STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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下水道を抜けた先に、また同じような川底が待ち受けていた。そこでも無造作に転がっている無数の死。

 

俺は正気を失いそうになった。かつて真帆とレスキネン教授とともに地下駐車場で襲われたときの、襲撃犯の男の言葉がふとよみがえる。

 

 

『ヒンノムの谷』

 

 

地獄を意味する『ゲヘナ』の語源となったその谷では、絶えることのない業火が燃え上がり、天を焦がしていたという。

 

 

『たとえ片目であろうとも、ヒンノムの谷の炎に投げ入れられるより、ずっと幸いに違いないのだ』

 

 

そうかもしれない。

 

そんなことを思った。

 

 

 

そのまま誘導され、辿りついたのは半ば崩落した地下鉄のトンネルだった。オフロード車が待機していた。

 

「ここから地下鉄内を通って埼玉に抜けられます。入間基地はまだ無事と聞いています。そこまで行けば、関東を脱出できるはずです」

 

「関東を……脱出?」

 

「話は向こうで聞いてください。とにかく急いで」

 

訪ねたいことは山ほどあったが、そうこうしているうちに外から銃撃らしき音が響いてきた。俺は押し込められるように一台の車両に乗り込んだ。

 

 

 

 

乗り心地はひどいものだったが、耐えるしかなかった。俺には世界線を元に戻す術がない。俺の意見など聞かれもしない。生き残るためには自衛隊の言うことに従う他ないのだから。何も知らされぬまま、俺は車に揺られ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

2011年1月10日(月)

 

 

この世界線に来てから20日ほどが経過した。この最低最悪な世界線で俺は新年を迎えることになった。最初は驚きの連続だったが、戦争という非日常の世界にも少しは慣れて来た。

 

どうやら俺は丁重な扱いを受けられる立場にあるらしい。その理由については教えてもらえていないが。

 

今は、目立たないように時間をかけて遠回りしつつ、沖縄へと向かっている。

 

その途中で立ち寄った地下施設にここ数日はとどまっている。近くで大きな戦闘が続いているらしい。焦って飛び出すよりも、ここである程度戦闘が収まるまで待っている方が得策なようだ。ちなみにここがどこかは分かっていない。教えてももらえていない。

 

少しでも時間ができると、俺は世界線が変動する前のことを考えていた。

 

ラボでのクリスマスパーティ。まゆりの買ってきたオルゴールの音色を聞き始めたころに、突然世界が歪んだ。

その原因は言うまでもなく、ロシアによるタイムマシン実験だ。2010年8月21日にロシアの手に中鉢論文が渡ってから4か月。ついにロシアが動き出したのだ。

 

詳しくは分からないが、ロシアではなく、今なおソ連が存続している。冷戦が終了し、米ソによる戦争が始まったようだ。そこに日本も巻き込まれる形になったらしい。

 

過去をどんなふうに変えたのかは分からない。考えるだけ無駄だ。VIPのような待遇で迎えられている俺にも、何も情報は降りて来ない。おそらく俺には何かしらの利用価値があるということだろう。思い当たることとしてはリーディングシュタイナーを持っているということくらいだ。もしそうだとして、なぜそのことが知られているのかは分からないが。

 

考える余裕が出来たことで、俺にはあることを思い出した。

 

パーティの日。遠のく意識の中で、フブキが倒れるのを見た。あのタイミングで急に体調を崩したとも考えられるが、体の震え方が俺とあまりにも似ていた。

 

「リーディングシュタイナー……か」

 

それは誰もが持っているものだ。α世界線ではフェイリスやルカ子も、俺が別の世界線のことを目の前で話すことで、ないはずの記憶を思い出していた。

 

「フブキも、リーディングシュタイナーを持っているのか?」

 

可能性はゼロではない。

 

仲間たちと合流できないものか。ずっとそんなことを考えていた。

 

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