STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「これ以上はまだ答えが出ないね。それよりも、どうやっておじさんにその選択をさせるのかの方が問題だ」

 

今からタイムリープマシンを作ったとしても1月2日まで戻る事はできない。跳躍時間を無理に伸ばせばたどり着けないこともないが、肉体とのギャップが激しすぎる。

 

「Dメールを送る……?」

 

「エシュロンに捕捉されてしまえば、またα世界線に飛ばされてしまうことになる。仮にエシュロンの問題を解決できたとしても、18文字でそれを伝えられるかどうか…」

 

ムービーメールを送る、という手もある。だが、Dメールはあまりにも不確定要素が多い。

 

「あたしがその日に向けてタイムトラベルするのはどうかな?」

 

「鈴羽が…?」

 

それは目から鱗だった。

 

「このタイムマシンを動かせるリミットはあと半年くらいなんだ」

 

「どういうことだ?」

 

残された燃料がもうほとんどない事は、紅莉栖の救出に失敗したあの日に言われていた。

 

「あの日まで——7月28日までは跳べるだけの燃料は残されているんだろう?」

 

「それがさ……燃料とは別に、内部電源のバッテリーが切れちゃうんだよね」

 

「な、なに⁉」

 

それは初耳だった。

 

「このタイムマシンはさ、重力場の制御とか、座標計算のために、稼働させていなくてもずっと裏では演算を続けているんだ。内部電源が切れるまでのリミットが、あと半年くらい……7月くらいまでしか残されていないんだ」

 

「バッテリーを交換することはできないのか?」

 

「ルミねえさんに大型のバッテリーを用意してもらったこともあるんだよね。トラックとかに使われてるやつ。でも、一秒も持たなかった…」

 

「マジか……」

 

未来の技術で作られたマシンだ。おそらくそれは、現代の技術でどうにかできるものではないのだろう。

 

「だからどのみち、あたしは7月になったらひとりでも過去に跳ぶ気でいたんだ」

 

「そうか…」

 

そこまでに、俺をなんとか立ち直らせようとしていたんだな。それなのに俺は……。

 

いや、今は考えまい。

 

「それで、お前が過去に跳ぶ、というのは?」

 

「タイムリープマシンやDメールでは無理。となると、残されているのはタイムマシンしかない。1月2日まででよければ、余裕でジャンプできる。あたしが1月2日に跳んで、その時のおじさんにこの話を伝えれば」

 

確かに、それなら過去の俺を誘導できる。直接鈴羽が説明してくれれば、より正確な情報を伝えられるだろう。

 

「問題は、その時の俺が従うかどうかだな…」

 

今とは違い、その時の俺はまだ腐っていた時期だ。ラボを襲撃されて気が動転していた。紅莉栖を救うために、と言われても、立ち上がるかどうか。

 

「タイムマシンのリミットまではまだ半年あるんだ。焦って結論を出す必要はないよ。その間に、Dメールを安全に使えるようにだってできるかもしれないわけだし」

 

「そう、だな…」

 

ダルも含めて話し合ってみるべきかもしれない。

 

「あ~、さすがに寒いね。こんなところで長話なんてするものじゃないな」

 

自分の腕を抱き、寒そうに震えている鈴羽。そう言いながらも、その表情は晴れやかだった。

 

「おじさん。本当にありがとう」

 

「いや、俺はお前にそんなことを言ってもらえる資格なんて…」

 

「……ほんとはさ、おじさんにずっと謝りたかったんだ」

 

「…俺に?」

 

「あの日、あたしはおじさんとまゆねえさんに酷い事をしてしまった。それなのに、おじさんもまゆねえさんも、あたしのことを許してくれた。ずっとずっと……もっと早く言わなきゃいけなかったのに…」

 

ともすれば、鈴羽は泣き出しそうな顔で俺を見つめてくる。

 

謝るべきは俺の方だ。ずっと、鈴羽の使命と覚悟を無碍にしてきたのだから。

 

だが、勇気を出して言ってくれた言葉を受け取らないのも違う。

 

「ありがとう。鈴羽」

 

俺はパッとポーズを決める。そして叫ぶ。

 

 

 

「俺はやってやる。この鳳凰院凶真が、未来を必ず変えると約束しよう!フゥーハハハ!」

 

突然の鳳凰院凶真に呆気にとられながらも、鈴羽は笑ってくれた。

 

 

 

 

 

 

「とりあえずおかえり。オカリンが復活してくれてボクも嬉しいお」

 

開口一番、ダルは笑顔で俺を受け入れてくれた。

 

「詳しい事はおいおい決めていくとして、とりあえず7月までは時間が残されてるってことっしょ?それまでに、ボクの方でもいろいろとやってみる」

 

ダルに依頼するのは電話レンジ(仮)の再現だ。鈴羽のタイムマシンを使って過去の俺に干渉するのがメインだが、Dメールも安全に使えるようになれば、それに越したことはない。ダルならきっと、エシュロンに捕捉されないようにすることも可能だろう。

 

「でもいいん?慎重になるべきってのは分かるけど…」

 

俺の決心が鈍らないか、ということだろう。

 

「それもあるが、かがりには楽しい時間を過ごしてほしいんだ」

 

「あー。なるほどなぁ」

 

俺たちの決断は、かがりがようやく手に入れた、幸せな日常を破壊することになる。次の世界線でもかがりに同じような未来が待ち受けていればいいが、そうなる保証もない。

 

「まゆりも、母親としてかがりに接してくれている」

 

「鈴羽もまゆ氏とかがりたんを見て、嬉しそうにしてるお。ま、かがりたん、あんなに幸せそうな顔してるもんな」

ダルとしても、鈴羽の妹のような存在であるかがりには、思うところがあるのだろう。

 

まゆりにせよ、ダルにせよ、未来から来た娘に、親としてしっかりと向き合っている。その包容力には頭が上がらない。人の親とは、偉大な存在だと改めて思わされる。

 

「真帆たんには何も話さないってことでおk?」

 

「…………」

 

前の世界線では、真帆に全てを打ち明け、かがりの記憶の上書き装置を作ってもらった。α世界線で紅莉栖に言われた通りに彼女を頼った。だが、この世界線でも彼女に頼るのは気が引けた。

 

記憶をデータ化することが必須である以上、タイムリープマシンの制作には真帆の力が必要不可欠だ。だが、今回はタイムリープマシンを作る予定はない。使うかどうかも定かでないもののために、彼女を巻き込むべきではない。

 

巻き込んでしまえばもう、戻れなくなる。

 

「…そのつもりだ」

 

紅莉栖のノートPCとハードディスクについては、ダルが真帆から預かって保管している。彼女は、その中にタイムマシン論文が眠っていることを知らない。

 

かつて狙われたのは、紅莉栖の知識を狙う産業スパイの仕業だと思っているはずだ。真帆がその解析をダルに依頼したのも、少しでも『Amadeus』の研究に役立てる事ができれば、という思いからだ。

 

「紅莉栖のノートPCとハードディスクについては、しばらくはうやむやにしておいてくれ。まだ解析ができていないとでも言っておいてくれればいい」

 

解析できれば良し。できなければ、破棄する事も辞さない。誰かに狙われる危険性がある以上、安易に手を出すべきではない。

 

「わかったお。真帆たんも急ぐつもりはないって言ってたから。適当に誤魔化しとく」

 

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