STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
2010年12月4日(土)
12月に入り、空が暗くなる時間はますます早くなってきた。まゆりはコスプレ仲間と池袋のユガワヤ、乙女ロード、東京ハンズに加え、秋葉原のコスプレショップ巡りを楽しんだ。
メンバーはまゆりの他に3人。フブキこと中瀬克美。まゆりと同じく高校二年生だ。ボーイッシュな彼女は、男装コスプレでは大量のカメコを呼び寄せる。
次にカエデこと来嶋かえで。まゆりやフブキより3歳年上の女子大生だ。極めて女性的で、グラビアアイドルのように完璧に整っているが、引っ込み思案だ。
そして最後にあまゆきこと阿万音由季。端正に整い凛とした目鼻立ちをしているのに、全体的にふんわりと優しい雰囲気に包まれている女性だ。同性のフブキやカエデでさえ、美しく惚れてしまいそうである。
明路大学の4年生で、カエデと同じサークルに入っている。4人の中では一番年上だ。就活に専念しようとしていたようだが、半年で我慢できなくなり、あっさりと趣味を復活させていた。
まゆりが由季と知り合ったのは、決められていた運命のようなものだ。何を隠そう、彼女は阿万音鈴羽の母。橋田至のお嫁さんになる人なのだから。至はまゆりを通して由季と知り合うことになるのだ。
この4人で一日中買い物をしているうちに、気づけばすっかり夜になっていた。
「これで冬のコミマは何の心配もなくなったね~」
とフブキ。
「そうは言っても、衣装を作るのはほとんどまゆりちゃんだよ……?」
とカエデ。
「だったら、この際だからまゆりちゃんを手伝ってみんなで衣装作りしない?」
と由季。
「みんなに手伝ってもらうなんて悪いよ~」
かしましいコスプレイヤーたちの会話は弾む。
「あ、そうだ。まゆしぃはみんなにお願いがあったのです」
「お願い?」
「クリスマスパーティを開くから、由季さんもカエデさんもフブキちゃんも是非来てほしいなって」
「私行きたい!行きたい!」
親との食事会しか予定のなかったフブキはいの一番に手をあげた。
「うん。私も大丈夫だよ」
カエデも頷く。
「私は、どうしようかなぁ…」
「え、もしかして先約があるの?」
「そりゃ、由季さんほどの美貌の持ち主なら、イブのデートに誘ってくる男子は山ほどいるでしょ?」
「ええーっ⁉」
まゆりがこの世の終わりを見たかのように、絶望した顔を見せる。
「ま、まゆりちゃん…?」
「マユシィ、どうしちゃったわけ?」
由季なら彼氏くらいいて当然だと思っている2人にとっては、由季に先約があるのも頷けることだ。まゆりも同じ考えだと思っていただけに、この反応は予想できなかった。
「そ、そっかぁ。由季さんなら、彼氏もいるよね……」
「えっと…私、今までに彼氏なんていたことないよ?彼氏いない歴=年齢だし」
その言葉に今度はフブキとカエデが驚いた顔を見せた。
「う、嘘だよね…由季さん?」
「さすがにそれはないと思うけどなぁ……」
「ほんとだってば!私なんて全然モテないよ?」
フブキとカエデは疑いの目を向けているが、まゆりだけは何故か安心した顔をしている。
まゆりとしては、鈴羽が生まれてくるためにも、至と由季が結ばれてくれなければ困るのだ。鈴羽がこの時代にいるというのに、目の前で他の男の子と付き合っているところを見られては、鈴羽も立ち直れなくなってしまうだろう。
「だ、ダルくんとか…由季さんにはお似合いだと思うのです…」
「ダルくん……って、あの橋田さんでしょ⁉マユシィ、何言ってんの?」
「や、優しそうな人だけど……」
未来を知っているまゆりからすれば、2人が上手くいくように何かとおせっかいをしたくなる。だが、フブキとカエデにとって、至という人物はあまりにも意外だったようだ。
「うーん。でも橋田さんって、鈴羽さんみたいな人がタイプなんじゃないかなぁ。私と話してても、あんまり楽しくなさそうだし」
「そ、そんなことないよ!ダルくん、由季さんに照れてるだけだよっ!由季さんに萌え萌えきゅーん、だよ!」
「そうかなぁ。私は橋田さんのこと、いい人だと思ってるんだけど、なんだか避けられてるような気がするんだよね」
由季のまんざらでもない態度にまゆりはホッとする。だが、至が由季を避けているというのはいただけない。
至は鈴羽には誰の目から見てもデレデレだ。鈴羽が至の娘であるというのはまゆりを含めて数人しか知らない。皆には妹だということで通してある。
事情を知らない人には、妹にべったりなシスコンの兄、という風に映っているのだろう。それとは対照的に、由季が言うとおり、由季に対して至は距離を置いている感じに見える。
実際には、未来の奥さんということで、意識してしまってまともに顔も見れず、話せていないだけなのだが。
それからもまゆりによる至の持ち上げは続いた。フブキとカエデは引きつった顔をしていたが、由季だけは興味深そうに話を聞いていた。