STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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2011年2月6日(日)

 

 

「では、第6728回、円卓会議を行う!お前たち、準備はいいか!?」

 

そう宣言した俺を見るに種類の視線。

 

目を輝かせている者と、ゴミのような目を向けてくる者。

 

前者はまゆり、ルカ子、フェイリス、かがり、ダル。そして後者は鈴羽と真帆だ。

 

「えへへ〜。ホーソーインさんが本当に復活したんだねぇ」

 

「岡部さ…じゃなかった。凶真さんが帰って来てくれて僕は嬉しいです」

 

「流石は凶真ニャ!フェイリスは信じてたのニャ!」

 

「ほへぇ。かっこいいなぁ」

 

「6000回も会議したことねっつの!でも円卓会議とか久しぶりっすなぁ」

 

口々に感想を漏らす者たちはいい。この鳳凰院凶真への畏敬を感じられるからな。だが、残る二人はどうだ。

 

「……紅莉栖って本当にこんな人と親しくなれたわけ?」

 

「ダメだ…ついていけない」

 

不審者でも見かけたかのような引きっぷり。このラボの所長に向けて良いものではない。

 

「おい鈴羽!お前は小さい頃に鳳凰院凶真に憧れていたのだろう!?俺はかがりからそう聞いているぞ!」

 

未来では俺は伝説として語り継がれていたらしい。鈴羽に過去へと行ってもらうためにも、俺をヒーロー…救世主のような存在にしておきたかったのだろう。

 

「ちょっ!かがり!余計なことを言うな!」

 

「えー。でも鈴羽おねーちゃん、オカリンおじさんはすごくカッコいいって何度も言ってたよ?」

 

そう言えばかがりとは直接会ったことはなかったらしい。

 

「いや…小さい頃は確かにおじさんがいかにすごいかって皆んなに吹き込まれ続けてきたから憧れもしてたけどさ。こうして本物を見ると、さ…。いや、ごめん」

 

そんな生温かい目で俺を見るな。

 

まだ鳳凰院モードは久しぶりで恥ずかしいのだ。

 

「鈴羽。オカリンをいじめちゃダメだお。それに去年の夏より前はもっとすごかったんだから」

 

「うっ…ダルよ。その話はするな!」

 

今思えばあの頃はどうかしてた。α世界線の話ではあるが、真帆の言うように紅莉栖とよくあそこまで親密になれたものだ。あの頃は厨二病全開だったからな。

 

「とにかく!くだらん私語は終わりだ!今日は真面目に話さねばならんことがあるのだ!」

 

流石にこれ以上は悪いと思ったのだろう。皆が俺の方を見て黙った。

 

「それで、話って一体何なの?私、大学とのやりとりをしなくちゃいけないから忙しいのだけれど」

 

文句を言う真帆のことは放っておいて、俺は話を始めた。

 

「今回の事件と今後のことについてだ。皆の協力のおかげで、俺たちはタイムマシン論文が敵の手に渡るのを阻止することができた。これでひとまず安心ではある。だが、いつ奴らが仕掛けてくるかは分からない」

 

あの翌日、大学に出向いてみると、案の定封鎖されていた。地下で事故があったとして、あの事件のことは完全に伏せられていた。ストラトフォーやらが圧力をかけたのだろう。どのメディアでも報道されていない。俺たちに飛び火することもおそらくないはずだ。

 

「見えない敵と戦っているんですね。分かりま————ごふっ!」

 

鈴羽がものすごい勢いでダルの脇腹に肘を差し込んでいた。まぁいい。

 

「くだらないこと言ってないで、父さんは母さんとどうすればうまくいくのかだけ考えていればいいんだ!」

 

事件後、ダルは由季さんとなかなかうまくいっているらしい。まゆりとフェイリスが手を回さなくても、自ら積極的に連絡を取っているようだ。これで未来でも鈴羽が生まれてくることは確定するだろう。

 

「それにしても、あれはなんだったんだろう?」

 

ダルをノックアウトした鈴羽が息も切らさずに話を続ける。

 

「あ、あれって…なんだ、お?」

 

息も絶え絶えにダルが床に倒れながら聞き返す。こいつも慣れたものだな。

 

「あの女——レイエスがかがりに牧瀬紅莉栖の記憶をダウンロードした時、うまくいかなかったんだよ」

 

「ただシステムがうまく作動しなかっただけじゃないん?」

 

「ダルニャンの言うとおりだニャ。考えすぎることないニャ」

 

「うーん。そうなのかな。なんか気になるんだよね」

 

「それなんだけど、あの時……」

 

それまで何か考え込んでいるような様子を見せていたかがりが口を開いた。

 

「あの時、声が聞こえたの。頭の奥で、誰だか分からないけど……ダメーっ!って」

 

「アマデウス……もしかしたら、『Amadeus』?“紅莉栖”が最後の最後で、自分の記憶をかがりさんに上書きされるのを拒んだ、とぁ?」

 

「真帆にしてはロジカルじゃない意見だな」

 

だが、真帆の言葉にルカ子とまゆりが顔を見合わせていた。

 

「その……僕たちが最後に『Amadeus』さんを起動した時なんですけど、途中で通信が切られたんです」

 

「オカリンのボットさんが話してるのに、なんだかすごく慌てたみたいに切れたんだ~」

 

まさか、その時に?

 

「でも、そんなこと有り得るのかな?」

 

と鈴羽。

 

「わからない、けど……『Amadeus』にも人間と同じ自己防衛本能はあるはずよ。だから、自分の記憶を良からぬ事に利用されようとしているのに気づいて……という事も考えられなくないわ」

 

以前の世界線では、かがりの頭の中に紅莉栖の記憶が存在している事もあった。ここでもまた、かがりに害を及ぼす形で自らを利用されるのを、紅莉栖が防いでいてくれたのかもしれない。論理的ではないが、俺はそう思いたい。

 

「私はね、絶対に紅莉栖さんだと思うよ」

 

「というと?」

 

「“紅莉栖”さんが消えちゃったときにね、真帆さんに伝えて欲しいって言ってたの」

 

「…私に?」

 

「それ以外の事はあんまり覚えてないんだけど、なぜかそれだけははっきりと覚えてるんだ」

 

そう言うと、かがりは目を閉じてその伝言を口にした。

 

 

 

『今から私が言うことを絶対に忘れないでください。私たちがたどり着くべき世界は確かに存在します。私たちは、必ずそこにたどり着けます。私は先輩の事をよく知っています。研究者としての先輩の事なら、もしかしたら世界中の誰よりも知っているかもしれません。だから、確信を持って言えます』

 

『先輩は、必ず私が残した研究を完成させ、更にその先の地平を切り開くことが出来ます。私が、いなくてもです。先輩のことを世界中の誰より知っているこの私が、それを保証します。そしていつか、先輩の研究が必要になる時が来ます。必ず来ます。先輩の研究が、世界を救う時が』

 

『ごめんなさい、詳しく説明できなくて。先輩と“私”が、こうして話せる事は、奇跡的な事なんです。奇跡なんて、科学者としてあるまじき言葉ですけど。今の先輩ともう一度話ができて、本当に嬉しいです。解があると信じて突き進むのが、科学者のあるべき姿ですよ』

 

『ふふふ。それと、先輩。鳳凰院凶真を、よろしくお願いします。ふふ、いずれ分かりますよ。きっとね。』

 

 

 

「……………」

 

これを、“紅莉栖”が言ったのか?

 

「ねぇ、オカリンさん。これって……」

 

「あ、ああ。間違いなく、シュタインズゲートのことを言っている…はずだ」

 

これを、α世界線の紅莉栖が言うのならまだ分かる。だが、間違いなく、これは『Amadeus』の“紅莉栖”で…。

 

「どこかの世界線で、実際にあったやりとり…なのか?」

 

ATFではじめて『Amadeus』を見た時に考えたこと。

 

『Amadeus』にもリーディングシュタイナーは起こり得るのではないか。

 

この世界線では『Amadeus』は消去された。だが、ここ以外にも『Amadeus』を消し去る世界線があって、そこではその場面に真帆が居合わせた。そして、消去される瞬間、『Amadeus』の“紅莉栖”にリーディングシュタイナーが発動して、α世界線の紅莉栖の記憶が入り込んだのだとしたら……?

 

「レイエスがかがりに紅莉栖の記憶をダウンロードできなかったのは、やはり紅莉栖のおかげかもしれないな」

 

「やっぱり、そうなのかな…」

 

「ええ。そうかもしれないわね…」

 

「そして真帆。君はあの天才、牧瀬紅莉栖が認めた存在だ。おそらく君がいなければ、俺たちはタイムマシンを作る事はできないだろう。だから頼む。これからも俺たちに力を貸してくれ」

 

「え、ええ。紅莉栖にここまで言わせたのなら、私もやらないわけにはいかないわ。こちらこそ、よろしくお願いするわ」

 

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