STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「……生きて、る?」

 

「かがりさん……!」

 

目を真っ赤にしたまゆりが、かがりの顔を覗き込んでくる。

 

「オカリン!かがりさん、気が付いたよ!」

 

「かがり!」

 

「…私」

 

「トラックにはねられそうになったんだ。怪我はなかったんだけどな、意識を失ってたんだ。念のために救急車を呼んだ」

 

「オカリンがね、ギリギリのところで助けたんだよ。2人とも死んじゃったのかと思って……まゆしぃは……まゆしぃは……」

 

「泣くなよ、まゆり」

 

「……うん」

 

だが、こらえきれなかったようで、まゆりは感極まってかがりに抱き着いた。

 

「よかったよぉ、かがりさん!本当に、心配したんだから!」

 

「まゆり、さん——」

 

頭に、脳の細胞一つ一つに、電流が走ったような衝撃。

 

「やっと、やっと会えた!」

 

今度はかがりがまゆりにしがみついた。

 

「ママッ!」

 

「ひあっ!ま、ママ⁉か、かがりさん、違うよ?まゆしぃはママじゃないよ?」

 

「違ってなんかない!ママはかがりのママなの!」

 

子供っぽい口調を止める事が出来ない。会えずにいた10年くらいの時間が吹き飛んで、かがりはあの頃のかがりに戻っていた。

 

「ま、ママって……」

 

「かがり!記憶が戻ったのか⁉」

 

「オカリン……おじさん」

 

「っ!」

 

「うん……全部、思い出した…私は椎名まゆりの娘。椎名かがりだよ…」

 

「え、えええ⁉だ、だってかがりさん、まゆしぃより年上だよ⁉そ、それに、まゆしぃはその…赤ちゃん産んだりとかしてないし……」

 

「ママ、私は未来から来たんだよ。未来のママは、孤児だった私を引き取って、娘にしてくれたの」

 

「まゆしぃが?」

 

「そうだよ。私に生きる理由を与えてくれたのが、ママなの。ママはね、私を危ない目に遭わせないために、一番安全な所に逃がしてくれた」

 

「安全なところ…?」

 

「過去だよ。ママが幼かった頃の、まだ平和だった日本でなら、安全に暮らせるだろうって」

 

「…………」

 

「でも、やっぱり寂しかった。ここには、ママがいないんだもん。どんな安全な場所でも、ママと離れ離れになるんじゃ、意味なんてないもん」

 

「かがり……ちゃん」

 

「ママっ!会いたかったよぉ……っ!」

 

柔らかなベッドの上で、かがりはまゆりにしがみつくようにして、いつまでも泣き続けた。

 

 

 

まゆりは最初こそ戸惑っていたものの、やがてかがりを優しくだきしめ返した。

 

「…かがりちゃん」

 

「うん」

 

「ごめんね。……ごめん、ね?」

 

優しく背中をさすり。

 

「ごめんね。辛かったよね。寂しかったよね。ママのせいで、ずっと泣いてたんだよね。ごめんね…」

 

「ママーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

こうして、かがりは全ての記憶を取り戻した。未来のことだけでなく、この時代に来てからのことも、全て。

 

俺たちは、あの、雑司ヶ谷駅で会っていたらしい。鳳凰院凶真が生まれたあの日。俺はまゆりを救う術が分からず、ふらふらと駅に辿り着いたのだろう。そこで、監禁されていた施設から逃げ出したかがりと会った。

 

そしてあの歌を聞いた。

 

『星の奏でる歌』と言うらしい。この歌の歌詞に従って、俺は空へ消え去ろうとしているまゆりを掴んだのだ。

 

と、ロマンチックな表現が過ぎたな。

 

やはり、かがりは監禁されていた。俺と出会った後も、結局は“教授”に捕まり、記憶を消されてしまった。この世界線は、1月1日のラボ襲撃を発端に、天王寺に何も話さなかったことで形成された世界線。『Amadeus』は凍結されておらず、かがりの記憶が消されてしまうことが確定している世界線だと言える。

 

おそらく、俺がα世界線に飛ばされることがなかった場合の世界なのだろう。だが、かがりは全ての記憶を取り戻した。前の世界線とも違う。

 

前の世界線では、かがりに紅莉栖の記憶が移植されていた。それを消したことによって、『Amadeus』は存在しているのに、かがりが全ての記憶を取り戻す世界が出来上がったのだ。

 

かがりが記憶を取り戻した日から、1か月が経過した。だが、かがりはどの組織からも狙われていない。今のところ、平穏な日々が続いている。この世界線では、かがりの優先順位が低くなってしまったのだろうか。

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