STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「いいなー。まゆしぃもオカリンと合コンしたいのです」

 

「何っ?」

 

まゆりが?こ、こいつもそういうのに興味のあるお年頃なのか?

 

「だって、みんなで楽しくパーティするんでしょ~?」

 

……違ったようだ。

 

「むふふ~。マユシィにはまだちょっと早いのニャ。おっとルカニャン。ルカニャンにもまだ早いニャぞ?」

 

「ぼ、僕は別に……」

 

フェイリスもピュアなふたりに毒気を抜かれたのだろう。俺に恥をかかせるつもりもなくなったようだ。

 

「場所はラボでいいかなぁ。るかくんとフェリスちゃんはもちろん参加ね。あとはダルくんや綯ちゃん、スズさんも——」

 

まゆりがバツの悪そうな顔で俺を見た。

 

「…………」

 

スズさん、か。

 

阿万音鈴羽。またの名をジョンタイター。2036年からやって来たタイムトラベラー。全てを諦めようとしている俺とは対照的に、諦めずに抗い続けている本物の戦士。

 

夏以来、ろくに顔を合わせていない。俺の方から会うのを避けていた。

 

俺がラボに顔を出さなくなったのも、あいつが今、ラボに居候状態だからという理由もある。

 

なにしろ、ひと月くらい前までは、鈴羽の名を聞いただけでフラッシュバックが起こっていたくらいだ。あの日から3か月が経ってようやく、平気になってきたという感じだ。

 

悪いのは俺だ。それは分かっている。だが、それでも俺はもう一度過去に行くつもりはない。紅莉栖は救えない。それがこの世界の運命だからだ。

 

「あ、あのね、みんな」

 

「どうしたんだニャ?」

 

「まゆしぃね、ダルくんと一緒に考えてるおぺれーしょんがあるんだ」

 

「オペレーション?」

 

まるでかつての俺みたいだな。

 

「っていうと、どんな作戦だニャ?」

 

「えっと、『スズさんを笑顔にしよう大作戦』!」

 

「えっと…」

 

まゆりのやつ、いきなり何を言い出すんだ?いや、いきなりじゃないかもしれない。ずっと考えていたんだろう。

俺が鈴羽と直接会っても大丈夫になるまで、ずっと待っていてくれていたんだ。

 

「聞かせてくれよ、まゆり」

 

「あ…」

 

「大丈夫。俺は大丈夫だから」

 

「うん!えっとね、まゆしぃは思うんだ。スズさんって普段は怖い顔してる事が多いけど、本当はすっごく優しい人なんじゃないかなーって。ラボにいる時ね、まゆしぃがソファでウトウトしちゃうと、いつの間にかタオルケットがかかってたりするの。スズさんに聞いても、そんなの知らないとしか言わないんだけど……」

 

「あ、僕も同じような事があったよ。買い出しの荷物が多くて困っていたとき、阿万音さんが通りかかって、何も言わずに持ってくれたんですよ」

 

「へぇ、初耳だな」

 

「こんなこと当たり前だから、誰にも言うなって。……あ、言っちゃいましたけど」

 

α世界線での鈴羽は、いつも笑顔を皆に向けていたし、颯爽とマウンテンバイクを乗り回すような明るい女の子だった。それに対して、この世界線の鈴羽は、あまり笑顔を見せるようなタイプではない。それは鈴羽の生い立ちが関係している。

 

ダルから又聞きしたことだが、鈴羽は第三次世界大戦を契機とした、国民皆兵制度のために、中学生の頃から軍事訓練を受けさせられていたらしい。さらにその後、タイムマシンがらみの反体制勢力に加担し、激しい闘争の中に身を置くようになった。その影響で、心の底からの笑顔とは無縁になってしまった、と。

 

 

「だからね、スズさんを本当の笑顔にしたいのです」

 

「なるほど…」

 

「で、具体的には何をするのかニャ?」

 

「クリスマスパーティだよ!」

 

全員でハモった。

 

「「「クリスマスパーティ?」」」

 

「もうすぐクリスマスでしょ?スズさんね、そういうパーティをやったことがないんだって。だからまゆしぃはスズさんにそれをプレゼントしようと思ってるんだ~」

 

話を聞いたフェイリスとルカ子はほぼ同時に頷いた。

 

「その話、乗ったニャ!」

 

「僕も!」

 

「えへへ。ありがとう♪」

 

嬉しそうな顔。

 

「オカリンも、参加してくれる?」

 

心配そうに俺の顔を見る。

 

「う……そ、そうだな。参加させてもらうよ」

 

鈴羽は俺を嫌っているはずだ。唯一の希望である俺が、あいつの願いを蹴ったのだから。だが、まゆりにこう言われると、断れない。俺のつまらない意地のために、まゆりの顔を曇らせたくはない。

 

「うん!」

 

今のうちに覚悟を決めておこう。鈴羽と対面しても、取り乱さないように。

 

「そろそろどこかに入ろうか。お前たち、何が食べたい?奢るぞ?」

 

「ニュフフ~。フェイリスに奢ろうだニャンていい度胸ニャ!」

 

「お前は金持ちかもしれんが、年上の俺がお前に奢られるのは沽券にかかわるんでな。今日くらいは大人しく奢られていろ」

 

フェイリスは、俺なんかでは想像できないほどの金を持っているだろう。そういえば、ラジ館の屋上のタイムマシンが見つからないように、屋上全体を借り上げてくれたのだとか。

 

フェイリスには全てを打ち明けてある。そういう意味でも、フェイリスには頭が上がらないのだ。恩に着せるのを嫌がるフェイリスだから、あえて口にはしないが。今日くらいは恩返しをしておきたかった。

 

「ウニャ~。今のはちょっとときめいちゃったのニャ!

 

「メイクイーンのナンバーワンメイドをときめかせたのなら、俺の腕もなかなか上がったということだな」

 

「岡部さん。格好いいです……」

 

ルカ子の乙女のような目には少し思うところがあったが、俺たちはヨドバシの方に向けて歩き出した。

先を行く3人の背中を見ながら、ふとこんなことを考えてしまった。

 

ここに紅莉栖がいれば——。

 

こんなことを考えてしまうのはやはり、昨日の体験のせいなのかもしれない。

 

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