STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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レイエスがかがりの方に目を向ける。もちろん、鈴羽と俺への警戒も怠ってはいない。

 

「……かがりをどうするつもりだ?」

 

頭の後ろで両手を組んだ状態の鈴羽が、視線だけで射殺す勢いでレイエスを睨みつける。

 

「分かり切った事でしょ。彼女の頭の中に、マキセ・クリスの記憶を上書きするの」

 

「それは……」

 

「本当はもっとはやくにこうしたかったんだけど、連中が愚図なせいで時間がかかっちゃったのよ」

 

あの世界線で、かがりの中に紅莉栖の記憶が移植されていたのは、ストラトフォーではなくこいつらの仕業だったのかもしれない。ラボを襲撃したライダースーツの女も、もしかするとこのレイエスだったのか?

 

かがりを洗脳したのはストラトフォーの連中だと言っていたのに、記憶の移植をしたのはDURPA。裏では見えない力関係があるのかもしれない。

 

「そんな顔しなくても大丈夫よ。この為に、今日まで動物や何人もの人間を使って実験を繰り返してきたんだから」

 

レイエスは愛おしそうにかがりの頬を撫でる。

 

「そもそも、これまでのシステムには致命的な不具合があったの。でも、今回はそれも解消した。その上、彼女の高い適応力もある。きっと成功する……」

 

一語一語。ゆっくりとした口調。その言葉に引き込まれそうになる。

 

「クリスの記憶が……頭脳が……この子の中で再現されるのよ。そうなれば、記憶のブラックボックスなんて存在しなくなる。ワタシたちの言うがまま。彼女はきっと、タイムマシンについてもぜ~んぶ教えてくれる。もうクリスのPCもハードディスクもいらない。彼女さえいてくれれば、それでいいの……」

 

レイエスは赤い唇をかがりに寄せた。

 

「ねぇ、カガリ……あなただって、クリスになりたいでしょう?」

 

「駄目だ、かがり!そいつの言葉を聞くな!」

 

「…………」

 

だが、かがりはピクリとも動かない。

 

「天才と呼ばれたあの頭脳が、あなたのものになるのよ。世界に革新を起こす存在になれるの……素敵だと思わない?」

 

「…………」

 

「お返事は?」

 

かがりの唇が僅かに震えた。

 

「は……い…」

 

「ふふ…いい子ね……」

 

「かがり……」

 

「リンタロ。これはあなたの選択でもあるのよ?素直にこちらの交換条件に応じていれば、結果は変わったかもしれないのに。それに……あなただって本当は、クリスに会いたいんじゃないかしら?」

 

俺、は……。

 

「人間を構成するのは記憶よ。記憶がその人間を作り出しているの……」

 

「………っ」

 

「クリスの記憶を持ったかがりは、クリスそのものになるわ。そうなれば、あなただって嬉しいでしょう?」

 

俺は——。

 

 

 

「それにクリスだって喜ぶわ。きっとあなたに会いたがってい——」

 

「ふざけるなぁッ!!」

 

自分でも驚くほどの大声だった。

 

「紅莉栖が喜ぶだと?そんなわけがあるかっ!仮にかがりの記憶が紅莉栖のものに取って代わったとしても、それは紅莉栖じゃない!自分の記憶が、そんな目的の為に使われたって、あいつは絶対に喜んだりしないっ!」

 

今にも殴り掛からんばかりの勢いで、叫ぶ。

 

「あいつを……牧瀬紅莉栖を……馬鹿にするなぁぁぁっ‼」

 

 

 

 

 

 

 

鈴羽のそれと変わらないのではないかという剣幕で、レイエスを睨みつける。だが、レイエスは涼しい顔で俺の怒号を受け止めた。

 

「そう。残念だわ。いずれにせよ結果は同じ。そこで、大切な人の記憶がこの子の中に受け継がれるのを、大人しく見守っていなさい」

 

レイエスはかがりの背後に回ったまま、傍にあるPCを操作し始めた。

 

鈴羽はなおも冷静だった。

 

レイエスを止めるべく飛び掛からないのも、ダルの一言を待っているからだ。

 

「ダルッ!まだなのか⁉」

 

俺はレイエスに通話がバレる事も厭わず叫ぶ。

 

『すまんオカリン……あとちょっと、もうすぐなんだが——』

 

くそっ!

 

「おじさん」

 

鈴羽がささやいてきた。

 

「場合によってはかがりを見捨てる。あたしが動いたら伏せて」

 

「………っ」

 

鈴羽なら躊躇しないだろう。だが、俺はそんなこと、させたくない!

 

「はあい。準備オッケー」

 

どうする?見捨てるべきなのか?いや、だが……。

 

結局、このままじゃどっちにしろかがりは助からない。それなら……。

 

「それじゃあサヨナラ、かがり……」

 

レイエスの細い指が伸び——。

 

「っ!」

 

鈴羽が視界から消えた。気づいた時には、レイエスの目の前にいて——。

 

 

 

パァンッ!と銃声が響いた。

 

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