STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「それじゃあ話を開発に戻そうか。まずは俺の知っている事を話す。それが可能かどうか、ふたりで検証してくれ」

 

俺には機械いじりなんて出来ないし、プログラムを書くこともできない。ハッキング関係はダル、記憶関係は真帆に任せて、俺は鈴羽とともにかがりの情報を捜索する方に専念すべきだろう。鈴羽もまた、技術系はさっぱりだったのだ。

 

「今回作るのは、記憶の上書き装置だ。昨日も話した通り、タイムリープマシンの技術を応用すれば作れるはず」

 

「夏に作った電話レンジ(仮)を再現するん?」

 

「いや、おそらく電子レンジさえいらないはずだ。タイムリープマシンと違って、過去に記憶データを送らないからな。ミニ・ブラックホールを生成する必要がない」

 

「電子レンジ内に、ブラックホールを生成したのよね……今でも信じられないわ」

 

「紅莉栖が言うには、かつて作った電話レンジの中は、SERNの持つLHCと同じだったらしいからな。あれは偶然出来たものだったが、今思えばすごい発明だった」

 

その分、SERNに目を付けられる結果となってしまったわけだが。

 

「今回は電子レンジでミニ・ブラックホールの生成は行わないが、でも、SERNのLHCは借りることになる」

 

「ラージ・ハドロン・コライダーたん。萌えるお」

 

「SERNがとっくにミニ・ブラックホールを生成していたことも驚きだわ。それを公表していないなんて、科学への冒涜でしかないけれど…」

 

紅莉栖と同じことを言う真帆に、思わず笑ってしまう。そのブラックホールがタイムマシン製造のためのものなのだから、公表しないのも当然と言えば当然だが。

 

「このラボからSERNまでは直通回線が繋がっている。それを利用させてもらう」

 

繋がっているのはα世界線だけのことかとも思ったが、ダルに調べさせたところ、確かに光ケーブルの直通回線が繋がっていた。これもα世界線からの因果なのだろう。

 

「3.24TBあるとされる人間の記憶データも、この直通回線があれば50秒もかからずにLHCまで送ることが出来る。ダルにはLHCをハッキングしてもらうことになるが…それが成功すればLHCを遠隔操作してミニ・ブラックホールを生成することが出来る。ミニ・ブラックホールの周辺では、超重力によって3.24TBのデータを36バイトまで圧縮できる。ミニ・ブラックホールから離れると解凍されてしまうが、それまでにもう一度こちらまでデータを戻してやれば、圧縮した記憶データをかがりの脳内にインプットすることが出来る……という流れだ」

 

これはSERNとの直通回線が繋がっているこのラボならではの方法だ。こちら側で電子レンジを用意しなくてよいだけ、リフターの調整など、面倒な処理は省くことが出来る。

 

「でも、かがりさんの記憶データがあったとして、それをどうやって脳内に書き戻すのかしら?『Amadeus』でもまだ実用段階にも至っていなかったのに…」

 

「それについてはヴィクトルコンドリア大学のVR(ビジュアル・リビルディング)技術を使えるようにすればいい。かつてタイムリープマシンでも紅莉栖が使ったものだ。電気信号を神経パルス信号に変換することで、脳内に書き戻すことが出来る」

 

「VR技術は確かに電気信号をコンバートする技術だけれど……」

 

「それをケータイ電話を使って脳に放射するんだ」

 

「ケータイ電話を?」

 

「かがりのケータイに電話をかけることで、神経パルス信号に変換した記憶データをこめかみあたりに放射する。人間のこめかみ付近には、海馬があることは知っての通りだと思う。ケータイは受信とともに、送話口から0.02アンペアほどの微弱な放電現象が起こるんだ。それが受信者のこめかみ付近に放射されることで、海馬傍回に記憶データを上書きすることができる」

 

真帆もダルも、ケータイにそんな機構が備わっていたことに驚いている。

 

「もちろん。これだけでは記憶データが脳にインプットされただけだ。その記憶を思い出すことはできない」

 

「zipファイルがまだ解凍されてない的な?」

 

「…まぁそんな感じだな。だからこれと同時に、前頭葉を刺激する神経パルス信号も放射するんだ。このパルス信号によって前頭葉から側頭葉に向かってトップダウン記憶検索信号を発信させることができる。こいつのおかげで上書きされた記憶データを思い出すことが可能になる」

 

これについてはATFのセミナーの懇親会で真帆に一度話しているが、あれは前の世界線での話だ。この世界線では『Amadeus』が凍結されてしまっているから、ATFのセミナーは開催されなかった。

 

「確かに、この理論なら記憶の上書きは可能ね……」

 

この理論は全て紅莉栖の受け売りだが、真帆は驚いていた。

 

「岡部さん。すごいわ…」

 

「すごいのは紅莉栖だよ。俺はあいつの言っていたことをそのまま説明しただけだ」

 

「でも、あなたは実際にタイムリープを何度も経験しているんでしょう?」

 

確かにこれは実証済みの理論だ。

 

かつてのタイムリープマシンをある程度再現出来れば、かがりの中から紅莉栖の記憶を取り除くことは可能となる。

 

「俺が分かるのはここまでだ。あとはふたりで話し合ってみてほしい」

 

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