とある記憶のマリアート(完全凍結)   作:ぷろとうぃんぐ

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翼「うわわ、超久しぶりだよ……」

音葉「ここまで来たら、気まぐれに理由を知りたくなるね。混沌も、TASも更新してないのに」

紗瑛『私たちはここにいます〜』

音葉「あ、がっこうぐらし!もあったね」

翼「増やしすぎだよ………」


第12話 女帝教皇<ミネラウネ>

「何なんだろ………結局また戻って来たけど………」

「……気を付けなさいよ。まだ戻ってないわ」

 

蓮は辺りを見渡す。

その異常がすぐに認識出来た。

今の時間は人通りも多く、往来も激しい時間帯のはず。現に先程、この商店街は賑わっていた。

なのに、今は人が誰もいない(・・・・・)

誰1人として、猫さえもすら姿を見せようとはしない。それどころか、辺りも夕日が落ちたかのように仄暗い。幻覚か、少しずつ更に黒を重ねていくように感じる。

静寂。虫の音も殺したような長い静寂を破った。

 

「これは…………」

『”人払い”の魔術って奴よ♪』

「………っ!!」

 

愉快そうな女の声を聞いた翼は瞬時に息を飲んで1歩後方に飛んだ。

翼の隣にいる蓮も目を細めながら、暗闇に衒う主に問い掛ける。

 

「……突然人を妙な空間に放り投げておいて、何て楽しそうなのかしら。こっちは気味が悪くて不愉快だわ」

 

吐き捨てるかのように姿が一向に見えない女に向けてそう飛ばす。ただ、学園都市にも、『街自体の人避け(・・・・・・・)』という妙な能力は聞いたことがない。まるで、翼当人からすれば、『空間自体を制御している』錯覚を覚える。ここまでの高位能力者は、この街にはいない。

つまり相手は、魔術師だ。

 

「あらあらぁ、ほんの遊び心じゃないの。最近の子は切れやすいって、本当の事なのね♪」

「貴女………件の魔術師?」

「えぇ。例えるならドイツ星教の幹部……ってとこかしらね?……あぁそうそう」女はどこか上機嫌そうに、スカートを両手で摘んで頭を下げる。「私の名前はアーチル=クロイツェル。ドイツ星教所属女帝教皇(ミネラウネ)と呼ばれているわ♪」

「まーたよく分かんないのが現れたわね……」

 

蓮は退屈そうに髪をかきあげた。ドイツ星教にしろ魔術師にしろ、逃亡の身にあって記憶を失くした立場のマリアートだけの情報網では、全てを掴むことは不可能だった。

翼も『女帝教皇』という言葉を置き換える他ない。

 

「……つまり、幹部クラスの実力を持った魔術師、ってことで間違いないかな」

「難しいことは素人には分からないものねぇ。捉え方は間違ってないわよ?」

「堅苦しい挨拶なんて不要よ。どうせ6割も頭で理解出来ないんだから。…それで、どうせアンタたちドイツの連中のやる事って言えば、マリアートの捕獲なんでしょう?」

「保護、よ。その辺履き違えて貰っちゃ困るわね♪」

「何が保護よ見苦しい。捕獲(・・)なんでしょう?たった1人の少女に馬鹿みたいに何百人の軍勢を使うなんて。よっぽどドイツの魔術師たちは暇なのね?」

「…………」

 

完全に挑発していくスタイルの蓮に、嘲笑うかのように話すアーチルもついぞ押し黙った。なるべく揉め事は勘弁して貰いたい穏健派の翼にとって、この状況は良くなかった。

どうせ話し合いなどでは解決の糸口なんて見えてこないのは知っていても、だ。

翼が本題に戻そうと口を開けた時、水色のケープを羽織った魔術師が恨み口調で告げる。

 

「貴女たちは知らないのよ、彼女の価値そのものを。彼女はこの街にいるべきではない------貴女たちは魔術なんてものと無関係なのに、何故彼女を庇うのよ?到底理解し得ないわね」

「……理解してくれなくても構わないけど。別に理解なんて求めてないから」

 

翼は表情を変えずにそう返した。確かに、言葉を紡ぐ。

 

「ここは日本で、貴女たちは海外から来た。住んでる国も違うし、私たちは魔術なんてものに繋がりなんて無いし、逆に貴女ら魔術師も、科学に関心すら無いんでしょ?……でも、1人の少女を何人かで連れ立って追っかけ回す光景をこの目で見ちゃうと、どうしてもね」

 

翼の特性が発動する、という訳だ。困っている人を助けたくなる病の一種を患っている。その為、放っておく事が出来ない。例え自分とは無関係だろうと、宗教性別国籍が全く違おうが、同一だった。

アーチルはふん、と鼻を鳴らす。

 

「……ま、そうね。私も貴女たちの事情は知らないし、貴女たちも私たちの事情は知らない。これ以上の争いは不毛かも♪」でも、とアーチル。「目的だけは譲れないの、ごめんなさいね。「マリアートを渡し」なさい。そうすれば貴女たちに手を出さずに済むから、気が楽なんだけど♪」

「……残念だけど、交渉不成立よ。ね、翼。私たちにとってみれば、メリットなんてありゃしない。残されるのは罪悪感と空虚感だけよ」

「幾ら何でも無事で済む……なんて思ってないから」

 

翼と蓮は警戒態勢を取る。相手は魔術師、どこから攻撃が飛んでくるかは殆ど未知だ。科学と魔術は相容れない。手の内が分からない以上、無理に動かず、死角を作らない事。

そんな2人の様子を眺めたアーチルはスカイブルー色の修道服から火縄銃のようなライフルを取り出す。長さは凡そ1.5メートルほど。遠目では散弾銃かどうかは確認が出来ない。

だが、魔術師がライフルを使うというのは予想外でもあった。

 

「……マスケット銃?」

「えぇ。マスケット銃。正確には魔導式遠隔砲台(リモート・ギャザルリィ)と呼ぶのよ♪私は長いから魔砲って略してるけど♪」

 

刹那、彼女の持つ銃口から弾が発射される。翼とマーチルとの距離は然程ある訳じゃない。本物の銃弾なら間違いなく躱すことは不可能だった。

だが、その魔砲から発泡された銃弾が、翼の目の前で拡散(・・)されるように四方へと分解される。眼前で放たれた轟音に思わず声が漏れた。

 

「な--------!?」

「だーからぁ、魔導式って言ってるじゃないの。これが本物のマスケットだったら死んでるわよ、貴女。銃弾は当然魔導(・・)で出来た特別製。弾速はないけど、代わりに威力は凄まじいわよ♪」

(それじゃ、近距離に適してないって言ってるようなものじゃない……!)

 

蓮はふとそう思う。弾速がないのならよく注視していれば躱すことが出来る上に、銃自体はマスケット。弾詰めにも時間がかかるはず。他に兵器を持っているようには見えない。まさしく『遠距離型砲台』……。

そこまで考えた所で蓮はアーチルとの距離を三歩で0にして、叫ぶ。

 

「その音符、今すぐ捻り潰してあげるわシスターもどき!」

「やれるものならやってみなさい♪そ・の・代・わ・りぃ♪」

 

懐に飛び込んだ蓮のこめかみに、カチンという金属音。音源は先ほど何にも握っていなかったアーチルの左手から。

 

「先に、貴女が逝っちゃうかもぉ♪」

 

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