STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「橋田さん……貴方、すごいわ……」

 

30分ほど経ったころ、PCの前の真帆からそんな感嘆の声が漏れた。

 

「やったのか?」

 

「ボクにかかればこれくらい、朝飯前だぜ」

 

「スーパーハッカーの名は伊達じゃないな。じゃあさっそく、『Amadeus』のデータを探してくれ」

 

ダルが何やら打ち込むと、よく分からない数字の羅列の中に、フォルダが開いた。いくつものフォルダを真帆が見ていくが——。

 

 

「ない………。『Amadeus』のシステムそのものも、紅莉栖の記憶データも、あったはずのフォルダからなくなってるわ……」

 

「既に持ち出された、ということか?」

 

俺はスマホを取り出すと、ロックを解除してホーム画面を呼び出す。そこには『Amadeus』のアイコンが残っていた。

 

「なぁ…このアプリから『Amadeus』にアクセスできると思うか?」

 

「あ!」

 

真帆が俺のスマホ画面をのぞき込んでくる。

 

「サーバーにデータそのものが残っていないなら無理なんじゃ……でも、試してみる………いえ」

 

「そうだな。ここは慎重にいくべきだ。深淵を覗くと、深淵もまたこちらを覗いている、からな」

 

「厨二病乙!………このやりとり久しぶりだお!」

 

ダルはなんだか嬉しそうだ。まぁ、今のはさすがに自分でも厨二病だなぁとは思う。

 

「ん?」

 

PCの画面を見ていたダルが声を上げた。

 

「どうした?」

 

「ここ……さらに鍵がかけられてるフォルダがある」

 

真帆がモニターを凝視すると、『Memory』と書かれたフォルダに鍵がかけられていた。

 

「変ね。こんなフォルダ、今までなかったわ…」

 

「かなり厳重なセキュリティがかかってるっぽい。さっきのとは比にならんくらい」

 

「『Amadeus』はそっちに移されたのかしら。でも、そんな権限を持っているのはレスキネン教授くらいよ…」

 

「………」

 

教授の裏の顔、とは信じたくない。誰かに脅されている可能性もある。

 

「ダル。そのフォルダは一旦保留だ」

 

「え、いいん?これ以外にはめぼしいのはなさそうだけど…」

 

「他のアプローチでいく」

 

「他の…?」

 

「ダル、ストラトフォーをハッキングしろ」

 

「ストラトフォー⁉影のCIAとか呼ばれてるあの?」

 

「未来ではストラトフォーが紅莉栖の遺産を独占していたらしい。ロックを外すことは出来なかったようだが」

 

「ストラトフォーが……マジなん?」

 

「ああ。それとダル。お前は以前ストラトフォーにハッキングを仕掛けたことがあっただろう?」

 

「は、はい?なんでオカリンがそれを知ってるん?エスパーかよっ!」

 

「ふん。俺の魔眼、リーディングシュタイナーは全てを見通す。俺の前に隠し事などできんっ!」

 

前の世界線でダルが言っていたというだけのことなんだが。

 

「ストラトフォーのサーバーは……っと」

 

さすがに、一度ハックしていただけはある。今度は大学にアクセスするよりもずっと短い時間でハッキングが成功した。

 

「その『Amadeus』っつーシステムのデータを探せばいいんだよね?」

 

「ちょっと待って!」

 

そこで真帆がストップをかけた。

 

ダルからマウスを奪い取り、アイコンをクリックする。すると何らかの文書のようなものが表示される。

 

「これ、レポートだわ…」

 

次々とファイルを開いていくが、英語で書かれているため俺たちには理解出来ない。

 

「何が……書いてあるんだ?」

 

「……実験よ。ストラトフォーが行っていた人体実験」

 

「人体……実験、か」

 

「どうやら、記憶の移植実験を行っていたみたいね。誰かの記憶データを別人に移し、定着させる実験をいくつも行っているわ。年齢、性別、人種も様々。身寄りのない人を使って実験を繰り返していたみたい」

 

記憶のデータを他人に移植する実験。そこから連想されるのは——。

 

 

「それに、記憶移植に関する新しい実験に着手しようとしているみたい……」

 

「目的は、タイムマシンに関連していると見ていいな…」

 

タイムマシンの情報を得るために、紅莉栖の記憶のブラックボックスをこじ開けようとしている。『Amadeus』からパスワードを引き出して、ノートPCとハードディスクを手に入れなくても、記憶を直接見ることができれば問題は一気に解決する。

 

「とにかく今は、紅莉栖の記憶データを探すのが先決だ。ダル、データはありそうか?」

 

「んー…」

 

だが、ダルは渋い顔をした。

 

「いや……ないね。それらしいもんは見当たらない……」

 

「………」

 

どういうことだ?ストラトフォーはヴィクトルコンドリア大学から『Amadeus』のデータを奪ったわけじゃないのか?

 

「うーん………あ!なんか変なんあった」

 

「なんだ?」

 

ダルがそのファイルを展開し、モニタに表示させる。

 

「新しい実験の……被験者リスト、のようね」

 

「被験者リスト…」

 

記憶を移植するのにも、適性があるはず。だから多様な人間で人体実験をしているんだ。そうだとすると——。

 

 

 

「そこに、椎名かがりの名前があるはずだ」

 

「え、どうしてかがりたんが出てくるん?………って、本当にあった!」

 

リストの中には、俺の予想通り、かがりの名があった。

 

「適性は高いが、途中で逃走した……とあるわ。今なお捜索しているとも」

 

「やはりか…」

 

かがりを外へ行かせたのは失敗だったかもしれない。だが、これを聞かせるわけにもいかない。悩ましいところだ。

 

「オカリン。かがりたんはどういう状況なん?」

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