STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
ゲート前で車は止まった。そこには米軍の兵士が何人か待っていた。
「君をアメリカに渡したら、もう我々のところには正しい情報なんてひとつも下りて来なくなるだろう。だから、これが最後の機会だ」
下山は助手席から振り返り、俺をまっすぐに見つめてきた。その目は懇願しているかのような、思い詰めたもので。
「——教えてくれ。我々はこの先、どうすればいいんだ?」
「………」
「頼むっ!」
脳裏に、戦火の東京で俺のことを必死に守ってくれた青年自衛隊員の顔が浮かんだ。
「………俺には……分かりません」
「岡部君!」
「本当に分からないんです!俺ひとりの力で、この戦争をどうにか出来ると思いますか?ゴリバチョフやレリツィンがロシアの大統領になるとか、東西冷戦を劇的に終結させるとか、そんな歴史を知っていたところで……どうにもならない」
「………」
背後で、別の車のエンジン音が近づいてくるのが聞こえた。
下山はため息をつくと、前を向き、助手席のドアを開けた。
「降りたまえ」
俺は言われた通り、車から降りた。すると。
「オカリーン!」
背後に停まったもう一台のワゴン車から降りたまゆりが、駆け寄って来た。
「まゆり……!」
「オカリン!」
胸に飛び込んできたその幼馴染の身体を抱き留める。
「やっと…会えたよぉ……」
「よかった……無事で」
確かなぬくもり。ここにまゆりがいる。1か月も顔を合わさないことなんて今までなかった。
まゆりが無事で、本当によかった。
「オカリン……苦しいよぉ」
「あ、悪い…」
強く、抱きしめすぎたな。言われてまゆりから離れる。
「まゆしぃね、信じてたよ。オカリンとまた会えるって、信じてた」
「あぁ…」
涙を目に溜めて嬉しそうに笑うまゆり。
「無事だったかニャ―!」
「岡部さーん!」
さらに聞きなれた声が響く。フェイリスとルカ子、その後ろにはカエデの姿もあった。
「みんなも、よく無事で…」
ルカ子は泣いていた。それに誘われて俺も目頭が熱くなる。フブキはカエデに飛びついていた。青い顔をして怯えたままだ。
「フェイリス……さすがにメイド服じゃないんだな」
「フェイリスって呼ばれたのも久しぶりニャ」
フェイリスは寂しそうにそう言うと、俺の首から肩に手を回してギュッと抱き着いてきた。そのままピンク色の小さな唇を耳元に寄せ、キスの仕草をしてくる。
「お、おい…?」
「にゃはは。照れることないニャン♪」
いたずらっぽく笑いながら、フェイリスは——いや、秋葉留未穂は、キスをするふりをしつつ、俺の耳元でささやいた。
「気を付けて。防衛相の人も米軍の人も信用してはダメ。大人は嘘だらけ。みんな本当のことは言わないわ」
そうだ。フェイリスには特技があったんだな。
チェシャ猫の微笑(チェシャー・ブレイク)。
他人の心の奥底を見抜く天才的な洞察力。
「……ああ。思い知ったよ」
さっきまんまと騙されたところだ。
フェイリスは少し驚いた様子で俺から離れた。
「……悲しいニャン」
「そうだな…」