STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
電話で話した通り、ラボにはサンタがたくさんいた。しかもミニスカサンタだ。
「あ、オカリ~ン!」
目のやり場に困る、赤いミニスカサンタのまゆり、フェイリス、由季さん、カエデ、フブキ。そして…。
「お、岡部さん……」
黒サンタの格好のルカ子。
最も露出度が高く、すごく艶めかしい。
「っ………」
だ、だが男だ!
「岡部さん……僕…僕……っ」
「ルカ子……なんて言うか、その、お疲れ……」
そんなルカ子を見て、綯が自分もサンタの格好をしたかったと羨ましがっている。サンタ服は全てまゆりの手作りだ。綯の分は間に合わなかったのだろう。
「さぁ、オカリン。入って入って~!」
「ダルと鈴羽は?」
「うん。まだ連絡ないんだ~」
今日の最大の目標は、鈴羽を参加させることだ。まゆりはそのための今回のパーティを主催したと言っても過言ではない。
「ちなみに、オカリンのお客様は~?」
教授と真帆が来ることは事前に連絡済みだ。俺はさっそくゲストの2人を呼び込んだ。
2人を紹介すると、皆がそれぞれ反応を見せた。レスキネン教授はそのガタイの大きさに驚かれていたし、真帆は小動物を愛でるような感じだった。
「まほニャン。また会ったニャ」
「あら、ニャンニャンの人…」
フェイリスがここにいることに驚いているようだった。
「小学生?中学生?」
綯の容赦ない質問が真帆に突き刺さる。
「こ、これでも、成人しているのよ?」
教授と真帆を囲んでわいわいと騒いでいると——。
「あ、ダルくんから連絡来たよ!もうすぐ着くって。スズさんと一緒」
どうやらダルはうまく事を運んだらしい。これで最大の目標はクリアした。
そうと決まれば次のミッションに移行だ。鈴羽にサプライズを仕掛けることを全員で事前に決めていた。鈴羽はもちろん、俺たちが待ち構えていることを知らない。俺たちは全員ひとつずつクラッカーを持って配置についた。
真帆は困惑気味だが、教授はノリノリだった。
「電気を消すニャ!」
鈴羽は喜んでくれるだろうか。未来ではこんなことをする余裕、なかったはずだ。
「スズさん、喜んでくれるかなぁ」
「鈴羽さんの喜ぶ顔なんて、なかなか見られないもんね」
「でもスズニャン、実はとっても甘いもの好きなのニャ!」
「それに、とっても親切なんですよ」
「いいなぁ。私ももっと、鈴羽さんと仲良くできたらいいな…」
羨ましがる由季さんをまゆりが大丈夫、と励ます。
鈴羽は由季さんに一歩、いや…二歩くらい距離を置いている感じだ。まだ若い頃の母親と接するのは気苦労も多いだろう。ダルと違って、彼女はまだ何も知らないのだから。
由季さんも、自分が鈴羽に敬遠されていることに気づいているみたいだ。今日をきっかけに、このぎこちなさがなくなればいいのだが。
そのとき、外からダルの声が聞こえた。
「よし、中へ入るぞー!鈴羽と一緒に、中へ入るぞー!」
不自然なほどに説明的で、周囲にやたらと響く声。ラボの下に到着したらダルが合図を出すことになっていた。手筈通りではある…。それにしても演技が下手だなアイツ。
階段を上がって来る2人分の足音が近づいてきた。
「あれ、誰もいないの?まゆねえさんがいると思ってたんだけど…」
「きょ、今日は誰もいないお!ボクと鈴羽の二人だけだお!」
「…なんか喋り方、変じゃない?」
「そそそそ、そんなことないお!」
それではバレバレだ。
そうこうしているうちにラボのドアが開いた。
暗がりの中、鈴羽が靴を脱ぐのが分かる。
「今ニャ!」
フェイリスの号令がかかった。
パンッ!パパパパパパンッ!
電気がつくと共に一斉にクラッカーが音を鳴らす。
鈴羽が一瞬だけひるんだ顔をしたのが見えた。
その先の動きは、目で追えなかった。それほどに素早かった。
鈴羽はすぐに身をかがめると、床面を蹴り、ちょうど正面にいた由季へと間合いを詰めた。
俺が制止しようと声を出すより、鈴羽が由季の顎を掌底で砕いてしまう方が速かったかもしれない。
「きゃっ!」
運がよかったのは、突進してきた鈴羽に驚いた由季が、後ずさろうとして足を滑らせたことだ。そのおかげで鋭い掌底は由季の鼻先をかすめて空を切った。
「えっ?」
鈴羽が驚いた顔をした。
お尻から倒れそうになった由季の身体を鈴羽がとっさに支える。由紀も鈴羽も、周りにいた俺たちも呆然としていた。まさに紙一重だった。一瞬でもタイミングがずれていたら、由季が大怪我を負っていたかもしれない。
「す、ストップだニャ―!」
「め、めりーくりすますだよぅ!」
ようやく我に返って皆が動き出す。由季はただ、目をぱちくりさせて鈴羽に身を任せている。
「な、なにしてる…の?」
ようやく鈴羽が我に返ったように俺たちを見回した。