STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「さて、これから難しい話をすることになるが、その前にお前たちに渡しておくものがある。刮目せよ!」

 

俺は白衣のポケットに入れておいたものを取り出す。

 

「これは……?」

 

「ラボメンバッジ!俺たち全員が、このラボのメンバーである証だ」

 

α世界線で見た、いつぞやのラボメンバッジ。露天商に頼んで作っておいたのだ。

 

「OSHMKUFAHSA……岡部でしょ~?椎名、橋田……Mは牧瀬さん?」

 

「うむ。Kは桐生萌郁。この世界線ではまだラボメンにはなっていないが、いつかは必ず迎え入れてやるつもりだ」

 

「漆原、フェリスちゃん……それから先は~?」

 

「阿万音鈴羽、比屋定真帆、椎名かがり、阿万音由季。締めて11人。由季さんにはダルから渡しておいてくれ」

 

「ラボメン……」

 

かがりは嬉しそうにバッジを胸に押し抱いた。

 

「私の宝物、ひとつ増えちゃった」

 

これから歩む道は、もしかしたら更なる茨の道かもしれない。それでも必ず光はある。

 

「さて、喜びの時間も一旦終わりだ。これからは真面目な話を聞いてもらう」

 

「この前はかがりニャンのピンチニャったからどうすればいいのか分かりやすかったけど、今は具体的にどんな状況なのニャ?」

 

ダルや真帆には詳しく説明しているが、フェイリスやルカ子にはあまり話せていない。俺の方から話を避けていたのもある。俺はここで話しておくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「かがりさん……大変だったんですね」

 

話を聞いたルカ子は、今にも泣き出しそうな顔でかがりの手を握った。何と言うか百合百合しい。

 

「るかくんありがとう!でも今はママもいるし鈴羽おねーちゃんもいるし、るみおねーちゃんもいるから寂しくないよ!」

 

世界線やタイムトラベルの話、かがりの簡単な経緯などを掻い摘んで説明した。だが本題はこれから。

 

「このβ世界線において、紅莉栖の残したタイムマシン理論————紅莉栖の遺産を誰が手に入れているか。それが最も重要な問題となる。中鉢論文そのもの。紅莉栖のノートPCとHDD。『Amadeus』に保存されている紅莉栖の記憶データ。そしてかがり。紅莉栖の遺産はこの5つだ」

 

「中鉢論文はすでにロシアの手に渡ってしまっているわね」

 

「うむ。だからそれについてはどうしようもない。だが、それ以外についてはすでにもう解決済みだ」

 

「ノートPCとHDDは僕のアジトに隠してあるお」

 

「『Amadeus』のデータについてはバックアップごと父さんが削除した…」

 

「そしてかがりについても、紅莉栖の記憶を入れられる前に俺たちで救出できた。『Amadeus』もない以上、かがりがこれ以上危険に晒されることもないだろう」

 

そう言うと、まゆりが嬉しそうに笑った。

 

「えへへぇ。かがりちゃん、良かったねぇ。オカリンたちが守ってくれたんだよ?」

 

「ママともずっと一緒にいられるし、すっごく嬉しいなぁ!」

 

実年齢はかがりの方が少し上なのだが、そこはまゆりの為せる業なのだろう。まゆりがしっかりとした母親に見えるから不思議だ。

 

「それならもう問題ないってことニャ?あとは中鉢論文を消し去ることができれば、シュタインズゲートにたどり着けるのかニャ?」

 

流石はフェイリスだ。ほとんど何も理解できていないまゆりとは違って鋭い。まぁまゆりはかがりが無事だとだけ理解できていればいい。アホの子だからな。

 

「いや、そう簡単な話ではないんだ」

 

「そうなのニャ?」

 

「おそらくこの世界線からではシュタインズゲートを観測することは不可能だ。紅莉栖の遺産以外にもクリアしなくてはならない問題がいくつかある。長くなるが聞いてもらおう」

 

 

まずは『Amadeus』についてだ。

先ほど話した通り、この世界線では『Amadeus』を含め、紅莉栖の遺産の処理はできている。だが、ただ消し去ってしまえばいいという問題ではない。

 

『Amadeus』はかがりに紅莉栖の記憶をぶち込むための装置だが、それ以外にも使用用途はある。それは俺から情報を聞き出すことだ。今更ながら、『Amadeus』は完璧なシステムだ。あれはもう、紅莉栖本人と言っても問題ないほどに、紅莉栖を再現できていた。

 

やはり俺は依存してしまった。言うべきでないことまで話してしまったし、ラボの位置もバレた。ラボへの襲撃もラボの位置が『Amadeus』から漏れたというのが大きな理由だろう。そして、タイムマシンとの関連も。

 

かがりはおそらくタイムマシンの場所を話していない。1998年時点でレスキネンがそれを知っていれば、とっくにタイムマシンが狙われているだろう。

 

「『Amadeus』はオカリンさんへのスパイ、ということね」

 

その通りだ。次の世界線では『Amadeus』のテスターもやめてもらわなければならない。

 

「そんなに都合よく行くんかな…」

 

俺は『Amadeus』の紅莉栖と親しくなること…“紅莉栖”に依存することに抵抗はあった。忌避感とでも言うべきか。そこを刺激できるようなことがあれば、次の世界線の俺はテスターをやめるはずだ。

 

「この世界線では『Amadeus』を消し去って、ストラトフォーや米軍が紅莉栖の遺産を手に入れる未来はなくなった。それなのに、世界線は変動しなかったんでしょう?それはどうしてかしら?」

 

それについては、俺も不思議に思っていた。ダルが『Amadeus』のバックアップデータを消し去り、レイエスが倒れた時、俺は世界線が変動する可能性に思い至っていた。だが、そうはならなかった。

 

「ストラトフォーが未来で紅莉栖の遺産を独占しているという状況は、この世界線の成立要件ではなかった、ということだろうな」

 

「…どういうことかしら?」

 

「未来のダルは、ストラトフォーが独占したものの、中身を確認することはできなかったと言っていた。そのために、紅莉栖をよく知る俺が狙われたんだ。つまり、独占して他よりは優位であることには違いないが、重要なのはその中身を知っているかどうか。タイムマシン開発に漕ぎつけられるかどうか、ということなんだと思う」

 

「なるほどなー。牧瀬氏の遺産の争奪戦が繰り広げられるけど、結局どこも手に入れられてないって状態に落ち着くってことか」

 

「この世界線で紅莉栖の遺産については対処できたんだ。次の世界線でもきっと、同じように対処できるはずだ」

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