STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「具体的にどうすればいいかは分かってるの?」
「………まだ、確実なことは分かっていないが、俺は1月2日が怪しいと考えている」
1月1日。かがりを狙った何者かが、ラボを襲撃した。それに加えて、『Amadeus』が乗っ取りにあった。その主犯は、おそらくストラトフォーか、西側の軍関係の組織だ。
そしてそこにレイエスが関与しているはず。かがりに人体実験を施した、“教授”の正体は分かっていないが、そこらへんの関係者であることは間違いないだろう。
「この世界線では、俺は天王寺さんにその襲撃について何も話さなかった。そうだな?」
「うん。あたりと父さんとおじさんで話し合って、何も言うべきじゃないってなったんだ。でもおじさんは前の世界線では全てを話したんだよね?」
「ああ。全てを話したことで、一度α世界線へと飛ばされ、もう一つ別の世界線を経て、ここに来た」
天王寺に全てを話した上で、『Amadeus』からの着信に出たことで、俺はα世界線へと飛ばされた。そして、この世界線では、天王寺に何も話さなかったことで、そもそも『Amadeus』から着信が来ることもなかった。残された選択肢。
それは——。
「1月2日。天王寺さんに全てを話した上で、『Amadeus』からの着信に出ない事。それでおそらく、別の世界線へと変動するはずだ」
天王寺に全てを話すことで、『Amadeus』にSERNが介入することになる。着信に出たことでα世界線へと変動したのは、俺が出たことでSERNが支配することが確定してしまったから。ならば、SERNに介入させたうえで、着信に出なければ?
SERNが介入はするものの、ストラトフォーや西側の軍関係の組織を出し抜くことができない世界線へと変動するはずだ。今の世界線は、そもそもSERNが介入しなかった世界線。
全ての記憶を取り戻したかがりが、それ以降狙われなくなったのも、ある程度パワーバランスが保たれているからではないだろうか。そこにSERNを介入させることで、そのバランスを崩す。
「SERNとストラトフォー、軍関係の組織のパワーバランスを乱してやることで、俺たちが『Amadeus』への干渉をしやすくなる、はずだ」
確証はない。だが、今の世界線からは確実に変わる。
「……悪くないかもしれない」
「そう言ってもらえてよかったよ」
「でも、その世界線に行ったとして、その世界線はどういう状況になってるんだろう」
それについてはまだ不明瞭な部分が多い。
かがりを基準に考えるよりも、『Amadeus』の状態について考えるべきかもしれない。
「天王寺さんに全て話す事で、SERNが『Amadeus』に干渉するのは間違いない。『Amadeus』を管理しているであろうストラトフォー、もしくは軍関係の組織の支配が揺らぐ」
「そうすれば、かがりの中に牧瀬紅莉栖の記憶が植え付けられることもない……はずだね」
「おそらくだが、この世界線と状況はそれほど変わらないはずだ。全ての記憶を失った状態で逃げ出し、柳林神社で保護されるまでの流れは同じになると思う」
「…かがりは記憶を取り戻せるのかな」
「1月16日になれば、記憶が戻る可能性はある。この世界線でかがりの記憶が戻ったのは、別に俺たちが特別な干渉をしたわけでもない。まゆりの婆さんの墓参りというトリガーはあったが、日常生活の範囲を超えたわけではなかったしな」
「変わるのは、かがりの記憶よりも、取り巻く状況か…」
「この世界線では、1月1日のラボ襲撃以降、かがりが狙われることはなかった。狙われたのは比屋定さんのオフィスとホテル——紅莉栖のノートPCとハードディスクの方だ」
「ストラトフォーによる『Amadeus』の支配が揺らぐとすれば、『Amadeus』よりもそっちの方に注意を向けるかもしれない」
「世界線を変動させることで、かがりや比屋定さんが狙われる可能性が出てくるな…」
だが、『Amadeus』に干渉するためには必要な事だ。ある程度危険を冒さなければ、目的は達成できない。