STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
駅前まで来ると、次の予定を決めることになった。皆でコスプレ衣装を作る約束だ。そして、まゆりはそれとは別に、由季に料理を教えてもらう約束を取り付けていた。教えてもらうのはキッシュだ。
クリスマスパーティ用にまゆりが練習したいと言ったのだ。翌日、12月5日に由季とはラボで待ち合わせることになった。料理が壊滅的なまゆりにしては、大きな進歩だった。
「サンタコスかぁ……楽しみだなぁ」
「まゆりちゃんもちゃんと着なきゃだめよ?」
「ええ~。まゆしぃは作るの専門なのです」
「でも、岡部さんも、まゆりちゃんの素敵な姿、見たいんじゃないかな?」
「ふええ?オカリン?」
突然飛び出した岡部の名前に、まゆりが素っ頓狂な声を上げた。
「オカリンさん……ああ、マユシィの彼氏ね」
フブキも、岡部には何度か会ったことがある。背は高いが顔色はあまり良くなく、身体も細くてすごく寂しそうに笑う人、という印象だった。まゆりはたびたび岡部のことを口にするため、幼馴染であり、2人は付き合っていると思っているのだ。
「あ、あのね、フブキちゃん。まゆしぃとオカリンはそういうのじゃないよ?」
「またまたぁ!」
「またまたぁ!」
「またまたぁ!」
全員がハモッた。
彼氏彼女というよりは、長年連れ添った夫婦、というふうにしか見えないのだ。
「だってオカリンには、他に好きな人がいるのです」
「ええっ⁉」
特に気にも留めていないようにサラリと言ったまゆりの言葉に、フブキは目を丸くした。
「そ、そうなの?」
「本当に……?」
由季とカエデも確認するが、まゆりは頷いた。
「ご、ごめんね。私、余計な事言っちゃったかな?」
すかさず由季がフォローを入れた。
「ううん。まゆしぃとオカリンは幼馴染の仲良しさんってだけだから、大丈夫だよ」
まゆりの笑顔がフブキにはとても切なく思えた。
まゆりが岡部のことを好きなのは、誰が見ても分かることだ。岡部だって、まゆりを大切に扱っているのは間違いない。
それなのに、別に好きな人がいるというのが信じられなかった。怒りさえ芽生えそうになるが、2人の問題であって、自分が口を出すことではないと必死で我慢した。
だが、それ以上に——。
(由季さん、どうしたんだろ……?)
確かに由季が、岡部がまゆりのサンタコスを見たがるはずだ、と言った事が発端ではあった。まゆりも少し無理して笑っているようだった。とはいえ、それくらいのことで、由季が泣き出しそうな顔をするだろうか?
それもこれも、夏頃から見始めた、あの悪夢が関係しているのではないか。そんなことをフブキは思った。
まゆりと由季を見送った後、その場に残ったカエデは、フブキに全てを話すように言った。
今日一日、フブキのテンションは異常だった。普段から明るいフブキだが、今日はそれが空回りしていたのだ。フブキは誤魔化そうとしたが、カエデの真剣なまなざしに負けて、全てを話すことにした。
「マユシィがね、死んじゃうんだ」
夏頃から、まゆりが死ぬ夢を毎日のように見るようになったのだ。毎日毎日、異なる方法でまゆりが命を落とす。
泣き崩れるフブキとカエデの前で、岡部が悲鳴を上げながら、まゆりの身体を抱きしめるのだという。
「大丈夫。大丈夫だから、ね?」
カエデは優しくフブキを抱きしめてくれた。まゆりが死ぬなんて未来は来ない。だから大丈夫だ、と慰めてくれた。
「またその夢を見たら、私に言って?ただ、まゆりちゃんの前では無理しないこと。無理に笑おうなんてしなくていいからね。それだけは約束して?」
「……うん」
少しだけ、気が楽になった気がしたフブキだった。