STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「うむ。まゆりよ。よく言ったな」
と、少し遠くで声がした。
「お、オカリン…?」
涙を擦りながら、声の方を見ると、ドアの前に岡部が立っていた。
「どうしてここに……?スズさんは内緒にしておくって…」
「まったくお前たちは愚かだな。この俺、鳳凰院凶真は全てを見通すのだ。お前たちが俺に隠れてこそこそとやっているこも、全てはお見通しだ!フゥーハハハ!」
「鳳凰院……凶真」
まゆりは驚いていた。鈴羽から、岡部が前を向きだしたということは聞いていた。だが、まさか鳳凰院凶真が復活しているとは思いもしなかったのだ。
「かがり。お前の気持ちは痛いほど分かるぞ。これからまゆりと鈴羽がこなすミッションは、確実に世界線を変える。リーディングシュタイナーを持たないお前たちでは、記憶を引き継ぐことはできないからな」
「オカリンおじさん……」
「お前がまゆりを行かせたくないのは分かる。俺だってそうだ。俺はまゆりを救うためにこのβ世界線を選んだんだ。本当はこんなこと、させたくないさ」
「そ、それなら…」
「だが、俺は止めないぞ」
「っ!」
「俺はここに、まゆりを止めにやって来たのではない。まゆりを、送り出すために来たんだ」
「………いいの?ママが……いなくなっちゃうんだよ?」
「それにしたって一時的なことだ。次の世界線でもまた会えるさ」
「でもっ!もしシュタインズゲートに到達しちゃったら……」
「ああ。戦争が起らなくなれば、まゆりがお前を娘として迎え入れるという未来は変わる」
「そ、そんなの……っ!」
「だがな、かがり。この俺が全てを覚えている!完全なリーディングシュタイナーを持つこの俺が、お前たちの全てを覚えている!もし、お前たちが全てを忘れてしまったとしても、俺が必ず思い出させてやる!この鳳凰院凶真が、お前たちが出会う未来を約束するっ!」
「オカリン……」
「だからな。かがり。まゆりを行かせてやれ。この馬鹿な俺を叩き起こすために、まゆりが戦ってくれるんだ。その想いは俺が絶対に繋ぐ。それに、アトラクタフィールド理論では、起こるべき事象は必ず起こる。この世界線で作った因縁は決して消えたりしないさ」
「あ~あ。結局おじさんまで来ちゃったか。せっかくあたしは黙っていたのにさ」
タイムマシンの調整を終えて出てきた鈴羽がため息を吐く。
「ふん。そう言うな鈴羽よ。ラボメンたちの勇気ある選択を、見守らずしてラボの所長は名乗れん」
「…その話し方、どうしたわけ?」
「お、お前は鳳凰院凶真を知っているのだから、今さら茶々をいれるんじゃない!」
「………いいんだね?」
「ああ。これでいいさ」
鈴羽が再びマシンの中に入っていく。それを見て、岡部はまゆりの方に向き直る。
「すまないな。まゆり。俺のために」
「ううん。でも…」
「俺の事なら大丈夫だ。お前はお前の思うようにやってくればいい。……ただ俺は、お前のことを信じればいいだけだったのにな。自分を守る事に必死で、周りが見えていなかったんだ」
「オカリン…」
「さぁ。もう時間だ。あの日の——馬鹿だった俺のことを頼む」
まゆりはもう一度、かがりに向き直った。