STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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ダルたちに見つからないように店内に入る。と、そこで意外な人物に遭遇した。

 

「お前……何やってるんだ?」

 

「げ、おじさん…」

 

店内の端の席。表のダルたちからは見えない位置に、鈴羽が座っていた。

 

「こ、こんなところで会うなんて偶然だね……あ、ははは…」

 

相変わらず誤魔化すのが下手だな。コイツは。

 

「用事ってこれだったのか。ダルと由季さんを監視しているとは…」

 

まぁ、その気持ちは分からんでもない。自分の両親のデートだ。見たくなるのも当然というもの。自分が生まれて来るかどうかがかかった、大勝負なのだ。

 

それにしては、カレーの大食い大会と天秤にかけていたような気がするが、まぁいい。

 

「でも、監視するにしたって、ここからじゃ何も聞こえないだろう?」

 

マジックミラーになっており、この席からでも二人の様子はばっちりと見える。だが、声は聞こえないはずだ。

 

すると、鈴羽は自分の耳に指を当てた。イヤホンのようなものが付いている。

 

「お前、まさか…」

 

それは間違いなく盗聴器だった。

 

「デート用に、あたしが父さんの服を選んだんだ。そこに取り付けておいた」

 

「お前な……」

 

「マズいと思ったら、いつでもラインで指示を出せるようにしてあるんだ。こうでもしないと、父さんは緊張して何も出来ないだろうから」

 

……それは言えてるな。

 

「おじさんはどうしてここに?」

 

「ラボに戻る途中でふたりを見つけてな。まゆりとかがりがふたりの様子を見たがったから仕方なく…」

 

ふと、鈴羽のテーブルに目を落とすと、生クリームが大量に乗っているパンケーキが山のように積んであった。そういえば、ここはパンケーキが有名な店だったか。

 

「お前…さっき大盛のカレーを食べたばかりだろう…」

 

「こ、ここのパンケーキはおいしいから別腹なんだ!」

 

言い訳にもなっていなかった。食べられる時に食べるのが、戦場で生き残るための素養。未来の娘たちはどちらも大食いのようだ。

 

「表にまゆりとかがりもいるが、お前も向こうに来るか?」

 

「え……」

 

「まだ何か食べたいんだったら、奢るぞ?」

 

「い、いいのか⁉」

 

まだ半分以上はパンケーキが残っているのに、目を輝かせる鈴羽。鈴羽のことだ。ダルに貰っていると言っていた小遣いも、ほとんど使っていないのだろう。贅沢は敵だ、なんて言いそうだし。

 

「まゆりたちはクレープを食べるみたいだからな。お前も好きなのを選ぶといい」

 

こんなにも嬉しそうにしている鈴羽は初めて見た。ダルの財布の紐が緩くなるのも分かる気がした。新鮮な反応は見ていてこっちまで嬉しくなるものだ。

 

 

 

 

「あれ、スズさんだ~」

 

「や、やぁ……まゆねえさん」

 

気まずそうに笑う鈴羽。その手にはパンケーキと、新たに購入したクレープが握られていた。

 

「鈴羽さんもここにいらしていたんですね」

 

「か、かがりも奇遇だね……」

 

「わ、それってパンケーキ?おいしそうだね~」

 

まゆりは鈴羽がここにいることに疑問を感じていない様子だ。

 

「あれだけのカレーを食べた後に、パンケーキとクレープまで……鈴羽さん、すごいですね」

 

かく言うかがりも、カップ麺を3つも平らげた後に、クレープを食べようとしているわけで。

 

俺は手に持っているクレープをまゆりとかがりにそれぞれ手渡す。

 

「うわ~おいしそう!」

 

「く、クレープ……」

 

見ているだけでお腹いっぱいだ。こんな甘ったるいものを食える気がしない。散々食べた後にこれを食うのもどうかと思うが、昼食代わりに、というのも気が引ける。女の子の胃袋というのは不思議でいっぱいだ。

 

「ん~!」

 

「すっごく美味しい!感動だよ~!」

 

「チョコの苦みも絶妙です!」

 

「イチゴもおいしいよ。ほら、かがりさん。あーん」

 

まゆりがイチゴのクレープを差し出すと、かがりは迷うことなくかぶり付いた。

 

「うーん!最高!」

 

「まゆりさんも、あーん」

 

お返しに、とかがりもバナナのクレープを差し出す。

 

「バナナとチョコレートも最高なのです!」

 

母娘で微笑ましいやりとりをしているな。はたから見れば、仲の良い女友達で食べさせ合っているようにしか見えないだろうが。

 

「……鈴羽は一口もらわないのか?」

 

「え?あ、いや……」

 

鈴羽はふたりのやりとりを遠慮がちに見ながら、ひとり、クレープを食べている。

 

「ふたりのこういうやりとりを、久しぶりに見たからね…」

 

未来ではよく見た光景なのだろうか。まゆりのことだ。かがりが欲しがるものはなんでもあげていたのだろう。

 

「寂しい…のか?」

 

言葉にするべきではないかも、と思ったが、鈴羽の視線に一抹の寂寥感を感じたため、俺は聞いてしまった。

 

「そんなことは……」

 

鈴羽は由季さんと死別している。そんな未来を作ってしまったのは、ひとえに俺のせいだ。鈴羽に寂しい思いをさせているのは、俺だ。こちらの席に移動させたのは間違いだったかもしれない。

 

「おじさんのせいじゃないよ」

 

「っ!」

 

今度は俺の心の内を言い当てられてドキリとしてしまった。

 

「この時代には父さんがいる。母さんだって、まだ何も知らないけど、こうして会える距離にいるんだ。まゆねえさんとかがりが、こうして仲良さそうにしているのも見れた。…それでじゅうぶんだよ」

 

その言葉に偽りはないのだろう。

 

鈴羽は俺のせいではないと言ってくれたが、俺が諦めてしまったことでこんな思いをさせているのは間違いない。そんな俺に、こんなことを言う資格はないかもしれないが。

 

「由季さんにも甘えればいいさ」

 

「…え?」

 

「確かに由季さんはまだ、何も事情を知らない。でも、由季さんならきっと、お前を受け入れてくれるさ」

 

それは決して、母親としてではないだろう。だが、ダルの妹として、きっと鈴羽のことも受け入れてくれる。

 

「そう…かな。でも、父さん。あんなにがちがちに緊張しちゃってるし……。母さんは父さんのこと、ちゃんと好きになってくれるのかな…」

 

「大丈夫だ。ダルは優しいからな」

 

そう言って俺たちはダルたちの方に目を向ける。

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