STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

101 / 303
(22)

「でも、どうして紅莉栖の記憶を人に入れようとするんだろう?凄腕のハッカーなら、データを盗むことも可能なはずだ。…父さんみたいな」

 

「ダルのようなウィザード級のハッカーなら可能だろう。だが、データを盗んだところで、『Amadeus』のシステムがなければ中身を確認することはできない」

 

「でも、『Amadeus』は話したくない事は話さないように設計されているわ。AIに人格がある、と言い切るのも憚られるけれど。岡部さんなら分かるでしょう?」

 

「…ああ。“紅莉栖”は話すべきでないことは話さない。だからこそ、生身の人間に記憶を入れたがっているんだろうな。脅すか洗脳するかしてしまえば、人間なら簡単に吐く」

 

「そのためにかがりは………っ!」

 

鈴羽が悔しそうに自分の太ももを叩く。血が出そうなほどに拳を握りしめている。

 

「それで、だ。具体的にどうやってかがりを元の状態に戻すのか、だが…」

 

ここは専門家の意見を聞きたいところだ。

 

「かがりさんの中から、紅莉栖の記憶を取り除くこと。それしかないでしょうね。このまま記憶が混在し続けるのは危険だわ」

 

「…取り除けるのかな?」

 

「取り除く、というよりも、もう一度かがりさんの記憶をきちんとした装置で脳に上書きしてあげれば、あるいは元通りにできるかもしれないわ」

 

「しかしそのためにはかがりの記憶データがないと…」

 

「元々、紅莉栖の記憶を移植した連中は、かがりさんの記憶を残しておくつもりはなかったはずよ。記憶が混在している状態なんて、人格崩壊を起こしかねないのだし」

 

「本来なら、かがりの記憶を消してから、牧瀬紅莉栖の記憶を移植する、ということか」

 

「ええ。でも、かがりさんには自身の記憶も残っている。何か不都合があったのか、消すのが間に合わなかったのか…」

 

前の世界線では、かがりは全ての記憶を失っていた。あれは、かがりの頭の中から全ての記憶を消去した、ということだろう。世界線が変動したことで、かがりの記憶の有無に変化が生じている。やはり、『Amadeus』の凍結によって引き起こされたのだろうか。

 

もしも、『Amadeus』が凍結されたことによって、かがりの記憶の消去が間に合わなかったのだとすれば?

 

俺をβ世界線に戻すために、紅莉栖が『Amadeus』を凍結させてしまったことが原因で、かがりに紅莉栖の記憶が入れられてしまった可能性がある。

 

前の世界線では、記憶を消去した後に、紅莉栖の記憶を移植するつもりだったはずだ。だが、その前にかがりが監禁されていた施設から逃げ出し、保護されるに至ったため、紅莉栖の記憶を移植されずに済んだ、ということなのかもしれない。

 

「どこかに、かがりさんの記憶データのバックアップが取られていることに期待するしかないわね…」

 

「…どこかにはあるはずだ。どうやってかがりの存在を知ったのかは分からないが、かがりが未来人であることを知っているのなら、その記憶の有用性については言うまでもない。残しておかない理由がないはずだ」

 

「……じゃあ装置はどうする?簡単に見つかればいいけど」

 

「今の私の権限では、凍結された『Amadeus』にアクセスすることはできない…」

 

そこで俺はひらめいた。

 

「ないなら、作ってしまえばいい」

 

「つ、作るって…誰が?」

 

「比屋定さんが作る。君は脳科学の専門家だ」

 

「か、簡単に言うけど、そんなもの…私に作れるのかしら?」

 

「要はかつて紅莉栖が作ったタイムリープマシンの応用だ。紅莉栖だって、記憶の書き戻しはヴィクトルコンドリア大学の技術を応用していたわけだしな。過去に記憶データを送る必要はない分、タイムリープマシンを作るよりは簡単なはずだ」

 

「簡単なはず……って」

 

「君なら作れる。俺も知っている限りのことは全て教える。だから…」

 

「…………」

 

真帆は逡巡した後、ゆっくりと頷いた。

 

「ええ。作ってみせるわ。紅莉栖に作れたんだもの。私にだってきっと……」

 

それは天才への挑戦。忸怩たる思いがあるのが分かる。紅莉栖へのライバル心が、彼女を突き動かしているんだろう。

 

「でも、バックアップデータがなければマシンを作れたとしても無意味よ。それについてはなんとかして見つけ出さなければならないわ」

 

その通りだ。だが、あまりにも情報が少なすぎる。

 

分かっているのは外国の軍隊。それも西側の軍隊だということだけ。それも、かがりに記憶を移植したのが、ラボを襲撃した連中と同じであった場合の話だ。

 

鍵を握っているのは、あのライダースーツの女だけ。

 

一瞬、由季さんの姿が頭に浮かんだが、すぐに追い払う。

 

あれは阿万音由季じゃない。そんなはずはない。偶然左腕を怪我しただけだ。後にダルとの間に鈴羽を設け、俺たちに合流する人物なんだ。そんなことがあるはずがない。

 

「おじさん。どうしたの?」

 

「……いや。なんでもない」

 

それから遅くまで話し合ったが、これといった方法は見いだせなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。