STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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2010年12月24日(金)

 

 

俺は和光氏のオフィスへと向かっていた。

 

理由は単純。“紅莉栖”に謝るためだ。

 

12月15日。Dラインを受信した日。俺は柳林神社で“紅莉栖”と話しているときに、AIに向ける自分の感情に恐怖を感じた。だからテスターも辞退した。

 

だが、その一件もあってか、それなりに割り切ることができていた。

 

紅莉栖と“紅莉栖”は違う。アマデウスの中に本物の紅莉栖を見出すことはやめた。……やめようと思えるようになった。

 

とはいえ、“紅莉栖”が負けず嫌いで恐ろしい女であることを俺は知っている。電話でひどいことを言った挙句、テスターを辞退した俺にはものすごく冷たい態度を見せるだろう。だから真帆に仲介役になってもらおうと考えたのだ。

 

真帆は“紅莉栖”の先輩だ。先輩がいる前なら、態度も柔らかくなるだろうという算段だ。

 

 

 

 

移動中の電車で、俺は世界線が変動したあの日のことを考えていた。

 

12月15日。俺はDラインとでも呼ぶべきラインを受信した。

 

Dメールは送った瞬間に世界線が変動する。未来からメールが送られてくるのだ。そんな事象は本来は存在していない。そのため、Dメールの内容に関わらず、Dメールを受信する事自体が世界線を変動させる要因だと言える。つまり、Dメールを受信することが確定している世界線へと変動することになるわけだ。

 

そして、その内容に従って行動を変える事で、もう一度世界線が変動することになる。二段階の変動が起こる。

これまで俺はDメールを送信する側であったため、二度目の変動後の世界線にいきなり移動していたのだ。

 

(俺の行動は変わっていない。つまり、まだ一段階目の変動しか起こっていない…ということか?)

 

あのラインに何か意味があったのだろうか。

 

世界は欺ける。可能性を繋げ。世界は騙せ。

 

それだけのライン。具体的なことは何も書かれていない。送信日時は2011年の12月18日。その日までに、何かよくないことが起こるのだろうか。あれを送ったのが未来の俺だとして、その俺は何を伝えたかったのだろうか。俺の行動を変えるような指示はなかった。

 

あの時、俺はフブキとカエデと話していた。確か、俺の好きな人は誰か、と質問されていた。Dラインが届いて、それどころではなくなってしまったが。

 

(あの会話に、何か特別な意味があるのだろうか?)

 

そういえば、まゆりのことについても話していた。まゆり——。

 

(椎名かがり……まゆりの、娘か)

 

ダルから聞いたまゆりの娘の存在。おそらく、その椎名かがりは、今もこの時代にいるはすだ。

 

予測できない行動を取るとすれば、椎名かがりくらいしか想像できない。とはいえ、フブキたちとの会話に、椎名かがりがどう関係してくるのかは分からない。

 

鈴羽が体調を崩してしまうほど探しても、かがりは見つかっていないのだ。おそらく、かがりを見つけるのは容易ではないだろう。

 

椎名かがりが、何か関係しているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

オフィスに着いてしばらくすると、まゆりから電話が来た。

 

『オカリン。今日ラボでクリスマスパーティやるって言っておいたよね?ちゃんと覚えてる?』

 

テレビ電話のため、まゆりの姿が画面に映っている。まゆりはサンタのコスプレをしていた。普段は作るの専門と言って自分では着ないまゆりが、珍しくコスプレをしている。心なしかまゆりの声も弾んでいる気がする。

 

「あぁ。もちろん」

 

まゆりがずいぶんと前からこの日のために準備をしてきたのを知っている。相当楽しみにしているはずだ。

 

「どう?来られそう?」

 

「大丈夫。6時からだろ?」

 

「うん。今大学?」

 

「いや、和光市だ。知り合いの教授の研究室みたいなところにお邪魔してるんだ」

 

「そっかー。わこう市……。じゃあ間に合うね!」

 

こいつ。絶対に和光氏がどこか分かってないな。まぁ喜んでいるからそれでいいか。

 

「オカリンさ~ん!女子全員でサンタコスして待ってま~す!」

 

まゆりの声が遠のいたかと思うと、別の女の子たちの声が響いた。

 

「待ってるニャ!」

 

「待って……ます」

 

「ほら、るかくんも!」

 

「ええ⁉僕は女子じゃ……」

 

ルカ子も苦労してるな…。

 

「マユシィもコスプレするなんて珍しいよね~。そう言えばオカリンさん。パンツの色はピンクでしたぜ!」

 

お、おう…。

 

別に知りたくもないが…。慌てふためくまゆりが顔を真っ赤にしていた。

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