仕事が忙しかったのとなかなか筆が進まなかったのとでかなり遅れていしまいましたね。でも書ききったら10000字超えなかった不思議。
それとお気に入り登録2300突破ありがとうございます!気づけば評価をつけてくれた方も70人になっておりまして、どんな評価であれ本当にありがたい限りです。
それでは本編をどうぞお楽しみください。
計画は概ね完璧なもののはずだった。
事前情報を手に入れ、兵隊を集め、妨害工作も万全。あの方からの切り札も与えられ、これならば
蓋を開けてみればどうだ、13号、イレイザーヘッドは重症を負わせたものの未だ生存。生徒の1人を取り逃し援軍が来るのも時間の問題。プロどころかまだヒーローの卵でしかない生徒の命すら1つも奪えていない。
何よりも信じがたいのは──
「おいどうなってんだ…なんで脳無が
目の前の光景に死柄木弔が驚愕の叫びをあげる。無理もない、我々の切り札…対オールマイト用改造人間の脳無がたった1人の学生にその動きを封じられているのだ。
決して脳無にダメージが与えられているわけではない。やつにはあの方の力により、『ショック吸収』と『超再生』の個性が与えられている。この圧倒的な打撃耐性と回復力をもってオールマイトに対抗するための存在、それが脳無だ。
だがあの少年はこれまでとは比べ物にならない、まるで稲妻のような速度で移動し、尚且つ常に脳無の死角からの一撃離脱を続けることでこの戦局を維持している。
あの速度で動かれれば私の霧で捉えることも難しく、その上下手に手を出したり他の生徒を狙えばあの攻撃の矛先がこちらに向く可能性もある。
状況は完全な拮抗状態…だがそれも時間の問題だ。
あの少年の動き、おそらく個性で限界以上の強化を己に施しているに違いない。そうでもなければ脳無の反応速度を超えて死角を狙い続けるなど不可能だからだ。
今はこのままでいい。いずれ少年が力尽きた時、改めて我々が手を下せばいいのだから。
*
(……とか、考えてんだろうな多分!)
脳無の周囲を駆け続け、攻撃を続ける。まるでダメージが通ってる気はしないが、今はこいつをこの場に留め続けることが目的だ。これで問題ない。
(それにいつまでもこの状態が続かないのはその通りだしな…)
ギア
通常時において攻撃と身体強化に半々で振り分ける覇気を全て身体強化に回すことで通常をはるかに凌ぐ身体能力と知覚機能の強化を施す技だ。
欠点としては限界以上の強化を施すことによる体へのとてつもない負担、そして持続時間の短さ。
今日みたいに使用前に体力を消耗していない状態でも最大5分がいいところ…だがこれは
(体の負担を全無視して無理矢理使い続ければ10分は持つ…向こう何日かは指1本動かせなくなるだろうが、ここで時間を稼ぎきらなきゃ全滅だ!)
思考しつつ加速を続ける。極限まで研ぎ澄まされた見聞色を脳無に1点集中し、感じ取った気配から
(あークソっ!いくらなんでも硬すぎる!いや、硬いというよりダメージそのものが無効化されてる感じだ!オマケに──)
振り下ろされた腕を回避し、それを足場にして顔面に蹴りを入れる。常軌を逸した速度の蹴りはいとも簡単に脳無の眼球を吹き飛ばし──
(さっき相澤先生に見られながら押さえ込んでたところを見るにパワー自体は個性関係なしの素のもの。こいつの個性はおそらく超再生と打撃耐性!轟みたいなタイプの複合型か…考えたくもないが
オールマイトのパワーにも耐えられるんなら今の自分がこいつを倒せる道理は無い。
ならば援軍の到着までこいつを引き付けつつ、少しでも情報を集めて次に繋ぐ!
「………」
「もうちょい反応してくれた方がやりやすいんだけどな、感情全部どこかに落っことしてきたんか!」
ダメージどころか一切の感情も見せない脳無…軽口を叩いてないとやってられない。さっきまで騒いでた死柄木も状況を理解したのか今はニヤニヤとこちらを嘲笑っている。気色悪い、その顔に1発入れてやろうか…いやダメだ、その隙に脳無の攻撃をもらえばその時点で死ぬ。
加速をやめて距離をとる。ギア2の活動限界まであと4分。
「おいおい、もう終わりか?確かにとんでもない速さと威力だったが、脳無には通用しなかったみたいだなぁ!」
『もう十分でしょう、大人しくしていればせめて楽に死なせてあげますよ。』
「…好き、勝手……言ってくれるわ…フーっ…」
痛みで体がバラけそうだ…呼吸するのも辛くなってきた…あー…確かにここで諦めたら楽なんだろうなぁ──
───それでも!!!
「はあぁぁぁぁあ!!!!!」
「なっ!?」
「馬鹿な…どこにまだこんな力が!?」
残り少ない覇気を漲らせる、今からやるのが最後の攻撃だ。
死にたくはない…でも、また大事なものを失うのはもっと嫌だ。それを守れるんならこの場で燃え尽きたって構わない!
だから!!!
「命懸けで突っ走れ!我が命は流星の如く!!!」
活動限界まで──残り3分
脳無に向かって加速、1歩目で最高速度に乗り懐へ。
迎撃─降り注ぐ拳の雨を掻い潜り地面スレスレの低姿勢からアッパーを胴体に…脳無の体が少しだけ浮き上がった。
残り2分
隙を逃さず回転、後ろ回し蹴りで追撃し完全に脳無を宙に浮かせる。浮いた足首を掴み取りジャイアントスイングでさらに高く投げ飛ばす。
残り1分
「これで最後だ!ありったけ全部持ってけ!」
落下地点へ加速、空中で満足に動くことのできない脳無に渾身のラッシュを叩きこむ──
「
放たれるは拳撃の嵐。相手がそこいらの敵であればその命を奪って余りある連撃…さすがの脳無の体にも
残り──5秒
「さらに……向こうへ!」
「Plus・Ultraァァァ!!!」
正真正銘、最後の一撃は脳無を施設最奥の壁まで吹き飛ばし、衝突する音が響き渡った。
*
『これ程とは…』
少年の最後の攻撃に思わず息を飲む。…本当に出会ったのが『今』でよかった。
ダメージが入らなかったとはいえ、脳無を単独で相手取り10分時間を稼ぐ事ができる者などはたしてプロヒーローですらどれだけいるというのか。
まだほんの15歳の少年…このまま成長していけば、いずれ脳無を正面から屠る存在になり得るだろう。
だからこそ、今後の計画のために何としてもここで摘んでおかねばなるまい。
「ぜーっ……はーっ……」
「いやいやホント…イレイザーヘッドといいお前といい、ヒーローってやつは本当にカッコイイなぁ。思わず感動しちゃったよ。」
「………」
施設の最奥に吹き飛ばされた脳無もこちらへと戻ってきた。少年は既に虫の息、とどめを刺すことは造作もない。
「敵とはいえいいもの見せてくれたことには感謝しないとな……だから、お前殺すのはいちばん最後にしてやるよ。」
「!?」
始まった…相手の嫌がることを思いついたら実行するまで気が済まない。計画を練る上では重要な素養ではあるが、今この場ではただの悪癖でしかない。
「時間が無いから全員はさすがに無理だが…入口いる連中だけならなんとかなるだろ。そいつらを脳無に捕まえさせて、お前の目の前で粉々にしてやる…!」
「や、めろ…!!」
「無理をするな猿渡拳一、心配しなくてもすぐに戻ってくるさ!…行くぞ黒霧。」
言われるがままにゲートを繋げ始める。幸い時間のことはある程度頭に入っているらしい。数人殺した後この少年を始末すれば本来の目的は果たせずとも十分な成果と言えるだろう。
…ゲートは繋いだ。あとは手早く───
「……待てや……!」
*
『そいつらを脳無に捕まえさせて、お前の目の前で粉々にしてやる…!』
朦朧とした意識の中で死柄木の嗤う声が聞こえる。
このままでは入口にいる瀬呂や砂藤たちはやつに殺されてしまう。
ドクン
あの時より強くなったと思ってた。でも実際はたった10分稼ぐのが精一杯。
ドクン
自分はまた何も守れずに目の前で大切な人たちを失うのだろう───
ドクン
ふざけるな!!!
それは混じり気ない純粋な怒りだった
「あいつらには手を出すな…もしその薄汚ねぇ手であいつらに触れてみろ…!」
それが自分の内から溢れ出した瞬間
「殺すぞ、敵連合!!!」
自分の中で『何か』が目覚めるのを感じた。
*
「なん…だよ、これは!?」
黒霧がゲートを作ってガキどもを捕まえに行こうとした瞬間だった。死にかけの
いや…よく見りゃ周りにいくらか残ってた手下たちが軒並み気を失って倒れていく。俺自身、気を抜けば意識を刈り取られそうだ…!
『あの、男は…いったい何なのだ!?』
「くっ、脳──」
「……!!!」
『な!?』
(脳無が死柄木弔から命令が下される前に動いたただと!?感情も思考も無い、命令を待つだけの人形が本能で脅威と判断したというのか!?)
脳無が勝手に動き出したのは驚きだが、これであいつの息の根は止まる!
「終わりだ!猿渡拳一!」
「───そいつはやらせねぇぞ。」
「猿渡君から離れろ!」
*
目の前に脳無が迫ってくる。自分の体から溢れ出した力も消え失せた。
悪いみんな…約束は果たせそうにないらしい。
覚悟を決めて目を閉じる。自分の体を吹き飛ばす衝撃はすぐにやって────
キィィィン!
───────ああ、もうなにも感じない。体がどんどん冷たくなっていくのを感じ……いやそれにしたって急に冷えすぎじゃ──
「なに勝手に諦めてんだ。カッコつけて飛び出したんなら最後まで足掻いたらどうなんだ?」
「……だったら…もう少し早く、助けてくんねぇか、轟?」
目を開けた先に首から下が氷漬けになった脳無と、頼りになる紅白頭の後ろ姿があった。
「スマッシュ!!!」
「ぐあっ!?」
「死柄木弔!」
「これ以上猿渡君に手出しはさせない!」
「出久、お前…!」
轟に続き出久が死柄木に一撃を入れた…そんなことより驚きなのは
「調整、いつの間に身につけたんだよ…」
「君にいつまでも置いてかれるわけにはいかないからね!」
──ほんとに凄いやつだよお前は。
「痛ってぇ……突然殴られた。スマッシュとかオールマイトのフォロワーかよ。」
『クラスメイトの増援ですか。しかしその程度の力では脳無は──』
「知ってるさ。それと、自分の心配した方がいいぞ。」
『何を──』
「オラァ!」
BOOOM
『ぐあっ!?』
「このうっかり野郎め!やっぱり思った通りだ、靄のゲートになれる部分は限られてる。それで実態部分を覆ってたんだろ!全身靄の物理無効人生なら、最初攻撃した時に『危ない』なんて発想出ねぇもんな!」
「うっ…この!」
「おっと動くな、『怪しい動きをした』と俺が判断したらすぐ爆破する!」
「ホントにヒーロー志望のセリフか!?…ってそれよりも大丈夫か猿渡!」
「切島、悪い…助かる。」
隙をついて爆豪が黒霧を取り押さえ、切島が肩を貸しに来てくれた。
「あーあ、
死柄木の声に答えて脳無が動き出す。凍った四肢がバキバキと音を立てて崩れるが、お構い無しに氷から抜け出した。
「外から見てたが、確か再生能力があるんだったか。」
「ああ…じきに手足が生えてくるはずだ…結局のところ、あいつに暴れられたら今の俺たちじゃ──」
ドガァァン!!!
「何だ、爆発か!?」
「入口の方から…もしかして!」
「…ああ、何とか間に合ったらしい。」
「──遅くなってすまなかったね。」
見聞色がまともに機能してなかったから気づかなかったけど…ここまで来ればはっきりと気配を感じとれる。オールマイトが来て───
「もう大丈夫だ…何故かって?」
「ワシらが来た!」
───いやなんで
*
20分前 雄英高校仮眠室
「──このような理由から、教師とヒーローという職業の両立は大変な負担を強いられるというわけさ。」
「相変わらず話し始めると長いのぉ。 バリバリ」
うーん、結局校長先生の話を聞き込んでしまった。ガープ先生もいる手前USJに飛び出していくわけにもいかなかったが…なんだかとてつもなく嫌な予感がする。
「そんなことより俊典よ、拳一のやつは最近頑張っとるんか?」
「え、えぇとても優秀な生徒です。彼とは連絡はあまりお取りにならないので?」
「月1回の連絡だけじゃ。便りがないのはなんとやらであまり心配はしとらんがな。」
「教師の間でも彼は度々話題になってるのさ。この前も──」
ピー ピー ピー
「校長先生、これは…」
「緊急連絡用の端末だね…」
『校長先生!すぐに職員室に来てください!』
スピーカーモードで応答した端末からミッドナイト先生の声が響いた。
「何があったんだい?」
『USJが敵の襲撃を受けました!通信、警報は妨害され、委員長の飯田君が直接救援要請に来ています!』
「!?」
「敵の目的は!」
『飯田君の話では…オールマイトを殺害するために来たと…』
「なんだって!?」
「!!」
私を狙って敵が襲撃を!?……いやそんなことはどうだっていい!生徒が危険にさらされていることが何よりも問題だ!
「校長、私はUSJに行きます!」
「待たんかい、俊典。急ぎすぎるな。」
「しかし!」
「敵はおそらく本来であればUSJにお前さんがおることを予見して事を起こした。妨害工作で他の教師からの増援にも対策を行っておる。…これほど用意周到に策を練る輩が、なんの根拠もなくお前を殺すと言っておるわけないじゃろうて。」
「ならどうしろと!こうしている間にも生徒たちが危険にさらされている!それを見過ごすことなど──」
「落ち着かんかい。…ワシも行くから慌てるなと言うておるだけじゃ。」
「ガープ先生がですか!?」
「どの道残りの活動時間では満足に戦えんじゃろう。じゃが今は生徒らを安心させるための顔がいる。敵はわしに任せて、お前は保護と護衛に徹しろ。…
「……わかりました。」
「根津は動ける者をかき集めて後から来い!行くぞ俊典!」
「はい!」
「了解したのさ!」
*
「オールマイト!…ともう1人のじいさんはいったい誰なんだ?」
「なんで…じいちゃんがここに?」
「猿渡のじいちゃん…てことはあの人が!」
「『拳骨ヒーロー ガープ』!すごい、生で初めて見た!」
オールマイトとじいちゃんの登場で、追い詰められていた空気が一気に払拭された。というか、本当になんでじいちゃんここにいるんだ?
「オール…マイトさん…」
「相澤君、無事か!」
「俺も、13号も命に別状はありません…詳しい敵の…状況は、猿渡が把握してるはずです。確認ならそちらに…」
「なるほどのう、ならそうするとしよう。今は大人しく休んでおれ
「…覚えられてたんすね。」
「まぁのう。─さて。」
タンっ
「おう拳一、生きとるか?」
「……は?」
切島の気の抜けた声が耳元で聞こえる。それもそうだろう、さっきまで
「残念ながら、満身創痍でボロボロだよ…」
「その口が聞けるなら無事じゃな。こないだ雄英に侵入した2人の話は俊典から聞いとる、状況を簡潔に話せ。」
「えっと…今の状況は──」
「……脳無!黒霧を奪い返せ!」
一瞬の隙をついて手足の生え揃った脳無が死柄木の命令を実行に移す。爆豪に一瞬で迫り拳を振るおうとした
が───
「させんっ!」
「え……」
間一髪、オールマイトが爆豪を俺たちの方に投げ飛ばし自分が盾となることで救ってみせた。
「オールマイト!」
「大丈夫、平気さ!」
「ちいっ…」
「おい、まだワシが話しとる途中じゃろうが!!!」
ガシッ!
「少し遠くへ行っておれ…
脳無の顔面を鷲掴みにし、そのままボールかなにかみたいに投げ飛ばした。投げ飛ばされた脳無はUSJ内のドームを貫通し壁に激突、その軌道上には放出された覇気の余波が黒い稲妻のように残っていた。
(拘束からは抜け出せたが…これがあの方も警戒する『三大将』の力か!)
「おいおい…聞いてた話と違うぞ、なんでオールマイトレベルの化け物がまだ他にいるんだよ!?」
「やかましいのう…はぁ、それにしても納得がいかん。」
「あぁ!?」
「全盛期なら今頃USJの遥か外までぶん投げられたものを……
「このジジイ!…黒霧、脳無を連れ戻せ!」
黒霧がゲートを繋ぎ再び脳無が姿を現す。予想通りと言うべきか、その体には傷一つ付いていなかった。
「なんじゃ、本気で投げ飛ばしたつもりが傷一つ無いとは…いよいよワシも引退かのう…」
「ちげーよじいちゃん、あいつの個性は腕が生えかわるレベルの『超再生』と打撃耐性の
「何だ、思ったより頭も回るんじゃないか猿渡拳一…正解さ。脳無の個性は『ショック吸収』と『超再生』こいつは対オールマイトように作られた、究極のサンドバッグ人間ってわけさ!」
「個性の複数持ちに『作られた』だと…まさか!?」
「……ほう、そうじゃったのか。」
じいちゃんとオールマイトに緊張が走る。確かにあんな化け物を作れる奴がいるなんて考えたくもないが…あの反応まるで、
「俊典、小僧どもを守っておれ。こいつらはここで捕える。それと拳一。」
「な、なんだよ。」
「この戦いをよく見ていろ。今から見せるものが、お前が近い将来辿り着かねばならん領域じゃ。」
そういうとじいちゃんは1人で敵連合に向かって歩き始めた。
「…黒霧、やるぞ。」
「よろしいので?さらなる増援も時間の問題ですが…」
「本命がせっかくやってきたんだ、他の教師が来るまでにジジイ諸共仕留める。…撤退はいつでも出来るようにしておけ。」
「わかりました。」
「おいおい、逃げられると思っとるんか!」
じいちゃんと脳無が同時に走り出す。激突と同時に始まったのは、真正面からの殴り合いだった。
「せいやぁ!!」
「…!!」
ドンッ!!!
拳と拳がぶつかり合う。その衝撃は凄まじく、近くにいる俺たちにもその余波が届いていた。
「少年たち、危ないから下がってなさい!」
「な、なんつー衝撃だよ!」
「オールマイトに対抗できるパワー相手に真正面からの殴り合いなんて!?」
「……すげぇ」
俺がギア2を使っても足元にも及ばなかった敵と打ち合うじいちゃん…思えば本気のじいちゃんの戦いを見るのは初めてだと今更ながらに思った。
「殴りあってるなんて言うが…どう考えてもじいさんが押してる。」
「ああ、脳無とかいうやつの拳は完全に捌かれてんのに、猿渡のジジイの拳は的確に体を捉えてる。ショック吸収と超再生の個性のおかげで打ち合いが成立してるだけだ。」
「反射で避けるんじゃなくて、防御や回避の仕方を工夫することで脳無の攻撃をある程度誘導し予測しやすくしてるのさ。正直、殴り合いの技術に関しては私よりもガープ先生の方が上だよ。」
オールマイトですら賞賛する技術。───これがいずれ俺が到達しなきゃいけない次元…ははっ、とんでもねぇな。
だが勝負が動いたのは次の瞬間だった。
「……!!」
「ぬぅっ!?」
突如脳無が打ち合いを透かし、じいちゃんの両腕を押さえ込んだ。そして背後には──
『脳無を圧倒するとはさすがは伝説の三大将…しかし、少々警戒が疎かになりましたね。』
「終わりだジジイ!」
「じいちゃん!!」
じいちゃん背後に開いたゲートから死柄木の手が伸びる。その絶死の指先は確実にじいちゃんの体に触れ───
「阿呆、こうなっても問題ないから打ち合っとったんじゃろうが……ハアッ!!!」
衝撃が走った。じいちゃんの体からもはや過剰とも言えるほどの覇気が迸り、確実に触れていたはずの死柄木の掌は脳無の腕とともに弾かれていた。
「なっ!?どういうことだ!今確実に触れたはずだろ…なんで無事なんだよ!?」
「目の前で起こったことのみが事実じゃ。お前も観念せい!」
『まだですよ!』
死柄木に振り下ろされた拳が黒霧のゲートに吸い込まれる。腕を半ばまで飲み込んだゲートは徐々にその入口を閉じて行った。
『このまま腕を切り落とす!』
「無駄じゃと言うておろう!ハアッ!!」
再び衝撃、放出された覇気が今度はゲートを構成する靄を吹き飛ばし、まるで何事も無かったかのように腕が開放された。
『私のゲートまで!?』
「悪いが生半可な個性はワシには通用せん……そろそろ終わらせようかい!」
じいちゃんの拳に覇気が集中していく。次の攻撃を阻止しようと脳無が突っ込むが、じいちゃんは地面を蹴ると
覇気を込めることにより輝きを放つ拳、それが昇っていく様は1つの星が天に昇るかのようだった。
「まさかあれをやるのですか先生!?全員、私に捕まりなさい!」
「うわっ!?」
「なんなんだよ!?」
俺たち5人を抱えて離脱するオールマイト。上昇を終えたじいちゃんは今度は空を蹴り敵連合たちに向けて落下を始めた。
「これで終わりじゃ!」
「迎撃しろ脳無!黒霧はゲート出せ!!」
『くっ、間に合うか!』
「……!!!」
死柄木の命令に従い突撃する脳無、ゲートでの逃走を図る死柄木たち───
「
──赤い流星はその全てを打ち砕かんと降り注いだ。
*
「きゃああ!?」
「ケロ、何が起こってるの!?」
「全員固まれ!吹っ飛ばされるぞ!」
拳正の放った必殺の一撃、その余波は入口付近に避難していた生徒たちにも襲いかかっていた。
「先生たちは!」
「何とか無事だ!」
「なんだってんだよ今の攻撃!オールマイトがやったのか!?」
「…見間違えじゃなければ、さっきオールマイトと一緒に来たおじいさんの攻撃ね。」
「……おいおいマジかよ、USJの中心にクレーターみたいな穴ができてるぞ。」
「いったい何者なんだあのじいさん。」
「猿渡君たちは無事なのかな…」
「……大丈夫だ、どうやらオールマイトと一緒に離脱してる。猿渡も緑谷たちも無事だ。」
障子の言葉に安堵が広がる。事態は着実にに収束へと向かっていた。
*
「ふぅ…やはり衰えた。ある程度加減したとはいえこの程度の威力とは…歳は取りたくないもんじゃ。」
「いややりすぎなんだよクソジジイ!」
疲労も忘れて思わず突っ込んでしまった。しかも今ので加減しただァ!?ふざけんのも大概にしろこのバケモンジジイめ!
「だいたいオールマイト居なかったら俺たちも巻き添えだったぞ!USJめちゃくちゃにしやがって、ヒーローならその辺まで考えろや!」
「それぐらい察して自分で待避せんか!お前に分かりやすく先の景色を見せるためにやってやったんじゃぞ!」
ギャーギャーギャーギャー!!
「さ、猿渡ってじいちゃん相手だとこんな感じなのな。もっと冷静なやつかと思ってたけど…」
「う、うん。僕もこんな猿渡君初めて見た…」
「誰にだってそういう一面はあるだろ。」
「うるせぇ。」
「HAHAHA!いやー久しぶりに見たな、
脳無はさっきの攻撃で限界を迎えたのか、クレーターの底で動く気配がなかった…いや、どちらかというと命令を下す死柄木が居なくなったってのが大きな理由か。
「みんなー!無事かー!」
「飯田君だ!それに先生たちも!」
「他のみんなも集まってるな!おーい!」
「まぁ、これで一件落着……」
「猿渡!?」
「猿渡君!」
安心して気が抜けたら疲労が一気に襲いかかってきた…もう限界だ、後のことは任せよう…
そうして俺の意識は暗闇の中に落ちていった。
今回後書きかなり長めです、説明着たいことが多いので。
じじ孫大暴れの巻。ちなみに拳正が本編で空中を駆け上がっていった描写は完全に月歩です。原作ガープが六式使えんのか?とか疑問はあるかもしれませんがそもそも海軍中将のガープが海軍の高等体術である六式使えん方がおかしいやろと思って使わせました。六式は全て登場させるつもりはありませんが緑谷のエアフォースに対抗して嵐脚は使いたいなって今のとこ考えてます。
・ギア2
こちらの説明をするにあたってまずは今作における拳一の覇気の運用方法を少し掘り下げたいと思います。拳一は普段自分の中にある覇気を100とすると、これを身体強化と攻撃に5:5の割合で振り分けて使っています。ドラクエ風に例えるならMP100の状態から50をバイキルトとピオラに、残りの50で特技を撃つ感じでしょうか。
ギア2ではこの割合を崩し、100の覇気を全て身体強化と見聞色に全振りすることで元々のパワー、スピードなどを爆発的に強化します。攻撃に回す覇気はなくなりますが、そもそもがバイキルト×2、ピオラが×2かかってるようなものなので通常攻撃で必殺と同等の威力となるわけです。その分体に対する負担も大きく、現状だと最大5分間の強化形態(ただしこれは使用後の離脱までを考えた時間であり、本編のように無理やり10分まで使用は可能)となります。
また見聞色も限界まで強化されるため通常時よりも相手の行動を読む精度が上がり現状だと原作の見聞色未来視1歩手前ぐらいのことができます。
そして今後の展望として個性伸ばし訓練で覇気の総量が増え、体を鍛えることでワンピースのルフィのようにリスクなしで常時ギア2の状態で必殺技を放つことも可能になり、完全な未来視も身につくことになります。
原作のワンピースとかなり違う解釈になってるかと思いますが、そこは二次創作におけるオリジナル設定として受け入れていただけるとありがたいです。
・流星群衝突(メテオストリームインパクト)
ギア2状態で放つ渾身のラッシュ攻撃。名前の通り星がいくつも降り注ぐ流星群をイメージした技で、ぶっちゃけJETガトリングのオマージュです。ギア2の決め技と言えばやっぱりこれだよなってことで生まれました。
さて、本編後半にて原作ではオールマイト対脳無になるところで拳正じいちゃんに暴れてもらったわけですがそこも含めて原作と変わった点を説明しておきますと
・この時点で緑谷に5%の調整が身に付いている
・拳正が戦ったことにより、原作よりもオールマイトの活動時間が短くならなかった
緑谷の成長は5話の戦闘訓練で既にデラウェアが身についたように、拳一面という分かりやすい見本でありヒントをくれる存在が居ることで成長速度が上がったことが理由です。今後も彼の成長は原作よりも加速していきます。
オールマイトの活動時間は脳無との戦闘でダメージを負わなかったことで保たれました。これで神野での戦いで少しは楽になるはずです。
USJ編これにて完結!…と思いきやあと1話エピローグ的なものを書きたいと思うので体育祭編はその後になります。お楽しみに!