STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「あ~、まゆしぃが用意したオルゴールは、真帆さんに行ったんだね~」
真帆が手にしているオルゴールは、デフォルメされたクマの形をしていて、ねじを巻くとカタコト手足や口を動かしながら、音楽が鳴る仕掛けになっているようだ。
「どんな音?聞きたい!」
綯のリクエストで、真帆はオルゴールのねじを巻く。
「じゃあ…」
落ち着く雰囲気の曲だった。
「まゆしぃね、この曲大好きなんだぁ」
どこかで聴いたことのある曲。いつ聴いたか、どこで聴いたか、思い出せないが知っているような気がする。
「あっ、そうか。この曲だ」
突然鈴羽がなにかを思い出したように立ち上がった。
「由季さん、ほら、覚えてない?」
「えっ、はい?」
すっかり心ここにあらずという様子だった由季さんは、鈴羽に急に声をかけられ、分かりやすいほどにあたふたした。
ダルから、という体で贈られたプレゼントに予想以上に動揺している。やはり、由季さんはダルにかなり気があるんだろうな。
どうしてあんな美人がダルを、と今さらながらに思う。
「あたしが寝込んでたとき、由季さんがここで歌ってたよね」
「ああ、そう言えば」
「うん。確かにこの曲だよ」
鈴羽は、懐かしそうに目を細めた。
「ね、まゆねえさん。これ、なんていう曲?」
「うんとね、これは——」
まゆりが言いかけた——その時だった。
いきなり。世界が歪んだ。
「うぐっ……⁉」
俺は、自分の身体を貫くように駆け抜けた激しい“違和感”に、たまらず苦痛の声をもらしていた。
ぐらりぐらり——と。
目の前の幸せなパーティの風景が、まるで蜃気楼のように揺らぎ出す。
こ、これは?まさか…そんなっ……!
どこか遠くで、ガターンと激しい音が響いた。
焦点の定まらなくなった目でかろうじてその方向を見ると、フブキがテーブルをひっくり返しながら床に倒れるところだった。
カエデやフェイリスが、驚いてフブキの名を呼び、駆け寄っている。
しかしそれは、あたかも水中の光景を見ているようにゆらゆらと不鮮明で、しかもひどくスローモーションなビジョンだった。
声も遠くへ遠くへと離れていく。
いくら手を伸ばしても誰にも届かず、何にも触れることが出来なかった。
時間と空間が支離滅裂に乱れ、全ての物質の“自我”さえもその主体性を失うかのように崩壊していく。そんなおぞましい感覚があった。
この感覚は———。
思い出したくもないこの最悪の事象を俺は知っている。
いやというほど思い知っている。
これは——。
リーディング……リーディングシュタイナーだ……!