STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「どうしたんだニャ、オカリン。一度帰った後にわざわざ呼び出すニャンて」
「そうだよ。ボクなんてそれほど近いわけじゃないんだからさ。話があるなら帰る前に言って欲しかったのだぜ」
既に帰宅しかけていたところを呼び戻されたラボメンたちは、口々に言いたてた。
「それで、お話ってなにかな、オカリン?」
「ラインや電話じゃダメなお話ですか?」
もう、ラボメンたちを巻き込まないなどという考えはない。容赦なく巻き込むと決めたのだ。それに、この世界線ではどのみち、数日後にはタイムリープマシンを作るはずだったのだ。そんな心配は今さらだ。
「ああ。その前に、鈴羽」
だが、それよりも前に、ケジメをつけておかねばならない。
「なに?」
「ひとつ訊きたい。お前は俺のことをどう思っている?」
この半年間、鈴羽には複雑な思いをさせてきた。
「どう……とは?」
「ちょっ、オカリン。まさか!い、いくらオカリンでも鈴羽はあげらんないよ!お父さんは認めません!ダメっ、絶対!」
すっかり勘違いしているらしいダルは放っておいて、俺は鈴羽に向き合った。
「お前はこの半年、俺のことを見ていたはずだ。その上で、心の中ではどう思っていた?率直な言葉を聞かせて欲しい…」
「言っていいのか?」
「ああ…」
鈴羽はダルと、まゆりを一度だけ見た。そして——。
「正直言うと、腹が立ってしょうがなかった」
本当に、率直な意見だったので、俺は苦笑してしまった。
「あたしや父さんやまゆねえさんだけじゃない。ルミねえさんもるかにいさんも、かがりも……未来の世界では、みんなみんな辛い思いをしている。明日は生きているかどうかも分からない。母さんみたいに無残に殺されてしまうかもしれない。そんな世界で、必死になって生きているんだ。それなのに、弱音ばかり吐いて自分ばかりが辛いようなことを言って……」
一度口火を切ると、もう止まらなかった。それだけの鬱憤をため込んできたのだ。俺が逃げ続けていたことは、そういうことだったのだ。
「もちろん、オカリンおじさんが辛い経験をしてきたことは知ってる。何度も何度も、苦しい目に遭って、それで立ち上がれなくなったことだって知ってる。それでも……あたしたちにはオカリンおじさんしか頼れる人がいないんだ…っ!」
鈴羽はうつむき加減に拳を握りしめ、歯噛みをした。
「あたしや父さんに変わりが務まるのなら、どんな事でもやる!どんな辛い思いをしようが、どんな苦しみが待ち構えていようが、それでもなんだってやる!」
「鈴羽……」
鈴羽の覚悟を見て、ダルが驚いた表情を見せる。
「だけど、あたしたちじゃどうしようも出来ないから……オカリンおじさんじゃなければ、どうにも出来ないから……」
悲痛な表情が、怒りに変わる。
「父さんの手前だったから言わなかった。でも、ずっと腹が立ってた。本当に、ブン殴ってやりたいぐらいだったよ!」
「…ふ」
本人を前に、ここまで言えるのならいっそ、清々しい。
「す、鈴羽……なにもそこまで言わんでも」
「そうだニャ。オカリンだって分かってるんだニャ」
そう。分かっていた。分かっていたんだ。どうにかしなきゃいけない事くらい。
「だったら、そうしてもらおうか」
「………そうする、とは?」
「殴りたかったんだろう?だったら、殴ってみればいい」
「え、でも…」
「遠慮はいらない」
「………」
「す、スズさんやめて……オカリンは……」
俺はまゆりを制止する。ケジメ。
そう。これは俺なりのケジメだ。
鈴羽への。未来の世界への。そして、自分自身への。
「もしかしてそういう性癖?だったら止めんけど……」
「ホントにいいんだな?」
鈴羽が一歩、俺に近寄って来る。
「ああ…」
覚悟はできている。
「じゃあ……本気で行く」
「え?」
本気?今本気って言わなかったか?
「あ、いや、待て………少しは手加減を——」
「せいっ‼」
ドスッ!と鈍い音が響いた。
「はぐぼぁっ——!」
思いっきり振りかぶってのグーパンに吹っ飛ばされた。
「あ、悪かった。少し力が入り過ぎた………」
「今、すごい音したわよ?」
「だ、大丈夫、オカリン⁉」
まゆりたちが、慌てた様子で俺の顔を覗き込んでくる。
確かに、今のはかなり痛かった。脳にリーディングシュタイナーやタイムリープをした時以上のダメージがあるかもしれない。
だが——。
「フッ———」
「岡部…さん?」
おかげで目が覚めた。
「フフフ———」
俺は、今の俺に出来る事をやればいい。
「クククククク————」
「オカ……リン……?」
「フゥーハハハハハ‼」
俺は高笑いを上げた。
「も、もしかして、凶真……?」
「オカリン……?」
「違うぞ、まゆり………」
俺は溜めに溜める。そして宣言する。
「鳳凰院……凶真だ!」