STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「ぷっ……ふふふ、何それ!あなた、ユニークね!」

 

驚いていたのもつかの間、レイエスはすぐに余裕を取り戻す。だが、ここで怯むわけにはいかない。

 

「レイエス。これまで貴様がやって来た事は既に把握した。貴様はAI戦士の研究のために、ヴィクトルコンドリア大学に教授として潜り込んだ。そしてその過程で『Amadeus』プロジェクトに辿り着いた。そうだな?」

 

「ええ。その通りよ。『Amadeus』はなかなかに面白いプロジェクトだったわ。でも、それよりも面白かったのは——」

 

 

まるで物でも扱うように、足元に横たわるレスキネン教授の死体を踏みつけた。

 

「『Amadeus』プロジェクトに見え隠れする、彼らの存在よ。案の定、探りを入れてみたら、とんでもないものが見えてきた。何が出てきたかあ、あなたも知ってるでしょう?」

 

「タイムマシン……だな」

 

レイエスは妖艶な笑みを浮かべて頷いた。

 

「なるほど、な。人類の夢であり、決して作り出す事のできないと言われたタイムマシン。その理論が記された論文の存在に気付いたか!それを手に入れれば、世界の覇権をも手に入れる事が出来ると!」

 

 

しつこいほどにまわりくどく話す。少しでも時間が稼げればいい。

 

「ふんっ、だがくだらんな……貴様らの考える事はみな同じだ」

 

「くだらない…ですって?」

 

「ああ。実にくだらん!世界の覇権?国家のため組織のため機関のため……。どれも矮小な目的だ。そんなもののために、正規の大発明を利用するなど、科学者として下の下!」

 

「ワタシは科学者である前に軍人よ。国に命を捧げた者なの。我が国が世界の覇権を手に入れれば、それだけで抑止力になる。それは世界の為でもあり、人類の為でもあるのよ!」

 

その声は興奮のためか、次第に高まっていく。

 

「だから決して他の国に先を越されるわけにはいかない!革命的な理論をワタシたちが手に入れる事で、世界の均衡は守られる!世界の平和は保たれるのよ!それを他の国に……ましてや、一民間企業に手に入れられるなど、許すものですか!」

 

俺を、地に伏したレスキネン教授をキッと睨みつける。

 

「それがこれだけの人間を手に掛けた理由か……。あえて、もう一度言おう」

 

俺は大きく息を吸い込んで叫ぶ。

 

「くだらないな!」

 

「あらそう。…彼らには悪い事をしたと思ってるわ。本当なら彼らを泳がせるだけ泳がせておいて、すべてを手に入れてからデータを頂戴するつもりだったの」

 

「なら、なぜ殺した?」

 

「スパイとして潜り込ませていた、部下の一人がヘマをしでかしちゃったのよ。だからそれについてはこちらの落ち度だと思ってるわ。でもね、彼らだって悪いのよ」

 

レイエスは悪びれもせずに言う。

 

「うちには民間の研究者も在籍しているの。そちらに席を用意するって提案したのに、欲を出して要求をつきつけてきたりなんかするから……。才能のある人間を失うのは不本意だわ」

 

わずかに口角を上げてレイエスはそう言った。本当にそう考えているとは、とても思えない。

 

「さて、ここでひとつ提案。オカベ・リンタロウ。あなた、うちに来ない?」

 

「…何?」

 

「あら、意外って顔ね。いったい何のために、わざわざこんな話をしたと思うの?冥途の土産に……なんて、日本の“SAMURAI CINEMA”の中だけの話でしょう?」

 

「…………」

 

「心配しなくていいわ。ワタシたちは国籍なんて問わないし、お望みならばグリーンカードだって用意してあげられる」

 

「つまり、俺の……この鳳凰院凶真の才能を認めたというわけか……」

 

「もちろん。才能のない人間になんて、声をかけたりしないわ。あなたには才能がある。それに、マキセ・クリスの友人でもある」

 

どうやら、俺に価値を見出している真の理由は、後者の方のようだ。実に分かりやすい。交渉とは、これほど分かりやすい方がうまくいくのかもしれない。

 

「牧瀬紅莉栖のタイムマシン理論について、俺が彼女から何か聞いているかもしれない……。そう、期待しているわけだ。だからこの俺が欲しい、と」

 

「役に立つ人間は引き抜く。正当な対価も払う。それがワタシたちの生きる世界のルールだもの」

 

「という事は、役に立たなくなったら、俺もそこに転がっている彼らのようになるわけだな?」

 

「それはあなたの働きと、心がけ次第じゃないかしら?」

 

楽しそうに笑うと、レイエスはゆっくりとかがりの後ろに回った。

 

一見普通の動きだが、鈴羽が一歩も動かないところを見ると、隙はないのだろう。

 

(ダル……まだなのか?)

 

「ま、ゆっくり考えてちょうだい」

 

時間稼ぎもそろそろ限界だ。

 

「クク……ククク……」

 

「…?」

 

「フゥーハハハ!」

 

俺の突然の高笑いに、レイエスが一瞬怯む。

 

「この俺の才能に目をつけるとは、なかなかのハイエスト・アイの持ち主だ!」

 

「ハイエストアイ?」

 

「目が高いという意味だ!メリケン人なのにそんな事も分からないとはな!だが、まあいい。科学者として下の下だと言った、さっきの言葉は取り消してやろう。なにせ、この俺の才能を見抜いたのだからな!」

 

「あら、それならこちらの提案に乗ってくれるのね?」

 

とっておきのアレを突き付けてやろう。

 

「だが断るっ‼」

 

「な………」

 

「この鳳凰院凶真の最も好きな事のひとつは、自分が優位に立っていると思っているやつに、『NO』と断ってやることだからだ!」

 

これが伝わらないことなど分かっているが、このタイミングで言わないという選択肢はない。

 

「狂気のマッドサイエンティストは、孤高の存在でなければならない。いついかなる時も、何物にも属してはならない。それが宿命……」

 

「…………」

 

驚いた顔をして俺を見ていたレイエスだが、やがて大きくため息をついた。

 

「ま、それについては結論を急ぐ必要はないわ。彼女の処置が終わるまで、ゆっくり考えてもらって構わない」

 

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