STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
天王寺の方を向くと——。
「んんんんんんんん!」
天王寺に絡めとられた男の口から、悲鳴にも似た声が漏れた。
いつのまにか口にタオルのようなものがねじ込まれている。
「おいおい。あんまり暴れるんじゃねえよ。騒ぎになって困るのはおめえもだろうが。それにまだ1本目だぜ、情けねぇ。あとまだ9本も残ってる」
「ん、ふーっ……ふーっ……」
「それが終わったら目だ。それから両方の耳、鼻……まだまだお楽しみはいっぱいあるんだぜ」
冷徹な声。これこそが、本当の天王寺祐吾……FBの姿だ。
思わず目を背けたくなる状況にも関わらず、鈴羽は顔色ひとつ変えずにその様子を見つめていた。
「俺だって面倒な真似はしたくねえ。どうせ吐くなら、早めに吐いたほうがお互いのためだと思うぜ?」
男はそれを聞いて身を捩る。
「ん?どうだ。もう一本いくか?」
これは抵抗しているんじゃない。楽し気に笑う天王寺に心底怯えているのだ。男は首を精一杯横に振った。
「最初からそうすりゃいいんだよ。で、おめえさん達の元締めは誰だ?」
「………」
タオルを口から外された男は、聞き取れないほどのか細い声で天王寺に耳打ちした。
途端に天王寺の顔色が変わる。
「………ストラトフォー?」
聞いたことのある名前だ。
「おい、冗談じゃねえだろうな?」
男が必死の形相で再び左右に首を振った。
「ストラトフォーか。また面倒な奴らが…」
厨二病にはまっていた頃、インターネットで調べた。正式には『STRATEGIC・FOCUS』だったか。影のCIAなどと呼ばれている、アメリカの民間情報会社だ。
特に軍事関係に特化しており、湾岸戦争やイラク戦争でも、その能力は遺憾なく発揮されたと聞いている。SERNのラウンダーである天王寺にそこまで言わせる存在だ。一筋縄でいく相手ではないだろう。
「ダル!今すぐにストラトフォーのサーバーにハッキングをかけてくれ!」
『オーキードーキー!』
ひとまずの目的が達成され、全身から力が抜け落ちそうになる。だがそうも言ってられない。ここからが本番だ。
「…………」
「どうしたの、店長?何か気にかかることでも?」
「いや、ストラトフォーといやぁ、民間の会社だぜ。いわば、金によって雇われてる連中だ。そんな奴らが、いくら捕まったからって、自決までするか?」
言われてみれば妙な気もする。
「まあいい。後始末は俺に任せて、おめえらは行け」
「いい……んですか?」
「これで終わりじゃねえんだろ?」
「…………」
この後、連中をどうするつもりなのかは気になるが…。
「……分かりました。後の事はお願いします!」
そんなことよりも優先させなければならないことがある。
俺は天王寺に礼を言うと、鈴羽とともにラボへと急いだ。