STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
こんな一幕がありつつ、メインのダルたちに移る。
由季さんがプレゼントを開けると、木製の可愛いオルゴールが出て来た。蓋を開けると中で小さなブリキの人形がくるくると踊る仕掛けになっていた。
「すごい!かわいい!」
女性陣から感嘆の声が上がっている。ルカ子も混じっていたな…。
「これ、いったい誰からのものニャ~?」
フェイリスのわざとらしい声が響く。もちろんダルだ。だが、ダルがあんなセンスのいいものを選べるとは思えない。…まゆりとフェイリスが選んだのだろう。
「あ、ええと……ボク」
ダルがおずおずと照れ臭そうに手を挙げた。
事前に事情を知っていたフェイリスとまゆり以外の全員が驚きの声を上げた。
「これ、橋田さんなんですね」
「ど、どうかな?まゆ氏からアドバイスをもらって選んだだけなんだけどさ」
「素敵……。ありがとうございます。大切にしますね」
由季さんは心底嬉しそうにオルゴールを胸に抱いた。
「………?」
それから、なぜか不思議そうな顔になって、箱の底を見ている。と思ったら急にソワソワし始めた。
「えっと、ごめんなさい。私、ちょっと…」
箱を持ったまま、由季さんは席を立ち、洗面所の中へパタパタと入っていった。…仕掛けを見つけたのだろう。
事前のまゆり情報によると、そこにはダル自身が書いた——と偽装した手紙が貼り付けられているとのことだ。手紙の中身は、映画デートへのお誘いという、いわゆるラブレター的なものだ。
さて、今頃どんなリアクションをしているだろうな。
一方、もうひとりの当事者であるダルはというと、自分のところに回ってきたプレゼントの中身を見て、こっちも困ったような顔をしていた。当たったプレゼントはフェイリスのものだ。そのためか、箱の中身を開けるまではやたらテンションを上げていたのに、今はすっかりおとなしくなっている。
まゆり情報によれば、映画のチケットだったはずだ。もちろんそのチケットは由季さんとのデートに使うべし、という指令書が同封されている。
フェイリスはダルの問いかけるような視線を受けて、ウインクを返している。“うまくやるニャ”とでも言いたげな。
「フェイリスには一緒に見に行ってくれる殿方がいニャいから、有効活用してくれるとありがたいニャ~!」
そして鈴羽の番が回ってきた。自分はなにも用意していないのに、プレゼントをもらうことに遠慮しているようだ。沈黙してしまったダルに代わって、フェイリスが鈴羽に促す。
「お、かわいい手袋だニャ~♪もしかして手編みかニャ?」
無理矢理に開けさせると、手編みの手袋が出て来た。由季さんお手製のようだ。
「かあ……由季さんが」
鈴羽は見るからに嬉しそうな顔になった。わざわざきちんと手にはめて見せている。だが、少し寂しそうでもあった。
「鈴羽、よかったじゃん」
ようやく覇気をとりもどしたのか、ダルがそう言った。
「うん……。ていうか兄さんは何が当たったの?」
「これ……」
自分が罠にはめられたことに気づいたらしいダルは、明らかに目を泳がせている。一方、鈴羽は状況を理解したらしく、優しい表情で父親の背中を軽く叩いた。
「いいんじゃない?行って来なよ」
「な、なんだお。鈴羽まで?」
「だって、2人を見てるとじれったいからさ」
「けど……リアルでデートなんかしたことないし……」
「母さんもそうらしいよ?」
「え?そうなん?」
「うん」
「そ、そっかぁ…」
と、由季さんが洗面所から戻って来た。ずいぶんとおぼつかない足取りだ。元の席に座ったものの、落ち着かない様子でモジモジしながらテーブルの上のお菓子をつまみ始める。
たまにチラチラとダルの様子を伺っていた。映画のチケット作戦は今のところうまくいっているらしい。あまり注目しすぎてバレてしまってもいけない。なるべく知らんぷりをしておくことにした。