STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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2010年1月21日(金)

 

 

沖縄に辿りつくまで1か月もかかったのは、戦況の悪化のせいだった。本来なら、俺は入間基地から空路で沖縄へと向かうはずだったらしい。それが陸路で向かうことになったため、こんなにも時間がかかってしまったのだ。

 

……冬の沖縄はどにょりとした厚い雲に覆われていた。

 

そんな呑気なことを考えていたら、迎えに来ていたフルスモークのワゴン車に乗せられた。

 

車内には運転手の他に、中年の男が助手席に座っていた。

 

「岡部倫太郎君だな?私は防衛省、中央情報保全隊の下山という。これから空港に寄り道してから、嘉手納の沖縄防衛局へ向かう。長旅で疲れているところ申し訳ないが、もうしばらく我慢してくれ」

 

「……はい」

 

東京が壊滅したことは聞いていた。在日米軍との協力体制を密にするために、沖縄の防衛局を臨時庁舎としているらしい。つまり、これから向かうのは日本の防衛の中枢というわけだ。

 

そこに行けば、俺がVIP扱いされ、命を懸けてまで護ろうとする意味が分かるのだろうか。

 

 

 

 

那覇空港では、意外な人物が乗り込んできた。

 

「お、岡部さん…」

 

「わ、本当だ!オカリンさんだ!」

 

由季さんとフブキ——もとい、中瀬さんだった。

 

こんなところで2人と出会うとは思ってもみなかった。だが、この世界線に来てから、はじめて会うことのできた知り合いだ。それだけで、涙が出るほどうれしかった。

 

「まゆりは?まゆりの行方を知らないか?」

 

ここまでの1か月間、ずっと気にかけていたことだ。

 

「大丈夫です。さっきまで、一緒だったんです」

 

一緒、だった?

 

「マユシィでしょ、留未穂ちゃんでしょ、るかくん、カエデちゃん」

 

「今朝、空港に着いて。みんな防衛局というところで保護してもらえるというので、待っていたんですが…。さっき急に、私とフブキちゃんだけ先に連れていくと言われて……」

 

「それでこの車に乗せられたら、オカリンさんがいたってわけ」

 

ダルと鈴羽の名前が出ていないことに違和感を覚えた。

 

「…とにかく無事でよかった」

 

その二人についても確認してみるべきだろう。俺が口を開こうとしたとき——。

 

 

 

「すまないが、積もる話は後にしてもらってもいいだろうか」

 

下山がそう遮って、車が再び出発した。

 

 

下山の話では、俺たちの家族も後々沖縄まで護送してくれるらしい。それにまゆりたちも、別の車に乗せられているだけで、防衛局まで一緒に行くことになっているようだ。この車の後ろにもう一台のワゴン車が走っているのが見える

「…………」

 

どうして車を分けたのだろう。無理にでも詰め込めば、この車は全員が乗れる広さがある。それとも、俺と由季さん、フブキを一緒にこの車に乗せたことに、何か意味があるのだろうか。

 

そんな疑問を口にすることも許さない雰囲気で、車は進んでいく。だが、過ぎ行く店はどれも閉まっていてる。

 

「暗いな…」

 

ぽつりと漏らした言葉に下山が反応する。

 

「なぁ、岡部君。君の知っている沖縄は、夜遅くまでもっと明るくて、楽しい場所だったろう?」

 

なんだか持って回った言い方だ。

 

「どうでしょう。俺は沖縄は初めてなので…」

 

「それはもったいないな。なら、次は楽しい旅行で来られることを祈ってるよ。ここは本当にいい島だ」

 

わざとらしい話し方。俺はこの下山という男に言い知れない不気味さを感じていた。何が目的なのだろう。

 

 

 

 

車は長いトンネルに入った。そこでまた、下山が口を開いた。

 

「実は3人に、防衛局に着く前に少しだけ質問をしたくてな。それでこうして同乗してもらった」

 

やはり、そうだったか。だから俺たちだけを別の車に集めたのか。でも、どうしてこの3人なんだろうか?

 

俺はこの2人と特別親しいわけではない。出会ったのもほんの数か月前——いや、それは世界線が変動する前の話だ。この世界線では俺たちの関係がどう変化しているかは分からない。

 

…下手なことは言わない方がいいだろう。理由は分からないが、俺はVIP扱いされている。その強みをなくしてしまうべきではない。

 

「阿万音由季さん」

 

「っ!…はい」

 

いきなりの指名に由季さんがビクッと反応する。

 

「君は、橋田至君とその妹さんがどこにいるか、知らないだろうか?」

 

妹…。鈴羽のことだ。この世界線でも鈴羽は未来からやって来ていて、妹として由季さんたちと友人関係を築いていた、ということになる。β世界線、ではあるようだ。

 

「いえ…その……私は……」

 

由季さんが俺に助けを求めるように目を向けて来た。

 

「………」

 

俺には答えられない。2人の行方について、全く何も知らない。

 

だが、由季さんの態度は少しおかしいように思えた。まるでその態度は、2人がどこにいるのか知っているのに、あえて隠していて、そのことを俺も分かっているとでも言いたげだ。

 

「ん?知らないかな?」

 

隠していると、下山も気づいたのだろう。イヤな目を向けて来た。

 

だが、ダルたちを隠すのはなぜだろう。誰から隠す必要がある?そもそも、どうしてダルと鈴羽の行方を知りたがっているんだ?

 

「すみません…」

 

由季さんは首を横に振った。

 

「でも君は、橋田君とかなり親しいお付き合いをしているんだよね?恋人に何の連絡もないというのは……」

 

「携帯電話なんて、もう使い物になっていないじゃないですか…」

 

「連絡方法ならケータイ以外にもいくらでもある」

 

「でも、本当に何も…」

 

「ふむ。妹さんからも?」

 

「はい…」

 

下山の目が俺に向けられる。

 

「ときに、岡部君は橋田君と何か研究をしていたらしいね?」

 

「え?」

 

研究ってなんだ?そんなこと——。

 

「どんな研究をしていたんだね?」

 

もしかすると、ラボのことを言っているのかもしれない。…ここは無難なことで濁しておくしかない。

 

「研究というより……なんていうか、ちょっとした発明のアイデアというか…」

 

「発明?」

 

「竹とんぼにCCDカメラをつけて、空撮ができないか、とか…」

 

「ほう。なかなかおもしろいね…」

 

「それじゃあ、何かとんでもない物を作っていて、それを知られないために我々から逃げた……というわけではないんだね?」

 

「逃げた?」

 

ダルたちは俺たちを保護してくれるはずの自衛隊から逃げたっていうのか?こんな状況だ。こちらから保護を頼みたいくらいのはずなのに。それを捨ててでも逃げる理由があったということなのか?

 

「知らないのならいいんだ。橋田君たちのことは保留にしておこう」

 

ダルたちのことが、これ以上追及されずに済んでホッとした。だが、味方だと思っていた自衛隊だが、怪しいところが散見される。

 

俺をVIP扱いする理由。そして、ダルと鈴羽にこだわる理由。

 

とんでもない物を作っていて、知られないために逃げた。そう言われて思い当たるのは電話レンジ(仮)だ。鈴羽がこの時代に来ているのなら、タイムマシンだってあるはず。自衛隊はそれを狙っていて、ダルたちはそれを隠すために逃げた、ということだろうか?

 

由季さんの態度も気になるところだ。ダルは由季さんにもある程度事情を話しているのか?

 

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