STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
まゆりが顔を真っ赤にして通話は終わった。
「今の人が岡部さんの彼女?またずいぶんと女の子を侍らせているのね…」
真帆がにやにやしながら近づいてきた。
「そ、そんなんじゃないぞ!まゆりはただの幼馴染だし。他の子もまゆりの友達だ…」
「メイド喫茶の…フェイリスさん?もいるようだったし。岡部さんってけっこうモテるのかしら…」
そういえばラボに来るメンツには女子が多い。男は俺とダルと……一応ルカ子もか。この三人しかいない。勘違いされてしまうのもある程度は仕方がないのかもしれないな。
「友達同士で集まってクリスマスパーティをするだけだ。よかったら比屋定さんも来るか?」
彼女はそういうことには無頓着そうだ。クリスマスであってもこのがらんとした研究所に一人きり。レスキネン教授はいろんな研究者に会いに行っているらしく不在だ。誘っても問題ないだろう。
「私?いいわよ。気を遣わなくて。こうして一人で研究できる方が気が落ち着くもの。せっかくの友達同士のパーティに水を差すわけにもいかないし」
そういうものか。
研究者の気質というか、まず何よりも研究が先にある。そういうクールな感じが、やはり彼女は紅莉栖に似ている。
紅莉栖……か。
「そろそろ本題に入りましょうか」
「あ、あぁ…」
ラボでのパーティの時間もある。ずるずると引き延ばすわけにもいかない。
「私に仲裁してほしいということでしょう?そんなに“紅莉栖”が怖いかしら?」
怖いか怖くないかで言えば、怖い。中途半端に繋がっている分、いつ怒りの電話が来るかと思うと、四六時中落ち着かない。
「はぁ…。顔を見ていれば分かるわ。あなたって真面目な人よね」
真帆は笑いながらため息をついた。
「ま、仲裁でもなんでもしてあげるわよ。せっかくのクリスマスイヴなんだから、少しは気の利いたことを言ってあげたらどう?」
「そ、そうだな」
気の利いたセリフなど、俺からもっとも遠いところに存在する概念だ。期待はしないでほしいが。
気は進まないが、真帆にせかされて俺はスマホを取り出した。アマデウスのアプリをタップする。
すぐに“紅莉栖”は出た。
『ちょっ、おまっ、まさかまた連絡してくるなんて、はぁ⁉な、なによ、なんなの⁉』
あ、こいつ完全に油断していたな。
「や、やぁ…」
『………んん。どうも、岡部倫太郎さん。私になにか用でも?もう話したくないんじゃなかった?』
怒ってる。めちゃくちゃ怒ってる…。
「いや、その…」
俺は目だけで真帆に助けを求める。
「“紅莉栖”、彼から話があるから、少しだけ聞いてあげて」
柔和に真帆がそう言うと——。
『別に聞かないとは言ってませんよ?岡部さんは、私とはもう会話を交わしたくないはずでは?と事実確認をしただけです』
取り付く島もないな…。
「ほら、早くしなさいよ」
ここから何を言えばいいと言うんだ?何を言っても許してもらえるとは思えないぞ。
「あ、ああ…」
こうなれば、誠心誠意謝るしかない。
「わ、悪かった…」
俺は頭を下げた。
「俺なんかに付き合ってくれていたのに、お前のその親切を、裏切るような形になってしまった。それに、この前最後に話したとき、急に会話を打ち切ってしまったのも失礼だったと思ってる。昔あった個人的なことを思い出して、混乱してしまったんだ。でも、それはお前には関係のないことで…。テスターを辞めさせてもらう前に、せめて一言だけ、謝りたかったんだ」
『…………』
「い、以上だ……」
我ながら情けないセリフだと思う。スマホの画面に向かってぺこぺこと頭を下げているのも格好悪い。
すると——。
『…………プッ』
“紅莉栖”はたまらずといった感じで噴出した。
『それ、本気で言ってるの?』
「な、なんだよ。こっちが本気で言っているのに笑うなんて…」
『だって私は人工知能よ?なのに、そんな神妙な顔をして、本気で謝ってくれるなんて。この前、私と話すのが照れ臭いとも言っていたわね』
それを言われると恥ずかしいのだが。
『………変な人』
だが、人工知能に本気で謝ることは、へんなこと……なんだろうか。
いや、変なことなんだろうな。
『いいわ。正直ちょっと失望していたところだったんだけど、考えを改める。こっちから出す交換条件を飲んでくれたら、水に流す』
「交換条件だって?」
嫌な予感しかしない。何を言われるのだろうか。
「…分かった、その条件とやら、聞こう……」