STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
ダンッ、と乾いた音が再び響き、男の一人が横殴りに倒れた。瓦礫に頭を打ち付け、そのまま動かなくなる。
「え…?」
銃声の聞こえた方向に目を向ける。だが、そこには誰もおらず、気が付けば俺は地面に倒れこんでいた。
「邪魔だっ!」
聞いたことのあるような声がした。
そして同時に、数発の銃声が響く。俺に銃を向けていた、残り二人の男たちが背後にもんどりうって倒れた。
死んだ。また、死んだ。目の前で。
こうも簡単に、人の命は失われる。そのあっけなさに呆然となった。
「お前、死にたいのか?」
再び聞いたことのあるような声。
そちらに目を向ける。
「っ……!」
そこに立っていたのは——。
「鈴……羽…?」
「ほら、いつまでボケっと座っているつもり———っ⁉お前、何者だ!どうしてあたしの名前を知っている⁉」
鈴羽と思しき人物。その鉄面皮のような表情が驚きに代わった。
「俺の事、知らないのか……?」
世界線が変わったせいで、俺を知らない鈴羽がここにいるというのか?かがりの中から紅莉栖の記憶を消したことで、ここまで世界線は変わってしまうのか?
「岡部、だよ。岡部………倫太郎、だ」
その名を口にした瞬間、鈴羽の表情が再び変わった。
「岡部、倫太郎?そんな……馬鹿な…」
俺の事を知らないわけではないようだった。
「こっちだ」
俺が名乗った後、鈴羽は訝しむような顔で、しばらく俺の様子を伺っていた。やがて、どこかへ連絡を取ったかと思うと、一転、一緒に来るように言ってきた。とはいえ、歩かされていた間、ほとんど目隠しを付けられていた。
だからどこをどう通っているのか、どの辺りなのか、全く見当がつかない。
「止まれ」
言われたままに従う。
コンコンコン、とノックの音が響く。その音で、そこにドアがある事が分かった。
俺はどこに連れて来られたのだろうか。
鈴羽とは気まずい関係であったが、ここまで他人行儀な態度を取られるほどではなかったはずだ。あれこれと頭を巡らせていると、なにやら変な言葉が聞こえてきた。
「君に萌え萌え」
君に、萌え萌え……と言わなかったか?
自分の耳を疑う。理由は分からないが、戦場となってしまった秋葉原。緊張感に包まれたこの場所で、聞こえるはずのない間の抜けた言葉。
だが——。
「バッキュンきゅん」
鈴羽もまた、同じように緊張感のない言葉を返した。
ガチャン、という音とともに、入れ、という言葉が中から聞こえてきた。
どうやら今のが合言葉だったらしい。
そして理解した。こんな馬鹿みたいな合言葉を設定する奴は、俺が知る限り、ひとりだけだ。