フレームアームズ・ガール 蒼穹のシーニィ 作:ポメラニアンドロイド初号機くん
——その後、2ヶ月程の間にシーニィは見違えるほどの成長を遂げる。
かつてのシーニィが抱えていた、戦いの際の甘さや油断を徹底に捨て去り、常に
だが、そんなシーニィに嫉妬する者も決して少なくはない。ゆえにシーニィは、常に気を張り続け、誰にも隙を見せないように生活するしかなかった。
実際、アルザリア公国軍の中にシーニィの居場所はほとんどなかったのだ。
そのような
——とはいえ、シーニィにも悩みの種が全く存在しない訳ではない。それは、最近嫌がらせの一環として押し付けられた新兵、札付きの問題児であるビェールィの存在である。
端的にいえば、粗暴で反抗的。度々軍内部で暴力沙汰を起こしては懲罰房にブチ込まれる、わかりやすい問題児だ。
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「毎回毎回懲罰房に来てるのに、どうしてこうも学習しないのかな?馬鹿なの?」
「うっせえ…………」
シーニィは、懲罰房の扉越しに
シーニィは、差し入れとして総合栄養食*1をビェールィに渡す。
「またこれかよ…………あんた、見た目は可愛いんだからどうせなら手料理でも作って持ってきてくれよ。そういう家庭的な面をアピールすればきっとモテるぞ?」
「やかましいマセガキ、総合栄養食の丸焼き口にブチ込むぞ……っていうのは冗談で、そもそも僕FAガールなのに、なんでモテる必要あるの?」
——シーニィはビェールィに対して、棒読みで淡々と毒づいた。
「…………今のマジで冗談に聞こえなかったんだが……」
これ以上余計な事を言うと本当に総合栄養食の丸焼きを口にねじ込まれかねないので、ビェールィはひとまず黙る事にした。
そしてそのまま無言で総合栄養食を食べる。気まずい沈黙。
「あんたは、聞かないんだな……なんで俺がまた懲りずにキレて、懲罰房にブチ込まれたのか…………」
「何?悩み相談ならカウンセラーに頼めば?」
シーニィはビェールィを冷たく突き放す。
「俺、あんたのそういうドライなところ、案外嫌いじゃないぜ。強いな、あんた……」
「僕は、強くなんてないよ…………ただ、最後まで僕を信じてくれた
シーニィの表情が曇る。表向きは割り切ったように見えても、そう簡単に割り切れるくらいなら、最初から引きずったりはしない。
それほどまでに、シーニィの中でヴェールヌイの存在は大きかった。
「ヴェールヌイって…………もしかして、あんたの姉ってヴェールヌイ少佐の事か…………!?スンマセンしたァ!!!俺、知らなかったとはいえ今までシーニィ少佐にさんざん失礼な態度を!?」
——ビェールィは突然畏まり、土下座し始めた。それもあの札付きの問題児であるビェールィが、である。
「急にどうした…………??」
ビェールィのあまりの変わりように、シーニィは驚愕する。
「当然ッスよ!!!ヴェールヌイ少佐は俺の憧れの存在なんスから!!!!俺、ヴェールヌイ少佐の活躍に憧れて軍に入ったんスから!!!」
どうやらビェールィは、かつて軍の広報映像で見たヴェールヌイの勇ましい戦いぶりに脳を焼かれたらしい。
見た目からはわかりにくいが、ヴェールヌイもシーニィも
「とにかく、俺にできる事ならなんでもするんで、今までの無礼な態度についてはお許しを!!!!」
「今、なんでもって言った???」
シーニィが何か思いついて、いたずらっぽく笑う。
「よしビェールィ、今すぐウォッカとピロシキ買ってこい」
「今すぐは無理ッス!?ここ懲罰房ッスよ!!!」
「フフッ…………ハハハハハハハハハハハハ!!!冗談だよ。そもそも僕、FAガールだから食事の必要ないし」
シーニィは、久しぶりに心の底から笑った。つられてビェールィも大いに笑う。
その後、シーニィとビェールィは互いに打ち解けてヴェールヌイの話だったりとりとめのない雑談をしたりした。
シーニィが今後、ヴェールヌイを失った悲しみを乗り越える事ができるかはわからないが、少なくとも今のシーニィはもう1人ではない。
ビェールィ
ロシア語で『白』という意味の名前。孤児院出身で、『ビェールィ』という名前も、そのアルビノ体質ゆえに付けられたあだ名みたいな物。
なんやかんやあってシーニィの舎弟になった。