STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「リンターロ!」

 

り、リンターロ⁉教授は大きく腕を開きながら中へ入って来ると、俺の手をガシッと掴み、ぶんぶんと振り回した。

 

この人、思った以上にフランクだな。おそらく握手をしているつもりなんだろうが、教授にそれをやられると、巨大なプロレスラーに技でもかけられているような気分になってくる。

 

「Hey, boy! What`s up!?」

 

「えっ?あっ、えっと、アイムファインセンキュー、アンド、ユーっ?」

 

『……岡部さん。ひどい英語ですね』

 

「だ、黙れ、クリスティーナ!」

 

『クリスティーナ?』

 

「うぐっ……⁉」

 

しまった。教授に気を取られて、ついその呼び方を…!

 

「何でもない、気にしないでくれ」

 

『気になります。なんで私がクリスティーナなんですか?』

 

「だから何でもないというのに…」

 

『何でもない割には、動揺してますよね』

 

「しつこいぞ。クリスティ——紅莉栖」

 

『ふむん』

 

「ふうん…」

 

“紅莉栖”と真帆がそろって考え込んだ。

 

「クリスティーナって呼んでいたのね」

 

ニヤリと笑いながら俺を見てくる。

 

「き、君もそこに食いつくな!」

 

これ以上詮索をされるのはゴメンだ。教授も来たことだし、なんとか『Amadeus』の記憶の仕組みについて、話を引き戻そう。

 

「あの、教授。『Amadeus』の記憶を外部から改ざんする事は、可能なんですか?」

 

しかし、俺の質問を教授は聞いていなかった。さっきから落ち着きなく、自分の服のポケットをまさぐっている。そういえば、耳に例の翻訳機が付いていない。

 

『私の記憶の改ざんですか?理論上は可能です』

 

教授はまだ時間がかかると見たのか、“紅莉栖”が代わりに答えた。

 

『たとえば、私が自分の名前をクリスティーナであると思い込む。そう仕向けることも出来るでしょう。ただ、普通のデータと違い、記憶データはとても複雑です。今のところ、改ざんに成功した例はないと認識しています。仮に改ざんに成功した場合でも、私がそれに気づいて、自分で修復してしまうでしょう。私は、私以外アクセス不可の領域に、ログを取っていますから』

 

誰もアクセスできない領域?

 

『つまり、秘密の日記、ですね。その日記と現在の記憶との間に不自然な齟齬があれば、私は高い確率で疑問を抱きます。さらに言えば、私の私の記憶データは定期的にバックアップされています。自己修復が不能なほどに改ざんされたとしても、復旧する事ができるんですよ。最終バックアップから改ざんされた時点までの記憶はなくなってしまいますが』

 

「ふむ。そっか……」

 

議論の内容はともかく、妙な気分だった。“紅莉栖”をロードする前に真帆が言っていたことは本当だった。だんだん、本物の紅莉栖とチャットをしているような気分になってくる。科学の話になると、こちらが口をはさむ余地がないくらい饒舌になるところなど、あいつそのものだ。

 

「しかし、興味深いな。君は自分の事を“機械”として客観的に語る事が出来ている小説や漫画でよくあるパターンだと、自分は機械ではなく人間だ、とか言い出しそうなものだけど」

 

『それは全くナンセンスですね。人間そのものが、自分をハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして語るじゃありませんか、医学とか心理学とかそういう名においてね。それとどこが違うんです?』

 

「なるほど…」

 

「さすが、屁理屈なら誰にも負けないわね。この子」

 

それを聞いた“紅莉栖”は、クリっとしたCGの目で、真帆を見つめた。

 

『ねえ先輩。余計なお世話かもしれませんけど、口が悪いのを少し直した方がいいですよ。せっかく春が来そうなのに、嫌われたらどうするんです?』

 

「なっ?だからその話に戻るのはやめなさい!」

 

『けど、私にとっては今、一番興味があります』

 

「一番どうでもいいことでしょう、そんなの!」

 

『…これが人生最後のチャンスだったらどうするんですか?』

 

「あなたこそ、その口を改めなさい!」

 

完全にからかわれているな。あの紅莉栖に、こんなにも親しく話せる知り合いがいたなんてな。先輩後輩の関係だが、こんなにも楽しそうに笑う紅莉栖はほとんどみたことがない。まぁ、真帆は一方的にやり込められているのだが。

 

「Hahahahahahaha!」

 

「は、はは…」

 

手を叩いて笑い出した教授につられるようにして、俺も苦笑するしかなかった。

 

その後も、教授を含めた3人で、“紅莉栖”と他愛のない話や専門的な話など、さまざまな対話をした。気が付けば、1時間くらいが経過していた。真帆に、ここまでにしようといわれたときには、寂しさすら覚えた。たった1時間で、違和感は完全に消え去り、もはや完全にに紅莉栖と話している感覚になっていた。

 

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