フレームアームズ・ガール 蒼穹のシーニィ 作:ポメラニアンドロイド初号機くん
シーニィは、ビェールィというそれなりに心を許せる相手を得たが、そんな中アルザリア公国に新たな戦火の影が忍び寄っていた。
かつてのロシアの流れを汲む独立国家群の中で、最大の軍事力と国力を誇るガルディオン帝国——。
『ロシアの再統一』を政策として掲げている、強権主義の皇帝が治める強大な軍事国家だ。
それほどの脅威を前にしても、誰もが奪う側であり同時に奪われる側である星暦の地球では、国家どうしの協調など不可能に等しい。
そんな世界において、他の小さな国々にはガルディオン帝国の圧倒的な武力に対抗できる手段などはない。
無抵抗で侵略されるか、戦って死ぬか…………それだけの違いでしかないのだ。
ガルディオン帝国は周囲の国家を次々に制圧して、アルザリア公国に迫りつつあった。
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アルザリア公国、最終防衛ラインにて…………
——無慈悲なるガルディオン帝国の進軍。もはやアルザリアには、ここから勝利する手段は万に一つも存在しない。
シーニィやビェールィ、アルザリア公国軍上層部ですら、民間人の避難と国外への脱出に方針を切り替えている。
「ビェールィ、作戦の目的はわかってるよね?」
「はいッス!!!民間人の避難が完了するまでの時間稼ぎッスよね?」
旧式の歩兵用アーマードスーツを装備したビェールィは、つとめて明るく振る舞いながら即答した。
「さて、ここらで少し上官らしい事も言っておくかな?『死ぬな』、『死にそうになったら逃げろ。そして隠れろ』、『運が良ければ不意をついてぶっ殺せ』…………まぁ、逃げる事も隠れる事もできない場合は『生きる事から逃げるな』って事で。これは命令だからね?」
シーニィは真剣な表情でビェールィに命令を下す。ビェールィは、その言葉を胸に深く刻み込み、シーニィと共に勝ち目のない戦いに赴いた。
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「ここからいなくなれェェェェェェーーーーーー!!」
——1体の轟雷級FAガールがガトリングとレールガンを連射しながら敵軍の侵攻を押し留めている。
しかし、次の瞬間には敵の長距離砲撃で木っ端微塵になった。
「ソーニャーーーーーーーーーッ!?」
彼女とバディを組んでいた迅雷級のFAガールが悲痛な叫びを上げる。
戦いを好まない穏やかな性格で、自室の鉢植えで花を育てるのが趣味だったソーニャ。
長年バディとして連れ添った
——その時、ソーニャを狙撃した長距離砲持ちの機動兵器が爆散する。シーニィの対物ライフルによる狙撃だ。
敵の攻撃に少しだけ隙が出来て、その僅かな時間に全員で遮蔽物の陰に退避する。
「シーニィ少佐…………!!!あんたが、あんたがもっと早く来てくれたらソーニャは死ななくて良かったかもしれないのに!!!!」
ルーシェは怒りのまま、シーニィに掴みかかる。しかし、シーニィは冷静にルーシェの手を払い除けた。
「僕も
「ッ!?」
ルーシェは黙り込み、力が抜けたように地面に座り込む。
シーニィはそんなルーシェには目もくれず、戦線へと飛び込んでいった。
「あたしは…………いったいどうすれば…………」
残されたルーシェは、ただ一人きりでぽつりと呟く。
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シーニィはビェールィからの火力支援を受けつつ、得意分野である高機動戦法で少しでも敵を食い止めるべく圧倒的な物量差を前に奮戦する。
「全く…………もう慣れたつもりでいたけど、やっぱし憎まれ役はそれなりに堪える物だね…………」
誰に聞かせる訳でもなくシーニィは一人ごちた。
「シーニィ少佐…………ヒジョーーーーに言いにくいんスけど、通信繋がったままッス…………」
ビェールィが気まずそうに返答する。
「ありゃー……聞かれてたか〜〜〜」
シーニィは恥ずかしがるでもなく平然とした様子で対応した。
常に気を張って隙を見せないようにしているが、こういうところでポンコツっぷりが抜け切らないシーニィであった。
「シーニィ少佐が、本当は優しい人だって事、俺は知ってるッスから…………誰がなんと言おうがシーニィ少佐は、俺の…………」
「はいストップ。そこで『俺の憧れの人』とか言わないよね?やめてよね……僕はあくまでもヴェールヌイの
そう言ってシーニィは、自ら望んで過酷な戦いに身を投じる。
そこに、かつてヴェールヌイの犠牲と引き換えに討伐された
「あいつ……あの時の…………!?まさか、ガルディオン帝国の所属機!?」
シーニィは武器をスマートガンに持ち替え、誘導ビームとミサイルの弾幕を掻い潜りながら
「今だよビェールィ、全火力を叩き込め!!!」
オーバーロードして使い物にならなくなったスマートガンを投げ捨てたシーニィは、再び対物ライフルを装備してビェールィと共に2方向から
「なんとか無事に倒せたようだね……」
「まだ終わってないッス…………シーニィ少佐、あれを…………」
ビェールィの震えた声に振り向くと、そこでシーニィが目にした物は、焦土と化した荒野を走る死神の列——、
——つまり、地平線を埋め尽くす程の、
スマートガンのペネトレイトモードは先程使用したので、もはやシーニィ達にあれらを食い止める手段はない。
シーニィ達は咄嗟にトーチカ*2に隠れた。
——かつての市街地は一瞬で廃墟と化し、もはやアルザリア公国の滅亡は確実だ。
しかし、シーニィ達の目的は最初から民間人が避難する時間を稼ぐ事。それさえ果たせれば、たとえここでシーニィ達が死のうが問題はない。
「司令部!!!応答してください!!!こちら国土防衛部隊、司令部、応答してください!!!」
シーニィは必死で呼びかけるが応答はない。
『こ…………こちら司令部…………アルザリア公王が……先程の攻撃で亡くなられた……民間人にも多大なる被害が出ている。アルザリアは…………
ややあって、苦しげに呻くような声で司令部からの応答があった。
「そんな…………じゃあ、僕は…………これからどうすれば…………」
全てを失ったシーニィは、人形のような虚ろな表情でただ、泣いていた。
もはや、ヴェールヌイの犠牲の上で生きながらえた自分の価値を証明することはおろか、守るべき物を全て失って同時に自分自身の存在意義すら完全に消え去った。
今のシーニィには、支えとなる物はもう何一つ存在しない。
——その瞬間、シーニィの心は完全に折れてしまった。
「シーニィ少佐、逃げるッスよ!!!ここにいても死ぬだけッス!!!」
ビェールィが必死に呼びかけるが、反応はない。
「少佐、失礼するッス!!」
その時、唐突にビェールィがシーニィに平手打ちをした。
「『生きる事から逃げるな』、少佐がくれた言葉ッスよ!!!自分で言った事には責任持ちやがれ!!!」
後半はやや口調が荒くなっていたが、ビェールィの言葉にシーニィは僅かに反応した。
「生きる事から………逃げるな…………???」
「そうッス!!!一緒に逃げるッスよ!!!」
ビェールィは近くで見つけた、廃棄されたバギーのエンジンを確認したのちにシーニィを乗り込ませた。
幸いにもシーニィは抵抗しなかったので、そのままシーニィ用の武装を荷台に積んでバギーを発進させる。
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ビェールィside
追撃してくる
「おいあんた!!!逃げるなら今のうちだぞ!!!早く乗れ」
俺はバギーを停車させて、目の前のFAガールに呼びかける。
「お前…………ああ、シーニィ少佐の腰巾着か……」
「あぁ…………!?」
なんだこいつ…………???ムカつくな…………
「で?肝心のシーニィ少佐は腑抜けになっちまったか…………ザマァねェな」
「テメェ!!!シーニィ少佐を侮辱するな…………!!!!」
俺が熱くなりかけたその時、そのFAガールは予想外の行動に出た。
「さっさと行けよ。あたしが逃げるまでの時間を稼ぐ」
「勘違いするな、このまま死ぬとしても最後に何かしないと、かっこ悪くて
「恩に着る…………!!!」
ありがとよ、あんたの犠牲は無駄にはしねェ——。
俺はバギーを再発進させて、そのまま振り返る事なく無我夢中で走らせた。
ビェールィside 終
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——圧倒的な物量差、勝ち目のない戦い。そこに身を投じる一人の迅雷級FAガールの姿があった。
「なぁ、
次回から新展開入ります。