STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「俺がこれまでに経験してきた世界線において、1998年時点でかがりは鈴羽の元を離れていた。そしてどこかに監禁され、この、記憶の移植実験を受けていたはずだ。ルカ子のところで保護されるまでの流れは同じだ。この世界線では1月16日に未来のことを思い出したようだが、それについてはまちまちだ。最初は何も覚えていなかった」
「そこから世界線が変動したんだよね?」
「ああ。この世界線では起こらなかったが、1月1日にラボが襲撃されたんだ。主犯はストラトフォーか米軍だろうな。目的はかがりだった。奴らはかがりが未来人であることを知っていたんだ。そして翌日、俺は階下の天王寺さんに全てを話した。彼はSERNのラウンダーだからな。その結果、『Amadeus』が乗っ取られてしまった」
「っ!『Amadeus』が?」
「SERNが『Amadeus』の中にある“紅莉栖”の記憶を使ってタイムマシンを作ったんだ。それによって俺はα世界線へと飛ばされた」
「…どうやって戻って来たん?」
「向こうでは、紅莉栖が電話レンジを作り直していたんだ。アノニマスでDメールを送った。『Amadeus』の研究がとん挫するようにな。それで『Amadeus』が凍結され、俺はβ世界線に戻る事ができた。だが、戻って来ると、状況が大きく変わっていた」
「…かがりのことだね」
「ああ。『Amadeus』が凍結されたことで、かがりへの記憶移植実験が前倒しになったんだろうな。かがりの中から記憶を消す前に、紅莉栖の記憶を追加でインストールされてしまった。この時代に来てからのことは覚えていなかったが、未来のことは覚えている状態だったんだ」
「別の記憶が混在している、か。かなり危険な状態ね」
「その世界線の真帆もそう言っていた。だから俺たちはかがりの記憶のバックアップデータを見つけ出し、タイムリープマシンのようなものを作って記憶を上書きしたんだ。その瞬間に世界線が変動した」
「それで、今のこの世界線になったっつーこと?」
「いや、そうではないんだ。これについては俺も経験していないから、未来のダルに聞いた話なんだがな。ダル、俺は1月2日に変な挙動を見せなかったか?」
「え?1月2日……なんかあったかなぁ」
「あたしは覚えてるよ。あの日、おじさんの様子が変だった。これまでの記憶がないみたいに、まゆねえさんや父さんに何度も同じことを確認してた」
「俺はそのタイミングで一つ前の世界線から移動してきたらしい。と、言うのも、かがりの記憶を上書きしたことで世界線が変動したが、直接この世界線に来たわけじゃないんだ。そこからもう一つ、別の世界線を挟んで、ここに来たらしい」
俺は未来のダルから聞いた話をそのまま説明した。
「1月2日以降、かがりさんが何者にも狙われることのない世界線……ね」
「おそらくSERNがけん制をしていたんじゃないか。結果として、どの機関もタイムマシン論文を手に入れられない、という状況が作られた。だから鈴羽とかがりが7月7日にタイムトラベルすることができた…」
「その結果、この世界線へと移動することができた、というわけね」
「1月2日に天王寺さんに全てを話した上で、『Amadeus』からの着信に出ない、という選択をしたんだろうな。だからこの世界線では、そもそもラボの襲撃が発生しなかった。その代わりとして、真帆のオフィスとホテルが狙われた」
「比屋定さんのオフィスとホテルは知っている者が限られている…。内部犯である可能性が高い」
「だから教授に連絡を取るのを控えさせた、と。なるほど…」
「そういう経緯でアクティブになったこの世界線では、おそらくかがりの優先度は高いはずだ。未来ではストラトフォーが紅莉栖の遺産を全て独占していたようだが、結局ロックを外せず中身を手に入れることはできていなかった。狙われるとすれば、まずかがりだろう。記憶の移植をするにしても、適性がなければ不可能なはずだしな」
「『Amadeus』の中にある牧瀬紅莉栖の記憶データを消してしまえば、かがりが狙われることもなくなるってことだね…」