フレームアームズ・ガール 蒼穹のシーニィ 作:ポメラニアンドロイド初号機くん
——その日は特にやる事もなかったので、シーニィは訓練にうちこんでいた。
ナイフ戦の訓練で教官にボコされ、格闘術の訓練でCQCによりまたもやボコされ、射撃訓練だけはいつも通り満点。
相変わらずのポンコツっぷりなシーニィだが、そんな中シーニィ達『国土防衛部隊』に緊急招集がかかる。
先日撃退した敵軍の機動兵器などの残骸から、資源を回収する為に派遣された部隊との連絡が突如途絶えたのは数時間前。
どうやらフォースフィールド*1を備えた戦略級機動兵器の襲撃を受けたようだ。
そして現在、回収部隊を壊滅させたと思われる戦略級大型機動兵器が迎撃をものともせず、峡谷地帯を越えてアルザリア公国へと侵攻中。
そこで、アルザリア公国で唯一、
——対フォースフィールド兵装はアルザリア公国で以前から、プロフェッサー·アデクにより研究が進められている。
しかしコストや技術面の問題から実用化には程遠く、試験的にシーニィとヴェールヌイの所持しているスマートガンに対フォースフィールド機能『ペネトレイトモード』が搭載されているだけだ。
そして、頼みの綱であるその機能すら欠陥兵器と言わざるをえない有り様だ。
確かに、シーニィとヴェールヌイの所持しているスマートガンにはペネトレイトモードの機能が実装されてはいる。
だが技術的な問題で、スマートガンの構造が負荷に耐えきれず、ペネトレイトモードの状態ではたった1発撃つだけでスマートガンじたいがオーバーロードを起こしてしまう。
それでも今は、その欠陥兵器にすら頼るしかない状況だ。
シーニィとヴェールヌイは、アルザリア公国を脅かす戦略級大型機動兵器を討伐するべく出撃した。
▷▷▷
アルザリア公国に迫る8本脚の、蜘蛛のような巨影。
——戦略級大型機動兵器『アラクネア』。
作戦本部によりアシダカグモと命名された所属不明の機動兵器は、アルザリア公国の航空戦力である無人戦闘機による空爆を受けながらも依然として健在。
やはり、まずはフォースフィールドをなんとかするしかないようだ。
「先手必勝だ………私が囮になる。シーニィ、遠距離からペネトレイトモードで奴のフォースフィールドジェネレーターを破壊できるか?」
「正直自信ないけど……ヴェールヌイが僕に期待してくれてるんだから、できる気がする……というか、絶対にやり遂げるよ。だって、僕の取り柄は
「シーニィ、お前はもう少し自分に自信を持った方がいい……」
ヴェールヌイは、シーニィの頭を撫でながらそう呟く。そして——、
「悪いが、蜘蛛は嫌いなんだ…………だから、
▷▷▷
ヴェールヌイは両手にブレードを装備して、果敢にもアラクネアに斬りかかる。
フライトユニットによる推進力と重心移動をフルに活用して繰り出された一撃は不可視の障壁により阻まれ、アラクネアの装甲表面にすら届かない。
しかしヴェールヌイは怯む事なく、アラクネアとの距離を保ったまま何度も攻撃を繰り返す。
そんなヴェールヌイを鬱陶しく思ったのか、アラクネアは固定兵装の高出力ビーム砲をフォースフィールドの応用で偏光、拡散しながら誘導ビームとして放った。
ヴェールヌイは装甲表面へのダメージ累積を無視しながら致命傷となりうるビームのみを手にしたブレードで防御して適切にダメージコントロールを行う。
アラクネアの注意が完全にヴェールヌイの方に向いたその瞬間——、
「ペネトレイトモード、起動!!!
一筋の閃光がアラクネアのフォースフィールドジェネレーターを撃ち貫いた。シーニィによる狙撃だ。
ペネトレイトモードの効果——、それは
作戦は成功。フォースフィールドは完全にその効力を失った。
「よし!!!ヴェールヌイ、今から援護に向かうね………」
シーニィがアラクネアにトドメを刺すべく、対物ライフルを携えて駆けつける。
——しかし、その行動じたいが既に悪手だった。
何故なら、アラクネアは
「よせ、シーニィ…………!!!」
「え…………??」
ヴェールヌイが気付いた時には、アラクネアはシーニィめがけて、誘導性能の失われた拡散ビームとミサイルの弾幕を放った直後だった。
ヴェールヌイはとっさにアラクネアの前に割って入り、シーニィを抱きかかえながら庇う。そして同時に切り離したドローンでミサイルを迎撃する。
しかしシーニィを庇う際にアラクネアに背中を向けた事により、フライトユニットに直撃弾を受けてシーニィもろとも爆発によって吹き飛ばされる。
2人は何度も転がりながら、硬い地面に容赦なく叩きつけられた。
その背後では拡散ビームとミサイルの流れ弾が市街地を直撃して、見慣れた街並みが炎に包まれている。
「ヴェールヌイ、ごめん………!!!僕が迂闊だったから…………!!!」
「私は大丈夫だよ、シーニィ……だが、市街地に被害が出てしまったな…………このまま戦いが長引くと不味い。だからこそ、奴はここで仕留める」
——ヴェールヌイは揺るぎない決意と覚悟を秘めた表情でアラクネアに向き直った。
「シーニィ、対物ライフルとフライトユニットを貸してくれないか?今の私にはもう、まともな武器が残っていない……」
「ヴェールヌイ、何をするつもりなの……!?」
「な〜に、図体ばかりデカいムシケラに、公国軍の誇りと意地という物を見せつけてやるだけさ」
シーニィは直感的に理解した。ヴェールヌイはおそらく、相討ち覚悟でアラクネアを仕留めるつもりなのだと…………
「ヴェールヌイ……一つだけ約束して。僕を、置いていかないでね?」
「わかった。約束する」
ヴェールヌイは、シーニィから対物ライフルとフライトユニットを受け取った。
ヴェールヌイside
——奴の弱点は既にだいたいの見当がついている。
あのムシケラのビーム砲、おそらくあれはジェネレーター直結型。
ならば、最速で突っ込んでビームのエネルギーが臨界に達した瞬間に砲口に対物ライフルの弾丸を目一杯ブチ込めば、ビーム砲を誘爆させてジェネレーターごと爆散させる事ができる筈……
幸い、シーニィから借りたフライトユニットは私の物よりも加速性能が高い。おそらく間に合う筈だ。
——ただ一つの後悔は、シーニィに無責任な嘘を吐いてしまった事。
私は、いつまでも消えてくれない心の中の痛みに蓋をして加速のままにムシケラへと肉薄する。
私達FAガールは、人間の為に作られた存在。人間の為に戦う事こそが存在意義。
だから、この心の痛みは本来不要な物の筈だ。
祖国を守る為に戦い、その為だけに散る。それこそが私の使命の筈なのに、それこそが本望である筈なのに、どうして私の心は痛み続けているのだろう?
与えられた使命よりも、己の存在意義よりも——、
だが、私は公国軍の兵士……いや、それ以下の、ただの兵器だ。
「歯車には歯車の意地がある…………!!!」
目の前には、私を消し飛ばすべくビーム砲のエネルギーをチャージしているムシケラ。
「全弾…………くれてやる!!!」
私は本来ボルトアクション式の対物ライフルをセミオート式と同等の速度でボルト操作、次弾発射のサイクルを行い高速連射しながら特攻をかける。
ついでにそのまま体当たりでもしてやろうとも思ったが、その刹那、シーニィの泣き顔が脳裏に浮かんで思わず
しかしその直後にビーム砲のエネルギーが誘爆して、ジェネレーターごと爆散した。
つまり、今更になって特攻を
まぁ、そのおかげで私の身体が木っ端微塵にならなかっただけでもマシな方か………
「シーニィ……………」
私は爆発の勢いで吹き飛ばされながら、意識を失った。
『機体損傷、甚大。機能停止』
ヴェールヌイside 終
なんとかロービジカラーのスティレットを入手して、ヴェールヌイ(本作のオリキャラFAガールの方。艦これの方ではない)もプラモデルで再現したい今日この頃…………