STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

200 / 303
(20)

「あ~、まゆしぃが用意したオルゴールは、真帆さんに行ったんだね~」

 

真帆が手にしているオルゴールは、デフォルメされたクマの形をしていて、ねじを巻くとカタコト手足や口を動かしながら、音楽が鳴る仕掛けになっているようだ。

 

「どんな音?聞きたい!」

 

綯のリクエストで、真帆はオルゴールのねじを巻く。

 

「じゃあ…」

 

落ち着く雰囲気の曲だった。

 

「まゆしぃね、この曲大好きなんだぁ」

 

どこかで聴いたことのある曲。いつ聴いたか、どこで聴いたか、思い出せないが知っているような気がする。

 

「あっ、そうか。この曲だ」

 

突然鈴羽がなにかを思い出したように立ち上がった。

 

「由季さん、ほら、覚えてない?」

 

「えっ、はい?」

 

すっかり心ここにあらずという様子だった由季さんは、鈴羽に急に声をかけられ、分かりやすいほどにあたふたした。

 

ダルから、という体で贈られたプレゼントに予想以上に動揺している。やはり、由季さんはダルにかなり気があるんだろうな。

 

どうしてあんな美人がダルを、と今さらながらに思う。

 

「あたしが寝込んでたとき、由季さんがここで歌ってたよね」

 

「ああ、そう言えば」

 

「うん。確かにこの曲だよ」

 

鈴羽は、懐かしそうに目を細めた。

 

「ね、まゆねえさん。これ、なんていう曲?」

 

「うんとね、これは——」

 

 

まゆりが言いかけた——その時だった。

 

 

 

いきなり。世界が歪んだ。

 

「うぐっ……⁉」

 

俺は、自分の身体を貫くように駆け抜けた激しい“違和感”に、たまらず苦痛の声をもらしていた。

 

ぐらりぐらり——と。

 

目の前の幸せなパーティの風景が、まるで蜃気楼のように揺らぎ出す。

 

こ、これは?まさか…そんなっ……!

 

 

 

どこか遠くで、ガターンと激しい音が響いた。

 

焦点の定まらなくなった目でかろうじてその方向を見ると、フブキがテーブルをひっくり返しながら床に倒れるところだった。

 

カエデやフェイリスが、驚いてフブキの名を呼び、駆け寄っている。

 

しかしそれは、あたかも水中の光景を見ているようにゆらゆらと不鮮明で、しかもひどくスローモーションなビジョンだった。

 

声も遠くへ遠くへと離れていく。

 

いくら手を伸ばしても誰にも届かず、何にも触れることが出来なかった。

 

時間と空間が支離滅裂に乱れ、全ての物質の“自我”さえもその主体性を失うかのように崩壊していく。そんなおぞましい感覚があった。

 

 

この感覚は———。

 

 

 

思い出したくもないこの最悪の事象を俺は知っている。

 

いやというほど思い知っている。

 

これは——。

 

 

 

リーディング……リーディングシュタイナーだ……!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。