STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
玄関にはクリスマスパーティの時の飾り付けがまだあった。あれから1か月しか経っていないのだ。感覚的にはもうはるか昔のことに思える。それほど、生きるのに必死だったのだ。
「あークリスマスの飾り付け、外さないとなー。パーティのとき、オカリンとフブキ氏が倒れたっしょ?それでバタバタしちゃって、ちゃんと片付けできてないんだよね」
「俺と中瀬さんが、倒れた?」
世界線が変動したあの瞬間か。パーティで俺が倒れたことを、まゆりたちは記憶している。ということは、今の俺は世界線変動に巻き込まれる前と同じ世界線に戻って来たことになるな…。
これがロシアの仕業なら、世界線変動について、そこまで使いこなせていることに戦慄を覚える。
それともうひとつ。俺だけじゃなく、フブキまで倒れたということが気になった。
考え込んでいると、ダルとまゆりがまだ戸惑ったような眼を向けてきていた。
「オカリン?」
「あ、そ、そう言えば、中瀬さんの具合はどうなのかな、って思ってな」
慌てて言いつくろう。
「フブキちゃん、まだ入院してるんだ~」
「入院?もう1か月近く経っているのにか?」
「本人は大丈夫だって言ってるんだけど、ちっとも退院させてもらえないんだって」
最近はあまり長期入院をさせないはずだ。フブキは何かの病気なのか?
「………コレの疑いが晴れないらしいね」
鈴羽がそうつぶやいて、読んでいた雑誌のページを掲げた。
先ほど見た、新型脳炎のページだ。
「新型脳炎…」
記事を読ませてもらう。
確か、11月くらいから話題になっていたものだ。俺もチラリと見たことがある。海外では程度の差はあるが、すでに百名近くの発症者が見つかっているらしい。日本でも、現在10名ほどが検査入院中である、と書かれていた。
空気感染の可能性などが書かれているが、俺はかつて見たニュースを思い出した。
曰く、夢と現実の区別が付かなくなるとか、既視感(デジャヴ)を感じるとか、あるはずのない記憶があるとか。そのときに思ったのだ。これはリーディングシュタイナーじゃないか、と。
「ねぇ、オカリンも、一度病院で診てもらった方がいいんじゃないかな…。あのときのオカリン、フブキちゃんよりもっと具合悪そうだったよ……?」
「……ああ。考えておくよ」
新型脳炎の症例は、直前までいた世界線で、下山が言っていたこととほとんど一致している。
やはりフブキはリーディングシュタイナーを持っている…。パーティのときにフブキも倒れたのは、世界線の変動でリーディングシュタイナーが発動したことが原因かもしれない。
だとすれば病気と診断されたのは誤診だ。不必要な検査や見当違いの診療をされても、快復するわけではない。
とにかく、一度フブキと話してみる必要がありそうだ。