STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「ダル。紅莉栖のノートPCとハードディスクはお前が持っているんだよな?」

 

「うん。真帆たんから預かって、簡単には見つからんところに隠してる」

 

「それは、『Amadeus』の件が終わったらすぐに破棄してくれ」

 

「……ホントにいいん?」

 

真帆の表情を窺うと、彼女は今度こそはっきりと頷いた。

 

「ええ。でも、それは私にやらせて」

 

「おk」

 

今は『Amadeus』の方が問題だ。

 

「真帆、『Amadeus』のあるサーバーにアクセスできるか?」

 

「ええ。出来るはずよ。橋田さん。ちょっとPCを貸してもらえる?」

 

「え、あ…ちょい待ち」

 

ダルは片手で真帆を制し、キーボードに向かって何やら打ち込み始めた。

 

「なにをしてるんだニャ。ダルニャン?」

 

「一応IPがバレないように厳重に細工を……おk。どうぞ」

 

ダルと入れ替わりでPCに向かった真帆が真剣な顔でキーボードに文字を打ち込み、マウスをクリックする。

 

「……え?おかしいわ。アクセスできない」

 

真帆は何度もパスワードを入力し直してみるが、それでも結局サーバーにはアクセスできなかった。

 

「くっ——私のアクセス権自体が停止されちゃってるみたい。どういうことなの、これ。ちょっと教授に電話してみる」

 

「いや、待て!」

 

真帆がスマホを取り出したところで俺はそれを制止した。

 

「…どうしたの?」

 

「教授を疑ってるわけじゃないが、万が一ということもある。連絡は控えるべきだ」

 

きな臭くなってきた。このタイミングで『Amadeus』にアクセスできない。それがただの不具合だとは思えない。

 

未来ではストラトフォーが紅莉栖の遺産を全て独占していたと聞いた。それに、この世界線に来る前、かがりの、記憶のバックアップデータをストラトフォーが管理していた。

 

西側の軍…という言葉が頭に浮かぶ。レイエス教授。俺はあのライダースーツの女をレイエス教授ではないかと疑っている。

 

ストラトフォーとどこかの軍。レスキネン教授とレイエス教授。

 

まだ何も分かっていないが、信じるよりも疑ってかかるべきだ。

 

「教授に限って………いえ。そうしておく」

 

そんな人じゃない、と言おうとしたのだろう。俺だってレスキネン教授を疑いたくはない。

 

だが、かがりに紅莉栖の記憶を入れるのに、『Amadeus』のシステムが悪用されたことは間違いない。それを運用できる立場にいるのは、単純に考えてレスキネン教授だ。

 

教授とストラトフォーの繋がりは見えないが、この状況が作為的に起こされたことだとしたら…?

 

「ああ。頼む。よし、ダル。ヴィクトルコンドリア大学のサーバーにハッキングしろ」

 

「おk。ちょっとやってみる」

 

ダルはよしきたっ!とばかりにPCに向かう。

 

「簡単に言ってるけど、うちの大学のセキュリティ、結構厳しいわよ」

 

「大丈夫だ。なんたってダルはスーパーハカーだからな」

 

「それを言うなら、スーパーハッカ―な」

 

これでもあのSERNへのハッキングをわずか20時間でやり遂げた男なんだ。問題はない。

 

ダルと真帆はいよいよ真剣に画面に向かい、何やら話している。

 

こちらについては俺に出来ることはない。ならば俺は俺に出来ることをしておくことにする。

 

俺は開発室の奥に向かうと、今朝仕入れたばかりの箱を開けた。

 

まゆりが後ろから箱の中を覗き込んでくる。

 

「わぁ、電子レンジちゃんだ~」

 

「…今はからあげは解凍しないぞ?」

 

これはそう。電話レンジ(仮)の再現をするためのものだ。

 

その後で、真帆にタイムリープマシンの制作を手伝ってもらう。未来から戻って来る際に、その構造と仕組みをダルと真帆に叩きこんでもらった。だからさほど時間はかからないはずだ。

 

「べ、別にそんなこと言ってないのです」

 

そういえば、去年の8月に電話レンジを破棄したとき、もっとも悲しんでいたのはまゆりだ。ジューシーからあげナンバーワンが食べられなくなるからな。

 

「さて…」

 

とはいえ、俺は機械いじりなどできん。

 

「鈴羽。少し手伝ってくれ」

 

鈴羽がこういうことを苦手としているのは知っている。だが、仕方ない。開発のツートップのふたりはハッキングに手を取られている。

 

「あ、あたし?あたしってこういうの、苦手なんだよね…」

 

「それでも構わん。俺だってこういうのは苦手なんだ」

 

「大丈夫かな…」

 

フェイリスならともかく、まゆりやルカ子に触らせるわけにもいかない。鈴羽しか適任はいない。

 

「おか…凶真さん。あの…僕は……」

 

ルカ子がおずおずとこちらに来た。やれることを探しているのだろう。ルカ子にはいてもらうだけで十分なのだが、自分も役立ちたくていてもたってもいられない性格だとも分かっている。

 

敵がすでに動き出していることも考えれば、ラボの警備にあたってもらいたいところだ。だが、ルカ子が清心斬魔流に目覚めるのは未来でのこと。可憐な少女に戻った今のルカ子には荷が重いだろう。

 

「ルカニャンとマユシィとかがりニャンは、フェイリスと一緒に買い出しに行くニャ!これから長丁場にニャるから、食料の補給に行くのニャ!」

 

ここでフェイリスが助け舟を出してくれた。

 

「フェイリス」

 

「心配ないニャ。黒木も呼んであるから大丈夫ニャ。自警団の方にも連絡しておくのニャ」

 

さすがは秋葉原の大地主。頭が上がらない。黒木さんにはいつか菓子折りでも持ってあいさつに行こう。

 

「ではまゆり、ルカ子、かがりよ。任務を全うせよ!」

 

「はーい」

 

「はいっ!」

 

「行ってきまーす!」

 

三者三様の返事と共に、買い出しに出て行った。

 

「…あたしがついていかなくても大丈夫そうだね」

 

「あいつらには悪いが、この場にはできることはないだろうからな。ただ、タイムリープマシン制作が終われば、鈴羽はルカ子に修行をつけてやってくれ。あいつは最強の戦士にならねばならんからな」

 

「……未来でるかにいさんを見たんだね」

 

「……ああ」

 

「あたしなんかとは比べ物にならないくらい、にいさんは強かった」

 

ルカ子があんなふうになってしまう未来は絶対に変えねばならない。可憐な少女のままでいてもらわねばならん。俺はそう決意して電子レンジの調整に入った。

 

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