覇気使いのヒーローアカデミア   作:はたやま

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お気に入り2000突破ありがとうございます!

いやー今回個人的に筆がノリノリで書いてたら12000字超えました!
書きたいことが書けたので後悔はない。

原作でも初の敵連合との衝突なので頑張って盛り上げていきます!


USJ襲撃事件①

「今日のヒーロー基礎学は俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった。」

 

敵の襲撃──表立ってはマスコミ侵入騒動として発表された出来事から数日後。この日も俺たちヒーロー科1-A組は午後の授業に勤しんでいた。

 

(『なった』?…なにか特例なのかな?)

 

「はーい先生、今日は何するんですか?」

 

「災害水難なんでもござれ、『人命救助(レスキュー)訓練』だ。」

 

ヒーローの活動は何も敵退治に限った話ではない。大災害や深刻な事故現場などでの救助活動もヒーローの大事な役割の一つだ。プロの中ではそういった活動を主な活躍の場としている人も多い。

 

「レスキュー…今回も大変そうだな。」

 

「バカおめー、これこそヒーローの本分だ!鳴るぜ、腕が!」

 

「水難なら私の独壇場ね、ケロケロ。」

 

「おい、まだ話の途中だ!…今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動場所を限定するものもあるだろうしな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスで移動する。以上、準備開始。」

 

相澤先生の合図とともに一斉に動き出す。先生が時間に厳しいことはいい加減誰もが理解しているため、もう慣れたものである。

 

「……」

 

「猿渡君今日なんか静かだね。」

 

「ん、そうか?」

 

「うん、なんていうかずっと何かが気になってるような顔してるっていうか…」

 

「先日の寝坊があってからやはり様子が少し変だぞ。」

 

着替えながら出久と飯田が心配して声をかけてくれた。

 

実際のところ、あの日から嫌な予感が拭えないでいた。それは日を追う事に…今朝になってからは特に強く感じている。

 

「んー、なんだろうな。五月病ってやつかもしれん。」

 

「まだ4月の半ばだぞ、やっぱりなにか隠してるんじゃ…」

 

「よーし、着替え終わり!先いくわ!」

 

「あっ、コラ!また君はそうやってはぐらかして!」

 

悪い飯田、こればっかりは話すわけにはいかないんだ。

 

頼むから何も──いや、もうよそう。

 

()()()()()()()()()。だからせめて、それが最悪の結果にならないようにするしかない。

 

先生たちもいる、オールマイトだっている。それでも、どうにもならないその時は───もうあの時の何もできなかった俺じゃないんだからな。

 

*

 

「そういえば、出久は今日体操服なんだな。」

 

「前の戦闘訓練でコスチュームダメになっちゃって、今サポート会社の修繕待ちなんだ。」

 

普段の体操服に、コスチュームでも付けていたマスクと関節部のサポーター姿で来た出久。今更言っても詮無い話ではあるが、あの時は爆豪がだいぶ暴走したからな。

 

「親が用意してくれたものだっけか…気持ちは分かるが、自分を直接守ったり戦闘スタイルにも関わってくる物だからな、いずれはもっとちゃんとしたやつに替えた方がいいぞ。」

 

「うん、母さんには申し訳なさもあるけど、この前のでかなり実感させられたから。」

 

「1-A集合!バスの席にスムーズに座れるように番号順で2列に並ぼう!」

 

ホイッスルまで吹かして飯田がフルスロットルである。実は俺が寝坊していなかった(ことになってる)間に出久が委員長の座を飯田に譲り渡したというのだ。

 

なんでもマスコミ騒動での一斉避難により生徒たちがパニックを起こしかけてたさなか、的確な行動でそれを鎮めて見せたのだとか。自分としてはやつに投票をしたので思わぬ形でそれが実現したというところだ。

 

余談だが恨みっこなしとはいえ出久に委員長の座を譲ることとなった八百万はその座が第三者に渡ったことで少々不満げであったらしい。……それは、うん、ドンマイ。

 

ともかく、どのような形であれ、与えられた責務を全うしようとする飯田の姿は賞賛されるべきものだろう。

 

ただまぁ

 

「くそっ、まさかこういうタイプの座席だったとは!」

 

こういう感じで空回ることもこれからしばしばありそうであるが。

 

バスは後部座席以外通路側に向かい合った横長の座席だったため結局乗り込んだものから好き好きに座っていく形となった。

 

「あたし、思ったことをなんでも言っちゃうの。緑谷ちゃん、あなたの個性オールマイトによく似てる。」

 

「へっ!?き、急にどうしたの蛙水サン!?」

 

「梅雨ちゃんと呼んで。だってそうでしょう、使っただけであれだけの風圧が起こるなんてとてもよく似てるじゃない。」

 

そっくりも何も同じ個性だしなぁ…なんてことは言えるはずもなく。

 

「まてよ梅雨ちゃん、オールマイトはいちいち怪我しねぇだろ。似て非なるってやつだ。」

 

切島ナイスフォロー。出久はいちいち動揺してんじゃないよ、いつか怪しまれるぞ。

 

「しっかし緑谷といい猿渡といい、増強系のシンプルな個性はいいよな、派手でできることが多い。俺の『硬化』は対人じゃ強いけど、いかんせん地味だからなぁ。」

 

「僕は十分カッコイイと思う!プロでも十分通用する個性だよ!」

 

「ありがとな。つっても現状個性も戦闘能力も、俺は猿渡の下位互換だ。…あぁ、卑屈になってるわけじゃねぇ。ただ、だからこそこれからもっと強くなんねぇといけねぇし、負ける気なんかサラサラないってことを言いてぇんだよ。」

 

「さすがだな切島、けど俺だって負ける気はねぇぞ。」

 

「望むところだ!いつかお前の拳でも倒れねぇぐらい強い男になってやる!」

 

「何お前らだけで盛り上がってんだよ!1番になるのはこの俺だ!」

 

「いーや俺だね!」

 

「僕さ☆」

 

「アタシー!」

 

「ケロ、私だって負けないわ。」

 

「騒ぐなお前ら!1番になるのはどう考えても俺だろうが!調子乗んな!!」

 

自分よりも格上だと思うような相手がいても、悲観することなく上を目指し続ける。

 

Plus・Ultraの精神は確実にこの場にいる全員の中に根付いていた。

 

「お前ら、そろそろ着くからその辺にしとけ!」

 

『はい!』

 

あと、相澤先生に逆らってはいけないという精神も…

 

*

 

『皆さん、待ってましたよ。』

 

バスで連れてこられたのはドーム型の巨大な施設。そこで宇宙服を思わせるコスチュームを着た教師が俺たちを出迎えてくれた。

 

「『スペースヒーロー 13号』だ!災害救助で目覚しい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

「わぁ〜!私好きなの13号!」

 

『早速中に入りましょう。』

 

『よろしくお願いします!』

 

13号先生に連れられドームの中へ入るとそこにはまるでUSJのようにエリア分けされた設備が広がっていた。

 

『水難事故、土砂災害、火災暴風、etc…あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も…』

 

ウソの災害や事故ルーム…略してUSJ!

 

((ほんとにUSJだった!))

 

おそらくクラスの誰もがそう思ったに違いない。

 

「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが…」

 

『先輩それが…通勤時に時間ギリギリまで活動してしまったみたいで。仮眠室で休んでます。』

 

「不合理の極みだなオイ…」

 

先生たちが俺たちに聞こえないぐらいの声で何かを話している。そういえばオールマイトが見当たらないが、その事で何か話してるんだろうか?

 

「(まぁ念の為の警戒態勢だしな…)仕方ない、始めるか。」

 

『えー、始める前にお小言を1つ2つ…3つ4つ…』

 

(どんどん増えてく…)

 

どうやらオールマイト不在の状態だが授業を始めるらしい。13号先生が俺たちの前で語りだした。

 

『皆さんご存知かと思いますが僕の個性は『ブラックホール』、どんなものでも吸い込んで塵にしてしまいます。ですが、これは人を簡単に殺すことのできる力です。みんなの中にもそういう個性の子がいるでしょう。』

 

全員が息を飲む。普通の人間なら誰もが理解している当たり前の事実を改めて突きつけられたのだ。

 

「現在の超人社会は、個性の使用を資格制にすることで厳しく規制し、一見成り立ってるように見えます。しかし、1歩間違えば人を容易に殺せる行き過ぎた個性を個々が持っていることを忘れないでください。」

 

言われるまでもないこと、だからこそ強く伝える。なぜなら自分たちが暮らす社会は、その『言われるまでもないこと』によって守られているのだから。

 

「相澤先輩のテストで自身の内に秘めた可能性を知り、オールマイトの戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを知ったと思います。そしてこの授業では心機一転、人名のために、個性をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない、助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな。以上、ご清聴ありがとうございました!」

 

拍手と喝采が起こる。13号先生のスピーチは、俺たちにまた1つヒーローになるために大切なことを教えてくれた。

 

「よし、そんじゃまずは───」

 

ビリビリビリ───

 

「………っ!!!」

 

不意にUSJ内の照明が一斉に落ちる。何もいないと思っていた場所に、()()()()()()()()()()()()()()が現れた。

 

……ああ、そうか、そうかよクソッタレ、よりにもよって()()()()()()()かよ!

 

USJの中心に位置する噴水の前、そこに突如として黒い靄が広がり、中から人の手が…死柄木弔(アイツ)が姿を現した。

 

「一塊になって動くな!13号、生徒を守れ!」

 

素早く相澤先生の指示が飛ぶ、靄の中からはどんどん人が増え続けていた。

 

「なんだ?また入試ん時みたいな『もう始まってる』パターン…」

 

「動くな!」

 

大声で制止する相澤先生、その声に全員が異常事態なのだと理解した。

 

「あれは敵だ!」

 

*

 

『13号にイレイザーヘッドですか、先日頂いたカリキュラムにはここにオールマイトもいるはずなのですが。』

 

「どうすんだよ、こんなに大衆引き連れてきたのにさぁ…オールマイト(平和の象徴)いないなんて。」

 

『ええ…ですが、あなたのもう1人の目的はいるみたいですよ。』

 

黒霧の目線の先、先日とは違いかっこいいコスチュームに身を包んだあのガキがいる。俺たちの存在に気づいてるらしく、戸惑うばかりのクラスメイトとは違ってこちらを睨みつけていた。

 

「いいねぇ…ならあのガキを殺せばオールマイトは来るのかなぁ?」

 

想像する…ただ殺すだけじゃない、できる限りいたぶった後、あいつの体を端から崩壊させてやる様を…それだけで心が踊るようだった。

 

「さぁ、ゲームスタートだ…!」

 

今日この日を平和の象徴の最後の日にしてやる!

 

*

 

「はぁ!?敵って…ヒーローの学校に乗り込んでくるとかアホすぎるぞ!」

 

「13号先生、警報用のセンサーは?」

 

「もちろんありますが…」

 

「攻め込んだのはここだけか、それとも学校全体か…いずれにしろバカだがアホじゃねぇ。警報の無効化に、タイミングを見計らった奇襲、明らかに何らかの目的があって用意周到に計画された犯行だ。」

 

轟の推察に全員が息を飲む。完全に隔離された空間で起きた出来事に皆の不安が強まるのがわかった。

 

「13号、学校に電話飛ばしつつ避難開始、上鳴も個性で通信試せ。センサーに対策をしてきた連中だ、通信も妨害してるかもしれん。」

 

『分かりました!』

 

「うっす!」

 

「それと猿渡、所感でいい、()()()()1()()()()()?」

 

先日の報告の時に作った人相書きのおかげで奴らの存在には相澤先生も気づいてるんだろう。その上での情報を欲しがってる。

 

「今前に出てきてる連中はそこまでだと思います。問題は後ろにいるリーダー格であろう3人、特にあの脳みそむき出しの敵からはこう…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を感じます。」

 

「おおよそでいい、どれぐらい強い?」

 

「…少なくともプロのトップヒーロー、下手すりゃオールマイト並です。」

 

全員に動揺が走る。俺だってこんなこと言いたくはない、だが知っていれば回避出来る危険かもしれない以上伝えない訳には行かない。

 

「…なるほど助かる。13号、生徒たちを頼んだ。」

 

「1人で戦うんですか相澤先生!?『イレイザーヘッド』の戦闘スタイルは個性を封じてからの捕縛のはず、複数人相手の正面戦闘なんて…」

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。」

 

出久にそう言い残し捕縛布を展開しながら相澤先生…イレイザーヘッドは駆け出して行った。

 

一芸だけじゃヒーローは務まらない、その言葉の意味はすぐに分かった。

 

発動型の個性を抹消し、捕縛布の拘束を利用した投げ技と格闘術で次々と敵の手下を蹴散らしていく。

 

コスチュームのゴーグルにより目線が隠され、今誰が個性を消されてるのか分からない。個性を消されたことに動揺し、動きが止まればその時点で仕留められる。

 

多対一という圧倒的不利な状況が逆に相手の連携を乱す要因となり活路へと変わっていく。単純な戦闘力だけじゃないプロの戦術というものを見せつけられた。

 

「凄い…これがプロヒーローの実力…!」

 

「感心してる場合じゃねぇ、俺たちも行くぞ!」

 

13号先生の先導の元で入口にに引き返す。あと少しで外というタイミングで目の前に黒い穴が現れ、そこから先程の黒い靄が広がった。

 

『させませんよ。』

 

『くっ…!』

 

『初めまして、我々は『(ヴィラン)連合』。僭越ながらこの度、ヒーローの巣窟たる雄英高校に入らせていただいたのは──平和の象徴、オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして。』

 

……何を言っている?

 

オールマイトに息絶えていただきたいだと…こいつらは、オールマイトを殺すためにここに来たって言うのか!?

 

『本来ならばここにオールマイトがいるはずなのですが…なにか変更があったのでしょうか?…まぁそれとは関係なく、私の役目はこれ──』

 

「「オラァ!!」」

 

言い切る前に13号先生が個性を発動しようと指先を向ける──それよりも速く爆豪と切島が攻撃を仕掛けていた。

 

「俺たちにやられることは考えてなかったか!」

 

『────危ない危ない。そうでしたね、生徒と言えど優秀な金の卵。先日それを思い知らされたばかりでした。』

 

『ダメだ!退きなさい2人とも!』

 

確実に攻撃は当たっていた、しかし敵は無傷。13号先生が退避を促すも既に遅かった。

 

『私の役目は、あなたたちを散らしてなぶり殺すこと!』

 

そして靄が全員を包み込み──晴れた時にはクラスメイトの半分以上がその場から居なくなっていた。

 

*

 

『おかけになった電話番号は電波の届かないところにあるか電源が入っていないため繋がりません』

 

「むぅ…相澤君にも13号君にも繋がらない。」

 

いかなる理由があれ、勤務時間外の都合で教鞭を放り出すなど、とても愚かしいことをしていた。

 

終わりがけに行っていったい何が語れようというのか…あと10分ほどなら体も持つだろうし…フン!

 

「私が行──ごはァ!?」

 

強がってマッスルフォームになってみたものの、あえなく吐血してしまった…

 

「待ちなよ。まったく、いったい何をやってるんだいキミは。」

 

「ぶわっはっはっは!相変わらず無茶やっとるのう俊典!」

 

「校長先生!それにガープ先生まで!」

 

Oh…これは思わぬ来客だ、校長先生はともかくとして雄英にガープ先生までいらっしゃるとは。

 

「それよりもニュースになってたよ、『オールマイト、わずか1時間で3件の事件を解決!』…君がこの街にいるのに犯罪を犯す輩もそうだが君も大概さ、昔っから変わってないよねホント。君の後継者探しや活動限界を悟られないために私が勧めた教職だぜ、もう少し腰を落ち着けてもいいんじゃないかな?」

 

「根津よ、そんなことでで変わるならコイツはこんなんになっとらんわい。」

 

「ガープさん、そうは言っても勧めた以上はこっちも教職優先で動いて欲しいのさ。」

 

「で、ですので今からでもUSJに向かおうと準備を…」

 

「どうせ今行ってもすぐ戻ることになるんだろう?ならここで私の教師論を聞いて今後の糧にしたまえよ。」

 

お茶をいれ始めてる……こうなった先生は長いんだよなぁ。

 

「おう根津、ワシにも茶くれ。そうじゃ俊典、後で拳一の話も聞かせてくれんか!」

 

「もちろん、取っておきのせんべいもお出しするのさ!」

 

「先生方もお変わりありませんね…」

 

留守電ではなく繋がらないというところが気がかりだ…何も起こってなければいいのだが。

 

*

 

「障子君、猿渡君、みんなの居場所は!」

 

「…散り散りにはなっているが、この施設内にいる。」

 

「だがワープした先に他の気配も多数、おそらく相澤先生と戦ってるような奴らがいるんだろうな。そこまでヤバいやつの気配はしないから、みんなに戦って切り抜けてもらうしかない。…問題は目の前のあいつだ。」

 

この場に残ったのは13号先生に俺と飯田、障子、砂藤、瀬呂、麗日、芦戸、葉隠。男子たちは自力で、女子組は俺と飯田が助けて何とかワープから逃れていた。

 

『…委員長、君に託します。学校まで走ってこのことを伝えてください。』

 

「なっ、何を言ってるんですか先生!?」

 

『電話は圏外、先ぱ…イレイザーヘッドが個性を消して回ってるにも関わらず赤外線式のセンサーが無作動なところを見るに、妨害が可能な個性を持ったやつをすぐに隠したのでしょう。となると、そいつを探し出すより君が走った方が早い。』

 

「しかし!クラスのみんなを置いていくなど委員長の風上にも…」

 

「行けって!外に行けば警報がある、だからこいつらはこん中だけでことを起こしてんだろ。」

 

「外に行っちゃ追ってこれねぇよ、頼む非常口!」

 

「風上云々語るならさっさと行け!頼む委員長!」

 

「食堂の時みたく、私サポートならめっちゃするから!」

 

「アタシも!なにできるかはわかんないけど頑張る!だから委員長!」

 

『救うために個性を使ってください!』

 

「…っ!分かりました!」

 

『敵前で策を語る阿呆がいますか!』

 

『バレても問題ないから語ったんでしょうが!『ブラックホール』!』

 

13号先生の発動した個性により吸い込まれる靄、これでワープは封じ──ヤバい!!

 

「先生ストップ!」

 

「何を……グハッ!?」

 

遅かった!先生の後ろに靄が現れそこにコスチュームの破片が()()()()()()

 

『やはり13号、あなたは所詮災害救助が主なヒーロー、戦闘系ヒーローに比べて洞察力は低い。』

 

「飯田、走れ!芦戸、麗日先生を!」

 

「くそっ!」

 

「う、うん!」

 

飯田が走り出し、俺もそれに続く。おそらく13号先生はワープゲートを背後に繋げられてブラックホールで自分を吸い込んだんだ。ダメージがどうかまではわからんけど、今は飯田の脱出を優先するしかない!

 

『させん!』

 

飯田の目の前に靄が現れる。まずいこのままじゃ──

 

「行けっ!」

 

すんでのところで障子が身を呈して靄を抑え込む。しかし後ろからはまだ靄が迫って来る…!

 

『生意気だぞお前たち!…っ!?なんだ!?』

 

だがまたも靄が俺たちから遠ざかる。振り返ると麗日が黒霧の胴体をみつけ触れたことで宙に浮き、瀬呂のテープで掴んだ上で砂藤が投げ飛ばしていた。

 

「行っけー!飯田君!」

 

「ナイスだ皆!飯田、右側の扉にそのまま突っ込め!」

 

「分かった!」

 

トップスピードに乗る前の飯田を追い越す。あとはドアを蹴破るだけだ!

 

猛牛星衝突(アルデバランインパクト)!」

 

両開きの扉の右側のみ破壊する──飯田は期待通りそのまま駆け抜けて行った。

 

「直ぐに戻る!それまでどうか無事でいてくれ!」

 

「頼んだぜ委員長!」

 

敵の思惑を振り切り、希望は確かに繋がれた。助けが来るのも時間の問題だ。

 

『無事ですか…増援が来るまで、誰1人欠けずにいられるとでも?』

 

「生憎だな黒霧さんとやら、あんなチンピラどもにやられるほどこのクラスは甘くねぇぞ。」

 

次の瞬間、巨大な湖があるエリアの方から大きな音が聞こえ、水しぶきが上がっていた。技の規模的におそらく出久だな。

 

他のエリアの気配を探ってみても誰かがやられている感じはしない。このまま耐えられれば全員無事に帰ることができる──そう思ってた。

 

『…やれやれ、いくら金の卵と言えどまだまだ学生。本当の状況が見えてないらしい。』

 

そう言い残し黒霧は姿を消した。

 

この時、正直俺たちは浮かれてたんだと思う。飯田を逃がしたことで無事は確定したようなものだと思い込んでた。

 

だが俺たちは敵の本当の悪意をまだ知らなかった。

 

「………え」

 

それは誰の声であっただろうか。13号先生の無事も確認し、相澤先生の状況を確認しようと芦戸だけ残し広場へと向かった。

 

そこで見た光景は

 

頭から血を流し、敵に押さえつけられ腕を折られる相澤先生の姿だった。

 

*

 

10分前

 

(流石にキツくなってきたな…)

 

敵の数はだいぶ減らしだが、目もそろそろ限界が近い。1度離脱して立て直したいところだが…

 

「無理をするなよ、イレイザーヘッド。」

 

「お前の個性は知ってる!」

 

リーダー格の男─死柄木とかいう敵が仕掛けてきた。五指で触れた相手を崩壊させる個性、猿渡からの事前情報がなけりゃ初見殺しでやられてたな。

 

格闘はそこそこできるらしい、抹消の時間が短くなってきてる以上近接戦は危うい。個性を消したタイミングで捕縛布を使い投げ飛ばす。叩きつけようと思ったが上手く着地されてしまった。

 

「対策バッチリかよ…あのガキの仕業だな。」

 

「お前らの目的はなんなんだ!?」

 

「あぁ…まだあんたには言ってなかったっけか。…みんな大好き平和の象徴、オールマイトを殺しに来たのさ!」

 

「!?」

 

下卑た笑みを浮かべる死柄木。オールマイトを殺すだと?確かにあの個性なら触れさえすれば可能かもしれん。だが…

 

「無謀だな。お前の個性は確かに強力だが、あの人に通用するとは思えん。」

 

「無謀ねぇ、こっちはそれだけの準備をしてきてるんだ。…あぁそうだ言い忘れてた、イレイザーヘッド()()()()()()()()。」

 

───しまった!

 

振り返るとそこには猿渡が最も警戒していた敵が無感情に立っていた。

 

まずい、離脱を──

 

グシャッ

 

次の瞬間、俺の意識は腕の一振で途切れた。

 

*

 

「ねぇ…あれ、相澤先生だよね……」

 

震えた声で芦戸がつぶやく。言葉にすることで改めて目の前の状況を実感させられた。

 

相澤先生が敵にやられてしまった。

 

「お、おいどうすんだよ!このままじゃ先生が!」

 

「どうって…プロがやられちまうような相手、今の俺たちじゃ…!」

 

瀬呂の問に砂藤も力なく答えるしかない。この場の全員が相澤先生を助け出したいという思いを抱いているのは間違いない。

 

ただそれと同時に、目の前にある圧倒的な理不尽に、心を折られかけていた。

 

「ね、ねぇ…猿渡君どうしよう…」

 

ただその中で

 

「ん、じゃあ俺行ってくるわ。」

 

何故か拳一()の心は僅かたりとも揺らいでいなかった。

 

*

 

「……聞き違いか?お前今…」

 

「ああ、先生を助けに行ってくる。」

 

まるでコンビニに行ってくるかのように気軽にそう告げる。全員の顔が驚きで固まっているのがよくわかった。

 

「ふ、ふざけてる場合かよ!プロヒーローがあんなになっちまうような相手だぞ!無謀通り越してただの自殺志願じゃねぇか!!」

 

「ふざけてねぇよ、どの道動かなきゃ状況悪くなるだけだしな。」

 

「こんの…!」

 

砂藤が胸ぐらを掴んでくる、向こうの方が身長が高いせいで足が少し浮いてるな。

 

「確かにお前は強いよ!クラスの中じゃ正直最強だと思う!けど相手は本物の敵で、人の命を簡単に奪うような奴らなんだぞ!!」

 

「その人の命を簡単に奪うやつらが、相澤先生を殺したらその後どうなると思う?」

 

砂藤が押し黙る、全員考えてなかったわけではないだろう。

 

先生が死んでしまえば、奴らが次に狙うのは自分たちだってことを。

 

「このままだと飯田が先生たちと戻ってくる前に全滅する。13号先生も気を失ってる状況で相澤先生を助けて、その上で時間稼ぎをする…こういう言い方は嫌だけど、今この場でそれができる可能性があるは俺だけだ。」

 

「っ…でもよ、じゃあお前はどうなるんだよ!それでお前だけ死んじまったら……」

 

「……ありがとうな砂藤。」

 

本当にいいやつらばっかりだ。だからこそ誰も失いたくないと、心の底から思う。

 

あの時の父さんもこんな感じだったのかな。

 

「心配すんなよ!一応考えはあるし、基本的には気を引いて逃げ回るだけだ。…絶対生きて帰ってくる!」

 

……少しだけ嘘を吐いた。絶対っていう保証はない、失敗すればそれ相応の結末が待ってるだろう。

 

「……行ってくる、手離してくれ。」

 

「…っ!……ぐぅ……!」

 

泣きそうな顔で砂藤が手を離す。そのまま振り返り広場に向かって歩き出す。…なるべく心配はさせたくは無いな

 

「…待ってよ。」

 

「葉隠…」

 

「本当に行っちゃうの?」

 

「そうだな。」

 

「凄く危ないのに?」

 

「そうだな。」

 

「入試のロボットとは訳が違うんだよ?」

 

「そうだな。」

 

「……死んじゃうかも、しれないんだよ?」

 

「そうだな…」

 

「ねぇ、猿渡く…「葉隠」」

 

「……じゃあな!」

 

だからいつも通り、笑って別れを告げるのだ。

 

*

 

「ぐっ…うぅ…」

 

「いやいや、さすがだなヒーロー。まさかここまで手下を減らされるとは思わなかった。」

 

メキィ!

 

「ぐああ!?!?」

 

掴まれた相澤の腕が小枝のようにへし折られる。彼の上では真っ黒な巨躯を持つ敵が体を押さえつけていた。

 

(個性を抹消した状態でこのパワーか…!)

 

「対平和の象徴 改人『脳無』。俺たちの取っておきさ。そいつのパワーは個性なしで増強系の個性持ち以上、抹消もこれじゃあ意味が無い。」

 

『死柄木弔。』

 

「遅いぞ黒霧、ガキどもは全員散らしたんだろうな?」

 

「申し訳ありません…1人USJの外へ逃がしてしまいました。」

 

「………は?」

 

それを聞き、相澤の中で少しの希望が生まれた。状況を鑑みて、おそらくは13号の指示で飯田が脱出したはず。やつの脚なら校舎まではそうかからない、援軍が来るのも時間の問題だ。

 

「………」

 

「まもなくオールマイトだけでなく教師全員がここに集まります。それまでに撤退を──死柄木弔?」

 

───ガリ

 

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ─────

 

計画が狂ったことに苛立ちを隠そうともせず死柄木は首筋を掻きむしる。本人の異様な用紙も相まってその様子からは狂気すら滲み出ていた。

 

「ああ黒霧…お前がワープゲートじゃなけりゃ真っ先に殺してたぞ!……オールマイト以外の教師に来られたらどうにもならない…ゲームオーバーだな。」

 

脳無が相澤の腕を離し、死柄木の元へ帰っていく。ゲームオーバー…撤退を決めたであろう敵たちは背を向けて歩き出した。

 

──しかし。

 

「あぁそうだ、このままただ帰るのも面白くない。どうせなら嫌がらせをして帰ろう。」

 

「何を…する気だ…!」

 

「この前のあの生意気なガキ、あー…なんて名前だったか黒霧?」

 

『調べでは猿渡拳一と。』

 

「そうだ猿渡拳一だ…あのガキを殺してから帰ろう。」

 

「!?」

 

「オールマイトがいる雄英高校で生徒から死人が出た…そうなれば平和の象徴なんて腐った信仰は消えて、絶望する人間が増える…!」

 

「やめ…ろ!!」

 

「そこで指をくわえて見ていろイレイザー、自分の生徒が殺される様をなぁ!」

 

必死に壊れた体を動かそうとする、しかし無情にも敵たちは入口に向けて遠のいていく。

 

拳一に固執しているようだが、奴らがそれだけで満足するとは考えにくい。

 

自分には何もできない、状況は絶望的、このままでは生徒たちが全滅するのみ───

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら、今ここでやってみろよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

しかしどんな深い暗闇(絶望)の中にも

 

「っ!?死柄木!」

 

「っ!脳無!」

 

双星衝突(デュオスクロイインパクト)!」

 

(ヒーロー)は確かに存在しているのである。

 

*

 

黒霧は何とか吹き飛ばせたものの死柄木との間にあの脳みそ敵が挟まったことでそちらは阻まれてしまった。

 

すぐさま飛び退き離脱、相澤先生の近くへと着地する。パッと見頭からの出血よりも腕の骨折の方が酷い。命がどうこうなりはしないだろうが、直ぐに治療が必要なのは分かった。

 

「遅くなりました先生。」

 

「馬鹿…野郎!何しに、来た!!」

 

「もちろん先生を助けに…無謀だってのはさっきみんなから聞き飽きたんで言わないでもらえると助かります。」

 

さてどうすっかな、先生の安全確保までは頭回ってなかった。担いで離脱してもいいが、確実に追いかけてくるだろうし…

 

シュルルル──ピタッ

 

「……ははっ、ナイス瀬呂。助かった!」

 

離れた場所から瀬呂が個性を使って先生を回収してくれた。運び方は荒いがここにいるよりはよっぽどいい。

 

「…なにが、『助かった』だ!ふざけんなよ!独りでカッコつけて、葉隠まで泣かして!この最低最悪、爆豪以下のクソ野郎!」

 

さすがにその罵倒は爆豪にも失礼──これまでの行いを考えればさもありなんか。

 

「後で砂藤たちと袋叩きにしてやる!…だから、絶対に帰ってこい!!!」

 

「…いいねぇ、あとの楽しみが増えた。」

 

こりゃ意地でも帰らんといかんくなったな。

 

「…くっ、アハハ!!いいねぇ、素晴らしい友情だな!そう来なくっちゃ猿渡拳一!!!」

 

「久しぶりだな、確か死柄木弔だったか。悪いが他の皆には手ぇ出させねぇぞ。」

 

互いに真正面から笑みを向ける。片や己を奮い立たせんと、片や狂気を孕んだ憎しみをもって笑い合う。

 

『たったひとりで、本当に我らを倒せるとでも?』

 

「そこまで自惚れちゃいないよ。あんたと死柄木、そんでそこのデカいのと正面から戦ったら命がいくつあっても無理だ。俺が来たのはあくまで時間稼ぎだよ。」

 

「俺たちが本当にお前一人を狙うとでも?黒霧がいりゃ他のクラスメイトも殺し放題だ。お前がいちばん嫌がることをしてやってもいいんだぜ?」

 

「……なんだよ期待して損したな。」

 

「…あ?」

 

「わざわざ計画ねってオールマイトを殺しに来た連中が、たった1人の学生相手にしっぽ巻いて逃げんのかよ!度胸あるのかと思ったら所詮は日陰でコソコソしてるしかない小物共だな!…だから今回の計画も失敗するんだよ三下が。」

 

笑う、嗤う、嘲笑う。相手の怒りを一身に引きつけるために。普通ならばこんな安い挑発には乗らないだろう。

 

「………」

 

『死柄木弔、挑発に乗ってはいけません。もう時間も少ない、ここは──』

 

「うるさいぞ、黒霧…黙ってろ!!」

 

だが死柄木(ヤツ)は乗る。

 

死柄木の精神性はまるきり子供のそれだ。感情を隠そうともせず、少しでも気に入らないことが有れば癇癪を起こす。挑発でこちらに注意を向けるのは容易い。

 

「ここまでイラついたのは初めてだ…お前は確実に殺してやる!脳無!」

 

死柄木の呼び声で脳みそ…脳無と呼ばれた敵が前に出る。…やはりこいつの気配は異質すぎる。少なくとも今の自分が倒すのは無理そうだ。

 

「脳無は対オールマイト用に作られた切り札だ!こいつがいる限り、お前に勝ち目なんか無いんだよ!」

 

「言われなくても勝てないことぐらいわかってるよ。俺の役目はたった1つ、お前らをみんなのところに行かせないことだけだ。…それに、なにも無策でここに来たわけじゃない。」

 

「なんだと?」

 

羽織ったコートと上のスーツを脱ぎ捨て、腰を深く落とし右拳を地面につける。

 

「切り札はこっちにもあるってことだ!」

 

己の内に眠る覇気を全て解放し、全身に巡らせる。負荷に体が悲鳴を上げそうになるが、覇気による身体強化で黙らせる。

 

…父さんが死んだあの日からずっと考えてた。もし自分に力があったなら、大切な人を失わずに済んだのではないかと。

 

強くなるため、じいちゃんに頼んで死ぬほど特訓をつけてもらった…もう二度と誰も失わないように、もう二度と誰も遠くへ行ってしまわないように──だから!

 

「ギア2(セカンド)!」

 

今ここで、限界を超えろ!!

 




書きたいことが書けたので後悔はない(2度目)

ついに登場「ギア2」
詳しい解説は次回にしますが設定は考えてあります。原作をオマージュしつついい感じに仕上がってると思うので気に入っていただけましたら幸いです。

次回でUSJ編完結、一気に書き切るので予想ではまた10000字超えてくると思ってます。お楽しみに!
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