった。
そして
「次の対戦カードはヒーロー側Bコンビ!敵側Iコンビだ!」
次は俺たちの番。対戦相手は轟と障子のBコンビだ。
*
「デク君、指また腫れ上がってるね。大丈夫?」
「痛むけど平気、ありがとう麗日さん。」
猿渡君がくれたデコピンのアイデアには助けられた。さっきまでの僕だったら同じ作戦でも右腕を犠牲にしてただろうし、痛みはあるけどこうして彼の対戦を観戦することができる。
「そういえば、猿渡の個性って結局どんなのなんだっけ?」
ふと疑問に思ったことを切島くんが口にした。まだ入学して2日目だからみんな互いに知らないことの方が多いのも無理は無いと思う。
「ケロ、葉隠ちゃんからは増強系の個性って聞いたわね。あと索敵が得意なんだとか。」
「増強系で索敵が得意?どういうことだ?」
「彼女も詳しくは知らないみたいだけど、完全に透明の状態でも猿渡ちゃんは葉隠ちゃんの位置を正確に把握したらしいわ。」
「知覚機能の増強ということか?…いやしかし、把握テストの時の猿渡君の動きは確実に身体強化の個性のそれだった。」
「葉隠で思い出したんだけど、実技試験の時に出たあの巨大ロボ、猿渡は一発で壊しちゃったって言ってたよ。」
「はぁ!?あんなでかいのどうやって!?」
「ますますどんな個性か分からねぇな…」
みんな猿渡君の個性についての話題で持ち切りになってる。他のみんなに比べれば彼と一緒にいる時間は長かったけど、実際僕もまだどんな個性なのかは聞けてない。
「猿渡君は君と同じことを成したのだな。」
「うん…でもたぶんだけど僕よりずっと上手くやったんだと思う。」
彼なら恐らく僕みたいに1度の攻撃で行動不能になるようなことにはならなかったはずだ。
彼も僕より遥か先にいる。
そんなことは分かりきってた。だからこそ彼の戦い方から少しでもヒントを得られるようによく観ないと!
いつものようにヒーローノートとペンを取り出す。指は痛むがこの際知ったことか。
『それじゃあ試合開始!』
そして、全員が特に注目する試合が始まった。
*
5分前 敵側
「とりあえず、俺の個性はざっとこんな感じだな。」
「なるほど、めちゃくちゃ戦闘向きの個性だね。」
「あとは向こうがどう来るかだな。相手は轟と障子だし、索敵されてから氷で一網打尽ってのが1番怖いところか。」
「こっちの作戦はどうするの?」
「基本的には俺が気を引いて葉隠がその隙に確保って流れでいいと思う。ただ、障子の索敵をどう潜り抜けるかってのが問題だな。」
「よし、私本気出す!ブーツも手袋も全部脱ぐよ!」
「全裸に躊躇いが無さすぎる……いやでもそうだな…」
葉隠の奇襲性能はクラスでもトップだし相手もそこを警戒するだろう。だったら…
「保険をかけつつ、ここはあえての正面突破でいこうか。」
*
『敵は3階中央の広間に固まっている。』
『2人がかりでこちらを迎撃するつもりかもしれん。』
「まとまってるなら楽でいいな。外出ててくれ危ねぇから。」
てっきり葉隠で奇襲からの確保を狙ってくると思ったが、あてが外れたな。把握テストの時から
「まぁいい、どんな作戦練ってようと俺には関係ない。」
障子が外に出たのを確認してから氷結を発動、1階から3階の全域を氷漬けにする。
「向こうの反応はどうだ障子?」
『……動きが止まっている。恐らくは氷結に捕まったと見ていいだろう。』
「よし、確保に行ってくる。敵に動きがあったら連絡してくれ。」
あとは核兵器に触れれば確保完了、呆気ない試合だったな。
3階にたどり着いた時、部屋の中央に猿渡はいた。姿は見えないがブーツが横にあるのを見るに葉隠もそこにいるんだろう。
「予想はしてたけど、まじでビル丸ごと氷漬けに出来んのな。」
「悪かったな、レベルが違いすぎた。」
こいつも実力者ではあったんだろうが俺には及ばない。……俺はこんなところでつまづいてる場合じゃないんだ。
母さんからもらったこの
「レベルが違いすぎたねぇ…だったらお前、他人のこと舐めすぎだろ。」
「何?」
「ハァっ!」
瞬間、猿渡の体から赤い稲妻のようなものが迸り、周りを固めてた氷がまとめて砕け散った。
増強系の個性だと踏んでいたが、何をしやがった!?
「俺の動きを完全に封じたいなら全身氷漬けぐらいしねぇと話になんねーよ。」
「てめぇ…!」
「来いよ推薦組、どんだけ強かろうが上には上がいるってことを教えてやる!」
*
「猿渡すげぇ!一瞬で氷結から抜け出した!」
「なんか赤い雷みたいな光見えたよな?」
「先程の話と合わせると、エネルギーを操って自身を強化する個性なのでしょうか?」
実力者同士の激突にモニタールームが沸き立つ。あの氷結じゃたとえかっちゃんでもぬけだすのは厳しかったはずだ。それをいとも簡単に…
「デクくんはこの勝負どっちが勝つと思うん?」
「…データが少ないからまだ分からない。けど、轟君たちは今の氷結で決めるつもりだっただろうから、猿渡君たちがどんな作戦で来るのかを読んだ上での立て直しが必要になると思う。」
モニタールームから見えてる動きから猿渡君は葉隠さんの奇襲からの確保を狙ってる。轟君もそれは理解してるはずだから互いにどう読みを通すかが問題だ。……あれそういえば
*
迫り来る氷塊を殴り砕く。氷の密度も結構高いがじいちゃんの強化した大岩に比べればマシなため問題なく壊せる。
「オラどうした!離れて氷ブッパしてりゃ勝てるとでも思ってんのか!」
「くそっ!」
最後の氷塊をぶち壊して肉薄する。格闘戦なら負ける気はしねぇ。
「オラァ!」
「舐めんな!」
放った右ストレートはしかし轟が腕に纏わせた氷をクッションにして受け流される。こいつ多分格闘技…恐らくは空手の経験があるとみた。
個性も強力、一見弱点っぽい近接も対応できる。…なのになんでこいつ──
「なぁ、なんで個性半分しか使わねぇんだ?」
「!?」
「把握テストの時、50m走で凍らせてた地面を自分で溶かしてただろ。もしかしたら氷だけじゃなく炎とか熱も操ったりできるんじゃねぇのか?」
「てめぇには関係ねぇだろ…!」
組み合ったついでに気になってことを聞いてみたが、どうやら随分と地雷を踏んでしまったらしい。
「怒んなよ、単純にもったいないって思っただけだ。…けどな」
「なん、ガッ!?!?」
「半分の力で舐めプしてる相手に負けるほど甘い鍛えられかたしてねぇんだわ。」
ゼロ距離から体を回転させる勢いを利用した体当たり──中国拳法は八極拳における
「どうした、もう終わりか?」
「はぁ…はぁ…クソッ!」
「轟、大丈夫か!」
距離をとって睨み合ってると下から障子が上がってきた。戦闘音を聞いて助けに来たんだろう、ここまでは予定通り。
『葉隠、障子が合流した。あとは手筈通りに頼む。』
『わかった!任せて!』
最低限の連絡、これで準備は整った。
「向こうはやはり葉隠の奇襲狙いだな。」
「ああ、葉隠の音はできるだけ拾い続けてくれ。2人がかりでこいつを仕留めるぞ。」
「おいおい、そんな悠長なこと言ってていいのかよ?」
「どういうことだ?」
「勘違いしてるみてぇだから教えてやるけどよ、お前ら俺らが奇襲からの確保をまだ狙ってると思ってんのか?」
「…!障子、葉隠の動きは!?」
「……!?こことは真反対の部屋に向かってる!何かを運ぶような音もするぞ!」
「このビルは1戦目のビルと違って階段がビルの東西に1つずつある。今葉隠には反対側の階段を使ってここから1番遠い部屋に核を移してもらってるとこだ。」
「なっ!?」
「制限時間は残り10分、仮に俺がお前らを倒せなかったとしてもここで粘ればももう一度核見つける前に終了ってわけだ。」
「……悪い障子、葉隠の所に向かってくれ。」
「だがそれで猿渡を抑えられるのか?」
「どの道それができなきゃ負けだ、行ってくれ!」
「おいおいつれねぇこと言うなよ。安心しろ、
*
「おいおい、猿渡のやつ轟を一方的に抑え込んでるぞ。」
「さっきの爆豪もやばかったけど、単純な格闘で猿渡に勝てるやつ俺らん中にいんのか?」
「けどなんかあれだな、爆豪は才能マンって感じだったけど猿渡は鍛え上げた達人って感じだ。」
「けど障子が合流してきたから流れが変わるかもしれねぇ。」
2人の戦いは恐らくA組内でもトップクラスの戦いだった。確かに轟君も押されてはいたけど、あの体当たりを除けば猿渡君からまともなダメージは貰っていない。障子が来たことにより形勢も変わる可能性がある。
でもそれより気になるのは……
「それで思ったんだけどよ、葉隠はいったい何してんだあれ?」
「確かに、核の置いてある部屋から
「ケロ、でも葉隠ちゃんが動き出してから轟ちゃんたちが明らかに慌てたようにも見えたわ。」
「なんやろあれ?デク君分かる?」
「…もしかしたらっていう考えはあるんだけど、まだ確信できてないかな。」
「それでも予想あるんや、すごいね!」
会話が聞こえないからなんとも言えないけど、これは講評の時に猿渡くんに聞いてみよう。
そろそろ展開が進みそうだ。
*
「ハァッ!」
「オオッ!!」
「どうした!そんなもんか!」
障子が加わってからの2対1の状況、口では強がってみせてるが正直少しずつジリ貧になってきた。
前衛を障子が行うことで轟に余裕が生まれ氷塊の量とコントロールの精度が上がってきた。障子も個性で増やした腕を束ねて放つパンチが重く、武装色でダメージこそほぼ無いにしろ受け止めて隙を晒せば轟にやられる。厄介なコンビネーションだな。
けどそろそろ─
『猿渡君、いつでもいいよ!』
ナイスタイミングだ葉隠!
両拳に覇気を集中、相手の警戒度が一気に増した。
「来るぞ、轟!」
「下がれ障子!」
轟が氷の壁を形成、しかしそれよりも速く間合いを詰める
「なっ!?」
「くっ!?」
「
放たれた左右連続の高速フックによる2連撃は轟と障子を確実に捉えた──かのように見えた。
「さすがだな轟、拳が当たる箇所にピンポイントで分厚い氷を張ってくるとはな。」
「はぁ…はぁ…」
「吹き飛ばされた割にダメージが少ないのはそういう事か…助かった轟。」
やっぱりもったいないやつだと思う。これで炎が使えてたらこの訓練での負けも十分考えられたな。
まぁ今日のところは
「もういいや、疲れたし終わりにしよう。」
「どういうことだ!」
「そうだぞ猿渡、まだ時間はあるし俺たちは諦める気はないぞ。」
「だってそうだろ、自分の足首見てみろよ。」
「…まさか!?」
ふたりが同時に下を向く、そこには確保証明のテープが確かに巻き付けられていた。
『ヴィ、敵チームWIN!』
「嘘だろ…」
「完璧にやられたな…」
「おつかれ猿渡君!」
「葉隠もナイス確保。面倒な事頼んで悪かったな。」
『それじゃあ講評に移ろう。4人はモニタールームに戻ってきてくれ!』
*
さすがに轟と障子を相手に抑え続けんのはしんどかったな…講評聞かなきゃだけどできれば座らせて欲しい…
「さて、この試合のMVPだけど…まぁ文句無しに猿渡少年だよね!」
「うす、ありがとうございます!」
「じゃあその理由だけど…今回敵チームの作戦を予想出来た子はいるかな?」
「はい。」
「お、じゃあ緑谷少年!」
「その前にひとつ聞きたいんだけど、障子君。」
「なんだ?」
「障子君たちは核兵器がどこに設置してあると思ってたの?」
「最初は4階の奥の部屋、だが途中で俺たちが戦ってた部屋から真反対に葉隠が運び出す音が聞こえたんだ。猿渡は3階の部屋から1番遠い場所に核を移動させたと言っていたから、最終的には1階の奥の方の部屋かと思ってたんだが。」
「やっぱりそうだったんだ。…この試合、核兵器の場所は最後まで変わってなかったよ。」
「なに?」
「どういうことだ?」
「猿渡君たちが立てた作戦は基本的には葉隠さんの奇襲からの確保だったと思う。でもその作戦の成功率を上げるために『音』を利用して障子君を欺いた。」
流れはおそらくこうだ。
1.障子君が索敵をして猿渡君と葉隠さんが3階にいること把握。
2.索敵が終わり、障子君が退避したのを猿渡君が確認してから葉隠さんが4階に移動。轟君が氷結を開始。障子君が外に出たことで葉隠さんの移動に気づくことができず2人まとめて捕らえたと勘違いさせる。
3.轟君が単身で確保に向かい、3階に着いた時点で猿渡君は拘束を解き戦闘開始。この際派手な戦闘音を出すことで障子君を3階に誘い出す。
4.2対1の状況になったタイミングで4階の葉隠さんが行動を開始。木箱を引きずりながら移動し、その音に障子君が気づいたタイミングで『核を移動させた』と嘘をつく。
5.その後も2対1の戦闘を続行、葉隠さんが3階に戻ってきたタイミングで猿渡君が大技を撃って轟君たちが疲弊したところを葉隠さんがこっそり後ろから確保して終了。
「仮に障子君か轟くんのどちらかが葉隠さんを追いかけていっても、あると思ってたはずの場所に核は無いから完全なロスタイムになる上に、猿渡君との1対1が続いた方はそのまま倒されて確保されてた可能性が高かったと思う。相手の索敵能力も逆手にとって、理想通りに作戦が進まなかった場合の保険も立てた上で状況を支配し続けたことが猿渡君がMVPの理由だと思います。」
「う、うんかなりしっかりした考察ありがとう!それで猿渡少年、答え合わせなんだけど…」
「モニタールームから俺たちの会話って聞こえてないんですよね?全部言い当てられてビビってるんですけど…」
出久の分析力は飛び抜けてるものがあると思ってたけどまさかこれほどだったとは…正直かなり恐ろしくなった。
「うん、緑谷少年の分析力にみんな拍手!…しかしながら猿渡少年、君は気づいてたはずだ。今回のこの作戦、ひとつ致命的な負け筋があるね?」
あらら、やっぱりバレてら。たぶん出久も気づいてんだろうな。
「どういうことですかオールマイト先生、猿渡さんの作戦は相手の特性すら利用した完璧なものに思えるのですが?」
「そうだね八百万少女、猿渡少年の作戦は相手の特性を活かしきったものだった。だがそこにはあるひとつの前提が存在するんだよ。その前提とは…」
オールマイト先生がこちらに視線をよこす。俺の口から言えってことね。
「『轟が炎、または熱を操る方の個性を使わないこと』この前提が崩れた時点であの作戦は必ず崩壊するものでした。」
「ではなぜその前提が成立すると思ったんだい?」
「根拠はコスチュームです。轟は体の右側からしか氷を出さなかったから熱は左側でしか扱えないのではと考えました。そして左半身を覆うあの装備では少なくとも大規模な熱は使えないとも。あと内容は伏せますが戦闘中の会話で熱を使わないことを確信したのでそのまま作戦を実行できたわけですけど、熱を使われてたら葉隠がそもそも近づけなくなって確保もできませんでした。」
熱も氷も使う轟にタイマンで勝てるかって言われると…勝てる可能性はあるにしても大幅に時間がかかるし、その場合障子とまとめて押さ込むなんてことは不可能だったろうしな。
「うん、根拠が予測のみの前提を元に動いたのが猿渡少年唯一の反省点だね。そういった読みも時には大事だが、作戦は基本的に確定した事実を元に立てるように!」
「はい!」
「葉隠少女も基本的に言うことは無いね。ただ作戦を立てる時に猿渡少年に何も意見しなかったことは気をつけたいね。ふとした疑問が重要な気づきになる場合もあるから、失敗を恐れずどんどん意見を出し合っていこう!」
「はい!」
「轟少年は左側も扱えるようになりたいね。事情があるのは承知しているが、それができれば君はさらに強くなれる。頑張ってくれ!」
「……はい。」
「障子少年は索敵時に得た情報は目視確認するまで確定では無いことを考慮しよう。今回のような罠の可能性があることも最初から頭に入れておけば対処までの思考がスムーズになるぞ!」
「はい。」
「よし、それじゃあ次の対戦にいってみよう!」
ようやく終わった…あ、そうだあいつに言いたいことがあったんだった。
「なぁ轟。」
「…なんだ?」
「余計なお世話とわかっちゃいるが言わせてくれ。お前がなんで左側を使いたがらないかは知らない。でも、持って生まれたもんを憎み続けても仕方ないと思うぞ。」
「……」
「言いたいことはそんだけだ、邪魔したな。」
あの時感じた轟の気配は、明らかに自分の
なぜそんな感情を抱えてるかは分からない。けどそれはどこまで行っても自分の血肉の一部だし、切り離すことなんてできない。
なんにせよ爆豪のことも轟のことも何かがきっかけでいい方向に向かってくれるのを祈るしかない。
こうしてそれぞれの心に様々なもの残しながら初の戦闘訓練は幕を閉じたのだった。
次からは10000字は超えないようにします(猛省)
ちなみに拳一のコスチュームのイメージは映画ワンピースのストロングワールドで登場した決戦服です。
さて今回の話でしれっと登場した拳一の必殺技ですがガープのギャラクシーインパクトから
ギャラクシー→銀河→星や星座
という連想ゲームの元、(星や星座の名前)+衝突(インパクト)というネーミングになりました。技名の解説については登場の度に後書きで解説を入れます。そのうち拳一のプロフィールとして改めてまとめるかもしれません。
今回の必殺技はこんな感じ
双星衝突(デュオスクロイインパクト)
デュオスクロイとはギリシャ神話に登場する双子の兄弟を指す名前でこの兄弟は死後に双子座の星になったとされています。また、自分が調べた資料ではこの2人は元々「足速き馬駆る者たち」として崇拝された古い神であるとされており、そこから着想を得て高速移動からの2連撃という必殺技にしました。
こんな感じで拳一の技は増やしていきます。星や星座をモチーフにした技名などを気に入って頂けますと幸いです。
本筋に関係ない番外編(男子組のギャグ回、葉隠とのイチャイチャなど)と映画の話って見てみたいですか?
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見たい!
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見たくない!
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それよりこのマントヤバくない?☆