STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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そのタイミングでメイドさんが飲み物を運んできた。それを飲むついでに真帆の方を見てみると、フェイリスがほぼ付きっ切りで相手をしていた。

 

人気ナンバーワンのメイドさんに相手をしてもらえるのは幸運なことだ。まぁ、彼女にとっては災難かもしれないが。

 

「それじゃあ、これからパンケーキをさらに美味しくする魔法をかけるニャン♪」

 

「ま、魔法?」

 

「さぁ、まほニャンもご一緒にっ♪“世界がヤバいニャ、陰謀ニャ~♪”」

 

「ふ、普通に食べさせもらえないかしら…」

 

その後も真帆は、パンケーキのハチミツを垂らしてしまったり、口元に付いた生クリームをフェイリスに拭かれたりと、子供をあやすかのように扱われていた。

 

まぁ、楽しそうで何よりだ。

 

 

ダルの方に向き直ると、二つ目の話になった。だが、ダルはなんだか話辛そうだった。俺に遠慮しているようだ。俺は話したくないことなら拒否すると伝え、ダルに話を促した。

 

するとダルはラインを送って来た。さっきの話以上に聞かれたくないことらしい。

 

 

『ここからは秘密のバイト先の話になるんだ。だからこれで頼む』

 

『秘密のバイトって、お前の得意なハッキングかなんかだったよな?』

 

『まぁ、そんなとこ。つっても非合法な仕事ばっかりじゃない。いろんなメーカーや銀行のオンラインシステムを組んだりとか、サーバーの構築や管理なんて地味な仕事もしてる。あと、ウイルスの解析をしてセキュリティソフトを作ったりもするし、重要なデータの復旧とか新しい暗号化技術の開発とかもね』

 

『マジか……SEってやつか』

 

『そんなに立派なものじゃない。でもいちおう業界では有名でさ、世界中から依頼が来るグループなのだぜ。ボクはDaSHって名乗ってる』

 

それが何の略かは答えてくれなかった。ダルのDだとは思っているが。

 

『オカリンって、牧瀬紅莉栖と親しかったんだよね?』

 

『え?どういうことだ?』

 

『牧瀬氏に関することでアドバイスが欲しいんだ。今、僕が担当してる仕事で行き詰っててさ』

 

『担当している仕事?なんだそれ?』

 

ダルは直接俺を見た。

 

紅莉栖に関係していることだ。俺に気を使ってくれているのだろう。優しいヤツだ。

 

だが、ここで話をやめられると夜も眠れなくなる。俺は続きを促した。

 

『つい最近、バイト先にノートPCとポータブルハードディスクが持ち込まれたんだ。両方とも強固なフルディスク暗号化が施されてて、鍵になってるパスワードがないと起動できない状態になってる。もちろん、中のハードディスクを取り出して別のPCなんかにつないでも復号化は不可能。クライアントはいろんな会社に相談したらしいんだけど、どこもさじを投げてさ。ボクらのところを紹介されて来たっつーワケ』

 

その道のプロならフルディスク化暗号も外せると聞いたが、そんなにすごい暗号なのだろうか

 

『こいつに関しては絶対に無理。なぜかっていうと、この暗号化ソフトを作ったのはボクらだから(キリッ』

 

『は?』

 

自分たちで作ったのなら、なんとかできるはずだろう。

 

『暗号化に関しては、解毒剤の作れない毒じゃなきゃ意味がないとボクは考えてるんだお』

 

格好をつけて言っているが、要するに自分で作っておいて解き方が分からないということだ。

 

『だが、それと紅莉栖になんの関係が?』

 

『ノートPCとハードディスクの所有者が、』

 

 

 

 

『牧瀬紅莉栖』

 

 

 

 

 

ダルが話しにくそうにしていた理由はこれだったのだ。

 

紅莉栖の遺品。それがダルのところに持ち込まれた。誰が持ち込んだのかは守秘義務ということで教えてもらえなかったが、ロシア関係ではないらしい。ダルは中鉢を疑っていたが、紅莉栖の実家にロシア人が火をつけたのがそう思った理由だ。

 

ダルは俺にヒントを求めて来た。調べられる情報は調べた上で、紅莉栖のプライベートに関するワードを集めているらしい。

 

とはいえ、俺は紅莉栖のプライベートなどほとんど知らない。

 

思い当たることとしては、栗悟飯とカメハメハ波、だろうか。それ以外にはマイフォークとか父親のこととか。

 

「…………っ」

 

紅莉栖について思い出そうとすると、最後のあの瞬間まで自動的に連想してしまう。俺は慌てて思考を中断する。

 

「…悪い。少し時間をくれないか?考えをまとめる時間が欲しい」

 

「うん。了解。何か思い出したらでいいから。それに強制じゃないし、思い出したけど教えたくないならそれでいい」

 

「…ああ」

 

俺はため息をついて、冷めたコーヒーを飲みほした。

 

 

 

 

ダルとのやりとりの後、フェイリスに任せきりだった比屋定さんを回収した。メイド文化にトラウマができてしまったようだった。

 

アキバにラボを構えて、この空気に慣れている俺たちならともかく、アメリカ暮らしの彼女には刺激が強すぎたかもしれない。

 

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