STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「…かがり。大丈夫か?」
ようやく痛みが引いてきた俺は、かがりの前にしゃがみ込む。
「えっと、私……寝てたんですか?」
「覚えてないのか?」
「ラボに来て、まゆ氏を見た途端、気を失ったんだお」
「まゆりさんを…?」
ここで俺はかがりの口調の変化に気付いた。変化、というよりも以前の口調に戻った、というべきか。未来の記憶がないから、こうよそよそしくなってしまうのだろう。
「君は、まゆりが口ずさんでいた歌を知っているようだった」
「歌……」
まゆりが歌っていた歌。俺もあの歌を知っている気がする。
「あっ!そうです。あの歌!私あの歌知ってるんです!どこかで聞いたことあって……ずっとずっと昔、子供の頃に!」
「おお、ktkr!これ、マジで記憶回復フラグなんじゃね⁉」
「まゆりさんは?まゆりさんはどこに⁉あの歌のこと、教えてもらわなきゃ!」
かがりは焦ったようにラボの中を見渡した。
「まゆりはメイクイーンのバイトがあて、君と入れ違いに出て行ったよ」
「かがりたんのこと、すごく心配してた」
「そう、ですか……」
目に見えてしょんぼりしている。歌の事もそうだが、まゆりがいない、ということに落ち込んでいるようにも見えた。
「他に、何か思い出した事はないか?」
「………ダメ、です。歌の事も、知っているのは確かなんですけど、誰から聞いたのかとか、そういうのは全然…」
「かがりたんさ、今気絶してる間、夢見てなかった?」
「夢、ですか?」
「うん。うなされてたみたいだったからさ。ママって呼んでた」
「私、そんなことを…」
「うん。歌がトリガーになって、何か記憶が蘇ったりしてないんかなって」
「ええと………ダメ、ですね。夢を見ていたこと自体は覚えているんですけど。とても、大切な夢だったような…」
「そうか」
「すみません。ご迷惑をおかけして…」
「謝らないでくれ。迷惑だなんて思ってない」
とはいえ、俺とダルにはこれが大きな前進だと分かっていた。
まゆりが知っている歌をかがりも知っている。かがりがその歌を知ったのは子供の頃。それはつまり未来の話だ。タイムマシンで過去に跳ぶ前の。ならば答えは一つだろう。かがりにその歌を教えたのは未来のまゆりなんだ。
「オカリン、ひとまずまゆ氏に聞いてみるのがいいんじゃね?」
「そうだな。バイトはランチタイムだけって言ってたから、タイミングを見計らってメイクイーンに行ってみるか」
「わ、私も行きます!」
かがりがサッとソファから立ち上がる。
「落ち着いて。今すぐ行くわけじゃないから、もう少し休んでおいたほうがいい」
「あ、えっと……そう、ですね。すみません」
すると、かがりのお腹がぐぅとなった。
「腹が減ったのか?カップ麺とかならあるぞ?」
かがりの顔が真っ赤になった。
「いただいても…いいですか?」