STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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さて、ここからが本番だ。俺はスマホを取り出し、既に打ち込んであった文章をラインで桐生萌郁へと送信した。『手筈通りに頼む。』それだけだ。

 

「では、作戦の概要を説明する」

 

鈴羽、まゆり、フェイリス、ルカ子。4人に真帆から受け取ったばかりの2台のスマホを差し出した。

 

「4人には2人1組になってもらう。そうしたら、このスマホを持って都内を動き回ってくれ。ペア同士は出来るだけ離れた方がいいな。片方の組は中央線沿線。もう片方は山手線沿線ということにしよう。お互いに連絡を取り合いつつ、スマホにインストールされている『Amadeus』というアプリを立ち上げてくれ」

 

ダルがハッキングを仕掛けている間に、俺はあえて一度秋葉原を離れ、東京駅から『Amadeus』にアクセスしてみた。

 

そうしたら繋がったのだ。“紅莉栖”が応答した。一瞬で切ったが間違いない。このアプリは生きている。それを利用した作戦だ。

 

「立ち上げて、どうするの~?」

 

「『Amadeus』は牧瀬紅莉栖という人物の記憶を元に作られた人工知能だ。俺たちは今からそいつを騙す」

 

そう、俺がやろうとしているのは“紅莉栖”を騙す事だ。『Amadeus』と接触を持つことで、相手にはこちらの位置情報を握られてしまう。それを逆手に取るのが俺の立てた作戦だった。

 

「『Amadeus』を立ち上げると同時に、もうひとつのプログラムが起動する」

 

「もうひとつのプログラムってなんだニャ?」

 

「そこのSってマークのあるアイコンをタップしてみてもらえる?」

 

「えっと……これかニャ?」

 

フェイリスがタップすると。

 

『もしもし、俺だ』

 

「わ、オカリンの声だ~」

 

「話しかけてみてくれ」

 

「今日はどうしたんだニャ?」

 

『特に用はないんだ。少し話がしたくなってな』

 

俺の声で、自動で応答してくれるのだ。

 

「すごい。自動的に答えてくれるんですね…」

 

真帆が作ってくれたのは、会話の中の単語や文章を拾って、決まったパターンの会話の中から自動で返答してくれる装置——言うなれば人工無能だった。

 

「オカリンさんと私の人工無能(ボット)——名付けて『Salieri』よ」

 

サリエリが傑物だったにもかかわらず、この扱いは少し申し訳なかったが、それも仕方ない。真帆がこの名前にこだわったのだ。紅莉栖への劣等感、のようなものが節々から感じられるが、そこは置いておく。俺が何を言おうとも、本人がどう納得するかでしかないからな。

 

「『Amadeus』を起動すると、俺たちのbotが自動で返事をしてくれるようになっている」

 

「つまり……相手に今喋っているのは岡部さんだと思わせるということですか?あ、いえ…凶真さんです…」

 

そこは別に岡部でいいんだが…。まぁ、これまで気を遣わせてきたのだから仕方ない。

 

「そういうことだ」

 

そうすると、『Amadeus』は俺がその場所にいると思い込むだろう。本来ならもっと端末を用意したいところだが、『Amadeus』には端末認証が必要なため、アクセスできる端末は限られている。

 

俺と真帆のスマホしか使えなかったが、短い時間だけならこれで十分だ。それと、先ほど俺が萌郁に送ったのは、紅莉栖のノートPCとハードディスクを俺が所有しているという情報を流してもらうためだ。

 

『Amadeus』の方に集中しているとはいえ、論文のデータが手に入るとなれば躍起になって探さないわけにはいかないだろう。攪乱するには、このふたつの組み合わせは相性抜群だ。

 

「以上が今回の任務となる。くれぐれも言っておくが、『Amadeus』との長時間の接触は厳禁だ。それから『Amadeus』を切った後にはすぐにその場を立ち去る事。何かあったらすぐに連絡を寄こす事。これだけは絶対に守ってくれ。分かったな?」

 

全員が頷く。

 

「あの、真帆さん。ちょっといいかな」

 

「まゆりさん?どうかしたの?」

 

おずおずとまゆりが手を挙げる。まゆりのことだ。どうせ理解できなかったのだろう。だが、言い出しにくそうな顔をしているのは意外だった。こいつは分からないときは、素直に分からないと言うタイプだからな。

 

「さっきのオカリンの声のデータってもらえたりするのかな?」

 

「なっ⁉何を言ってるんだまゆりっ!」

 

「あ、フェイリスも欲しいニャ!」

 

「あ、私も欲しいなっ!オカリンさんの声、好きなんだ~」

 

「フェイリスにかがりまで……っ!」

 

こいつらは何を言っているんだ…。俺の声など、手に入れてどうする?それに、あれを録音するのも少し恥ずかしかったんだ。

 

「で、データは残ってるから、あげられるのだけれど……欲しいの?」

 

「ほしいよ~。小さい頃からオカリンの声、録音して残してるんだよ~。でも直接頼むとオカリンは怒るのです」

 

「さっすがは幼馴染だニャ!ぜひ譲ってほしいのニャ!凶真のボイスを着信音にするのニャ!」

 

「おいお前たち!今はまじめな話をしてるんだ。ルカ子も何か言ってやれ」

 

「ぼ、僕も……欲しい、です……」

 

「ルカ子…貴様っ!」

 

「分かった分かった!全部が終わったらまとめてデータをあげるわよ」

 

「お、おい真帆!」

 

「どうでもいいからさっさと話しをまとめなさい!あなたが所長なのでしょう!」

 

それからもラボメンガールズはワーキャーと騒ぎ続けた。

 

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