STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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俺と鈴羽は、真帆にほぼ全ての事を話して聞かせた。

 

紅莉栖との出会い。Dメール。α世界線での出来事。タイムリープマシンの開発。まゆりの死。アトラクタフィールド理論。2036年でのこと。かがりの境遇。俺をおじさんと呼ぶ理由。まゆりをママと呼ぶ理由。

 

ただひとつ。紅莉栖の死の真相だけを除いて。

 

「とりあえず、話を整理させて……。つまり、鈴羽さんとかがりさんは、岡部さんに未来を変えてもらうために、2036年からやって来た、とそう言うのね?」

 

「そうだよ」

 

真帆はソファに身を沈めると、大きなため息をついた。

 

「岡部さんに、そんな大層なことが出来るとは思えないわ。たった一人の人間に、全人類の命運がかかっているなんて」

 

「…俺だって無理だと思っている」

 

事実、俺は諦めたんだ。全ての未来を。

 

「とうてい信じられない話ではある。あるけど……でも、貴方の言ったその理論なら、確かにタイムリープは可能かもしれない。それに何より、その理論の基を作ったのは紅莉栖なんでしょう?だったら、検証に値するわ。だって、あの子は……天才だもの」

 

小さく呟いたその言葉には、あこがれと羨望と嫉妬と、それら全てがない交ぜになっているように俺には思えた。

 

「信じるんだな?」

 

「その代わり、今度見せて欲しいわね、そのタイムマシンを。乗って来たっていうなら、あるんでしょ?どこかに」

 

「…ある。すぐ近くにね」

 

「検証作業は必要だけど、とりあえずあなたたちの話を信じる事にする。だからあなたたちも、私に信じさせるよう協力して」

 

「わかった」

 

鈴羽はあっさりとそう答えた。

 

「……ありがとう」

 

鈴羽がいいと言うなら、俺が口を挟むことは何も無かった。真帆が協力してくれるならそれでいい。

 

「……話をかがりの件に戻そう。さっきも言ったように、はぐれたのはかがりが10歳の頃。そしてそれ以降、先月になって見つかるまでの足取りは全くつかめていない。俺はその間、かがりはどこかで監禁状態にあったんだと考えている。それが日本なのか、海外なのかは分からないが…」

 

「監禁……というと穏やかじゃないわね」

 

「いくら日本と言えど、10歳の子供がひとりで頼る大人もいないまま、この年まで生きられるとは思えない。それに、かがりが錯乱していた時に、ここから出して、と叫んでいたんだ。助けてくれ、って…」

 

「そうなると、どこかで捕まっていた可能性が高いね…」

 

「そして、捕まっている間に、紅莉栖の記憶を入れられたはずだ。比屋定さん。『Amadeus』を使えば、人間の脳に記憶を書き戻すことは可能、だな?」

 

「……ええ。もともと、そのためのシステムなのだし。でも、理論上は…としか言えないわよ。まだ実用段階ですらなかった」

 

「でも、紅莉栖はその技術を応用して、タイムリープマシンを作った。もちろん、俺が使った際は、自分自身の記憶でだったが……」

 

それでも、脳にダメージが残る可能性を紅莉栖は散々促していた。48時間という跳躍可能時間の制限は、脳へのダメージを考えてのことだ。

 

「他人の記憶、となれば負担は計り知れないわね…」

 

「最終的にかがりはどうなるんだ?牧瀬紅莉栖になってしまうのか?」

 

「いえ。記憶と人格は別物よ。ただ、完全に独立している、というわけではないの。お互いに影響を及ぼし合っているから……」

 

紅莉栖になってしまう、ということはないにしても、この状態が続けば崩壊を迎えるのは目に見えている。今だって、その影響が出始めているのだから。

 

「でも、紅莉栖の記憶を狙うのは何故かしら?確かにあの子は天才だけれど、まだ世界的に見れば、論文がひとつ取り上げられたくらいよ」

 

「…紅莉栖の記憶の中にタイムマシンの理論があると知ったとすれば?それがあると分かっていれば、必ず狙う者も出てくる」

 

「それは、そうね…。どうしてそれがあることが漏れたのかは分からないけれど…」

 

「いや、それについてはちゃんと理由があるよ」

 

「理由?」

 

鈴羽は俺を見て頷いた。

 

「ああ。中鉢論文。比屋定さんも知っているはずだ」

 

「え、ええ。私も流し読みした程度だけど、一応目は通したわ。でも、あれは論文と呼べるようなものではなかったわ」

 

「そうだろうな。でも、あれは本物の劣化コピーであるはずなんだ」

 

「劣化コピー?」

 

「ドクター中鉢。ヤツの本名は、牧瀬章一。紅莉栖の父親なんだ」

 

「っ!」

 

「奴は紅莉栖が書き上げたタイムマシン論文を奪ってロシアに亡命した。ロシアは本物のタイムマシン論文を手に入れたはずだ。そして、その劣化版を世界に公表したんだ」

 

「…………」

 

紅莉栖が書き上げた論文が、そんな完成度であるはずがない。つまり、中鉢論文は世界へのフェイク。本物はロシアが隠し持っているはずだ。

 

「かがりに紅莉栖の記憶を入れた連中も、それに気づいたんだろう。だから捕まえて、記憶を入れた」

 

「かがりは海外にいたのかな?」

 

「どうだろうな。かがりに紅莉栖の記憶を入れるなら、やはりどこかで『Amadeus』と接触させる必要があるはずだ。『Amadeus』以外に記憶の移植ができるとは思えないしな」

 

「となると、かがりさんはヴィクトルコンドリア大学にいた、ということかしら?」

 

「うーん。戸籍の無い未来人を海外へと連れて行くのは難しいはずだ。不可能ではないだろうが、できれば日本で捕えておきたいはず」

 

「でも、そうなると『Amadeus』とどこで接触したのかが分からないわ。レスキネン教授に確認したんだけれど、凍結前後に紅莉栖の記憶データが持ち出された形跡はなかったみたいだし」

 

それも、どこまで信用できるのか、という問題がある。レスキネン教授を疑いたくはないが、裏の顔がないとも言い切れない。もしくは、そのバックにもっと大きな組織が絡んでいる可能性も否定しきれない。

 

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