STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
2011年12月18日(日曜日)
秋葉原
あの騒動から一年が経とうとしていた頃、未来ガジェット研究所に久々に真帆が訪れた。
「お?来た来た」
「お久しぶりね、みんな」
「わぁ、真帆さんだ。すごく会いたかったよ~。トゥットゥルー♪」
「お久ぶりです。真帆さん」
「元気そうで何よりだニャ」
「ふふ。みんな相変わらずで安心したわ」
「そっちこそ、変わってないね」
「どうせ私は小さいわよ」
「そういう意味で言ったんじゃないって」
「わかってる。冗談よ」
「うぅっ…………」
「ど、どうしたの?」
「この一年、真帆さんに会えなくて寂しかったよ~!」
「ちょ、ちょっと!そんな抱き着かなくても……」
「だって……だってぇ……」
「……ごめん。本当は夏にも来たかったんだけど、大学の方でもいろいろあって…」
あの騒動のツケは、当然のように真帆たちの研究室に大きな爪痕を残したらしい。当然だ。『Amadeus』だけでなく、レイエス教授をはじめ多くの大学関係者があの事件に関わっていたのだから。
「遠いところ、よく来てくれた。真帆」
「当り前よ。私だっていろいろと関わって来たんだもの。この目で見届けるのが勤めだわ」
「でも、本当にいいのか?この一年の後処理が無駄になるんだぞ?」
「無駄になんてならないわよ。だいいち、この世界の未来が過去に繋がるって言ったのは、あなたでしょう。だから私は、この世界で私がすべき事をやっただけよ」
「…ああ、そうだったな」
2025年に死ぬはずだった俺が生きていたという事実。誰もが騙されていた。過去の俺も、未来の皆も。世界は、騙されていた。
確定していると思われていた未来。
そこには違う形の未来が待っていた。ならば、俺も世界を騙せるんじゃないか。
世界を騙すことで、確定した未来を回避出来るんじゃないか。
そしてもしも、世界を騙せるのなら、その先にシュタインズゲートはあるんじゃないのか。
しかし、どうやって騙すかとなると、残念だがその方法は今の俺にはまだ見えていない。それでも未来の俺は言っていた。
いくつもの未来の、その先が過去へと繋がっている。ならば、今俺がすべきなのはただひとつ。
「橋田さん。例のものはちゃんとできたの?」
「もちろん。もう使えるはずだお」
開発室の奥に鎮座する、古ぼけた電子レンジ。あの騒動の最中、真帆の協力によって再現に成功したタイムリープマシンだ。ダルはそこに、新たな機能を追加したのだ。
「それにしても、こんなものが世界の命運を握っていたなんてね」
そう、全てはこれから始まった。俺たちの運命も紅莉栖の運命も、全てはこれに翻弄された結果だ。ひとつ元の電話レンジと違うところといえば、そこに繋がっているのが、携帯電話ではなくスマホだということだ。
過去へのメール送信は、どうやってもSERNに捕捉されてしまうことになる。そうすれば、俺たちは再びSERNに狙われることになるだろう。それは、紅莉栖を犠牲にしてまで選んだこの現実(いま)までをも、また禍のただ中に陥れようとする行為に等しい。
それでは意味がない。しかし、今や通信手段はメールだけではない。メッセージを送る手段は他にも存在している。俺たちが今、頻繁に使っているRINEもその手段の一つだ。
「名付けて、Dラインってとこかな」
もちろん、ブラウン管テレビの電子により重力をコントロールし、そこに生じた特異点を通過させることで、文字情報を過去に送り届けるという原理は同じだ。
また、送ることのできる文字数もDメールと同じく18文字。けれど、これならばSERNに捕捉される恐れもない。再びまゆりが犠牲となる心配もないはずだ。
問題は、通信手段としてRINEを使用し始めるよりも前へはメッセージを送ることができないという点だが、それは仕方あるまい。今は可能性を繋ぐことが、最重要事項なのだから。