STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「おかえりニャさいませ、ご主人様♪」
メイクイーン+ニャン2の扉を開けると、お馴染みのネコ耳メイドが笑顔でお出迎えしてくれた。
あの後、かがりはカップ麺を3つも食べた。余程お腹が減っていたのだろう。ペロリと平らげてしまった。それでもまだ、満腹とはならなかったらしい。鉄の胃袋だ。恐るべし。さすがはまゆりの娘だ。
そういえば、鈴羽もかなりの大食漢だ。未来では食べるものがあまりないと言っていたし、常に飢えている感じなのだろうか。
そういえば、ダルは用事があると言って出かけて行った。なにやら開発室の奥で着替えていた。今まで見たことのない格好をしていたが……。
「あ、オカリン!かがりニャンも、お帰りニャさい♪」
「こんにちは、フェイリスさん」
「ムニュウ……オカリン、最近来るたびに違う女の子を連れて来るニャ……」
フェイリスが訝し気な目で俺を睨んでくる。
「奥義を極め、リア充大学生のオーラを纏う能力を身につけたという話は、本当だったのかニャ!」
「そんなんじゃない。まゆりを迎えに来たんだ。そろそろ上がりの時間なんじゃないかと思ってな」
「マユシィは今日はキッチン担当だったのニャ」
「き、キッチン⁉」
「今日はランチタイムのメイドちゃんのたちの人数が足りニャくて……この時間だけマユシィにもお手伝いしてもらったのニャ」
「な、なぁ…まゆりに料理をやらせて大丈夫なのか?」
「本人はやりたがってたけど、お皿洗いに集中してもらったニャ」
さすがフェイリス。適材適所という言葉をよく理解している。
「もう上がってもらったから、今着替えてるところだと思うニャ」
「じゃあ外で待ってるって伝えておいてくれ」
「了解ニャ♪」
下で待っていると、少ししてまゆりが出て来た。
「オカリン!かがりさん!ごめんね~、迎えに来てくれて」
まゆりはかがりを見るなり、いきなり抱き着いた。
「かがりさん。大丈夫~?」
「ありがとう、まゆりさん。ええ。もう大丈夫」
かがりも嬉しそうだ。やはりまゆり効果だろうな。記憶がなくても母親パワーは偉大なのだ。
「よかった~。バターンって倒れちゃったから、ビックリしちゃったよ~」
「心配かけて、ごめんなさい」
「でも、どうしてふたりして迎えに来てくれたの~?」
ここでようやく俺たちが来た理由を尋ねた。
「お前に、聞きたい事があってな。さっき、口ずさんでいた歌についてだ」
ラボでの話をまゆりにも説明した。
「というわけで、その歌をどこで覚えたのか、教えて欲しいんだ」
「えっとね、まゆしぃはスズさんが歌っていたのを聞いたの」
「鈴羽が?」
「うん。まゆしぃはバイトが終わった後、よくラボでお勉強してるんだ~。雨の日は、スズさんが部屋の中でトレーニングをしてるのです。腹筋とか腕立て伏せとか。それでね。トレーニングが終わるとシャワーを浴びるんだけど…」
話が長くなってきたな。これもまゆりの癖だ。本人の中では筋が通っているのだが、周囲からすれば、関係のないところから話し始めるから、オチがなかなか見えてこないのだ。
「出た後は、髪を乾かしながら、窓の外を見てるの。ずっと」
だが、かがりは真剣にふんふんと頷いている。鈴羽の名前に、何か感じるところがあるようだ。
「その時にね、いつも、この歌を小さく口ずさんでいるんだよ。なんていう歌なのかは、スズさんに訊いた事はないんだけどね」
「…なるほど」
それなら、この歌は未来の歌、という可能性があるな。たとえば2030年代の人々の間で流行っていた歌だとか。かがりも鈴羽と同じタイミングでそれを聞いて覚えていたのかもしれない。
「それなら、次は鈴羽に当たってみるか」
「そう、ですね」
かがりは申し訳なさそうな顔をする。
「ここまで来たんだ。最後まで付き合うよ」
この世界線でも、鈴羽とはぎくしゃくしたままだが、かがりの記憶を取り戻すためなら協力してくれるだろう。
「一度戻ろう。鈴羽はブラウン管工房で店番してると思う」
「まゆしぃも一緒に行く~」
「まゆりさん、いいんですか?」
「うん!」
まゆりは元気よく返事をした。が、妙に照れたようにもじもじとし始めた。
「ええと、ええとね……うまく言えないんだけど…。かがりさんを見てると、なんかしなきゃ、って気持ちになるのです。守ってあげたいとか、助けてあげたいとか、そういう気持ち。なんでなのかなぁ。不思議だね。えへへ~」
「まゆりさん……」
「それにね、思い出がないのって、寂しいと思うから…」
「ありがとうございます」
「ううん。みんなでがんばろー♪」