STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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『へえ!由季さんってあんたのお友達だったんだ』

 

かがりが覚えている歌のルーツが、俺のおふくろにあるらしいという衝撃の事実が判明した後、俺たちはラボに戻った。

 

さすがにまゆりやかがりの前でおふくろに電話するのは恥ずかしい。というわけで、寒い中、屋上まで上がって自宅に電話した。電話に出たおふくろに、お菓子教室に通っているかを確認してみると、知らなかったのかと言われてしまった。

 

『そっかー。歌ね。口ずさんでるなんて全然気づかなかったわー。ちょっと恥ずかしいわね。アハハ』

 

「その歌、どこで覚えたんだ?」

 

『どこで、って?』

 

「ラジオで流れてたとか、他の人が歌っているのを聞いたとかだよ!」

 

『………あんただけど?』

 

「はい?」

 

『あんたが前に歌ってたのよ』

 

「な、ななな、何言ってんだよ!そんなわけないだろ⁉」

 

『ほら、あんたが中学生の頃、まゆりちゃんがふさぎこんじゃった時期があったでしょ。おばあちゃんが亡くなって。みんなが心配してたけど、まゆりちゃん、ある日を境に元に戻ってくれて、安心したじゃない。でも、あんたが代わりにおかしくなっちゃったのよねぇ。なんだっけ。蒸気の……バッドサイレントテスト?』

 

「……やめて」

 

実の母親に自分の黒歴史を言葉にされるよりも恐ろしい事がこの世にあるだろうか。いや、ない。

 

『あんたがそのバッドなんとかにかぶれはじめた頃、お風呂に入るたびに歌ってたのよ。さんざん聞いてるうちに覚えちゃったわ、アハハ』

 

「俺が歌っていた……?」

 

『そうよぉ。覚えてないの?あ、お客さん来た。じゃあね、雨降りそうだから早く帰って来なさい』

 

電話が切れて、一人、頭を抱える。

 

「マジか……」

 

 

 

 

「あ、オカリンどうだった?」

 

「分かりましたか?」

 

俺は自分でもよく分からないまま、おふくろから聞いた話をふたりに説明した。

 

 

ふたりとも目を丸くして驚いていた。…そりゃあ驚くよな。俺が一番驚いているんだ。

 

「と、なると、どういう事なんでしょうか?」

 

どういうことなんだろう。

 

かがりはこの歌を未来のまゆりから聞いた。現在のまゆりは鈴羽から聞いた。鈴羽は未来で由季さんから聞いた。由季さんは俺のおふくろから聞いた。おふくろは俺から聞いた。

 

「俺、歌なんて歌ってたか……?」

 

「ん~まゆしぃも覚えてないなぁ」

 

流行りの歌などであれば、口ずさんでいたかもしれないが。

 

「ダメだ。思い出せない」

 

俺の記憶はかなり曖昧な状態にある。というのも、俺は何度も世界線を移動してきた。その度に状況が変わっているんだ。変動前の事は全て覚えているが、変動後の事は全く知らない。

 

おふくろの話が本当で、俺がこの歌を歌っていたのだとしても、それはこの世界線の俺であって、“この俺”ではない。

 

(なら、俺はどこで知ったんだ?)

 

ここまで調べてきて、誰もが人伝に知ったものだった。流行りの歌、というわけではなさそうだ。であれば、俺もきっと、誰かに教えられたはず。

 

それにやはり、この世界線のまゆりは、俺の知っているまゆりに比べて歌が上手い。言ってはなんだが、かなり音痴だった。俺と、俺のおふくろと練習したと言っていたが。

 

(まゆりが歌を練習するきっかけがあった…のか?)

 

「どうしよう。手がかり、なくなっちゃったね」

 

泣き出しそうな顔でしょんぼりしているまゆりを、かがりが優しく抱きしめた。

 

「岡部さん。その、まゆりさんが落ち込んでいたとき、というのは手掛かりにはなりませんか?」

 

「そうは言っても、まゆりが墓参りに行くのを迎えに行っていた、というくらいだぞ?何か特別な事をしていたわけじゃなからな…」

 

その時に、今では封印してしまった鳳凰院凶真が誕生したのだ。

 

「じゃあ、そのお墓に行ってみませんか?何か、思い出すかも」

 

そんなことがあるだろうか。

 

「ここまで来たなら、最後まできちんと確かめてみたいですから」

 

「オカリン。まゆしぃからもお願い」

 

「………分かった。行こう」

 

今日は日も暮れそうな時間だったので、墓参りには明日の朝、行く事にした。

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